厚く焼いたスペインのじゃがいもオムレツ、トルティージャ・デ・パタタス
🔪下準備20分
🔥調理35分
🍽️分量4
🌍料理スペイン料理
ヨーロッパレシピ

トルティージャの作り方|卵5個で本場

24分で読めます世界ごはん編集部

トルティージャの物語、冷めてもおいしいスペインの卵料理

じゃがいもを薄く切っていると、最初は「ただの家庭料理」に見えます。けれど、フライパンにオリーブオイルを入れ、じゃがいもと玉ねぎをゆっくり沈めると、台所の空気が少し変わります。揚げるほど強くはない。炒めるほど乾いてもいない。油の中でじゃがいもが静かにやわらかくなり、玉ねぎの甘い香りが立ってくる。ここで急ぐと、スペインのバルで出てくるあの厚い一切れには近づきません。

トルティージャ・エスパニョーラ(tortilla espanola)、または**トルティージャ・デ・パタタス(tortilla de patatas)**は、卵、じゃがいも、オリーブオイル、塩を軸にしたスペインの定番料理です。日本では「スペイン風オムレツ」と呼ばれることが多いですが、ふわふわのオムレツというより、じゃがいもを卵でまとめた厚焼きに近い食べものです。Spain.infoの公式レシピでも、4人分に中くらいのじゃがいも4個、卵4〜5個、玉ねぎ1個、オリーブオイルを使い、弱火でじっくり火を入れてから返す流れになっています。

厚く焼いたスペインのじゃがいもオムレツ、トルティージャ・デ・パタタス
トルティージャ・デ・パタタス。卵とじゃがいもだけで、冷めてもおいしい一皿になる。画像: Amasuela - Luis Lafuente Agudin, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons

トルティージャの面白さは、材料が少ないのに議論が多いところです。玉ねぎを入れるか、入れないか。中をとろりと残すか、しっかり固めるか。熱々で食べるか、冷ましてパンにはさむか。スペインではこのあたりが、地域差や家庭差だけでなく、かなり真剣な好みの話になります。日本の卵焼きが「甘い派」と「だし派」に分かれるのに少し似ています。

本記事では、日本の家庭で失敗しにくいように、玉ねぎ入り、中心まで火を通す安全寄りで作ります。スペインのバルには、中心がかなりゆるいベタンソス風のようなタイプもありますが、家庭で作るなら卵の扱いを優先したほうが安心です。FDAは卵料理を安全に食べるため、卵の白身と黄身が固まるまで加熱し、卵料理は160°F(約71度C)を目安にするよう案内しています。とろりとした食感を狙う場合も、子ども、妊娠中の方、高齢の方、体調に不安がある方にはしっかり火を通したものを出してください。

パエリア・バレンシアーナが週末の主役なら、トルティージャは平日の台所に近いスペイン料理です。前日に焼いておけば、朝は切るだけ。暑い日はガスパチョを添えれば、火を使う時間を短くしたスペイン風の昼食になります。重い煮込みのコシード・マドリレーニョとは逆に、冷めても味が落ちにくいのがこの料理の強さです。

本記事の方針

スペイン式の基本を残しつつ、日本のスーパーで揃う材料に寄せます。じゃがいもはメークイン寄り、卵はM〜Lサイズ、油はエキストラバージンでなくても作れます。最大の山場は返すところですが、皿を使う方法、ふたを使う方法、小さいフライパンで厚く焼く方法まで書きます。


4人分

材料(4人分)日本のスーパーで揃える

トルティージャは、卵料理である前に、じゃがいもの料理です。卵だけが多いと茶碗蒸しのようにやわらかく、じゃがいもだけが多いと粉っぽくなります。目安は、じゃがいも500〜600 gに卵5 個。ここに玉ねぎを1/2〜1 個入れると甘みが増し、冷めても食べやすくなります。

