豆の皿なのに、ソースをすくいたくなる
ピヤズ(Piyaz)は、トルコで白いんげん豆を使って作るサラダです。サラダといっても、葉野菜を軽く食べる皿ではありません。豆、玉ねぎ、トマト、ゆで卵を並べ、レモンや酢で締め、地域によってはタヒニを使った濃いソースをまとわせます。肉を焼いた夕方の台所で、皿の底に残った白いソースをパンでぬぐうと、豆料理なのに主菜のような満足感があります。
トルコのキョフテ屋では、焼きたてのキョフテの横にピヤズが置かれることがあります。肉の脂を豆と酸味で受け止める、かなり合理的な組み合わせです。日本の食卓なら、フライパンで焼いた肉や魚、トーストしたバゲット、冷たい麦茶の横に置いても自然。白いんげん豆の水煮を使えば、平日の夜でも30分ほどで作れます。
ピヤズとは何か
ピヤズはトルコ語で豆サラダの一種を指し、基本形は白いんげん豆、玉ねぎ、パセリ、酢、オリーブオイルです。英語圏では「Turkish white bean salad」と説明されることが多く、スマックやレモンを足した軽いタイプもあります。
この記事で作るのは、地中海沿岸のアンタルヤで知られるタヒニ入りの濃いピヤズです。トルコ文化ポータルのアンタルヤ紹介では、白い豆にタヒニ、にんにく、レモン、酢を使うピヤズが地域料理として紹介されています。Türk Patentの地理的表示資料でも「Antalya Piyazı」はアンタルヤの名物として扱われ、豆とタラトルソースの組み合わせが特徴です。
日本で作るときに守りたいのは、豆を水っぽくしないこと、タヒニソースを濃くしすぎないこと、玉ねぎの辛味を抜くことです。この3つが整うと、豆の甘み、スマックの赤い酸味、ゆで卵の黄身が一皿の中でつながります。
| 見るポイント | ピヤズらしい状態 |
|---|---|
| 豆 | 皮が破れすぎず、噛むと中心まで柔らかい |
| ソース | 皿に流れ出さず、豆の表面に薄くまとわる |
| 玉ねぎ | 辛味が抜け、スマックで軽く赤く染まっている |
| 食べ方 | 肉料理やパンの横で、酸味と豆の甘みを足す |
失敗しやすいところ
ピヤズは火を入れる工程が少ない分、素材の水分がそのまま仕上がりに出ます。特に缶詰の豆を使うときは、洗った後の水切りを雑にするとソースが薄まり、タヒニの香りだけが重く残ります。ざるで切った後、キッチンペーパーに一度広げてもよいくらいです。
| 失敗 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| ソースが水っぽい | 豆の水切り不足、タヒニの量が少ない | タヒニ小さじ2と塩ひとつまみを足し、5分置いて豆に吸わせる |
| 苦い | にんにくが多い、練りごまが古い | レモン汁5ml、茹で汁10ml、オリーブオイル5mlを足して角を丸める |
| 玉ねぎが辛い | 厚切り、置き時間不足 | 追加で塩ひとつまみと酢5mlを足し、5分置いて軽く絞る |
| 豆が粉っぽい | 乾燥豆の茹で不足、古い豆 | 弱火で10分ほど追加加熱し、指でつぶれる柔らかさにする |
乾燥豆で作る場合は、前日から水に浸け、豆の3から4倍量の水で戻します。翌日、強火で沸騰させてから弱火に落とし、45から70分ほどふつふつ煮ます。豆を指で押して中心まで抵抗なくつぶれる状態が目安です。塩は最後の10分に入れると、皮が硬くなりにくくなります。
食べ方と献立
アンタルヤ式のピヤズは、豆だけで完結するというより、肉やパンの横に置いて皿全体を調える役割があります。ケバブやキョフテのような焼き肉料理に合わせると、タヒニのコクが肉の香ばしさを受け、スマックと酢の酸味が後味を軽くします。
魚にも合います。塩を振って焼いたサバや鮭の横に置くと、豆とタヒニが主食寄りの満足感を作り、レモンと玉ねぎが魚の脂を切ります。白米に合わせるより、薄く焼いたパン、バゲット、トーストした食パンの方が皿の底のソースまで食べやすいです。
| 場面 | 合わせるもの | 日本の台所での組み立て |
|---|---|---|
| トルコ風の夕食 | キョフテ、パン、焼きピーマン | 肉を焼いている間にピヤズを冷蔵庫でなじませる |
| 軽い昼食 | ゆで卵を増やし、パンとスープ | 卵を3個にして、ピヤズを主菜寄りにする |
