白い泡をすくう、ニショルダの食卓
鍋で煮詰めた砂糖液を、つやのある卵白の泡へ細く流し入れると、透明な液体が雪のような白さに変わっていきます。ニショルダ(Nisholda、Nishallo)は、卵白と砂糖に、イェトマクと呼ばれる根の煎液を合わせて作るウズベキスタンの伝統菓子です。
現地の紹介では、冷たいニショルダをパティルのようなパンや緑茶と一緒に食べます。市場の大きな容器からすくった泡にスプーンが立つほど、という説明もある菓子です。市販のマシュマロを溶かして再現するものではなく、根に含まれるサポニンの泡立ちを、砂糖液と卵白で支えるところに手作りの要点があります。Central Asia Travelの菓子紹介でも、イェトマクまたは甘草の煎液を使った白い菓子として説明されています。
日本の家庭で作る時に迷いやすいのは、根をどこまで入れるかよりも、糖液の温度と泡の状態です。根の煎液は香りと泡の骨格を作りますが、入れすぎると草の香りが前へ出ます。糖液は112℃まで煮てから55〜60℃へ下げ、泡へ少しずつ重ねます。温度計がなくても判断できる状態を併記しますが、初回は少量の糖液を確認できる道具があると失敗を減らせます。

ニショルダの味と食感
| 見るところ | 仕上がりの目安 |
|---|---|
| 甘さ | 卵白の軽さを覆う、はっきりした砂糖の甘さ。酸味を少量入れると輪郭が出る |
| 香り | イェトマクは穏やかな草の香り。甘草を使うとリコリスに似た香りが強くなる |
| 食感 | 冷たいメレンゲより密度があり、スプーンですくった跡がしばらく残る |
| 食べ方 | 冷やした泡をパンですくい、緑茶を添える。食後の小さな菓子にも向く |
今回は4人分の家庭用量に縮め、食用イェトマクがなければ食品用甘草根で置き換えられるようにしました。甘草は香りも泡の出方も同じではないため、材料表に代替の限界も書いています。
途中で見つける、味の決め手
泡と糖液を離さないためのコツ

ニショルダは材料を増やすほどよく固まる菓子ではありません。根の煎液、卵白、糖液がそれぞれ別の役割を持っているため、一つずつ状態を確認します。
- 根の煎液は香りより泡の骨格を優先する。 15mlを入れて泡がゆるむなら、残りを足さずに止めます。イェトマクの産地や乾燥状態で強さが変わるため、同じ5gでも煎液の濃さは一定ではありません。
- 糖液は温度を下げすぎない。 50℃以下まで冷ますと、ボウルへ入れた時に糖が固まりやすくなります。反対に65℃以上では卵白の一部が熱で締まり、白い粒が混じることがあります。
- 泡立て器の筋を目印にする。 持ち上げた筋がすぐ消えるなら、糖液を入れる段階ではありません。高速で数分追加し、それでも戻るなら根の煎液が多すぎた可能性があります。
- 糖液を入れた後は、器の底を見る。 透明な液がたまったら、10分ほど高速で泡立て続けます。分離が止まらない時は完全な泡へ戻りにくいので、冷やしてパンに少量ずつ添える甘いソースとして扱い、作り直し用の材料に混ぜ戻さないでください。
日本で再現する時に残すもの、変えるもの
現地のニショルダに近づけるために残したいのは、根の煎液を使うこと、糖液を煮詰めてから加えること、冷たい状態でパンとお茶に添えることです。食用イェトマクが見つからない時は食品用甘草根へ変えられますが、香りは甘草寄りになります。卵白だけで作るなら、根の香りと泡の支えがなくなるので、ニショルダそのものと同じだとは考えない方が味の違いを受け入れやすくなります。
乾燥根は硬く、5gだけを包丁で折ると手元がぶれます。乳鉢は粉にするためではなく、煎出しやすい大きさへ割るために使います。商品ページで「花崗岩」であることと、すり鉢・すりこぎの両方がセットに含まれることを確認できる場合だけ、根や香辛料を繰り返し扱う人には買う理由があります。一度だけ作る人、すでに粉末の食品用甘草を用意できる人には、まな板と厚手の袋で代用できるため必要ありません。
ラマダンとナウルーズの食卓と市場

