黄金色に焼けたアルゼンチンのエンパナーダが木のまな板に並んでいる
🔪下準備30分
🔥調理25分
🍽️分量4
🌍料理アルゼンチン料理
南米レシピ

エンパナーダの作り方|アルゼンチンの黄金パイ

15分で読めます世界ごはん編集部

スペインが運び、南米が育てた「包む文化」

サッカー観戦のお供に、日曜の家族の食卓に、バス停でかじる朝食に。アルゼンチンで エンパナーダ(empanada) が食べられない場所を探す方が難しいほど、この半月形のパイは国民の生活に溶け込んでいます。

「エンパナーダ」の語源はスペイン語の「empanar(パンで包む)」です。16世紀、スペインの征服者たちが南米に持ち込んだミートパイが原型とされています。英語圏の食文化研究者ダニエル・イグルシアスは著書『The South American Table』で、「スペイン人がレコンキスタ時代にムーア人から学んだ『包んで焼く』技法が、大西洋を渡ってアルゼンチンの風土と食材に出会い、まったく新しい料理として花開いた」と記しています。

アルゼンチンには州ごとに異なるエンパナーダのスタイルがあります。サルタ州の揚げエンパナーダ、トゥクマン州の鶏肉エンパナーダ、メンドーサ州のオリーブたっぷりの牛肉エンパナーダなど、英語圏の旅行メディアLonely Planetによると少なくとも14の地方スタイルが確認されています。

エンパナーダの日

アルゼンチンでは毎年4月8日が「ナショナル・エンパナーダ・デー(Día Nacional de la Empanada)」として祝われています。この日はベーカリーやレストランが特別なエンパナーダを販売し、家庭でも大量のエンパナーダを焼いて家族で食べるのが伝統です。

この記事では、英語圏のアルゼンチン料理サイトやブエノスアイレスのシェフたちのレシピを研究し、日本のスーパーの食材だけで再現できるエンパナーダのレシピをお届けします。セビーチェフェイジョアーダと並べれば南米の食卓が完成です。南米料理まとめもあわせてご覧ください。

黄金色に焼けたエンパナーダが木のまな板に並んでいる
アルゼンチンのエンパナーダ。半月形の黄金パイは国民のソウルフード
4人分

材料(4人分・約12 個)

生地(ディスコ)

材料 分量 代替・備考
薄力粉 300 g
バター(冷たいもの) 80 g 1cm角に切って冷蔵庫で冷やしておく
1 個
冷水 60 ml 氷水がベスト
小さじ1
小さじ1 グルテンの発達を抑えてサクサクに

フィリング(レジェノ・デ・カルネ)

材料 分量 代替・備考
牛ひき肉 300 g 合い挽きでも可。本場は牛100%
玉ねぎ 1 個(約200 g) みじん切り
赤パプリカ 1/2 個 みじん切り。なければ省略可
グリーンオリーブ(種抜き) 8 個 4等分に切る。エンパナーダの味の要
ゆで卵 2 個 粗みじん切り
パプリカパウダー 大さじ1 甘口。スペイン産ピメントンがあれば最高
クミンパウダー 小さじ1
小さじ1
黒こしょう 少々
オリーブオイル 大さじ2 炒め用

仕上げ

材料 分量 代替・備考
卵(溶き卵) 1 個 表面のツヤ出し用(エッグウォッシュ)

栄養情報(4人分のうち1人分・約3 個あたり)

カロリー480kcalのうち、タンパク質22 gは牛ひき肉とゆで卵に由来します。脂質26 gはバターリッチな生地と肉の脂肪によるもの。炭水化物40 gは薄力粉の生地が中心です。グリーンオリーブにはオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)とビタミンEが含まれ、抗酸化作用が期待できます。

