鶏肉とうさぎ肉、いんげん豆を使ったバレンシア式パエリア
🔪下準備25分
🔥調理45分
🍽️分量4
🌍料理スペイン料理
ヨーロッパレシピ

パエリアの作り方|5つの火加減

16分で読めます世界ごはん編集部

パエリアの物語、鍋底の音までごちそうにする

フライパンの底で米が小さくぱちぱち鳴りはじめると、台所の空気が少し変わります。焦げているのか、うまく焼けているのか。ふたを開けたくなる気持ちをこらえながら、香りだけを頼りに火を弱める数分。パエリアは、最後まで鍋の前から離れにくい料理です。

**パエリア・バレンシアーナ(paella valenciana)**は、スペイン東部バレンシアの米料理です。日本では魚介のパエリアが有名ですが、バレンシア式の基本は鶏肉、うさぎ肉、平たいさやいんげん、白いんげん豆、トマト、パプリカ、サフラン、米。Visit Valenciaの伝統レシピでも、鶏とうさぎ、フェラドゥーラ、ガロフォン豆、米、水、サフランが主役です。魚介やチョリソを入れないことに驚く人もいますが、現地では「それは別の米料理」と分けて考えられます。

鶏肉とうさぎ肉、豆を使ったバレンシア式パエリア
バレンシア式パエリアの完成。画像: Jan Harenburg, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons

Britannicaは、パエリアをバレンシア地方と結びついたサフラン風味の米料理として説明し、平たい両手鍋「paellera」の名前から料理名が広がったと整理しています。つまり、パエリアは単なる「具だくさん炊き込みご飯」ではなく、浅い鍋で水分を飛ばし、米を一層に近い厚みで炊く料理です。

家庭で作るときの山場は、具材より火加減です。肉に濃い焼き色をつける、トマトを炒め詰める、水を入れて味を決める、米を入れたら混ぜない、最後に鍋底を焼く。この5つを守ると、専用の大きなパエリア鍋がなくても、かなり近い味に寄せられます。

同じスペイン料理なら、ひよこ豆を三幕で食べるコシード・マドリレーニョも濃い食文化が見える一皿です。米料理の食べ比べなら、イランのタフチンやウズベキスタンのプロフと並べると、同じ米でも「蒸す」「焼く」「煮る」の考え方がまるで違うことがわかります。

本記事の方針

本場の材料名は残しつつ、日本で買いやすい代替を併記します。うさぎ肉が手に入らない場合は骨付き鶏もも肉で作れます。ただし、魚介やチョリソ入りの華やかなパエリアではなく、バレンシア式の火加減と米の炊き方を覚えるレシピとして組み立てます。

4人分

材料(4人分)日本で揃えるバレンシア式

パエリアは具材を増やすほど豪華に見えますが、初回は少なめのほうが成功します。具が多すぎると米の層が厚くなり、水分が均一に飛びません。まずは直径28〜30cmのフライパンかパエリア鍋で、米2 合弱から始めるのが家庭向きです。

パエリア鍋で炊かれるバレンシア式パエリア
浅い鍋で米を広げて炊くため、水分が均一に飛びやすい。画像: Jerónimo Roure Pérez, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
材料 分量 代替・備考
米(スペイン短粒米または日本米) 300 g バレンシア米、ボンバ米が理想。日本米なら洗わず使うか、軽くすすいで30分乾かす
骨付き鶏もも肉 500 g ぶつ切り。手羽元6 本でも可
うさぎ肉 300 g 入手困難なら骨付き鶏肉を合計800 gに増やす
平たいさやいんげん 150 g モロッコいんげん、普通のいんげんで代用可
ガロフォン豆 150 g 白いんげん豆、ライマ豆、冷凍そら豆で代用可
トマト 1 個(約180 g) 完熟をすりおろす。カットトマト120 gでも可
にんにく 1 片 本場では入れない家庭もある。香り付け程度
パプリカパウダー 小さじ1 甘口。スモーク強めは少量にする
サフラン ひとつまみ(0.1 g) ターメリック少々で色は代用可。ただし香りは別物
ローズマリー 1枝 乾燥なら小さじ1/3。入れすぎると薬草感が出る
オリーブオイル 大さじ4 肉を焼くため多め
水または薄い鶏だし 900 ml 日本米なら850 mlから調整
小さじ1と1/2 水を入れた段階で少し濃いめに決める
レモン 1/2 個 仕上げ。現地では必須ではないが家庭では便利
アレルギーと食品安全

