サフランで黄色く仕上げたイタリアのリゾット・アッラ・ミラネーゼ
🔪下準備15分
🔥調理25分
🍽️分量4
🌍料理イタリア料理
ヨーロッパレシピ

リゾットの作り方|基本5つのコツ

21分で読めます世界ごはん編集部

リゾットの物語、炊飯ではなく米に味を吸わせる料理

夕方の台所で、玉ねぎを刻む音が小さく続きます。鍋の底でバターが溶け、白い米を入れると、しゃりしゃりと乾いた音が少しだけ高くなる。そこへ白ワインを注ぐと、立ち上がる湯気に酸味と米の甘い香りが混じります。リゾットは、炊飯器のスイッチを押して待つ米料理とは違います。鍋の前に立ち、米がブロードを吸う速度を見ながら、台所の空気ごとゆっくり変えていく料理です。

**リゾット(risotto)**は、イタリア北部を中心に発展した米料理です。日本語では「洋風おじや」と説明されることがありますが、その理解のまま作ると失敗しやすいです。おじやは炊いたご飯を汁で温め直す料理に近く、リゾットは生米を油脂で軽く包み、熱いブロードを少しずつ吸わせ、最後にバターやチーズで乳化させます。米粒の中心に細い芯を残しつつ、周りはとろりと流れる。ここがリゾットらしさです。

リゾット・アッラ・ミラネーゼの完成写真
サフランの色が鮮やかなリゾット・アッラ・ミラネーゼ。画像: Tamorlan, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons

リゾットを家庭で作るときの失敗は、だいたい5つに集まります。米を洗ってしまう。冷たいスープを足して火が止まる。混ぜすぎて粘りだけが出る。早く水分を飛ばして芯が硬いままになる。仕上げのバターとチーズを火にかけたまま入れて、油っぽく分離する。この5つを避ければ、特別な鍋や高級食材がなくてもかなり近づきます。

La Cucina Italianaは、リゾットの仕上げに欠かせない**mantecare(マンテカーレ)**を、火から外した鍋に冷たいバターやチーズを加えて、米のでんぷんと脂肪をなめらかに結びつける技法として説明しています。さらに、**risotto all'onda(リゾット・アッロンダ)**は、皿に盛ったときに硬く山にならず、波のようにゆっくり広がる状態を指します。日本語のレシピでは「最後にチーズを混ぜる」で終わりがちですが、英語圏・イタリア語圏の解説を読むと、この最後の乳化こそが料理の中心だとわかります。

本記事では、具材を増やす前の「白い基本リゾット」を作ります。具なしでは寂しいと思うかもしれませんが、最初に基本を覚えると、きのこ、サフラン、魚介、春野菜、残りスープへの展開が一気に楽になります。パエリア・バレンシアーナが「米を入れたら混ぜない」料理なら、リゾットは「米の表面のでんぷんをほどよく引き出す」料理。同じ米料理でも、鍋の中でしていることは正反対です。

本記事の方針

イタリア北部の基本技法を軸にしつつ、日本のスーパーで揃えやすい材料へ寄せます。米はカルナローリやアルボリオが理想ですが、初回は日本の無洗米ではない普通の米でも練習できます。ただし、米を洗わない、熱いブロードを使う、仕上げは火を止める。この3点は守ります。

4人分

材料(4人分)日本の台所で揃える

リゾットの材料は少ないです。米、玉ねぎ、油脂、白ワイン、ブロード、チーズ、バター。だからこそ、どれか一つを雑に扱うと味に出ます。とはいえ、全部をイタリア食材で揃える必要はありません。最初に買う価値があるのは、米とチーズです。米は粒の形とでんぷんの出方が仕上がりを決め、チーズは最後の香りと塩味を決めます。