グリーンオリーブの入手先

日本のスーパーの缶詰コーナーに種抜きグリーンオリーブが並んでいます。S&B、サンリッチ、カゴメなど複数のメーカーが販売しており、価格は1瓶300〜500円程度です。瓶入りのスペイン産マンサニージャ種がおすすめ。カルディではスタッフドオリーブ(赤ピーマン詰め)も手に入り、こちらを使うと彩りが加わります。

アレルギー物質について

この料理には 小麦・乳(バター)・卵 が含まれます。乳アレルギーの方はバターをラードまたはショートニングに置き換えられます。実はアルゼンチンの伝統的なレシピではバターではなく牛脂(グラサ・デ・バカ)を使う地方もあり、むしろ本場に近い仕上がりになります。

エンパナーダの材料を並べた様子
ひき肉、オリーブ、ゆで卵、スパイス、そしてバターたっぷりの生地の材料

調理手順

1

フィリングを作って冷ます(15分調理 + 冷却)

手順1: フィリングを作って冷ます(15分調理 + 冷却)
2

生地を作る(10分 + 冷蔵30分)

手順2: 生地を作る(10分 + 冷蔵30分)
3

包む ―― レプルゲ(縁飾り)の技

手順3: 包む ―― レプルゲ(縁飾り)の技
4

オーブンで焼く(20〜25分)

手順4: オーブンで焼く(20〜25分)
📊 栄養情報(1人分)
120
kcal
5.5g
タンパク質
6.5g
脂質
10.0g
炭水化物
0.5g
食物繊維
170mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

調理のコツ

バターは必ず冷たいまま使う

エンパナーダの生地がサクサクに仕上がるかどうかは、バターの温度にかかっています。バターが溶けてしまうとグルテンと一体化し、サクサクではなくもっちりした食感になります。バターは使う直前まで冷蔵庫に入れ、1cm角に切ったら手早く粉に擦り込んでください。夏場は粉ごと冷蔵庫で冷やしておくと失敗しにくくなります。

揚げる方法もある

オーブン焼きが主流のブエノスアイレスに対し、アルゼンチン北部(サルタ、トゥクマン)では揚げエンパナーダが伝統的です。170℃の油で片面2〜3分ずつ、きつね色になるまで揚げます。揚げた方が生地がパリパリで、フィリングのジューシーさも閉じ込められます。ただしカロリーは1.5倍程度になります。

大量に作って冷凍する

エンパナーダは包んだ状態で冷凍できます。バットに並べて凍らせ、固まったらジップロックに移して2ヶ月保存可能。焼くときは凍ったまま200℃のオーブンで28〜30分。解凍不要で焼きたての味が楽しめるため、週末に大量に仕込む家庭がアルゼンチンでは一般的です。

さまざまなフィリングのエンパナーダ
牛肉、鶏肉、ハム&チーズ、ほうれん草。バリエーションは無限に広がる

アレンジ・バリエーション

チキン(ポジョ)エンパナーダ

鶏むね肉 300gを茹でてほぐし、クリームチーズ 50gとみじん切りの青ねぎを混ぜたフィリング。マイルドでクリーミーな味わいは子供にも大人気。アルゼンチンのパーティーでは牛肉版と鶏肉版を半々で用意するのが定番です。

ハム&チーズ(ハモン・イ・ケソ)

薄切りハム 6枚とモッツァレラチーズ 150gを生地に包むだけ。フィリングの調理が不要な最も簡単なバリエーションです。子供のおやつやお弁当に重宝します。チーズが溶け出さないよう、縁をきっちり閉じてください。

ほうれん草&チーズ(ベルドゥーラ)

ほうれん草 200gを茹でて水気を絞り、みじん切りにしてリコッタチーズ 100g、卵 1個、ナツメグ少々と混ぜたフィリング。ベジタリアン向けのバリエーションで、栄養バランスも優れています。

和風アレンジ

フィリングにカレー粉大さじ1を加えると「カレーパン風エンパナーダ」に。日本のカレーパンとアルゼンチンのエンパナーダは構造的にそっくりで、包んで加熱する発想は世界共通です。じゃがいもを加えてコロッケ風にするアレンジも面白いです。

