型を返すと、濃いカラメルが流れ出す
プジン(pudim)は、ブラジルの家庭でよく作られる練乳入りのプリンです。冷蔵庫でしっかり冷えた型を皿に伏せ、少し待ってから持ち上げると、琥珀色のカラメルがゆっくり流れます。日本のなめらかプリンより甘く、卵より練乳の丸い香りが前に出る。食後に小さく切り、濃いコーヒーと並べると、甘さがきちんと締まります。
ブラジルの台所でよく見るのは、pudim de leite condensado、つまり練乳で作るプジンです。卵、牛乳、練乳をブレンダーで回し、カラメルを敷いた中央穴つきの型に流して湯煎焼きにします。材料は少ないのに、日本の台所では失敗の入口が多い料理です。カラメルを焦がしすぎる、泡を残したまま焼く、湯煎の水位が低い、冷やし足りずに崩れる。ここを具体化すると、初回からかなり安定します。
この記事では18cm前後のリング型1台分で作ります。リング型がない場合は、金属のプリンカップや耐熱ココットでも作れます。大事なのは「カラメルを型にしっかり回す」「生地を泡立てすぎない」「湯煎でゆっくり火を入れる」「冷やしてから外す」の四つです。
ポルトガル語の pudim は、広く「プディング」を指す言葉です。日本語ではプジン、プヂン、プディンと表記が揺れます。本記事ではブラジルの練乳プリンとして「プジン」と書き、現地語名として pudim de leite condensado を併記します。
買い出しと道具の考え方

練乳、牛乳、卵、砂糖は近所のスーパーで十分です。商品カードにするほどの材料ではありません。買い出しで差が出るのは、ブラジル式の「液体をブレンダーで一気に均一にする」作業、湯煎の水位を保てる耐熱皿、焼き止めを確認できる温度計です。特に初回は、材料より道具のほうが失敗を減らします。
ブレンダーは、卵と練乳を短時間で均一にするための道具です。泡を増やしすぎないように20秒前後で止めます。
湯煎皿は、型を置いてから湯を半分の高さまで入れられる深さが必要です。浅い天板だけだと水位が足りず、外側だけ早く固まります。
温度計は必須ではありません。ただ、プジンは見た目だけだと焼き止めを迷いやすいので、中心温度を一度測ると次回から揺れ具合で判断しやすくなります。
穴ありと穴なしはどちらが正解か
ブラジルのプジンには、切った断面に細かな穴が入るものと、つるりとなめらかなものがあります。穴は必ずしも失敗ではありません。家族の好み、地域、作る人の癖で評価が分かれます。日本のプリンに慣れていると穴を失敗に見やすいですが、現地の家庭的なプジンでは「furinhos」と呼ばれる穴が好まれることもあります。
| 仕上がり | 向いている調整 | 具体的な操作 |
|---|---|---|
| 穴がある家庭的な食感 | 空気と高めの熱を少し入れる | ブレンダーを30秒回し、180度Cで焼く |
| なめらかな食感 | 泡と熱の勢いを抑える | ブレンダーは20秒、濾して5分休ませ、160〜170度Cで焼く |
| 固い食感 | 焼きすぎ | 中心90度C近くまで上げない |
| 水っぽい食感 | 焼き不足か冷やし不足 | 中心80度C前後まで焼き、4時間以上冷やす |
日本のレシピ検索では「す」が入らないことを正解にしがちですが、ブラジルのプジンではそこまで一枚岩ではありません。穴があるとカラメルが断面に入りやすく、口の中で甘さが早く広がります。なめらかに作ると見た目は上品ですが、練乳の密度が強く出るので、濃いコーヒーと少量で食べる方が向きます。どちらも成立しますが、来客用はなめらか寄り、家でたっぷり食べる日は少し穴あり寄り、と考えると調整しやすいです。
今回のレシピは、日本の台所で切り分けやすいように、ややなめらか寄りにしています。穴を少し出したい場合は、ブレンダーを10秒長く回し、オーブンを180度Cに上げます。その場合も湯煎は省かないでください。湯煎がないと、外側が先に固まり、内側が追いつかずに割れやすくなります。
ブラジルらしさは練乳と型にある
プジンはヨーロッパのフランやクレーム・カラメルと親戚のような料理ですが、ブラジルの家庭版は練乳の存在感が強いです。卵、牛乳、砂糖だけで作るフランより、甘さが丸く、冷やした時にむっちりした密度が出ます。これは「軽いデザート」ではなく、食後に少量を楽しむ濃い菓子です。