このレシピは鶏肉を使います。FoodSafety.govは鶏肉の安全な中心温度を165°F(約74℃)と示しています。うさぎ肉を使う場合も、骨まわりまで十分に火を通してください。魚介は使いませんが、魚介入りにアレンジする場合は貝が開かないものを食べないなど、別途注意が必要です。

サフランと短粒米は、パエリアらしさを左右する材料です。代用はできますが、初回から香りを近づけたいなら、米とサフランだけは先に見る価値があります。

買い出しの順番は、米、肉、豆、香りの順で考えると迷いません。米はボンバ米やバレンシア米が理想ですが、見つからなければ日本米で始められます。肉は骨付き鶏を優先し、うさぎ肉は無理に探し回らなくても大丈夫です。豆は平たいさやいんげんと白いんげん豆で形になります。最後にサフランを足すと、台所に立つ香りが一段変わります。

反対に、初回から大きな魚介セットやチョリソを足すと、火加減の練習が難しくなります。具が増えるほど水分が出て、米の層も厚くなるからです。まずは小さめの鍋で「米が動かない炊き方」を覚え、慣れてから魚介版へ広げるほうが、週末の昼に落ち着いて作れます。

レモンは好みですが、家庭では添えておくと便利です。塩味が少し弱かったとき、油が重く感じたとき、最後の一滴で輪郭が戻ります。鍋を囲む食卓では、こういう小さな逃げ道があると気が楽です。

スペイン産パエリア米 1kg

家庭のフライパンで作るなら、底が厚く、広く、浅いものが向いています。深い鍋は水分が飛びにくく、炊き込みご飯に近くなります。

📊 栄養情報(1人分)
620
kcal
29.5g
タンパク質
24.5g
脂質
67.5g
炭水化物
4.5g
食物繊維
1200mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

作り方、米を入れたら混ぜない

パエリアは「途中で味見して直す」余地が少ない料理です。米を入れた後に混ぜると、でんぷんが出て粘り、鍋底の香ばしい層もできにくくなります。味は米を入れる前、スープの段階で決めます。

ローズマリーをのせて炊かれるパエリア
米を入れたら混ぜず、水分を飛ばしながら炊く。画像: Wikimedia Commons
1. **肉に塩をして焼く(10分)**

鶏肉500gとうさぎ肉300gに塩小さじ1/2をふる。フライパンにオリーブオイル大さじ4を入れ、中火で皮目から焼く。表面が濃いきつね色になるまで合計10分ほど焼く。ここで色が浅いと、後のだしが弱くなる。

肉を濃く焼き付けたバレンシア式パエリア
肉の焼き色が、パエリア全体のうまみの土台になる。画像: Jerónimo Roure Pérez, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
  1. 豆とトマトを炒める(7分)
    平たいさやいんげん150gを加え、肉の脂をからめながら3分炒める。中央を空け、すりおろしたトマト1個分、にんにく1片、パプリカ小さじ1を入れて4分炒める。トマトの水分が飛び、油が赤く透き通ったら次へ進む。
パエリア鍋の中で具材が煮立つ様子
トマトとパプリカを油になじませ、米に移る香りを作る。画像: Juan Emilio Prades Bel, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
  1. 水を入れて味を決める(12分)
    水または薄い鶏だし900ml、ガロフォン豆150g、サフランひとつまみを加える。強火で沸かし、沸騰したら中火で12分煮る。ここでスープを味見し、少し濃いめの塩味にする。米が入ると塩気を吸うため、飲んでちょうどよい程度だと仕上がりがぼやける。
バレンシア式パエリアを鍋で煮ているところ
米を入れる前にスープの味を決める。画像: Juan Emilio Prades Bel, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
  1. 米を広げて強火で炊く(8分)
    米300gを鍋全体へ十字に入れ、へらで一度だけ均一に広げる。以後は混ぜない。強火で8分炊き、表面の米が見えはじめるまで水分を飛ばす。火の当たりが偏る場合は鍋を少し回す。
大きな浅鍋で米を広げて炊くパエリア
米の層を薄く保つと、べたつかず粒が立つ。画像: Cragboom, Wikimedia Commons
  1. 弱火で米に火を入れる(10分)
    火を弱め、ローズマリー1枝をのせて10分炊く。米の中心がまだ硬すぎる場合は、水大さじ2を鍋肌から足す。逆に水分が多い場合は、火を少し強めて水分を飛ばす。米を混ぜて調整しない。
ローズマリーをのせて仕上げるバレンシア式パエリア
ローズマリーは香り付け程度に使い、長く入れすぎない
  1. ソカラットを作る(1〜2分)
    最後に中火へ上げ、鍋底からぱちぱちと乾いた音が出るまで1〜2分焼く。焦げ臭くなる前に止める。香ばしい米の匂いがして、へらを端から差したとき底が薄く抵抗するくらいが目安。
休ませているパエリア・バレンシアーナ
炊き上がったら火から下ろし、数分休ませる
  1. 休ませてから食べる(5分)
    火を止め、清潔な布巾かアルミホイルをふんわりかけて5分休ませる。米の表面が落ち着き、底の香ばしさが全体になじむ。レモンを添え、鍋から直接取り分ける。
鍋ごと食卓に出すバレンシア式パエリア
パエリアは鍋ごと食卓に出し、米の薄い層と鍋底の香ばしさを楽しむ
火加減を数字で覚える