玉ねぎ入りのトルティージャを切り分けた断面
玉ねぎ入りのトルティージャ。じゃがいもと卵の間に甘みが入るので、日本の家庭では食べやすい。画像: Mentxuwiki, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
材料 分量 代替・備考
じゃがいも 550 g 中4 個。メークイン、とうや、インカのめざめが扱いやすい
5 個 M〜Lサイズ。小さければ6 個
玉ねぎ 1/2 個(100 g) 入れない派なら省略。新玉ねぎなら80 gで十分甘い
オリーブオイル 250 ml じゃがいもを煮るように使う。残った油は再利用可
小さじ1と1/4 じゃがいも用小さじ1、卵用小さじ1/4
黒こしょう 少々 任意。伝統的には入れない家庭も多い
パセリ 少々 仕上げ用。省略可
アレルギーと食品安全

このレシピはを使います。半熟に近いトルティージャはスペインのバルでは人気ですが、家庭では卵を中心まで加熱し、切った後に生の卵液が流れない状態を目安にしてください。余った分は粗熱を取り、清潔な容器で冷蔵し、3日以内を目安に食べ切ります。

じゃがいもの選び方

男爵でも作れますが、崩れやすいので、返すときに断面がざらつきます。メークインのように形が残りやすい品種を使うと、切ったときにじゃがいもの層がきれいに出ます。スペインでは品種名までこだわる店もありますが、日本の家庭では「煮崩れしにくいじゃがいも」を選べば十分です。

油は多い。でも捨てない

初めて作ると、オリーブオイル250 mlに少しひるむかもしれません。けれど、これは全部を食べる油ではありません。じゃがいもを油でゆっくり煮るための油で、最後にしっかり切ります。香りが移った油は、翌日の目玉焼き、パスタ、炒め物に回せます。スペインの家庭でも、トルティージャ後の油は捨てずに使い回します。

油を節約したい場合

直径20cmの小さめフライパンを使うと、油の量を180〜200 mlまで減らせます。ただし、じゃがいも全体が油に触れにくくなるため、途中でこまめに上下を返してください。電子レンジでじゃがいもを先に軽く加熱してから油で仕上げる方法もありますが、香りは少し穏やかになります。

オリーブオイルは、じゃがいもの香りを決める材料です。高級品である必要はありませんが、酸化したにおいのないものを使うと、冷めたときに差が出ます。

スペイン産オリーブオイル

トルティージャは、深すぎない小さめのフライパンで作ると厚みが出ます。直径20cm前後なら4人分がまとまりやすく、返すときも皿を当てやすいです。


📊 栄養情報(1人分)
470
kcal
13.0g
タンパク質
31.5g
脂質
33.0g
炭水化物
3.5g
食物繊維
650mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

作り方、じゃがいもを煮てから卵でまとめる

トルティージャは「じゃがいもを炒めて卵を流す」料理ではありません。じゃがいもを油でゆっくりやわらかくし、卵と混ぜて少し休ませ、最後に一つの厚い塊に焼き固めます。焦げ目をつける料理というより、火の入ったじゃがいもを卵でつなぐ料理です。

トルティージャ用のじゃがいもを油でゆっくり火入れする様子
じゃがいもは強火で揚げず、油の中でゆっくりやわらかくする。画像: Lluisa Nunez, CC BY-SA 2.5, Wikimedia Commons
1. **じゃがいもを切る(8分)**

じゃがいも550gの皮をむき、3〜4mm厚さの半月切りにする。厚すぎると火が入る前に外側だけ崩れ、薄すぎると卵と混ぜたときに形がなくなる。切った後は水にさらさず、表面のでんぷんを残す。