| 魚の日 | 焼き魚、レモン、温野菜 | 魚の脂をスマックと酢で切る副菜にする |
| メゼの食卓 | フムス、タブーレ、バリラ | 豆料理が重なるので、ピヤズは小皿で出す |
同じ豆料理でも、温かいひよこ豆のバリラは朝食やメゼ向き、ギリシャのファソラーダはスープとして一皿で食べる料理です。ピヤズはその中間で、冷たくても常温でも食べやすく、焼いた主菜の横に置きやすいのが強みです。
保存と作り置き
ピヤズは作ってすぐより、10から20分置いた方が豆とソースがなじみます。ただし、トマトとゆで卵まで混ぜて長く置くと水分が出ます。作り置きするなら、豆とソース、玉ねぎ、トマト、卵を分けて保存し、食べる直前に皿へ組み立てます。
| 状態 | 保存方法 | 日持ち | ポイント |
|---|---|---|---|
| 豆とソースを和えたもの | 冷蔵 | 2日 | 密閉容器へ。食べる前に常温で15分置く |
| 玉ねぎのスマック和え | 冷蔵 | 1日 | 水分が出るので軽く絞ってから使う |
| ゆで卵 | 冷蔵 | 2日 | 殻をむいたら密閉し、乾燥を防ぐ |
| 完成後の皿 | 冷蔵 | 当日中 | トマトの水分が出るため翌日向きではない |
冷蔵庫から出した直後はタヒニが締まり、香りが弱くなります。食べる15分前に出し、固ければ水またはレモン汁を小さじ1ずつ足して戻します。電子レンジで温めると玉ねぎとトマトの香りが崩れるため、常温へ戻すだけで十分です。
よくある質問
白いんげん豆の代わりにひよこ豆で作れますか?
作れますが、別の料理に近づきます。ひよこ豆はナッツのような香りがあり、タヒニとはよく合います。ただし、ピヤズらしいなめらかな白い豆の食感は弱くなります。ひよこ豆を使うなら、レモンを少し増やし、クミンを小さじ1/2足すとまとまりやすいです。
タヒニなしのピヤズにできますか?
できます。トルコ各地には、タヒニを入れずに酢、オリーブオイル、玉ねぎ、パセリで軽く仕上げるピヤズもあります。その場合は、タヒニ70gと茹で汁60mlを抜き、オリーブオイルを45ml、酢を25mlに増やしてください。より軽く、焼き魚や揚げ物に合わせやすい副菜になります。
スマックがない場合はどうしますか?
レモンの皮を少量すりおろし、黒こしょうを少し増やします。スマックの赤い色と乾いた酸味は完全には代替できませんが、香りの方向は近づきます。梅干しやゆかりを入れると日本の味に寄りすぎるため、ピヤズとしてはおすすめしません。
ゆで卵は必須ですか?
アンタルヤ式では卵を添える形がよく見られますが、必須ではありません。肉料理の横に出すなら卵なしでも十分です。昼食として一皿で食べるなら、卵を入れた方が満足感が出ます。半熟にしすぎると黄身がソースに溶け、豆の味がぼやけるので、固ゆで寄りが扱いやすいです。
前日に作って弁当に入れられますか?
豆とソースだけなら前日に作れます。トマトと卵は当日に足してください。弁当に入れる場合は水分が出やすいので、トマトは別容器にし、パンと一緒に食べる形が向いています。夏場はごまと卵を含むため、保冷剤を使い、長時間の常温放置は避けます。
参考文献
- Türk Patent ve Marka Kurumu "Antalya Piyazı" (https://ci.turkpatent.gov.tr/cografi-isaretler/detay/38277) 2026年6月参照
- T.C. Kültür Portalı "Antalya Piyazı" (https://www.kulturportali.gov.tr/turkiye/antalya/neyenir/antalya-piyazi--6-kisilik-) 2026年6月参照
- The Mediterranean Dish "Piyaz (Turkish White Bean Salad)" (https://www.themediterraneandish.com/piyaz-turkish-white-bean-salad/) 2026年6月参照
- Wikipedia "Piyaz" (https://en.wikipedia.org/wiki/Piyaz) 2026年6月参照