家庭のガス火なら「肉を焼く10分、スープで煮る12分、米を強火8分、弱火10分、最後に焼く1〜2分」が目安です。米の種類と鍋の厚みで変わるので、初回は時間より水分の減り方を見てください。

調理のコツ、ソカラットは焦げではなく焼き目

パエリアで一番わかりにくい言葉が**ソカラット(socarrat)**です。鍋底にできる香ばしい米の薄い層のことで、ただの焦げではありません。苦い黒焦げではなく、油、でんぷん、肉のうまみが鍋底で焼けた、薄いせんべいのような部分です。

ソカラットを作るために浅鍋で仕上げるパエリア
浅い鍋と最後の短い強火が、鍋底の香ばしい層を作る
米は洗うなら完全に乾かす

スペイン米やボンバ米は洗わずに使うことが多いです。日本米を使う場合、気になるなら軽くすすいでよいですが、ざるで30分ほど乾かしてください。水をまとった米を入れると、表面が粘りやすくなります。

水加減は米の種類で変える

ボンバ米は水をよく吸い、煮崩れしにくい米です。日本米はやわらかくなりやすいため、水を少し控えめにします。米300gに対して、ボンバ米なら900ml、日本米なら850mlから始め、途中で足すほうが失敗しにくいです。

鍋の直径を優先する

深い鍋で作ると、米の層が厚くなり、上は硬く下は柔らかい仕上がりになりがちです。専用鍋がなければ、直径28〜30cmのフライパンを使います。底が薄いフライパンは焦げやすいので、最後のソカラットは1分から様子を見ます。

ローズマリーは短時間で引き上げる

ローズマリーは香りが強いハーブです。煮込みの最初から入れると、米より薬草の香りが前に出ます。米を弱火で炊く段階にのせ、香りが立ったら早めに外すと、バレンシア式らしい余韻だけが残ります。

パエリア鍋を買うなら、まずは家庭のコンロに乗る30cm前後が扱いやすいです。大きすぎる鍋は見栄えはよいものの、家庭用コンロでは火が端まで届かず、中心だけ焦げることがあります。

パエリア鍋 30cm 木台付き

アレンジ・バリエーション

パエリアは、バレンシア式を覚えると応用が楽になります。水分量、米を混ぜないこと、最後に鍋底を焼くこと。この骨格さえ残せば、具材は家庭の都合に合わせられます。

さまざまな具材で作られるスペインのパエリア
地域や家庭により具材は変わるが、浅鍋で米を炊く考え方は共通する

鶏肉だけで作る

うさぎ肉がない場合は、骨付き鶏もも肉や手羽元を合計800g使います。鶏だけでも十分おいしく作れますが、肉の焼き色を濃くつけることが大切です。骨付き肉を使うと、短い煮込み時間でもスープにうまみが出ます。

魚介パエリアに寄せる

魚介で作る場合は、肉の焼き工程を魚介の下処理に置き換えます。えび、あさり、ムール貝、いかを使うなら、火を入れすぎないことが大事です。FoodSafety.govは魚を145°F(約63℃)、えびや貝は身が白く不透明になること、貝は開くことを安全の目安にしています。開かない貝は食べません。

野菜だけで作る

肉を使わない場合は、パプリカ、アーティチョーク、きのこ、いんげん、白いんげん豆を使います。うまみが弱くなるので、トマトの水分を飛ばすまで炒め、野菜だしを濃いめに用意します。仕上げにレモンを少ししぼると、油と米の重さが軽くなります。

日本の米で作る

日本米は手に入りやすい反面、粘りが出やすいです。洗うなら軽く、浸水はしません。水分を吸わせてから炊くと、鍋の中で米粒が崩れやすくなります。米を入れた後に混ぜないこと、火を弱めすぎないこと、最後に短く焼くことを守ると、家庭の米でも「パエリアらしさ」は出せます。