厚めに焼いたトルティージャの完成写真
じゃがいもは薄すぎず厚すぎず。層が残る厚さに切ると、断面がきれいになる。画像: Lluisa Nunez, CC BY-SA 2.5, Wikimedia Commons
  1. 玉ねぎを切る(3分)
    玉ねぎ100gを薄切りにする。甘さを前に出したいなら繊維に沿って薄切り、存在感を消したいならみじん切りにする。玉ねぎなしで作る場合は、この工程を飛ばし、塩をほんの少し控える。
玉ねぎ入りのスペイン風オムレツ
玉ねぎを入れると甘みが増し、冷めたときも食べやすい
  1. 油でじゃがいもを煮る(15〜18分)
    フライパンにオリーブオイル250mlを入れ、中火で温める。じゃがいもと玉ねぎを入れ、塩小さじ1をふる。油が静かに泡立つくらいに火を弱め、木べらで時々返しながら15〜18分火を入れる。じゃがいもがへらで軽く割れるほどやわらかくなればよい。
フライパンでじゃがいもを油煮している工程
強く揚げ色をつけず、油で煮るように火を通す
  1. 油を切って5分冷ます(5分)
    ざるをボウルに重ね、じゃがいもと玉ねぎを移して油を切る。油は捨てず、清潔な瓶や耐熱容器に取っておく。じゃがいもが熱すぎると卵が一気に固まるため、湯気が少し落ち着くまで5分待つ。
トルティージャの丸い形と厚み
じゃがいもを崩しすぎないと、焼き上がりに厚みが出る。画像: Retama, Wikimedia Commons
  1. 卵と混ぜて休ませる(10分)
    大きめのボウルに卵5個を割り、塩小さじ1/4を加えて軽くほぐす。泡立てすぎず、白身の大きな筋が切れる程度で止める。油を切ったじゃがいもを加え、やさしく混ぜて10分置く。卵がじゃがいものすき間に入り、焼いたときにまとまりやすくなる。
皿に盛ったトルティージャ・エスパニョーラ
卵とじゃがいもを混ぜて少し休ませると、中心までまとまりやすい。画像: Wikimedia Commons
  1. 片面を焼く(5〜7分)
    直径20cmのフライパンに、取っておいた油を大さじ1入れて中火で温める。卵液を一気に流し、外側が固まり始めたら弱火にする。へらで縁を内側に寄せながら5〜7分焼く。底が固まり、表面はまだ少しゆるい状態で返す準備をする。
厚く焼いたトルティージャの断面
片面は弱火でじっくり。焦げ色より、中心まで熱を入れることを優先する。画像: Dalonsojimenez, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
  1. 皿を使って返す(1分)
    フライパンより少し大きい平皿をかぶせ、片手で皿を押さえ、もう片手でフライパンの柄を持つ。流し台の上で一気に返し、皿にのったトルティージャをフライパンへ滑らせて戻す。怖い場合は、いったん火を止め、濡れ布巾の上で落ち着いて返す。
切り分けたトルティージャの一切れ
返す工程は流し台の上で行うと、失敗しても片付けやすい
  1. 反対面を焼いて休ませる(4〜6分)
    反対面を弱火で4〜6分焼く。中心まで火を通したい場合は、ふたをしてさらに2分置く。竹串を刺して生の卵液がつかなければ焼き上がり。皿に移し、5〜10分休ませてから切る。熱々より少し落ち着いたほうが、形がきれいに出る。
丸ごとのトルティージャを切り分ける前の状態
焼き上がりを少し休ませると、切ったときに崩れにくい
返すのが怖いときの逃げ道

返しに自信がない日は、直径18cmの小さいフライパンで厚く焼き、最後にふたをして弱火で中心まで火を入れます。焼き色の美しさは少し落ちますが、形は安定します。オーブン対応のフライパンなら、片面を焼いた後に180度のオーブンで8〜10分仕上げてもかまいません。

中心温度を見たい場合は、細い調理用温度計があると安心です。半熟を狙う料理ではありませんが、卵料理を弁当や持ち寄りにするなら、感覚だけで判断しないほうが安定します。


