葉をめくるまで中身が見えない、フィジーのロヴォ
バナナの葉を重ね、根菜を下に置き、肉を包んで、さらに葉で覆う。
フィジーのロヴォ(Lovo)は、食材を土中炉で蒸し焼きにする伝統的な調理法です。
熱した石を地面の穴に並べ、葉で食材を覆い、土や砂で熱を閉じ込めます。
火のそばで焼き色をつける料理とは違い、包みを開くまで中の変化が見えません。
それでも、仕上がりを判断する目印はあります。
根菜に竹串が通り、肉の中心が十分に熱く、葉が深いオリーブ色になっていれば、土中炉の蒸気で火が回った合図です。
日本の台所では土を掘れないので、厚手のふた付き鍋とオーブンで構造を置き換えます。
再現するのは煙の量ではなく、葉で包み、根菜・肉・ココナッツの香りを閉じ込める仕組みです。
フィジーの家庭や祝宴では、ロヴォは一人分の料理としてではなく、家族や友人が食材の準備を分担して囲む大きな食卓になります。
日本で4人分に縮めても、肉だけを焼くのではなく、根菜と葉包みを同じ鍋に重ねると、ロヴォらしい食べ方が残ります。
フィジーの食卓とロヴォの由来
フィジーの食文化を紹介するThe Coconetは、ロヴォをフィジーのアースオーブン料理として説明し、肉、鶏肉、豚肉、野菜、パルサミ、根菜を一度に用意する流れを紹介しています。
ロヴォの由来を単一の料理名として探すより、熱した石と葉で食材をまとめて火に通す方法として捉えると、フィジーの食卓でこの調理法が残る理由が見えます。
大人数の食事では、何を何人分作るかを先に決め、肉を漬け、根菜をむき、石を十分に熱する作業を別々に進めます。
土中炉に並べる順番も意味を持ちます。
SBS Foodのレシピでは、dalo(タロイモ)、tavioka(キャッサバ)、kumala(サツマイモ)などの根菜を下に置き、葉で包んだ鶏肉や豚肉、魚を重ね、上に野菜やパルサミを置く構成が示されています。
重い根菜が熱い石に近い位置で火を受け、肉は葉と蒸気で乾かず、上の葉野菜やかぼちゃは蒸し煮に近い状態になります。
火を担当する人、根菜を準備する人、味付けや添え物を作る人がいて、最後は掘り出した料理を大きな葉の上に広げて分けます。
「オーブンに入れて待つ料理」とだけ考えると、ロヴォの面白さが薄くなります。
食材を一つの鍋に集めること自体が、祝宴の規模と分け合う食卓を表しているからです。
地域差で変わる、根菜と葉包みの土中炉
土中炉はフィジーだけの方法ではありません。
The Coconetは、フィジーのロヴォがニュージーランドのハンギやサモアのウムと似た調理法だと説明しています。
ただし、呼び名が違うだけで同じ料理になるわけではありません。
Pacific Communityの資料では、フィジーのrourouはタロイモの葉をココナッツクリームで煮る料理、サモアのpalusamiはタロイモの葉とココナッツクリームを包んで焼く料理として掲載されています。
同じ太平洋でも、どの葉を使い、ココナッツを液体のまま添えるか包み込むかで、食卓に上がる形が変わります。
フィジー国内でもロヴォの中身は一つに決まりません。
地域差は、決まった配合の違いだけでなく、島や季節、祝宴の人数によって使える根菜や魚、豚、鶏、葉野菜が変わるところに現れます。
これは特定の島だけに固定された配合があるという意味ではなく、資料に並ぶ食材の幅から分かる、ロヴォの組み立て方の特徴です。
日本では、daloのねっとりした食感をタロイモで、taviokaのほくっとした粉質をキャッサバで、kumalaの甘みをサツマイモで置き換えられます。
パンノキが手に入れば加えてもよいですが、無理に探す必要はありません。
このレシピは、フィジーの食材名と重ね方を手がかりにしながら、日本で買いやすい根菜へ調整した家庭版です。
