レモングラスを持つと、魚の香りが先にほどける
焼き網へ置いた瞬間、刻んだレモングラスとこぶみかんの葉の香りが立ちます。 表面の魚は白く固まりながら、油を含んだココナッツの粒がところどころ色づき、細い茎の周りに巻いた具が少しずつ締まっていきます。 サテ・リリットは、肉の角切りを串へ刺す一般的なサテとは違い、味をつけたひき肉や魚を棒へ「巻き付ける」料理です。 インドネシア語・バリ語の「lilit」は、巻く、包むという動作を指します。
バリの家庭料理として作るなら、白身魚に香味野菜、ココナッツ、唐辛子を合わせ、太いレモングラスの茎を持ち手にします。 本来の炭火やココナッツ殻の火は日本の家庭では再現しにくいため、厚手のグリルパンや魚焼きグリルの平らな面で、最初だけ動かさず焼く方法に置き換えます。 火を強くして香ばしさだけを先に出すと、外側が焦げても中心が生のままになりやすい料理です。 香りを残すことと、厚みを薄くそろえることを同時に守ると、白身魚でも崩れず、中心までしっとりした仕上がりになります。
サテ・リリットは結婚式や寺院の祭礼などの共同の食卓にも登場し、魚、鶏、豚など手に入る主材料で姿を変えます。 海辺なら魚、内陸なら鶏や豚という説明もあり、どれか一種類だけが正解という料理ではありません。 一方で、レモングラスへ巻く形、根と葉をすり合わせた香味、焼きたてを白いご飯や生のサンバルと食べる流れは、バリらしさを保つ芯になります。 日本で作る一皿では、魚を選び、香りの葉だけを通販で補い、辛さを卓上で調整するのが無理のない寄せ方です。 同じバリ料理のウラプを野菜の皿に、香味をじっくり染み込ませるアヤム・ベトゥトゥを別の日の主菜にすると、レモングラスやこぶみかんの葉を余らせずに使えます。

途中で見つける、味の決め手
失敗しやすいところ|崩れ方で戻し方を変える
サテ・リリットは、味付けよりも具の水分と厚みで成否が分かれます。 巻き付ける前に小さな試し焼きをするだけで、途中の修正が容易になります。