調理のコツ、玉ねぎ論争と返し方の現実

トルティージャでよく話題になるのが、玉ねぎを入れるかどうかです。Spain.infoの公式レシピは玉ねぎ入りですが、スペインでは玉ねぎなしを好む人も少なくありません。The Guardianのスペイン風オムレツ解説でも、この論争はかなり強い好みの話として扱われています。日本の家庭で初めて作るなら、玉ねぎ入りをおすすめします。甘みが出て、じゃがいもの粉っぽさがやわらぎ、冷めたときに食べやすいからです。

厚焼きのトルティージャを切り分けた写真
トルティージャは材料が少ないぶん、火加減と休ませ方で仕上がりが大きく変わる
じゃがいもは「揚げ色」より「やわらかさ」

ポテトチップスのようにカリッとさせる必要はありません。じゃがいもが油の中でほろっと割れる状態まで火を入れると、卵と混ぜたときにまとまりが出ます。焼き色を追うと、外だけ硬くなり、切ったときに層がばらけます。

卵は泡立てすぎない

ふわふわにしたくて強く泡立てると、焼いた後に気泡が抜けてしぼみやすくなります。白身と黄身がざっくり混ざる程度で十分です。トルティージャの厚みは泡ではなく、じゃがいもの量で作ります。

混ぜてから10分置く

Spain.infoの手順では、卵にじゃがいもと玉ねぎを加えてから焼きます。このとき、すぐ焼くより少し置いたほうが、じゃがいもが卵を抱き込み、中心に卵だけの空洞ができにくくなります。熱いじゃがいもを入れるので、卵が少しとろりと温まるのも利点です。

フライパンは大きすぎない

26cmのフライパンで4人分を焼くと、薄い卵焼きのようになります。厚みを出すなら20cm前後が扱いやすいです。小さいフライパンほど返すのは怖くありません。皿も小さくて済みます。

切る前に休ませる

焼きたてをすぐ切ると、熱い卵とじゃがいもが動き、断面が崩れやすいです。5〜10分休ませると、余熱で中心が落ち着き、包丁を入れたときに層が残ります。バルのように常温で出すなら、20分ほど置いてもおいしいです。

半熟に近いトルティージャは魅力的ですが、日本の家庭で毎回同じ火入れにするのは簡単ではありません。とくに卵のサイズ、フライパンの厚み、じゃがいもの温度で中心の状態が変わります。冷たいまま弁当に入れる、翌日に食べる、子どもに出す場合は、中心まで固まったタイプに寄せてください。

保存用の容器は、深いものより浅いものが便利です。厚いまま熱を閉じ込めると冷めるのに時間がかかります。切ってから保存する場合は、断面が乾きやすいので、ラップを密着させてからふたをします。


食べ方と献立、朝食にもタパスにもなる

トルティージャは、焼きたてだけが正解ではありません。むしろ、冷めてもおいしいことが大きな魅力です。スペインでは、バーで小さく切った一切れをつまみにしたり、パンにはさんでボカディージョ・デ・トルティージャにしたりします。Spain.infoのタパス紹介でも、トルティージャは飲み物と一緒に頼む定番の一つとして扱われています。

丸いトルティージャを一切れずつ切り分けた皿
トルティージャは熱々、常温、冷蔵後のどれでも食べ方がある

ガスパチョと合わせる夏の昼食

暑い日は、ガスパチョを小さなグラスで出し、トルティージャを常温で添えます。ガスパチョの酸味と冷たさが、卵とじゃがいもの重さを切ってくれます。前日にトルティージャを焼き、当日はガスパチョを撹拌するだけにすると、昼の台所がかなり楽になります。

パエリアの日の前菜にする

パエリア・バレンシアーナを主役にする日は、トルティージャを小さな角切りにして、つまみとして先に出します。米が炊けるまでの待ち時間に、冷たい白ワインや炭酸水と合わせると、食卓がだらっと待ち時間になりません。ただし、パエリアもトルティージャも炭水化物があるので、量は小さめで十分です。