ポルチーニ茸のリゾット
ポルチーニ茸のリゾット。基本を覚えると、きのこリゾットにも展開しやすい。画像: Number55, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons
材料 分量 代替・備考
リゾット米(カルナローリまたはアルボリオ) 320 g 日本米なら洗わずに使用。無洗米は表面でんぷんが少なく不向き
玉ねぎ 80 g みじん切り。長ねぎ白い部分60 gでも代用可
無塩バター 50 g 炒め用20 g、仕上げ用30 g。オリーブオイル併用可
オリーブオイル 大さじ1 米の表面を均一に温める補助
白ワイン 100 ml 辛口。酒大さじ3+水大さじ3+レモン汁小さじ1でも代用可
温かいブロード 1000 ml チキン、野菜、昆布薄だし。必ず熱い状態で使う
パルミジャーノ・レッジャーノ 50 g グラナパダーノ、粉チーズ30 gでも可。乳アレルギーなら後述
小さじ1/2 ブロードとチーズの塩分で調整
白こしょう 少々 黒こしょうでも可
仕上げ用オリーブオイル 小さじ2 任意。乳製品を控える場合に便利
アレルギーと塩分

このレシピは**乳製品(バター、チーズ)アルコール(白ワイン)**を使います。ワインは加熱で香りを残してアルコールを飛ばしますが、完全なゼロとは言い切れません。子どもやアルコールを避けたい方には、ワインの代わりに水とレモン汁を使ってください。市販ブイヨンは塩分が強いものが多いので、最初の塩は控えめにします。

ブロードの作り方

手軽に作るなら、水1000 mlに顆粒チキンブイヨン小さじ2を溶かし、沸騰直前で保温します。やさしい味にしたい日は、水1000 mlに昆布5 gを30分浸し、弱火で温めた昆布だしでも作れます。リゾットは水分が煮詰まるため、ブロードは「そのまま飲むと少し薄い」くらいが扱いやすいです。

リゾット米は一袋あると、基本リゾットだけでなく、きのこ、サフラン、トマト、チーズ、余った煮込みの再利用まで広く使えます。日本米でも練習できますが、米粒の崩れにくさを比べると違いがわかります。

チーズは、最後のマンテカーレで香りと塩味を支える材料です。粉チーズでも作れますが、削りたてのパルミジャーノやグラナパダーノを使うと、少量でも輪郭が出ます。

パルミジャーノ レッジャーノ

白ワインは高いものを使う必要はありません。甘口ではなく、飲んで酸味があり、香りが軽い辛口を選びます。冷蔵庫に日本酒しかない場合は、少量のレモン汁を足すと酸の役割を補えます。

📊 栄養情報(1人分)
490
kcal
13.0g
タンパク質
18.0g
脂質
63.0g
炭水化物
2.0g
食物繊維
1050mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

作り方、ブロードを少しずつ吸わせる

リゾットは「ずっと混ぜ続ける料理」と言われますが、実際にはつきっきりで激しく混ぜる必要はありません。大切なのは、米が鍋底に張りつかない程度に動かし、ブロードがほぼ吸われたら次を足すことです。鍋の中の水分が多すぎると米は泳ぎ、少なすぎると芯だけが残ります。音、湯気、米の表面を見ながら進めます。

オッソブーコを添えたミラノ風リゾット
リゾットは米粒を残しつつ、皿の上でゆるく広がる状態を目指す。画像: pier, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
1. **ブロードを温める(5分)**

鍋にブロード1000mlを入れ、沸騰直前の熱い状態を保つ。ぐらぐら沸かし続けると塩分が濃くなるため、弱火で湯気が立つ程度にする。冷たいブロードを足すと米の加熱が止まり、芯が硬く残りやすい。