巻いた具がレモングラスから割れる
具がひび割れるときは、魚の水分が少ないか、冷えて粘りが出る前に成形しています。 まずボウルごと冷蔵庫へ戻して15分置き、濡らした手で表面を押し直します。 それでも粉っぽく割れる場合は、ココナッツミルクを小さじ1だけ加えて30秒練り、もう一度茶さじ1杯を焼いて確認します。 最初から多く入れると柔らかくなりすぎるため、一度に大さじ単位で足さないでください。
逆に、具が手や茎からずるりと落ちるなら、魚の水気を拭き切れていないか、香味ペーストが熱いまま混ざっています。 冷蔵庫で20分冷やし、具を薄くしてから巻き直すと形が保ちやすくなります。 片栗粉や小麦粉を増やして固めると、魚の弾力ではなく練り物のような食感へ寄るので、このレシピでは使いません。
表面だけ黒くなり、中心が生っぽい
グリルパンの予熱が強すぎる、または具の厚みが2cmを超えているのが主な原因です。 焦げた部分を削って食べるのではなく、まだ生の串は弱めの中火へ移し、ふたをして1〜2分ずつ追加加熱します。 魚は中心が透明なままなら食べず、最も厚い部分を割って白く不透明になったか、フォークで身がほぐれるかを見ます。 生の魚を扱ったまな板と箸は、盛り付け用と分けて洗ってください。
魚のにおいが強く残る
香味を増やす前に、魚そのものを見直します。 FDAは、生魚について魚臭さ、酸っぱいにおい、アンモニア臭ではなく、穏やかで新鮮なにおいのものを選ぶよう案内しています。 購入後は冷蔵し、すぐ使わない場合も室温へ置きっぱなしにしません。 生たらを使うなら、表面の水分をペーパーで押さえ、こぶみかんの葉は葉脈を除いて細く刻むと、魚臭さを隠すのではなく香りの層を足せます。
具が乾いてぱさつく
火が強いまま長く焼いたか、魚を回しすぎて細胞から水分を出しすぎた可能性があります。 次回は魚を冷たい状態で粗く刻み、ココナッツを60gまで減らさず、焼き始めの3分だけ触らないでください。 今回の串は、温かいご飯の横に置き、ライム果汁を少量かけると食べやすくなります。 ただし、酸味を先に混ぜすぎると具がゆるくなるため、ライムは盛り付け時に足します。
地域と家庭で変わる味|バリらしさをどこに置くか
魚、鶏、豚で食感が変わる
海辺のバリで魚を使うサテ・リリットは、身の香りを細い香味で支える料理です。 今回の白身魚は、ココナッツを抱えながらも、噛むとほろりとほどけます。 魚の種類を変えるなら、脂の少ない白身魚はココナッツを減らさず、サーモンのような脂のある魚はココナッツオイルを小さじ2に減らすと重くなりません。 冷凍魚は解凍時の水分で具がゆるみやすく、魚の風味も変わるため、資料にある家庭向けの魚版に寄せるなら生魚を優先します。
鶏ももひき肉へ替えると、魚より弾力が出て香味ペーストを強く受け止めます。 豚ひき肉なら脂の甘さが前へ出るので、ココナッツを50gにして唐辛子を少し増やすと輪郭がぼやけません。 どちらも魚のレシピとは別の食感で、中心まで十分に加熱する必要があります。 鶏肉へ替えた場合は中心74℃、豚肉へ替えた場合はひき肉として71℃を目安にし、串の太さを魚版より厚くしないでください。
本場寄りのブンブと、日本向けの香味ペースト
バリ料理の土台として紹介される「Base Genep(バセ・ゲネプ)」は、玉ねぎ、にんにく、唐辛子だけでなく、ガランガル、しょうが、クンチュール、ターメリック、キャンドルナッツ、シュリンプペースト、レモングラスなどをすり合わせる香味ペーストです。 料理人のレシピでは、これを肉、魚、野菜に広く使える基礎として扱っています。
ただし、Base Genepを完全に作ると400g前後でき、サテ8本には多すぎます。 ガランガルとクンチュールは香りの奥行きを作りますが、日本では一度の買い物で余りやすいため、今回の配合ではしょうがとこぶみかんの葉を軸にしました。 キャンドルナッツのコクがほしい人は、無塩マカダミアナッツ10gを香味ペーストへ足せます。 シュリンプペーストを足す場合は小さじ1/2から始め、えびアレルギーがある人や魚だけの澄んだ香りを好む人は省いてください。
この省略は、バリ料理そのものを一つの固定配合へ決めるためではありません。 日本の台所で余らせずに作るため、何を守ればサテ・リリットと感じられるかを選んだものです。 魚の粒、ココナッツの丸み、レモングラスの持ち手、こぶみかんの葉の青い香りを残せば、追加の根菜を増やさなくても料理の輪郭は伝わります。
サンバル・マタは別添えにする
バリのサンバル・マタは、紫玉ねぎ、レモングラス、唐辛子、こぶみかんの葉へ温めた油とライムを合わせる、生の香りを楽しむ添え物です。 焼き上がったサテへ最初から混ぜず、皿の端に置くと、魚の香味と辛味の強さを一口ごとに変えられます。 料理人のレシピには「サテ自体の味が強いのでソースを要しない」という食べ方もあり、観光案内ではサンバル・マタを添える流れも紹介されています。 家庭や店、祭礼の規模で添え物が変わる部分です。
生の青唐辛子や赤唐辛子が手に入らないときは、サンバル・マタを無理に赤いペーストへ置き換えず、サンバル・オレックを小皿に少量出すほうが本体の香りを守れます。 これはサンバル・マタと同じものではなく、唐辛子の辛さを足すための近道です。 購入するなら、リンク先でKOKITAの「サンバルオレック」と商品名が一致するかを確認し、辛さを味見してから小さじ1/2ずつ添えます。 辛いものを食べない人がいる食卓、または生玉ねぎの香りが苦手な人には、カードを見送ってライムだけを添えても十分です。

バリの食卓で、サテは串料理から少し外れている
サテという言葉から、細い竹串に小さな肉を何個も並べる姿を思い浮かべる人は多いでしょう。 サテ・リリットは、その想像を少し外します。 小さく切った肉を串へ通すのではなく、味付けした魚や肉を手で押し広げ、棒の周囲へ巻き付けるからです。 茎が持ち手になり、具の表面積が大きくなるため、香味ペーストと焼き目を一口にまとめられます。
インドネシア政府観光局の紹介では、魚、鶏、豚などを使い、竹やレモングラスへ巻き付けて炭火で焼く料理として説明されています。 また、バリ島クルンクン県の観光局は、鶏、豚、海魚のサテ・リリットが伝統行事や宗教儀礼の場で供され、バンブーやココナッツの葉柄へ具を固めて焼くと案内しています。 地域の食材と手に入る棒で形が変わる料理だからこそ、家庭の食卓にも入りやすかったのでしょう。
祭礼の前日に、刻む作業を分け持つ
バリの料理人Wayan Sutariawanは、サテ・リリットを祭りや祝宴のたびに作り、近所の人と前日に肉を刻み、香味ペーストを用意する共同作業として紹介しています。 大量の魚や肉を一人でなめらかにするのではなく、刻む、混ぜる、棒へ巻くという手を使う工程を分ける発想です。 焼く人の前には、すでに同じ太さの具が並び、火の前で形を整える時間を短くできます。
この背景を日本の家庭へそのまま移す必要はありません。 ただ、サテを一人分ずつ完璧に飾る料理と考えるより、具を先に8個へ分け、家族で巻き、焼きたてを中央へ置くほうが料理の性格に合います。 細い串に刺すサテと違い、レモングラスの茎を持って食べられるため、皿に箸を伸ばす食卓でも扱いやすい形です。
火は味だけでなく、燃料の記憶をつくる
バリではココナッツの殻を使った火で焼く方法があり、殻の煙が香りへ加わります。 家庭向け資料では、炭火の代わりに平らなグリルやノンスティックパンを使える一方、香りは同じではないと説明されています。 日本のグリルパンでは、煙を強く出すことより、具を薄くして表面をじっくり乾かし、レモングラスの香りを焦がさず残すほうが再現しやすいです。
火を近づけすぎると、ターメリックの色と魚の脂が黒くなります。 弱めの中火へ下げ、返す回数を増やさず、ふたで中心へ熱を回してください。 炭火らしい煙を足したいからと、屋内で殻や木片を燃やすのは危険です。 魚の中心が白くなり、表面に軽い焼き色がついたところで火から外し、余熱で2〜3分落ち着かせるのが家庭での安全な落としどころです。
白いご飯、サンバル、野菜が一皿の居場所を作る
サテだけを串盛りにすると、香味の強い魚料理として終わります。 白いご飯や米菓、サンバル・マタ、青菜の和え物を横へ置くと、魚の脂を受け止める白さ、辛味、歯ざわりが加わります。 バリの食卓では、サンバルが単なる添え物ではなく、急いだときにご飯と食べるほど身近な存在だという料理人の説明もあります。 サテの味を薄めるためではなく、辛味と酸味を別の場所へ置いて、同じ串を食べる人それぞれが一口の強さを選べるようにするものです。
食べるときはレモングラスの茎を持ち、上から少しずつかじります。 茎そのものは硬く食べませんが、香りをつかむための持ち手です。 茎から外してご飯へ盛ってもよく、子どもや箸を使う人には焼き上がりを皿へ移してからほぐすほうが安全です。

