甘いソースと赤いソーセージが、祝いの皿をつくる

大皿に赤いソースのスパゲッティを山のように盛り、輪切りの赤いソーセージとチーズを上から散らします。フィリピン風スパゲッティは、イタリアのボロネーゼをそのまま移した料理ではありません。トマトの酸味にバナナケチャップの甘さを重ね、ひき肉のうま味とソーセージの塩気をひとつの皿にまとめた、フィリピンの家庭や店で親しまれている味です。
フィリピンの国立栄養評議会は、フィリピン風スパゲッティを、トマトソース、バナナケチャップ、ひき肉、ホットドッグ、チーズで作る、祝いの日にも登場する料理として紹介しています。クリスマスイブの Noche Buena、誕生日、家族が集まる食事では、炊いたご飯とは別の「みんなで取り分ける大皿」として置かれます。
一口目に来るのは、トマトの酸っぱさより丸い甘さです。続いて、焼いた肉の香ばしさ、赤いソーセージの歯切れ、溶けたチーズの塩気が重なります。甘いパスタが苦手なら砂糖を減らすだけでは足りません。バナナケチャップを控え、トマトソースと黒こしょうを増やして、甘さの入口そのものを小さくする必要があります。
麺にも家庭差があります。店や家庭によっては、ソースをよく吸うやわらかな麺にします。一方、大皿へ盛ってから時間を置くなら、ゆで時間を1分短くしておくと食卓で伸びにくくなります。この分量は、バナナケチャップの甘さを隠さず、肉を焼き、ソースを煮詰め、麺を最後に合わせる組み立てです。
フィリピンの食卓をもう少し広く見たい場合は、豚肉を香ばしく焼いて甘いソースを添えるレチョンや、酢と醤油で煮るアドボも参考になります。スパゲッティと米料理は別々の料理ですが、家族が集まる日に食べやすい味を大皿で用意するという共通点があります。
英語では Filipino spaghetti、Filipino-style spaghetti、Pinoy spaghetti と表記されます。本記事では検索しやすい「フィリピン風スパゲッティ」に統一します。赤いソーセージはフィリピンでよく使われる甘めのホットドッグを指し、日本では手に入るソーセージで置き換えます。
途中で見つける、味の決め手
濃度と甘さを決める調理のコツ

この料理は、甘い材料を増やせばフィリピンらしくなるわけではありません。肉を焼いた香り、トマトの酸味、バナナケチャップの甘さ、チーズの塩気が別々に感じられ、最後に麺の中でつながる濃度を作ります。
まずバナナケチャップを180ml入れ、15分煮たところで味見をします。甘さが足りないときだけ砂糖を5gずつ加えます。最初から砂糖を30g入れると、煮詰まった後に戻しにくくなります。
水を足して薄めると、甘さと塩気も一緒にぼやけます。弱火で5分ずつ煮詰め、木べらで鍋底をなぞった線が2秒残るか見てください。焦げそうなら火を止め、別の鍋へ移してから調整します。
ゆで上がった麺を油で和えるとソースが絡みにくくなります。大さじ1のゆで汁を加え、トングで持ち上げながら、熱いソースへすぐ戻してください。
大皿で500gの麺を一度に混ぜるには、26〜28cmほどの深さのあるフライパンが扱いやすいです。浅いフライパンしかない場合は、麺の半量とソースの半量を2回に分けるだけで十分です。収納場所が少ない人や4人分以下しか作らない人は、道具を買い足す必要はありません。
リンク先では、直径28cmと自宅の熱源に対応するかを確認してください。深型でも底が狭いタイプは500gの麺を返しにくく、サイズだけで選ぶと扱いやすさが変わります。
家庭と店で変わるフィリピン風スパゲッティ

フィリピン風スパゲッティには、全国で分量が統一された一つのレシピがあるわけではありません。家庭の予算、使う肉、子どもの好み、店の仕込みによって甘さや具の量が変わります。守るのは、トマトを土台にして甘さと肉、ソーセージ、チーズを重ねる組み立てです。
豚ひき肉と牛ひき肉を替える
豚ひき肉は脂がソースへなじみ、やわらかな甘さになります。牛ひき肉へ替えると、肉の香りと焼き色が強くなり、甘さが少し後ろへ下がります。合いびき肉を使う場合は、ソーセージの脂も出るため、最初の油を20mlへ減らして構いません。
トマトケチャップで作る
バナナケチャップがない場合は、トマトケチャップ180ml、ブラウンシュガー15g、しょうゆ15mlを使います。バナナケチャップの香りは出ませんが、甘いソースの方向は作れます。トマトケチャップ自体が甘い商品なら、砂糖を最初から入れず、煮込み後に味を見て5gずつ足してください。
辛いソースにする
フィリピン風スパゲッティは甘い味が基本ですが、輪切りの赤唐辛子を1本、またはチリフレーク1gを肉と一緒に炒めれば辛味を足せます。大皿全体を辛くするより、取り分けた後に辛いソースを添える方が、子どもや辛いものが苦手な人と同じ皿を囲みやすくなります。
肉を使わない
植物性ミンチ250gと植物性ソーセージ240gへ替え、チーズも植物性シュレッドへ変更します。植物性素材は商品によって塩分と水分が違うため、しょうゆは10mlから始めます。きのこを100g加える場合は、5mm角に刻んで肉と同じタイミングで炒め、水分を十分に飛ばします。
店の甘さへ寄せすぎない
チェーン店のフィリピン風スパゲッティは、甘いソース、ひき肉、ホットドッグ、チーズを分かりやすく組み合わせた味です。家庭で作るときは、店の味を当てるために砂糖や加工肉を増やすより、ソースの濃度を調整した方が食卓へ合わせやすくなります。大人が食べるなら黒こしょうを増やし、子どもが食べるなら唐辛子を別添えにしてください。
バナナケチャップが生まれた背景と、祝日のスパゲッティ