コシードの翌日に回す

コシード・マドリレーニョのような煮込みを作った翌日は、台所が少し疲れています。そんな日に、残りの野菜とトルティージャで簡単なプレートを作ると、スペイン料理の重さと軽さがつながります。トルティージャは電子レンジで温め直してもよいですが、常温に戻して食べるほうが卵の香りが穏やかです。

パンにはさんで弁当にする

バゲットやロールパンを横に切り、トルティージャをはさむだけで、スペインの定番サンドになります。パンには、にんにくをこすりつけたトマト、オリーブオイル少量、塩を合わせると、パン・コン・トマテ風になります。弁当にする場合は、トルティージャをしっかり火入れし、冷ましてからはさんでください。

サラダで軽くする

ルッコラ、レタス、トマト、オリーブ、ツナを合わせたサラダに一切れ添えると、卵とじゃがいもだけでは足りない酸味と水分が入ります。ドレッシングは、オリーブオイル、酢、塩だけで十分です。トルティージャ自体に塩味があるので、サラダは薄めにします。


アレンジ・バリエーション

基本は卵、じゃがいも、油、塩です。そこへ玉ねぎを入れるかどうかで、すでに一つの分岐があります。慣れてきたら、季節の野菜や残りものを少し足せます。ただし、具を増やしすぎると、トルティージャではなく具だくさんのフリッタータに近づきます。最初は一つだけ足すくらいがちょうどいいです。

ピーマンと玉ねぎを加えたトルティージャのバリエーション
ピーマン入りのトルティージャ。基本を覚えると、野菜入りにも展開しやすい。画像: PEPE GADEIRAS, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons

玉ねぎなしのクラシック寄り

玉ねぎを抜き、じゃがいもを600gに増やします。塩は小さじ1と1/4のままで、卵は5〜6個。甘みが減るぶん、じゃがいもの香りと油の質が前に出ます。スペインの「玉ねぎなし派」に寄せるなら、この形です。冷めたときに少し素朴になるので、パンにはさむより、温かいうちに食べるほうが向いています。

ピーマン入り

ピーマン1個を細切りにし、玉ねぎと一緒に油で火を入れます。香りが強いので、入れすぎるとピーマンの卵焼きになります。少量なら、じゃがいもの甘みと青い香りのバランスがよく、夏の昼食に合います。

ツナ入り

油を切ったツナ缶1/2缶を、卵とじゃがいもを混ぜる段階で加えます。魚のうまみが入り、弁当向きになります。ツナは塩分があるので、卵に入れる塩を少し控えます。冷めても味がはっきりする一方、スペインの基本からは少し離れます。

チーズ入り

ピザ用チーズ40gを卵液に混ぜます。子どもには食べやすいですが、冷めると少し重くなります。スペインのバルのトルティージャというより、家庭のアレンジです。チーズを入れる場合は、オリーブオイルの香りが弱くなるので、仕上げのパセリや黒こしょうで輪郭を足します。

電子レンジ併用の時短版

切ったじゃがいもと玉ねぎを耐熱ボウルに入れ、オリーブオイル大さじ2と塩を絡め、ふんわりラップをして600Wで6〜7分加熱します。その後、フライパンで軽く油をまとわせ、卵と混ぜて焼きます。油の香りは弱くなりますが、平日の夕食には現実的です。

小さく焼くピンチョス版

卵液を半量に分け、直径16cmのフライパンで2枚焼きます。冷ましてから小さな角切りにし、楊枝を刺せば、タパス風のピンチョスになります。持ち寄りにするなら、中心までしっかり火を通し、冷蔵したものを保冷して運んでください。


保存と温め直し、弁当に入れるならしっかり火入れ

トルティージャは作り置きに向く料理です。ただし、卵料理なので保存の扱いは雑にしないほうがいいです。FDAは、調理済みの卵料理を室温に2時間以上置かないこと、暑い環境では1時間以内に冷蔵することを案内しています。日本の夏の台所では、この「暑い環境」がかなり現実的です。