よくある質問

サテ・リリットに向く魚は何ですか?
生たら、スズキ、タイなど、皮と骨を除ける白身魚が扱いやすいです。 身が柔らかすぎる場合は水分を丁寧に拭き、2cm角にして冷やしたまま刻みます。 サーモンでも作れますが、脂と香りが強くなるため、ココナッツオイルを減らし、ライムを食べる直前に添えてください。
冷凍の白身魚は使えますか?
使えますが、解凍時に出る水分で具がゆるくなりやすく、魚の種類によっては生魚版よりまとまりません。 冷蔵庫でゆっくり解凍し、表面と切り口の水分をペーパーで押さえてから使います。 室温で放置して解凍せず、解凍後はすぐ加熱してください。 初回で形を安定させたいなら、販売時点で生の切り身を選ぶほうが簡単です。
レモングラスの茎が細くて巻けません。
硬い外皮を一枚むいても細い場合は、具を厚く盛らず、茎へ薄く長く押し付けます。 それでも持ち手にならなければ、竹串へ巻いて平らなグリルパンで焼き、焼き上がりに茎を抜いてください。 棒へ巻く形を保つことが目的なので、細い茎に無理やり具を重ねて中心を厚くするより、代替の竹串で均一にするほうが失敗が少なくなります。
こぶみかんの葉がないと味は変わりますか?
変わります。 レモングラスは明るいレモン系の香り、こぶみかんの葉は葉を折ったような青い柑橘香を持ち、同じ代用品ではありません。 本体の5枚を省いても作れますが、香味の奥行きが一段浅くなります。 冷凍の葉を使うなら、解凍して水気を拭き、葉脈を除いて細切りにしてください。 ライムの皮を少量削る方法は香りを補えますが、苦味を出さないよう緑の表面だけを使います。
サンバル・オレックでサンバル・マタを作れますか?
同じものにはなりません。 サンバル・マタは生の紫玉ねぎ、レモングラス、唐辛子、ライムの歯ざわりと香りを食べる添え物です。 サンバル・オレックは赤唐辛子のペーストなので、辛味を小皿で足す代替として使い、本体や生野菜へ混ぜ込まないほうが違いを説明しやすくなります。 生の香味を作れる日はカードを見送り、辛味だけを簡単に用意したい日に選んでください。
作ったサテ・リリットは保存できますか?
魚の具は、成形前も成形後も冷蔵したまま扱い、できればその日のうちに焼きます。 焼いた後は浅い容器へ移して早く冷まし、常温に長く置きません。 FDAは魚介を購入後すぐ冷蔵または冷凍し、冷蔵する場合は40°F(約4.4℃)以下で2日以内に使うよう案内しています。 食卓へ出した焼き魚を室温に置く時間も、2時間を超えないようにしてください。気温が高い日は1時間が目安です。 翌日に食べる場合は中心まで熱くなるよう再加熱し、におい、ぬめり、酸味のある異臭があれば食べずに廃棄します。
えびアレルギーがある場合はどうしますか?
基本配合にはシュリンプペーストを入れていませんが、バリの香味ペーストやサンバルには使われることがあります。 商品表示、加工場表示を確認し、少しでも不明なら入れないでください。 魚そのものが含まれるため、魚アレルギーがある人向けのレシピではありません。 まな板、包丁、ボウルを生魚専用にし、食べる人が異なる場合は取り分ける前に器具を洗浄します。










