ミラネーサは、夕方の台所で揚げるアルゼンチンの薄切りカツ

ミラネーサ(milanesa)は、薄くのばした肉に卵とパン粉をまとわせて揚げる、アルゼンチンの食卓でとても身近な料理です。日本の台所で作ると、最初に迷うのは「とんかつと何が違うのか」です。答えは厚みです。ミラネーサは肉を薄く広げ、衣も薄く付け、皿からはみ出しそうな平たい一枚をレモンで食べます。
現地では牛肉の nalga、bola de lomo、peceto など、赤身で薄く切りやすい部位がよく挙げられます。日本なら、牛もも肉のステーキ用を5mmほどに叩くか、脂の少ない牛もも薄切りを重ねず1枚ずつ使うのが現実的です。霜降り肉で作ると豪華に見えますが、衣と油の香りに脂が重なり、ミラネーサらしい軽さから離れます。
名前はイタリアのミラノを思わせます。アルゼンチンでは、19世紀末から20世紀初頭の欧州移民、とくにイタリア系移民の食文化と結びつけて語られることが多い料理です。ただし家庭で大切なのは、由来の断定より、今のアルゼンチンの食卓でどう食べられているかです。レモンを搾る、マッシュポテトやサラダを添える、残ったらサンドイッチにする。そこまで含めて、ミラネーサは「薄いカツ」以上の一皿になります。
アルゼンチン料理で献立を組むなら、肉を主役にする日はアサード、香草ソースを添える日はチミチュリ、軽い前菜にはエンパナーダがつながります。同じ揚げ物でも、じゃがいもと卵をまとめるレブエルト・グラマホとは、火加減と食べる速度が少し違います。
買い出しで迷うもの

牛肉、卵、パン粉、レモンは近所のスーパーでそろいます。商品カードにするのは、味を大きく左右する道具だけです。ミラネーサは、肉の薄さ、油温、油切りで仕上がりが変わります。ここを道具で安定させると、初回から「衣は色づいたのに肉が硬い」「紙の上で油を吸って重い」という失敗を減らせます。
肉を薄くする道具があると、5mm厚をそろえやすくなります。瓶や麺棒でも代用できますが、厚い部分だけを狙って軽く叩ける肉たたきは、ミラネーサやチヴィトーのような南米の薄切り肉料理で出番があります。
ミラネーサは油温が低いと衣が油を吸い、高すぎると外だけ焦げます。温度計は、170から175度を保つための道具として役に立ちます。とくに薄い肉を複数枚揚げると、2枚目以降で油温が落ちやすくなります。
広い一枚を揚げるので、薄い小鍋より厚手のフライパンが扱いやすいです。26cm前後なら1枚ずつ広げられ、油の深さを2.5cmほど確保しやすくなります。揚げ終えたら紙に重ねず、網の上で油を落とします。
代替食材と失敗原因

ミラネーサの代替は、肉よりも厚みと衣の薄さで考えます。牛ももが手に入らない日は、豚ロース、鶏むね肉、鶏ささみでも作れます。ただし鶏肉は中心温度74度を確認し、豚肉は中心温度63度以上と休ませ時間を取ります。ナスや大豆ミートで作る場合は、同じ名前の家庭料理として楽しめますが、牛肉の香りは別物です。
| 現地での考え方 | 日本での置き換え | 守るポイント |
|---|---|---|
| 牛の赤身を薄くのばす | 牛ももステーキ用、牛もも焼肉用 | 5mm厚にそろえ、脂の多い部位を避ける |
| pan rallado の細かい衣 | 細かめ乾燥パン粉、砕いた生パン粉 | 厚く押し固めず、薄く均一に付ける |
| 卵液に香りを入れる | にんにく、パセリ、少量のオレガノ | パン粉に頼らず、卵側で香りを入れる |
| レモンで油を切る | レモン、軽いサラダ、チミチュリ少量 | ソースをかけすぎず、衣の軽さを残す |
| ナポリターナにする | トマトソース、ハム、チーズをのせて焼く | 基本のミラネーサを揚げてから短く焼く |
| 困りごと | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 衣がはがれる | 肉の水分が残った、粉が厚すぎた | 紙で水分を押さえ、薄力粉を薄く付けて余分を落とす |
| 油っぽい | 油温が165度未満、紙に重ねて置いた | 170から175度まで待ち、揚げ上がりは網で休ませる |
| 肉が硬い | 厚いまま長く揚げた | 5mm厚にそろえ、1枚ずつ揚げる |
| 衣が焦げる | にんにくの粒が大きい、油温が180度超え | にんにくはすりおろし、火を弱めて油温を戻す |
| とんかつのように重い | 粗いパン粉を厚く付けた | パン粉を砕き、押し固めず薄く付ける |
ナポリターナ(milanesa napolitana)にしたい場合は、揚げたミラネーサにトマトソース大さじ2、薄いハム1枚、溶けるチーズ25gをのせ、220度のトースターで3から4分焼きます。これは基本のミラネーサの上にもう一つ料理を重ねる感覚です。初回はまずレモンだけで食べ、衣と肉の薄さを確認してから試す方が違いが分かります。
食べ方、保存、温め直し