余ったパエリアの温め直し

冷蔵で翌日までに食べ切ります。温め直すときはフライパンに薄く広げ、水大さじ1をふって弱火で温め、最後に中火で水分を飛ばします。電子レンジだけだと米が均一に柔らかくなり、ソカラットの楽しさが戻りにくいです。

この料理の背景、バレンシアの米と日曜の火

バレンシアは、スペインの中でも米作りと深く結びついた地域です。アルブフェラ湖周辺の湿地帯では米作が発達し、農作業の合間に手に入る鶏、うさぎ、豆、野菜を浅い鍋で炊いた料理が、いまのパエリアにつながったと説明されます。The Spruce Eatsなど英語圏の解説でも、19世紀半ばのバレンシア周辺で現在の形が広がったと整理されています。

屋外で大鍋を使って作るパエリア
屋外の火で作るパエリアは、鍋全体へ熱を回しやすい

おもしろいのは、パエリアが「何でも入れる料理」として世界へ広がった一方で、バレンシアでは材料の線引きがかなり強く意識されていることです。The Independentが紹介したバレンシアの研究でも、伝統的なパエリア・バレンシアーナの要素として、魚介やチョリソではなく、鶏、うさぎ、豆、米、オリーブオイル、トマト、サフランなどが挙げられています。

とはいえ、家庭料理はいつも少し柔らかいものです。日本でうさぎ肉を探すのは簡単ではありません。ガロフォン豆も常備食材ではありません。だから本記事では、材料の名前だけを守るのではなく、バレンシア式の考え方を残すことを優先します。肉を焼いてだしを作る。浅い鍋で米を炊く。米を混ぜない。最後に鍋底を焼く。この流れが残れば、食卓に近いパエリアになります。

パエリアは鍋ごと出す料理です。大皿に移すと、せっかくの米の層と鍋底の香ばしさが崩れます。食卓の真ん中に鍋を置き、端から取り分ける。誰かが「底のところ、少しください」と言い出したら成功です。

情報アービトラージのポイント

日本語では「魚介パエリア」が入口になりがちですが、英語・スペイン語圏のバレンシア式解説では、鶏とうさぎ、豆、浅鍋、ソカラット、混ぜない炊き方が中心です。家庭で再現するときも、具材の豪華さより、米を薄く炊く技術を押さえるほうが現地の考え方に近づきます。

よくある質問

完成したパエリア・バレンシアーナ
パエリアは炊き上がりを休ませてから、鍋ごと食卓に出す

パエリアにチョリソを入れてもいいですか?

入れても料理としてはおいしくなりますが、バレンシア式パエリアとは別物になります。チョリソの燻製香と脂が強いため、鶏、うさぎ、豆、サフランの軽さが隠れます。スペイン風の家庭米料理として楽しむならあり、バレンシア式を覚える初回は入れないのがおすすめです。

サフランの代わりにターメリックで作れますか?

色は近づきますが、香りは変わります。サフランは少量でも花のような香りと余韻を出します。ターメリックは土っぽい香りがあり、入れすぎるとカレー寄りになります。代用するなら耳かき1〜2杯程度に抑え、色付け目的と割り切ってください。

米を途中で混ぜてはいけない理由は?

混ぜると米の表面のでんぷんが出て、リゾットのような粘りが出ます。パエリアは米粒をスープで炊き、最後に水分を飛ばして底を焼く料理です。米を入れた直後に一度広げたら、あとは鍋を回して火の当たりを調整します。

うさぎ肉なしでも本格感は出ますか?

出せます。うさぎ肉は淡白で骨からうまみが出ますが、日本では入手しにくい材料です。骨付き鶏もも肉や手羽元を増やし、濃い焼き色をつければ家庭版として十分です。現地材料の完全再現より、浅鍋で米を混ぜずに炊くほうが仕上がりに大きく影響します。

パエリア鍋がなくても作れますか?

作れます。直径28〜30cmの浅いフライパンを使ってください。深い鍋や炊飯器では水分の飛び方が違うため、ソカラットができにくくなります。IHの場合は火力の立ち上がりが穏やかなことがあるので、最後の焼き時間を少し長めに取り、焦げ臭くなる前に止めます。

参考文献

  • パエリア
  • スペイン料理
  • バレンシア料理
  • 米料理
  • サフラン
  • ソカラット
  • 作り方
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