ムルーズィーヤの物語、蜂蜜の鍋なのに羊が先に来る
蓋を開けると、シナモンの甘い匂いの奥から、羊の脂と炒め玉ねぎの深い香りが上がります。ムルーズィーヤ(Mrouzia / المروزية)は、羊肉、レーズン、アーモンド、蜂蜜を煮込むモロッコ料理です。見た目だけなら甘い煮込みに見えますが、食べると中心にいるのは砂糖ではありません。最初に肉の旨み、次にジンジャーとラ・ス・エル・ハヌート、最後に蜂蜜と干しぶどうが残ります。
モロッコ政府観光局は、ムルーズィーヤを国を代表する料理の一つに挙げています。とくにフェズの料理として知られ、犠牲祭イード・アル=アドハーに合わせて作られてきました。フェズの料理は、甘味と塩味を同じ鍋で急いで混ぜず、肉を柔らかくしてから果実の甘味を重ねるのが面白いところです。肉をたくさん扱う祝祭の日に、残った部位を長く煮て食べ切る知恵も、この料理の背景にあります。
日本の台所では、骨付きの羊よりラムショルダーの角切りが扱いやすい選択です。肩肉は最初は少し硬くても、弱い煮立ちを続けると繊維がほどけます。蜂蜜は肉がほどけてから入れます。甘味を最初から煮込むと、肉が柔らかくなる前にソースだけが濃くなり、鍋底に張り付きやすくなります。
この料理で決めること
初回の判断はシンプルです。羊肉の香りが好きで、甘い肉料理にも興味があるなら、ラ・ス・エル・ハヌートを一つ買って作る価値があります。レーズン入りの肉料理が苦手、または蜂蜜の照りを食卓で望まないなら、まずは同じモロッコの羊肉タジンや、酸味のあるハリラから始める方が合います。
甘さを重くしない食べ方、保存、よくある質問
焼きたての丸パンか、塩を控えたクスクスを添えると、ソースを最後まで食べやすくなります。白いご飯でも合いますが、米に水分を含ませすぎず、やや硬めに炊くのがコツです。甘い香りの肉料理なので、付け合わせは酸味のあるにんじんサラダやトマトと玉ねぎのサラダが向きます。

蜂蜜を減らしても作れますか
大さじ1まで減らせます。ただし、減らすならレモン汁も小さじ1までにします。酸味だけを残すと、肉の塩気が前に出すぎます。甘い肉料理が初めてなら、大さじ2で仕上げてから皿の上で少量ずつ足すと失敗しません。
ラムの代わりに牛肉でもよいですか
牛すね肉600gなら作れます。羊の脂の香りがなくなるため、ラ・ス・エル・ハヌートは小さじ2のままにし、煮込み時間を20〜30分長く取ります。鶏もも肉なら45分ほどで火は通りますが、ムルーズィーヤらしい濃い旨みとは別の料理になります。
作り置きと温め直しは
粗熱を取ってから、肉とソースを浅い容器に分けて冷蔵し、2日以内に食べます。アーモンドは別にしておくと食感が残ります。温め直しは鍋に水大さじ2を足して弱火で8〜10分。電子レンジだけで温めると、端だけが濃くなりやすいので避ける方が無難です。
栄養値はどのくらいですか
フロントマターの栄養値は、ラム肩肉、はちみつ、レーズン、アーモンドを4人で分けた概算です。肉の脂身、残るソースの量、添える主食で大きく変わります。糖質を抑えたい場合は、はちみつを大さじ1にし、レーズンを60gまで減らしてください。
モロッコ料理を続けて作るなら
ラ・ス・エル・ハヌートが残ったら、モロッコのタジンや、野菜のペーストであるザアルークへ回せます。豆とトマトのハリラを添えれば、甘い煮込みだけで食卓が重くなるのを防げます。