リゾット・アッラ・ミラネーゼ
ブロードは熱い状態で横に置いておく。画像: Number55, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons
  1. 玉ねぎを透き通るまで炒める(4分)
    厚手の鍋にバター20g、オリーブオイル大さじ1、玉ねぎ80gを入れ、弱めの中火で4分炒める。焦がすと甘みより苦みが出るため、色をつけない。玉ねぎが透き通り、香りが丸くなれば次へ進む。
サフランリゾットの完成写真
玉ねぎは焦がさず、リゾットの甘い土台にする
  1. 米を洗わずに加えてトスタトゥーラする(2分)
    米320gを洗わずに鍋へ入れ、中火で2分ほど炒める。米粒の表面が熱くなり、木べらで混ぜると軽く乾いた音がするのが目安。米を透明にする必要はない。焦げ色がつく前に止める。
黄色いリゾットを皿に広げた写真
米は洗わず、表面のでんぷんを残して使う
  1. 白ワインを吸わせる(2分)
    白ワイン100mlを一気に注ぎ、中火で混ぜる。アルコールの鋭い香りが消え、鍋底の水分がほぼなくなるまで2分ほど加熱する。ここで水分を飛ばしきらないと、仕上がりにワインの生っぽさが残る。
リゾット・アッラ・ミラネーゼの皿
白ワインは米に酸味と香りを入れ、余分なアルコールを飛ばす
  1. ブロードを足しながら炊く(16〜18分)
    熱いブロードをお玉1杯(約150ml)加え、米が軽く顔を出すまで中火で煮る。水分が減ったら次のお玉を足す。これを16〜18分繰り返す。途中で混ぜすぎず、鍋底をなでる程度にする。米を噛み、中心に細い芯が残る状態を目指す。
パルメザンの飾りを添えたリゾット
ブロードは一度に全部入れず、米が吸う速度に合わせて足す
  1. 火を止めてマンテカーレする(2分)
    米がアルデンテになったら火を止め、冷たいバター30g、削ったチーズ50gを加える。木べらで強く練るより、鍋を前後にゆすり、米が波のように返る状態を作る。固ければ熱いブロードを大さじ2ずつ足す。
ミラノ風リゾットのなめらかな表面
火を止めてからバターとチーズを加えると、分離しにくい
  1. 1分休ませて皿に流す(1分)
    ふたをせず1分休ませ、皿を軽く傾けるように盛る。リゾットがゆっくり広がり、周囲に水がにじまなければ成功。山のように固い場合はブロード不足、汁が流れる場合は水分過多。熱いうちにすぐ食べる。
オッソブーコとリゾットの盛り付け
盛り付け後も米は余熱で進むため、すぐ食卓へ出す
途中で味見する場所

ブロードを3〜4回足したあたりで、米を1粒噛んでください。外側はやわらかく、中心に白い点が見えるなら順調です。最後の2分は一気に火が入るため、ここからは30秒ごとに確認すると失敗が減ります。

リゾットは鍋の厚みでも変わります。薄いフライパンでは水分が早く飛び、底が焦げやすいです。深すぎる寸胴鍋では表面積が足りず、米が均一に煮えにくくなります。家にある道具なら、直径24〜26cmの厚手の浅鍋か、少し深さのあるフライパンが扱いやすいです。

浅い鍋は、米の層を広げて火を入れやすく、最後のアッロンダの動きも作りやすいです。パエリア鍋ほど広くなくてよいので、厚手のソテーパンが一つあるとリゾット以外にも使い回せます。

調理のコツ、米を洗わない理由と火加減

リゾットで最初に戸惑うのは「米を洗わない」ことです。日本の米料理では洗うのが当たり前なので、抵抗があるかもしれません。けれど、リゾットのクリーミーさは米の表面のでんぷんを使います。Food Referenceのリゾット調理ルールでも、米を洗うとクリーミーさのもとになるでんぷんが落ちるため、洗わないことが基本だと説明されています。

ポルチーニのリゾットを盛った皿
米の表面のでんぷんを残すことで、クリームを入れなくてもとろみが出る
米は「汚れ」ではなく「でんぷん」を使う

気になる場合は、リゾット米を密閉袋に入れ、冷蔵庫で保管しておくとにおい移りを防げます。どうしても洗いたい場合は、リゾットではなく炊き込みピラフ寄りの料理として考えたほうが仕上がりに納得できます。