冷めても切り分けやすい厚焼きトルティージャ
トルティージャは冷めてもおいしいが、卵料理として冷蔵管理する

焼き上がったら、皿の上で10〜20分ほど粗熱を取り、切り分けるか丸ごとのまま保存容器に入れます。熱いままふたをすると水滴が落ち、表面がべたつきます。冷蔵で3日以内を目安にし、食べる分だけ取り出してください。冷凍もできますが、じゃがいもの食感が少しもそっとします。おすすめは冷蔵までです。

温め直すなら、電子レンジで短く温めるか、フライパンで弱火にかけます。電子レンジは中心が熱くなりすぎると卵が硬くなるので、600Wで30秒ずつ様子を見ます。フライパンなら、ふたをして弱火で片面2分ずつ。表面が少し香ばしく戻ります。

持ち寄りにする場合は、前夜に焼いて冷蔵し、当日は保冷バッグに入れて運びます。現地で常温に戻してから切ると、冷蔵庫から出したてより卵の香りが立ちます。ただし、屋外で長く並べる料理には向きません。少量ずつ皿に出し、残りは冷蔵または保冷したままにするほうが安心です。

弁当に入れる場合は、半熟にしないこと。中心まで固めに焼き、完全に冷ましてから詰めます。水分の多いトマトやガスパチョとは同じ容器に入れず、サラダを添えるなら別容器にしてください。朝に焼くより、前夜に焼いて冷蔵し、朝は切って詰めるほうが安全面でも作業面でも楽です。

半熟を持ち歩かない

スペインのバルで人気のとろりとしたトルティージャは、その場で食べる前提です。弁当、ピクニック、持ち寄りでは、中心まで火を通したタイプにしてください。卵料理を常温で長く置くと、味の問題だけでなく食品安全のリスクが上がります。


この料理の背景、1798年説とスペインの家庭料理

トルティージャ・デ・パタタスは、スペイン料理の象徴のように見えますが、じゃがいもがヨーロッパに広く食べられるようになった後の料理です。Spain.infoの「伝統料理の起源」では、トルティージャ・デ・パタタスが1798年にバダホス県ビリャヌエバ・デ・ラ・セレナで言及されたとする研究に触れ、Joseph de TenaとMarquis of Robledoが安く簡単に飢えをしのぐために作った料理として紹介しています。

スペインのバルで出るような厚いトルティージャ
安い材料で腹持ちをよくする知恵が、スペインを代表する料理になった

卵とじゃがいもという組み合わせは、ぜいたくではありません。むしろ、少ない材料で満足感を出すための知恵です。だからこそ、家庭の台所、バルのカウンター、ピクニック、サンドイッチ、夜食まで広がりました。The Spruce Eatsも、スペインのトルティージャを温かくも冷たくも食べられ、タパス、主菜、持ち運びやすい軽食、ボカディージョの具として使われる料理として紹介しています。

日本語のレシピでは「オムレツ」として紹介されることが多く、卵のふわふわ感に注目しがちです。けれど、英語圏やスペインのレシピを読むと、中心にあるのはじゃがいもの火入れと、油の使い方です。Spain.infoの手順でも、じゃがいもと玉ねぎを中温のオリーブオイルでゆっくり火入れし、10分ほどで油を切り、卵と合わせてから低火力で焼きます。ここを急ぐと、外は焦げて中は生っぽい、厚いだけの卵焼きになります。

玉ねぎ論争も、この料理が日常に根づいている証拠です。高級料理なら、正解は料理人が決めます。けれど、トルティージャは家庭料理なので、母親の味、近所のバルの味、遠足で食べた味がそれぞれの正解になります。本記事で玉ねぎ入りにしたのは、スペインで唯一の正解だからではありません。日本の台所で、冷めてもおいしく、失敗しにくく、買い出しもしやすいからです。

そしてもう一つ、現代の家庭で大切なのは食品安全です。スペインの専門家や食品安全の記事でも、とろとろのトルティージャをめぐるリスクはたびたび話題になります。日本で家庭向けに作るなら、SNS映えする液状の中心を追うより、ちゃんと切れて、翌日も安心して食べられる状態を基準にしたいところです。卵とじゃがいもの素朴な料理だからこそ、火入れだけは丁寧にいきましょう。


よくある質問

トルティージャの一切れを皿に盛った写真
よくある失敗は、じゃがいもの火入れ不足、卵の混ぜすぎ、大きすぎるフライパンに集まる

Q1. トルティージャは玉ねぎありとなし、どちらが本場ですか?