日本の台所で土中炉を、密閉鍋に置き換える
本場のロヴォは、熱した石、地面の穴、葉と土の重なりで調理します。
家庭版では、厚手の鍋が石の蓄熱を、ふたとアルミホイルが葉と土の密閉を受け持ちます。
鍋の中に水を入れすぎると、根菜を煮たような味になり、葉の香りが水へ逃げます。
水は蒸気を補う100mlだけにし、肉と根菜から出る水分を鍋の中に残してください。
ふたが軽い鍋を使う場合は、ふたの下にアルミホイルを二重にかませます。
反対に、深い耐熱容器にふたができるなら、ダッチオーブンを新しく買わなくても作れます。
この料理のために道具を増やす価値があるのは、しょうがやにんにくをつぶして下味の香りを出したい人です。
すりおろし器があれば味は作れるので、石の乳鉢は必需品ではありません。
買うなら、リンク先で「乳鉢とすりこぎのセット」であること、石製であることを確認します。
すでにすりおろし器を使っているなら、買い足さずにその道具で代用してください。
途中で見つける、味の決め手
火が通らない、乾く、葉がないときの戻し方
ロヴォは鍋の中が見えないぶん、失敗の原因を食材の状態から逆算します。
根菜だけが硬い
タロイモやキャッサバが硬い時は、鍋の密閉が保たれていても、切り方が大きすぎるか、鍋が浅くて蒸気が回っていません。
ホイルを閉じ直し、熱湯を50mlだけ鍋の縁から加えて、170度Cで15分追加します。
それでも硬ければ、次回は根菜を3cm角にして、キャッサバの太い部分だけを半分に割ります。
肉は火が通ったのに、鍋の底が水っぽい
水を計量せずに加えたり、肉を冷凍のまま入れたりすると、肉と野菜から出る水分が多くなります。
次回は水を100mlから50mlへ減らし、肉を冷蔵庫で完全に解凍してから使います。
焼き上がった後なら、肉と根菜を取り出して鍋の煮汁だけをふたなしで10分煮詰め、塩味を確認して少量かけ直します。
バナナの葉が破れて香りが弱い
葉を温めずに折った時は裂けやすく、包みの中の蒸気も逃げます。
料理用の葉が見つからなければ、クッキングシートで食材を包み、その上からアルミホイルで二重に閉じます。
この方法なら蒸し焼きの構造は保てますが、バナナの葉の青い香りはつきません。
葉の香りを目的に買う人は料理用の冷凍葉を選び、蒸気でやわらかくしたいだけならシートとホイルで十分です。
タロイモの葉が手に入らない
食用タロイモの葉がなければ、小松菜を200g使ってココナッツ包みにします。
食感はやわらかくなりますが、葉を二重にして包み、中心まで十分に加熱すれば、ココナッツを閉じ込める役割は果たせます。
正体の分からない葉を代用するより、食用野菜へ替える方が安全です。
ロヴォは、鍋を囲む量で作ると分かりやすい
土中炉の煙や熱い石を家庭のオーブンへ完全に移すことはできません。
一方で、根菜を下に、肉を中に、葉包みを上に重ねて密閉する構造は、厚手の鍋でも再現できます。
食べる時は、肉だけを主菜にせず、タロイモ、キャッサバ、サツマイモの食感を比べながら取り分けます。
タロイモはねっとりし、キャッサバはほぐれるように粉質で、サツマイモとかぼちゃは甘みを添えます。
ココナッツの包みは、肉の脂を受け止めるやわらかな副菜になります。
サモアの葉包み料理と比べたい時は、同じ食材でも呼び名や包み方が違う パルサミの作り方 も参考になります。
保存と食べ切り
食べる分だけ大皿へ取り分け、残りは浅い容器へ移して粗熱を取ります。
冷蔵したロヴォは翌日までを目安に食べ、肉と根菜の中心が湯気を立てるまで再加熱します。
ココナッツ包みは冷やすと油分が固まりやすいので、包みのまま温めてから開きます。
一度温めたものを再び冷蔵することは避け、4人分を食べる人数に合わせて取り分けてから保存してください。














