カサードの物語 -- 昼の食堂で一皿がそろう
コスタリカの食堂で昼を頼むと、皿の上に少しずつ生活が並びます。白い米、豆、焼いた肉、甘いプランテン、酸味のあるサラダ。豪華なごちそうというより、働く日にも旅行中にも「これを食べれば午後まで動ける」と分かる一皿です。
カサード(Casado)は、コスタリカのsodaと呼ばれる大衆食堂でよく出る定食皿です。直訳すると「結婚した」という意味で、米と豆、肉や魚、サラダ、プランテンが皿の中で一緒になることから名前を説明されることがあります。語源にはいくつかの話がありますが、実際に大事なのは、別々のおかずを一つの昼食としてまとめる日常性です。
日本で作る時の山場は、珍しい調味料ではありません。米を炊き、豆を水っぽくしすぎず、鶏肉を焼き、プランテンを焦がさず甘くし、サラダの酸味で全体を軽くする。この段取りが分かると、特別な鍋がなくてもかなり近づけられます。
同じ中米の家庭料理として見るなら、ホンジュラスのバレアダスは豆を小麦トルティーヤで包む朝食寄り、ニカラグアのバホは肉と根菜を大鍋で蒸す週末料理です。カサードはその中間にある、毎日の昼の皿です。
カサードとは、米と豆と主菜を一皿にしたコスタリカの昼食

Visit Costa Ricaの食の紹介では、カサードを黒豆、白米、甘いプランテン、キャベツ、目玉焼きなどが並ぶ皿として描いています。Anywhereのコスタリカ食ガイドも、casadoを米、豆、サラダ、牛肉・魚・鶏肉、揚げプランテンで構成される典型的な食事として説明しています。WikipediaのCasado項目でも、米、黒豆、プランテン、サラダ、トルティーヤ、任意のたんぱく質が基本として整理されています。
| 要素 | 現地でよく見る形 | 日本で守る軸 |
|---|---|---|
| 米 | 白米。gallo pintoではなく別盛りのことが多い | 日本米をやや硬めに炊き、豆の汁を受け止める |
| 豆 | 黒豆または赤い豆 | 黒豆缶、なければ甘くない赤いんげん豆缶 |
| 主菜 | 鶏、牛、豚、魚 | 初回は鶏ももで火入れを安定させる |
| 甘み | 熟したプランテン | プランテンがなければ、硬めのバナナを短時間焼く |
| 酸味 | キャベツ、トマト、ライム、酢 | サラダを別で作り、重い米と豆を切る |
| 横の一口 | トルティーヤ、目玉焼き、ピカディージョ | 卵と市販トルティーヤで食堂らしさを足す |
この記事では、コスタリカの家庭そのものを断定するのではなく、日本で買える材料で「米、豆、主菜、甘いプランテン、酸味」を崩さない作り方に絞ります。サルサ・リサノは現地の定番ソースですが、入手が難しいため、ウスターソース、酢、しょうゆ、砂糖、クミンで酸味のある茶色いソースに寄せます。
日本の台所で本場に寄せる分岐表
カサードは「完全再現」にこだわりすぎると、買い出しで止まります。守るべきは料理名ではなく、米と豆、主菜、甘み、酸味の役割です。そこを外さなければ、日本のスーパーの材料でも食堂の皿に近づきます。
| 迷う材料 | できれば使う | 日本での代替 | 代替すると変わること |
|---|---|---|---|
| 黒豆 | 塩味の黒豆水煮 | 赤いんげん豆水煮 | 色と香りが少し軽くなる |
| プランテン | 熟して黒い斑点が出たもの | 硬めのバナナ | 甘みが強く崩れやすい。薄めに切らない |
| サルサ・リサノ | Costa Rican salsa Lizano | ウスター、酢、しょうゆ、砂糖、クミン | 近い酸味は出るが、現地ソースの野菜香は弱い |
| トルティーヤ | とうもろこしトルティーヤ | 小麦トルティーヤ | 香りは弱まるが、米と豆をすくう役は果たす |
| 主菜 | 鶏、牛、豚、魚 | 鶏もも肉 | 初回は火入れが安定し、皿全体の段取りを覚えやすい |
プランテンが見つかったら、モフォンゴやバホにも展開できます。豆の皿を増やすなら、ベネズエラのパベリョン・クリオージョやブラジルのフェイジョアーダと比べると、同じ米と豆でも味の重さがかなり違うことが分かります。
失敗しやすいところ