バナナケチャップの背景には、フィリピンの食材を使って輸入品を補う発想があります。アメリカ国立公園局の資料によると、食品技術者のマリア・ヤラガン・オロサは、トマトケチャップが輸入品で高価だったことや、フィリピンの気候ではトマトを安定して確保しにくかったことを背景に、1930年代にバナナを使ったケチャップを作りました。現在のバナナケチャップは、単なるトマトケチャップの代用品ではなく、フィリピンの家庭で使われる調味料として定着しています。
その甘い調味料が、アメリカの影響を受けたパスタ料理と結びつきました。フィリピン風スパゲッティは、イタリア料理の再現というより、手に入りやすい調味料、加工肉、ひき肉、チーズを、家族が食べやすい甘いソースへまとめた料理です。だから、イタリア風の酸味やアルデンテだけを基準にすると、料理の面白さを取り違えます。
フィリピンの国立栄養評議会は、Noche Buenaの料理としてフィリピン風スパゲッティを挙げ、家族や友人が食卓を囲む料理だと説明しています。フィリピン系の食文化を紹介する聞き取り資料には、誕生日やクリスマスに食べること、赤い色を幸運、長い麺を長寿に結びつける語りもあります。ただし、これは一人の語りや家庭の説明として読むべきで、全国の家庭が同じ意味を込めていると一般化するものではありません。
地域差を探すなら、地方名ごとに具が決まっていると考えるより、家庭と店、祝いの日と普段の食事の差を見る方が実態に近づきます。店では甘さ、赤いソーセージ、チーズが遠くから見ても分かるように組み立て、家庭では豚肉や牛肉、野菜、麺のやわらかさを好みに合わせます。地域名より、誰が集まり、どの皿に盛るかが味を分けます。
保存と再加熱 — ソースと麺を分けると翌日も崩れにくい

食卓に出す時間がずれる場合は、ソースと麺を別にしておきます。ソースは浅い保存容器へ移し、湯気が落ち着いたらふたをして冷蔵します。麺はゆで汁を切って少量ずつ分け、固まりが大きくならないようにします。室温へ長く置いたままにせず、粗熱を取ったら冷蔵庫へ入れてください。
このレシピでは、冷蔵したソースと麺を2日以内に食べ切る運用にします。ソースだけなら冷凍できますが、解凍後に油分と水分が分かれるため、鍋へ戻して弱火で混ぜ、トマトソース50gまたは水大さじ1で濃度を戻します。チーズをのせた完成品は、冷凍すると麺の食感が変わりやすいので、食べる分だけ盛り付ける方が扱いやすいです。
温め直すときは、ソースをフライパンへ入れて弱火にかけ、水大さじ1を加えます。ふつふつと湯気が出て全体が温まったら、麺を加えて2〜3分返します。麺が切れやすいときは、木べらで押さえずトングで持ち上げます。異臭、容器の膨張、表面の粘りがある場合は食べずに廃棄してください。
よくある質問

フィリピン風スパゲッティはなぜ甘いのですか?
トマトソースへ砂糖だけを加えるのではなく、バナナケチャップや甘いトマト系調味料を使うからです。バナナケチャップの甘さに、ソーセージ、ひき肉、チーズの塩気を重ねます。甘さを控える場合は砂糖を減らすより、まずバナナケチャップを150mlへ減らし、トマトソースを30g増やす方が味の芯を残せます。
バナナケチャップの代わりに普通のケチャップを使えますか?
使えます。トマトケチャップ180mlとブラウンシュガー15gで甘さを補えますが、バナナの香りや丸い甘酸っぱさは同じになりません。初めて作るときに入手できなければ代用し、フィリピン風スパゲッティを続けて作りたいと思った段階でバナナケチャップを探す順番でも問題ありません。
赤いソーセージがないときは何を使いますか?
日本のウインナー、ボロニアソーセージ、太めのフランクフルトで置き換えます。幅1cmの斜め切りにして表面を焼くと、輪切りの形と香ばしさを残せます。燻製香が強い商品はトマトソースの甘さを隠すため、初回はプレーンなウインナーの方が調整しやすいです。
ソースが甘すぎたり濃すぎたりしたときは?
甘すぎるときはトマトソース50gと黒こしょう少々を加え、弱火で5分煮ます。濃すぎるときは水または取り分けたパスタのゆで汁を大さじ1ずつ加えます。いきなり塩や酢を足すと、甘さだけでなくソーセージとチーズの塩気まで重くなるため、少量ずつ戻してください。
翌日に食べるなら、麺とソースは分けた方がよいですか?
分ける方が扱いやすいです。麺はソースを吸って膨らむため、別容器で冷やし、温め直すときにソースと合わせます。すでに混ぜた状態なら水大さじ1を加え、弱火で持ち上げるように温めます。冷蔵後はこのレシピでは2日以内を目安にし、状態に異変があるものは食べません。