ブロードは熱く、でも濃すぎない

冷たいブロードを足すと鍋の温度が落ち、米の中心だけ硬く残ります。逆に、濃いブイヨンを煮詰めながら足すと、最後に塩辛くなります。市販ブイヨンを使う日は、パッケージの表示より少し薄めに作り、仕上げのチーズで塩味を決めます。

混ぜる回数は「焦げない程度」

絶えず強く混ぜると、米粒が傷み、粘りだけが出ます。かといって放置すると鍋底が焦げます。お玉を足した直後に全体を混ぜ、あとは30〜40秒に一度、鍋底をなでる。家庭の火力ならこのくらいが扱いやすいです。

アルデンテは芯が硬いことではない

アルデンテは「生っぽい芯」ではありません。噛むと外側はやわらかく、中心に小さな抵抗がある状態です。白い芯が太く残るなら火入れ不足、粒が割れているなら加熱しすぎです。

仕上げは必ず火を止める

La Cucina Italianaのmantecare解説でも、鍋を火から外し、冷たいバターとチーズを加えることが大切だとされています。火にかけたままチーズを入れると、香りが飛び、油が浮きやすくなります。最後の2分は「煮る」時間ではなく「つなぐ」時間です。

日本の家庭で作るなら、米はカルナローリが最も失敗しにくいです。アルボリオは入手しやすい一方、火が入ると外側がやわらかくなりやすく、混ぜすぎると粒が崩れることがあります。日本米で作る場合は、粘りが出やすいので、混ぜる回数を減らし、ブロードを少し控えめに始めます。無洗米は便利ですが、表面のでんぷんが少なく、リゾットの乳化にはやや不利です。

また、リゾットは作り置きに向かない料理です。皿に盛ってからも米は余熱で水分を吸います。10分置くと、あの波のようなゆるさは失われます。家族の帰宅時間がずれる日は、後述の「8割炊き」方式にすると、最後だけ温め直して仕上げられます。

アレンジ・バリエーション

基本リゾットは、具のない地味な料理ではありません。むしろ、いろいろな食材を受け止める土台です。ここで覚えた流れを崩さず、具材の加えるタイミングだけ変えれば、季節のリゾットに展開できます。

ポルチーニ茸のリゾットのアップ
基本の作り方を覚えると、きのこ、サフラン、春野菜へ展開できる

きのこリゾット

しめじ100g、舞茸100g、エリンギ1本を別のフライパンで強めの中火で焼き、最後の5分でリゾットに加えます。きのこは最初から入れると水分が出て米の火入れが読みにくくなります。乾燥ポルチーニ10gをぬるま湯200mlで戻し、戻し汁をブロードの一部にすると、少量でも香りが出ます。

ミラノ風リゾット

La Cucina Italianaのリゾット・アッラ・ミラネーゼでは、米、サフラン、ブロード、ワイン、バター、パルミジャーノが基本です。家庭版では、サフランひとつまみをブロード大さじ3に10分浸し、炊き始めから8分後に加えます。サフランは高価ですが、色と香りが強いため少量で十分です。

春野菜のリゾット

アスパラガス、グリーンピース、菜の花は、別ゆでして最後の3分で加えます。最初から入れると色が悪くなり、米が炊ける前に野菜がくたびれます。仕上げにレモンの皮を少し削ると、チーズの重さが軽くなります。

乳製品を控えるリゾット

バターをオリーブオイルに置き換え、チーズは入れず、仕上げに白味噌小さじ1/2を熱いブロード大さじ2で溶いて加えます。イタリア料理としては変化球ですが、日本の台所で乳製品を避けたいときには、うまみと塩味の補助になります。味噌を入れすぎると完全に和風になるため、あくまで少量にします。