豆が水っぽくて米までべちゃっとする
豆を缶の汁ごと全部入れると、米の横で広がりすぎます。汁は120mlから始め、最後に豆を少しつぶして濃度を出します。スープではなく、米にからむ小皿の豆を目指してください。
プランテンが焦げる、または崩れる
油が熱すぎると外だけ焦げ、低すぎると油を吸って重くなります。170度前後、中火の泡が静かに出る状態を守ります。バナナ代用はプランテンより柔らかいので、厚めに切り、動かしすぎないことが大事です。
鶏肉だけが浮いた味になる
カサードの主菜は、単独で濃すぎる味にしない方がまとまります。塩、にんにく、柑橘、少量のクミンで十分です。焼き肉のたれや甘い照り焼きに寄せると、豆とプランテンの素朴さから離れます。
皿の中で全部を混ぜてしまう
混ぜて食べても間違いではありませんが、最初から全部を混ぜると、カサードらしい「一皿に別々のおかずがいる」感覚が薄くなります。米に豆を少し、鶏に酸っぱいサラダを少し、プランテンを間に挟む。その食べ進め方が楽しい皿です。
保存と作り置き

米、豆、鶏肉、プランテン、サラダは別々に保存します。一皿に盛ったまま冷蔵すると、サラダの水分が米に移り、プランテンの表面も湿ります。作り置きするなら、米と豆は冷蔵2日、鶏肉は冷蔵2日、プランテンは当日から翌日、サラダは当日中が目安です。
温め直しは、米は電子レンジ600Wで1分30秒から2分、豆は小鍋で弱火5分、鶏肉はフライパン弱火でふたをして4分。プランテンはトースターで3分温めると表面が戻ります。サラダは温めず、食べる直前にライムを少し足します。
翌日は、皿に戻すだけでなく、トルティーヤに米、豆、鶏肉を少量ずつのせて軽い昼食にしてもよいです。ただし、プランテンとサラダまで巻き込むと水分が出るので、横に添える方が食べやすいです。
よくある質問
Q1. カサードは必ず黒豆ですか?
黒豆が最もそれらしくまとまりますが、地域や店で赤い豆を使うこともあります。日本では甘い黒豆煮を使わず、塩味の水煮豆を選ぶ方が重要です。甘い煮豆を使うと、主食ではなく正月料理の甘さに寄ります。
Q2. 肉なしで作れますか?
作れます。鶏肉の代わりに、焼いた厚揚げ300g、目玉焼き2個追加、豆を1缶増量する形が作りやすいです。豆の塩味とサラダの酸味を少し強めると、肉なしでも米が進みます。
Q3. サルサ・リサノがないと本場らしくなりませんか?
現地の香りを足すには便利ですが、なくてもカサードは作れます。米、豆、主菜、プランテン、サラダがそろっていれば、皿の構成は保てます。代替ソースはかけすぎず、鶏肉と豆に少量だけ使うと全体がまとまります。
Q4. プランテンが手に入らない時は何を使いますか?
硬めのバナナを厚く切り、短時間だけ焼きます。完熟バナナは柔らかすぎて崩れるため、皮に少し斑点がある程度で止めます。さつまいもを薄く焼いて甘みを足す方法もありますが、香りは別物になります。
Q5. カサードとガジョ・ピントの違いは何ですか?
ガジョ・ピントは米と豆を炒め合わせる朝食寄りの料理として知られます。カサードは、米と豆を含む複数のおかずを一皿に盛る昼食・夕食の形です。米と豆が皿にある点は似ていますが、料理の構成が違います。
参考文献
- Visit Costa Rica, "Culinary Vacation" https://www.visitcostarica.com/culinary-adventures
- Anywhere, "Costa Rican Food, Drink, & Dessert Guide" https://www.anywhere.com/costa-rica/travel-guide/food
- Sistema de Información Cultural de Costa Rica, "Casado tradicional con fresco de cas" https://si.cultura.cr/manifestaciones-culturales/casado-tradicional-con-fresco-de-cas
- Wikipedia, "Casado" https://en.wikipedia.org/wiki/Casado