この料理の背景 ―― アルゼンチンの州ごとに異なるエンパナーダ文化

14の州、14の味

アルゼンチンのエンパナーダは、州ごとに驚くほど異なります。英語圏の旅行メディアMatadorNetworkは「アルゼンチン人にとってエンパナーダの州を当てるのは、日本人にとって方言で出身地を当てるのと同じこと」と表現しています。

サルタ州: じゃがいもの角切り、唐辛子、生の青ねぎが入り、揚げるのが伝統。トゥクマン州: 鶏肉を使い、揚げるスタイル。サイズが小さめ。メンドーサ州: オリーブが多く、甘口パプリカの風味が強い。オーブン焼き。コルドバ州: 砂糖を少量加えた甘じょっぱい生地が特徴。

エンパナーダとアルゼンチンの国民性

英語圏の文化人類学者フランシス・マリーニャスは「エンパナーダはアルゼンチンの社会的接着剤。サッカーの試合、家族の集まり、政治集会、どんな場にもエンパナーダがある」と述べています(BBC Travel, 2023)。日曜日に家族が集まってエンパナーダを大量に作る「エンパナーダ・パーティー」は、日本の餃子パーティーに近い文化です。

ブエノスアイレスの下町では「エンパナデリア(empanaderÍa)」と呼ばれるエンパナーダ専門店が軒を連ね、テイクアウトで1個100〜200円程度で買えます。昼食にエンパナーダ2〜3個とコーラという組み合わせは、アルゼンチン版のファストフードそのものです。

アルゼンチンの屋台でエンパナーダを販売する風景
ブエノスアイレスのエンパナーダ屋台。ガラスケースの中に並ぶ黄金色のパイは食欲をそそる

よくある質問

南米料理をもっと楽しみたい方へ

エンパナーダと一緒にセビーチェフェイジョアーダも作れば、南米のフードパーティーが完成します。南米料理まとめで各国の料理を俯瞰できます。中東料理のフムスファラフェル、東欧のハチャプリヒンカリもおすすめです。タブーレをサラダとして添えるのも相性抜群です。

Q1. 生地がサクサクになりません。原因は?

最も多い原因は、バターが溶けてしまったことです。バターは必ず冷たいまま使い、生地をこね過ぎないでください。酢を小さじ1加えるとグルテンの発達が抑えられ、サクサク感が増します。もう一つの原因は焼き温度の低さ。200℃でしっかり焼くことで、バターが蒸発してサクサクの層を作ります。

Q2. フィリングの水分が多くて包みにくいです。

玉ねぎから出る水分が原因です。炒めた後にバットに移して冷ます際、ペーパータオルを敷くと余分な水分を吸ってくれます。また、冷蔵庫で30分冷やすとフィリングが引き締まり、包みやすくなります。パン粉を大さじ1混ぜて水分を吸わせるのも有効な方法です。

Q3. 子供向けのフィリングは?

ハム&チーズが子供に一番人気です。調味料をほとんど使わないので味がマイルドで、チーズのとろける食感が喜ばれます。コーンの缶詰を混ぜた「チョクロ(コーン&チーズ)」も甘みがあって子供ウケ抜群。キョフテのフィリングをエンパナーダに入れる変わり種も面白いです。

Q4. 焼いたエンパナーダの保存方法は?

冷蔵で3日、冷凍で1ヶ月保存可能です。再加熱はトースターまたは180℃のオーブンで5〜8分が最適です。電子レンジだと生地がしんなりしてしまいます。冷凍した場合は解凍せず、凍ったまま180℃で10〜12分焼いてください。

参考文献

  • エンパナーダ
  • アルゼンチン料理
  • 南米料理
  • パイ
  • ひき肉
  • オーブン焼き
  • 屋台グルメ
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