冬の湯気で食べる、白い米粉のピタ
蒸し器のふたを開けた瞬間、最初に見えるのは白い小さな山です。派手な焼き色も、クリームの飾りもありません。けれど一つを割ると、湿った米粉の中からココナッツと黒いジャガリーが崩れ、湯気に甘い香りが混ざります。バングラデシュのバパ・ピタ(Bhapa pitha / ভাপা পিঠা)は、この「割った時」においしさが立ち上がる冬の蒸し菓子です。
バパはベンガル語で蒸した、ピタは米や小麦、豆などで作る菓子や軽食の大きな仲間を指します。英語圏ではsteamed rice cakeと説明されることが多く、米粉を湿らせて型にふんわり詰め、ココナッツとジャガリーを挟んで蒸します。茶の時間や朝の軽食に寄る食べ物で、日本の蒸しパンよりも粉の粒感があり、団子よりもほろっと崩れます。
日本の台所で難しいのは、特別な道具よりも粉の湿らせ方です。水を入れすぎると餅のように重くなり、少ないと蒸した後に粉っぽく割れます。この記事では、米粉だけで作る現地寄せの輪郭を残しながら、白玉粉を少量混ぜて崩れにくくする家庭版にします。完全に現地寄せにしたい日は、白玉粉40gを上新粉40gに置き換えてください。
冬の食べ物として考えると、バパ・ピタは作り方の理由が見えやすくなります。冷えた朝や夕方に、温かい蒸気、米の甘い匂い、黒い糖の香りを一緒に食べる。日本で再現する時も、冷たいデザートとして作るより、蒸し上がりを割って無糖の茶と合わせる方が料理の輪郭が伝わります。買い出しで迷うなら、珍しい材料を増やすより、米粉の湿り具合とココナッツ餡の香りに集中した方が成功します。
ভাপা(bhapa)は蒸した、পিঠা(pitha)はピタと読みます。ローマ字表記はBhapa pitha、Vapa pithaなど揺れますが、ここでは日本語の読みやすさを優先して「バパ・ピタ」と表記します。
失敗しやすいところと代替

バパ・ピタは材料が少ないので、失敗はほぼ粉の水分と蒸気に集まります。餡の甘さは後から調整できますが、粉の状態は蒸す前に決まります。
| 状態 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 蒸した後に粉っぽい | 水が少ない、蒸気が弱い | 粉を握った時にまとまるまで水を5mlずつ足す。蒸し始めは強火にする |
| 団子のように重い | 水が多い、型に押し込んだ | 上新粉大さじ1を足す。型では押さえず、表面をならすだけにする |
| 餡が硬い | ジャガリーを煮詰めた | 弱火2分で止める。黒糖を使う日は水小さじ1を餡に足す |
| 横から餡が漏れる | 餡を縁まで広げた | 餡は中央に置き、縁5mmを粉だけにする |
| 表面に水滴の穴ができる | ふた裏の水滴が落ちた | ふたに布巾を巻く。水滴が多い鍋はふたを少し斜めにする |
ココナッツは、生または冷凍のすりおろしがあればそれが一番近いです。乾燥ココナッツファインを使う時は、熱湯で戻してから餡にします。ココナッツロングは長すぎるので、包丁で5mm以下に刻むと食べやすくなります。ジャガリーが手に入らない場合は黒糖で作れますが、黒糖だけだと香りが重くなるため、黒糖80gときび砂糖10gに分けると茶に合わせやすいです。
白玉粉を入れない版は、より米粉らしく、冷めた時にほろっと割れます。白玉粉を増やす版は、まとまりやすい反面、ベンガルの蒸し米粉菓子というより日本の餅菓子に寄ります。初回は40gだけ入れ、次回から米粉だけに戻すと、違いが分かりやすいです。
食べ方、保存、温め直し

バパ・ピタは作りたての温かい状態がいちばん向いています。皿にのせたら、熱いうちに一つを割り、ココナッツとジャガリーの香りを逃がさず食べます。無糖の紅茶、濃いミルクティー、軽い塩味のアルー・ボルタの後にも合います。米とダルの食卓に寄せるなら、酸味の強いアーム・エル・アチャールを少量添えると、甘いピタへ移る前に口が切り替わります。
同じ南アジアの甘い米粉菓子で読み比べるなら、スリランカのアースミは揚げて蜜をかける軽さ、フィリピンのサピンサピンはもち米粉とココナッツミルクで層を作る濃さがあります。バパ・ピタはそのどちらよりも素朴で、粉そのものの水分管理が味になります。
| 保存方法 | 期間 | 食べる時 |
|---|---|---|
| 常温 | 4時間 | 冬の涼しい室内のみ。乾かないよう軽く覆う |
| 冷蔵 | 1日 | 蒸し器で中火5分。表面がふっくら戻ったらすぐ出す |
| 冷凍 | 2週間 | 1個ずつ包む。凍ったまま弱めの中火で8分蒸す |
| 電子レンジ | 600Wで20秒 | 乾きやすいので、水を数滴落としてラップをゆるくかける |
米粉だけで作れますか
作れます。上新粉280gにして、ぬるま湯は105mlから始めてください。白玉粉入りより割れやすいので、型に詰める時に押さえず、蒸し上がり後の2分休ませる工程を守ります。
ジャガリーがない時はどうしますか
黒糖で作れます。黒糖90gだけだと香りが強く、ココナッツが負けることがあります。黒糖80g、きび砂糖10g、カルダモン0.4gに分けると、日本の茶にも合わせやすくなります。
型がない場合は作れますか
小さな茶碗、湯のみ、プリンカップで十分です。直径7cm前後、高さ3cm前後にすると12分で蒸しやすくなります。大きな茶碗で一つにまとめると中心が重くなるため、初回は小さく作ってください。
ココナッツが苦手な場合は代替できますか
完全な代替は難しいです。ココナッツを抜くと、バパ・ピタの香りの半分が消えます。どうしても苦手なら、すりごま20gと黒糖60gで小さく作れますが、別の和菓子寄りの味になります。
蒸し器がない場合は電子レンジでできますか
おすすめしません。電子レンジは米粉の外側だけが急に固まり、中心が粉っぽく残りやすいです。フライパンに湯を張り、耐熱皿とふたで簡易蒸し器を作る方が近づきます。湯は常にふつふつ沸く状態を保ち、空焚きしないよう注意してください。