残りスープで作るリゾット

グヤーシュファソラーダの残り汁を薄め、ブロードとして使うと、別の日の昼食になります。ただし、具が多いスープは焦げやすいので、ざるでこし、液体だけを温めて使います。濃い味のスープは水で薄め、仕上げのチーズを減らします。

パエリアとの違いを食べ比べる

パエリア・バレンシアーナを作ったことがある人は、同じ短粒米でも考え方が逆だと気づきます。パエリアは米粒を崩さず、鍋底を焼き、ソカラットを作ります。リゾットは米のでんぷんを少し引き出し、バターとチーズで流れる質感を作ります。米料理の幅を知るには、この2つを作り比べるのがいちばん早いです。

保存と温め直し、作り置きするなら8割で止める

リゾットは完成した瞬間がいちばんおいしい料理です。けれど、平日の夕食では「あと10分で帰る」が15分、20分に伸びることもあります。そんな日は、完成品を保温するより、8割まで炊いて止めるほうが食感を守れます。

ミラノ風リゾットとオッソブーコ
作り置きするなら完成品ではなく、8割炊きで冷ます

Serious Eatsは、レストランの仕込みとして、リゾットを途中まで炊いて薄く広げて冷まし、提供前に少量の水分で仕上げる方法を紹介しています。家庭でも同じ考え方が使えます。米がまだ少し硬い、全体の75〜80%くらいのところで火を止め、バットに薄く広げて湯気を逃がします。冷めたら冷蔵し、食べる直前に鍋へ戻して熱いブロードを足し、3〜5分で仕上げます。

完成したリゾットを保存する場合は、粗熱を取り、清潔な容器で冷蔵し、翌日までに食べ切ります。温め直しは電子レンジだけだと固まりやすいため、鍋に移し、ブロードまたは水を大さじ3〜5加えて弱火でほぐします。最後に少量のバターかオリーブオイルを加えると、少しなめらかさが戻ります。

余ったリゾットは、無理に元通りにしようとしないほうがおいしいです。冷えると米が水分を吸い、別の料理に向く状態になります。小さく丸めてチーズを包み、パン粉をつけて揚げ焼きにすれば、シチリア風のアランチーニ風になります。冷蔵庫の片隅で固くなったリゾットが、翌日のつまみに変わるのは少しうれしいところです。

食品安全

米料理は常温に長く置かないでください。調理後は2時間以内を目安に冷蔵し、温め直すときは中心まで熱くします。持ち寄りや弁当にする場合、リゾットのまま保温するより、アランチーニ風に再加熱して持っていくほうが扱いやすいです。

この料理の背景、北イタリアの米とアッロンダ

イタリアと聞くとパスタの印象が強いですが、北イタリアでは米も重要な主食です。ロンバルディア、ピエモンテ、ヴェネト周辺では水田地帯が広がり、カルナローリ、アルボリオ、ヴィアローネ・ナーノなど、リゾット向きの米が育ってきました。Eatalyのサフランリゾット解説でも、ミラノ周辺のロンバルディアでは米が重要な食材であり、リゾット・アッラ・ミラネーゼが象徴的な料理として扱われています。

サフラン色のリゾット
北イタリアのリゾット文化では、米の品種と仕上げの質感が重視される

日本語の家庭レシピでは「生米から作る」「炊いたご飯で簡単」の二方向に分かれがちです。忙しい日に炊いたご飯で作るチーズ雑炊も便利ですが、それはリゾットとは別の料理として楽しむほうがよいです。リゾットの面白さは、生米の表面を油脂で温め、液体を少しずつ吸わせ、米が出すでんぷんでソースを作る点にあります。クリームを入れなくてもクリーミーになるのは、米と脂肪と水分の乳化が起きているからです。

La Cucina Italianaのアッロンダ解説では、リゾットは乾きすぎても水っぽすぎてもいけないとされ、鍋をゆすったときに波のように返る質感が理想とされています。この「波」は、ただの見た目ではありません。米粒が崩れず、でも周囲にソースがある。皿の上で少し広がるが、水分だけが流れない。日本語で言えば「とろみ」ですが、片栗粉のとろみとは違い、米のでんぷんと乳脂肪が作るなめらかさです。