どちらもあります。Spain.infoの公式レシピは玉ねぎ入りですが、スペインには玉ねぎなしを好む人も多くいます。日本の家庭では、玉ねぎ入りのほうが甘みが出て冷めても食べやすいため、初回は玉ねぎ入りがおすすめです。慣れたら玉ねぎなしも作り、好みで決めてください。

Q2. じゃがいもは電子レンジで加熱してもいいですか?

時短には使えます。ただし、油でゆっくり火を入れた香りと食感は少し弱くなります。平日は電子レンジ併用、週末は油でじっくり、という使い分けが現実的です。電子レンジを使う場合も、最後に油で軽くまとわせてから卵と混ぜると、味が近づきます。

Q3. 返すときに崩れます。どうすればいいですか?

フライパンが大きすぎる、卵とじゃがいもを混ぜてから休ませていない、片面の焼きが浅い、のどれかが多いです。直径20cm前後のフライパンにし、卵とじゃがいもを混ぜて10分置き、底がしっかり固まってから返してください。皿を使うのが怖い場合は、ふたをして中心まで火を入れる方法で構いません。

Q4. 半熟にしても大丈夫ですか?

その場で食べる大人向けなら好みの範囲ですが、家庭記事としては中心まで火を通す作り方をおすすめします。FDAは卵料理を安全に食べるため、卵が固まるまで加熱し、卵料理は160°F(約71度C)を目安にするよう案内しています。子ども、妊娠中の方、高齢の方、体調に不安がある方には半熟を避けてください。

Q5. 翌日のお弁当に入れられますか?

入れられます。ただし、中心までしっかり火を通し、焼いた後は早めに冷蔵してください。朝は清潔な包丁で切り、完全に冷たい状態で詰めます。水分の多い野菜と同じ容器に入れず、保冷剤を添えると安心です。

Q6. 余ったオリーブオイルはどう使いますか?

じゃがいもと玉ねぎの香りが移っているので、翌日の目玉焼き、野菜炒め、パスタ、アヒージョ風の炒めものに向きます。ざるや茶こしで小さな焦げを取り、清潔な容器に入れて冷蔵し、数日以内に使い切ります。卵液が混ざった油は保存せず、その場で使ってください。


まとめ、トルティージャは「小さく厚く」が近道

トルティージャは、卵5個、じゃがいも550g、玉ねぎ100g、オリーブオイル250mlで作る、スペインの台所らしい料理です。大切なのは、じゃがいもを焦がさずやわらかくすること、卵と混ぜて少し休ませること、大きすぎないフライパンで厚く焼くこと。返す工程は緊張しますが、流し台の上で皿を使えば、思ったより落ち着いてできます。

初回は玉ねぎ入り、中心まで火を通すタイプで作ってください。味に慣れたら、玉ねぎなし、ピーマン入り、ツナ入り、小さく切るタパス版へ広げられます。冷めてもおいしいので、ガスパチョと合わせる夏の昼食、パエリア・バレンシアーナの日の前菜、パンにはさむ弁当まで使えます。

台所で一度うまく返せると、次から少し楽しくなります。皿をかぶせて、息を止めて、ひっくり返す。うまく丸く戻った瞬間だけは、かなりスペインのバルに近い気分になります。

参考文献

  • トルティージャ
  • スペイン料理
  • 卵料理
  • じゃがいも
  • オムレツ
  • 作り方
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