揚げたては、レモンを搾ってサラダと食べるのが一番軽いです。夕食の主役にするならマッシュポテト、昼食ならパンに挟んでサンドイッチにします。アルゼンチンでは、ミラネーサのサンドイッチも身近な食べ方です。日本の食卓でパンに挟むなら、ソースを塗りすぎず、レタスとトマトを薄く入れる程度にすると衣の香りが残ります。
作り置きするなら、揚げる前ではなく、衣を付けた状態で冷蔵2時間までです。揚げた後は冷蔵で2日。粗熱を取り、紙で軽く包んでから保存容器に入れます。紙は油を吸うためのものですが、長く密着させると衣が湿ります。翌日に食べる前に紙を外し、トースターやオーブンで温めます。
| 状態 | 保存 | 温め直し |
|---|---|---|
| 衣付け前の肉 | 下味後、冷蔵半日 | 揚げる20分前に冷蔵庫から出す |
| 衣付け済み | 冷蔵2時間 | 表面が湿っていたらパン粉を小さじ2ほど足す |
| 揚げたミラネーサ | 冷蔵2日 | 180度のトースターで5から6分、網にのせて温める |
| サンドイッチ用 | 冷蔵1日 | 肉だけ温め、パンと野菜は食べる直前に合わせる |
冷凍もできますが、家庭の冷凍庫では衣の軽さが落ちます。冷凍する場合は、揚げたミラネーサを1枚ずつラップで包み、保存袋に入れて2週間以内に食べます。温め直しは凍ったまま180度のオーブンで12から14分です。中心まで温まったら、最後にトースターで2分焼くと表面が戻りやすくなります。
よくある質問
牛肉ではなく鶏むね肉でも作れますか?
作れます。鶏むね肉は厚い部分を開いて7mm以下にし、170から175度で揚げます。中心温度は74度を目安にします。牛肉より水分が多いため、下味後に表面を紙で押さえてから粉を付けると衣がはがれにくくなります。
パン粉は粗い日本の生パン粉でも大丈夫ですか?
作れますが、ミラネーサらしい薄さは出にくくなります。袋に入れて麺棒で軽く砕き、粒を細かくしてから使ってください。粗いまま厚く付けると、とんかつ寄りの食感になります。
油を少なくして焼けますか?
焼き揚げはできます。油を深さ1cmに減らす場合は、肉を小さめに切り、片面3分、裏返して2分30秒を目安にします。ただし油面が浅いと衣の側面が乾きやすく、色むらも出やすいです。初回は深さ2.5cmで揚げる方が再現性は高いです。
ナポリターナとの違いは何ですか?
基本のミラネーサに、トマトソース、ハム、チーズをのせて焼いたものがナポリターナです。名前はナポリを思わせますが、アルゼンチンの食堂や家庭で広がった派生として知られます。まず基本を揚げ、最後に短く焼くと衣が重くなりにくいです。
余ったミラネーサはサンドイッチにできますか?
できます。冷蔵したミラネーサをトースターで温め、パンにはレモンを少し搾ったマヨネーズ、レタス、トマトを薄く重ねます。水分の多いソースを塗ると衣が湿るので、食べる直前に挟んでください。