リゾット・アッラ・ミラネーゼには、サフランの黄金色と牛の骨髄を使う伝統があります。La Cucina Italianaの伝統レシピでも、米、サフラン、ブロード、ワイン、バター、チーズが中心です。ただし家庭では骨髄を省き、鶏や野菜のブロードで作っても十分においしいです。本場の名前を借りるなら材料の線引きは大切ですが、基本技法を学ぶ段階では、手に入る材料で「米に味を吸わせ、最後に乳化する」ことを優先します。

この考え方は、世界の米料理を比べるとさらに面白くなります。エジプトのコシャリは米、豆、パスタを重ねる屋台料理で、米粒をソースと混ぜて食べます。フィンランドのカレリアンピーラッカは牛乳粥をライ麦生地に包みます。リゾットは、米そのものをソースに近づける料理です。同じ米でも、文化ごとに「粒を立たせる」「粥にする」「包む」「焼く」の選び方が違います。

よくある質問

Q1. 炊いたご飯でリゾットは作れますか?

作れますが、厳密にはリゾットではなくチーズ雑炊やライスグラタン寄りになります。炊いたご飯はすでに水分を吸っているため、生米からブロードを吸わせる工程がありません。時短したい日は、ご飯を洗ってぬめりを落とし、少量のブロードとチーズで軽く煮ると食べやすいですが、米粒のアルデンテは出ません。

Q2. 日本米で作る場合の注意は?

日本米は粘りが出やすいので、洗わずに使い、混ぜる回数を控えます。ブロードは一度に入れすぎず、米の表面が見えてから足してください。仕上げはチーズを少なめにし、固くなったら水ではなく熱いブロードを少量足すと、味が薄まりにくいです。

Q3. チーズなしでもおいしくできますか?

できます。パルミジャーノの代わりに、仕上げ用オリーブオイル小さじ2と白味噌小さじ1/2を使うと、うまみと丸みを補えます。ただし、イタリア式の香りとは別物になります。乳製品を避ける必要がないなら、少量でもチーズを入れるほうがリゾットらしい仕上がりです。

Q4. ブロードはコンソメで代用できますか?

代用できます。ただし市販コンソメは塩分とうまみが強く、煮詰まると塩辛くなりやすいです。表示より薄めに作り、塩は最後に調整してください。野菜だけのリゾットなら野菜ブロード、きのこリゾットなら乾燥ポルチーニの戻し汁を混ぜると、味が自然にまとまります。

Q5. どのくらい混ぜればいいですか?

鍋底が焦げない程度で十分です。お玉を足した直後に全体を混ぜ、あとは水分が減ってきたら底をなでるように動かします。強く混ぜ続けると米粒が割れ、粘りが重くなります。最後のマンテカーレだけは、火を止めてしっかり乳化させます。

まとめ、リゾットは最後の2分で決まる

リゾットの作り方は、複雑に見えて流れははっきりしています。玉ねぎを焦がさず炒める。米を洗わず温める。白ワインを吸わせる。熱いブロードを少しずつ足す。米がアルデンテになったら火を止め、冷たいバターとチーズでマンテカーレする。この最後の2分で、ただの洋風米料理から、皿の上でゆっくり広がるリゾットに変わります。

最初から具を盛り込みすぎると、米の状態が見えにくくなります。初回は白い基本リゾットで、米の音、水分の減り方、皿に流れる硬さを覚えてください。次にきのこ、サフラン、春野菜へ進むと、失敗の理由がかなり見えるようになります。パエリアとは反対に、リゾットは米のでんぷんを味方にする料理です。鍋の前で少しだけ手をかける時間が、そのまま食卓の香りに返ってきます。

参考文献

  • リゾット
  • イタリア料理
  • 米料理
  • 作り方
  • 基本
  • アルデンテ
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