ニショルダは、料理の最後に少しだけ甘いものを出す菓子というより、人が集まる日に大きく仕込む食べ物として知られています。ウズベキスタンの情報サイトでは、ラマダンの断食明けにパティルとともに出す菓子として紹介され、結婚式、祝祭、イードの食卓にも登場します。Uzbekistan Travelのラマダン紹介は、イフタールでニショルダとパンを分け合う家庭のもてなしに触れています。
春のナウルーズにも白い泡は顔を出します。中央アジアの菓子紹介では、3月の春祭りに作るスマラクと一緒にニショルダが売られる習慣が述べられています。砂糖と卵白の菓子を、麦芽や小麦を長時間煮るスマラクと同じ日に見ると、季節の変わり目に大鍋を囲む食文化の広がりが分かります。毎日の少量のおやつと、祝祭に人の手を集めて作る料理は、同じ甘さでも役割が違います。
地域差は、呼び名や香りの出し方に表れます。ウズベキスタン国内ではフェルガナ盆地、タシケント、サマルカンド、ブハラなどで作られ、周辺の中央アジアにも卵白、砂糖、根の煎液を組み合わせる菓子があります。アニスやバニラを足すか、根をイェトマクにするか甘草にするか、糖液の酸味をどの程度にするかは家庭や職人で変わります。したがって、家庭で食品用甘草へ替えた時に香りが違っても、失敗とは限りません。ただし、植物の根なら何でも使えるわけではありません。
ニショルダを食べる時は、単独でスプーンから流し込むより、パンのちぎった面で白い泡をすくう方が現地の食卓に近づきます。塩気のあるパンと濃い緑茶が砂糖の甘さを切り、次の一口を重くしません。食事の流れに置くなら、先にウズベキスタンのプロフやマンティを並べ、ニショルダは食後の茶の時間へ移すと甘さが生きます。タジキスタンのクルトブのように酸味や塩気のある料理を添える献立でも、味の方向が重なりません。
家庭版で変えられる香り
| 変え方 | 仕上がり | 向いている人 |
|---|---|---|
| イェトマクを使う | 根の香りが穏やかで、現地の構成に近い | 食用の乾燥根を確認できる人 |
| 食品用甘草根を使う | リコリスに似た甘い香りが立つ | 日本で材料を揃えやすくしたい人 |
| アニスを少量加える | 茶菓子らしい香りが前に出る | 甘草の香りを少し軽く感じたい人 |
| バニラを少量加える | 香りが丸くなり、根の個性が弱まる | 子ども向けに香りを調整したい人 |
よくある質問

イェトマクが手に入りません。甘草もなければ作れますか?
卵白、砂糖、クエン酸だけでも白い泡は作れますが、根の煎液がないためニショルダ特有の香りと泡の支えは出ません。粉ゼラチンを少量使って形を補う方法はありますが、味と食感はメレンゲ寄りになります。用途が分からない薬草を代用するより、食品用甘草根が用意できる時に作る方が安全です。
糖液を入れたら泡がゆるくなりました。
糖液の温度が高い、注ぐ速度が速い、卵白の泡立てが足りない、ボウルに油分が残っている、という原因が考えられます。まず高速で10分ほど泡立て、底に透明な液が残るか確認します。分離が続く場合は完全な泡へ戻らないため、冷蔵して当日中にパンへ少量ずつ添える使い方に切り替え、保存用の菓子として扱わないでください。次回は糖液を55〜60℃、注ぐ時間を5〜7分にそろえます。
手で泡立てても作れますか?
作れますが、卵白と根の煎液を合わせた後、さらに糖液を細く注ぎながら長く泡立てる必要があります。片手でボウルを押さえ、もう一方で泡立てると注ぐ操作が難しくなるため、二人で作るか、電動ハンドミキサーを使う方が温度管理を崩しにくいです。ハンドミキサーを買うこと自体が目的ではなく、泡立ての途中で手を止めないための道具と考えてください。
どのくらい保存できますか?
殺菌済み卵白を使っても、家庭で作るニショルダは冷蔵庫(4℃以下)で保存し、翌日までを目安に食べ切ってください。食感は時間とともに水分が分かれて変わります。常温に置く時間は短くし、食卓へ出したままにしないでください。冷凍すると泡の水分が分離しやすいため、冷凍保存は向きません。卵を使う料理の安全な扱いについては、米国食品医薬品局(FDA)の卵の安全ガイドも確認できます。
甘さを減らせますか?
砂糖を大きく減らすと、糖液が泡の水分を支えられず、冷やした後も山が保てません。最初は360gで作り、甘さを軽くしたい場合は、パンを多めに添える、緑茶を濃くする、1回にすくう量を小さくする方法が現実的です。糖液の比率を変えるより、食べる組み合わせで調整した方が泡の状態を崩しません。