中央に穴のある型も、見た目だけでなく火通りに効きます。中心が空いているため熱が回りやすく、大きな一台でも比較的均一に固まります。リング型がない時はプリンカップで小分けにしますが、深いボウルやパウンド型で大きく焼くと中心の焼き止めが難しくなります。
キンジンのような卵黄とココナッツの菓子に比べると、プジンは材料が手に入りやすく、現地らしさを出す難度は低めです。一方で、練乳の甘さを恐れて減らしすぎると、ブラジルのプジンらしい輪郭が消えます。甘いからこそ、無糖のコーヒーや食後の小さな一切れが合います。
食べ方、保存、作り置き

食べる時は、冷蔵庫から出して5分ほど置きます。冷たすぎると練乳の香りが閉じ、甘さだけが強く感じられます。切る時は包丁を湯で温め、水気を拭いてから入れると断面が崩れにくいです。
保存は冷蔵で3日が目安です。皿に外した状態なら、深めの保存容器をかぶせて乾燥を防ぎます。型に入れたままなら、ラップを密着させず、表面に触れないようにふんわりかけます。冷凍は可能ですが、解凍時に水分が出て口当たりが粗くなるので、来客用にはおすすめしません。
献立では、塩気のあるブラジル料理の後に小さく出すと食べやすいです。フェイジョアーダのような豆の煮込み、ムケッカ・バイアーナのような魚介の煮込み、シュラスコの後なら、苦いコーヒーと一緒に締めると甘さが重く残りません。
失敗しやすいところと直し方
| 困った状態 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| カラメルが苦い | 黒く煙が出るまで焦がした | 琥珀色で止め、鍋底が濃くなったらすぐ熱湯を入れる |
| 型から外れない | 冷やし不足、カラメルが厚く固まりすぎた | 4時間以上冷やし、底を50度Cの湯に10秒当てる |
| 断面が大きくすだつ | ブレンダーを長く回した、オーブン温度が高い | 20秒で止め、170度C以下で湯煎焼きにする |
| 中央が流れる | 焼き不足、型が深い | 10分追加し、中心80度C前後か小さな揺れを確認する |
| 表面が割れる | 湯煎の水位が低い、直火のように熱が当たった | 湯を型の半分まで足し、アルミホイルをふんわりかぶせる |
| 甘すぎる | 切り分けが大きい、飲み物が甘い | 8〜10等分に薄く切り、無糖のコーヒーや紅茶を合わせる |
プジンは「甘さ控えめに作る」より「本来の甘さで小さく食べる」方がまとまりやすい菓子です。練乳を減らす前に、切り分けを小さくし、飲み物を無糖にして調整してください。
あわせて作りたいブラジル料理
- キンジンの作り方 - 卵黄とココナッツで作る、もう一つの濃いブラジル菓子です。
- ポン・デ・ケージョの作り方 - 同じブラジルの軽食。ブレンダーを使う台所感が近いです。
- フェイジョアーダの作り方 - 塩気のある豆料理の後に、冷たいプジンがよく合います。
- ムケッカ・バイアーナの作り方 - ココナッツと魚介の香りを楽しんだ後のデザートに向きます。
よくある質問
Q. 練乳を半分にしても作れますか?
固まりますが、ブラジルのプジンらしい濃さと艶は弱くなります。練乳を半分にするなら、砂糖を足して甘さだけを戻すより、別の軽いプリンとして考える方が自然です。初回は練乳1缶で作り、切り分けを小さくしてください。
Q. リング型がありません。プリンカップで作れますか?
作れます。150ml前後の金属プリンカップ6〜8個にカラメルを分け、生地を8分目まで注ぎます。170度Cの湯煎で35〜45分を目安にし、中央が小さく揺れるところで止めます。小型は火が早いので、大きな型と同じ時間で焼かないでください。
Q. 蒸し器で作る場合はどうしますか?
型にアルミホイルをかぶせ、湯気の上がった蒸し器で弱火35〜45分です。湯が強く沸き続けると大きな穴が出やすいので、ふたの端から細い蒸気が出る程度にします。中央が揺れる場合は5分ずつ追加します。
Q. 穴があるプジンは失敗ですか?
失敗とは限りません。ブラジルでは穴のある家庭的なプジンを好む人もいます。なめらかにしたい場合は、ブレンダーを短く、濾してから休ませ、160〜170度Cで湯煎焼きにします。穴を出したい場合は、少し長く回して180度C寄りで焼きます。
Q. いつ型から外すのが一番きれいですか?
冷蔵庫で4時間以上冷やしてからです。温かいうちに返すと本体が柔らかく崩れます。冷えすぎてカラメルが動かない時は、型の底を50度C前後の湯に10秒だけ当て、皿をかぶせて一気に返します。












