フライパンに細い線を引くと、台所が屋台になる
黄色い生地をボトルに入れ、熱いフライパンの上でくるくる回す。最初の数秒は、ただ細い線を描いているだけに見えます。ところが線が重なり、穴が残り、端が少し乾いてくると、急に布のレースのような一枚になる。ロティジャラは、こねるロティではなく、流して焼くロティです。
ロティジャラ(Roti Jala)は、マレー語で「網のパン」「網目のロティ」と訳されることが多い料理です。小麦粉、卵、ココナッツミルク、ターメリックで黄色いゆるい生地を作り、専用の穴あきカップやボトルでフライパンへ細く落として焼きます。マレーシアではチキンカレーやダールと合わせ、家庭の食卓、集まり、ラマダン期の食事などで見かける料理として紹介されます。
日本の台所で迷うのは、専用カップがないことより、生地の濃度です。濃すぎると太い線になり、穴がふさがって黄色い薄焼き卵のようになります。薄すぎると線が切れ、フライパンに点々と落ちます。この記事では専用カップなしで、清潔なドレッシングボトルや絞りボトルを使い、チキンカレーまで一緒に作れる分量にします。
Roti はパン、jala は網やネットを指します。日本語では「ロティジャラ」「ロティ・ジャラ」「ロティジャラカレー」と表記が揺れますが、本記事では料理名として読みやすい「ロティジャラ」に統一します。ロティチャナイのように手で伸ばして層を作る料理ではなく、穴を残した薄い生地を巻いてカレーに浸す料理です。
ロティチャナイとも、クレープとも違う
ロティジャラは見た目が華やかですが、料理としてはかなり実用的です。薄く焼くので早く火が通り、網目にカレーが入り、手でつまんでも重くありません。マレーシアの食卓では、チキンカレー、ビーフカレー、ダール、サンバル、きゅうりなどと並び、主食とおかずの間に入ります。
| 比べる料理 | 作り方 | 食感 | 合わせるもの |
|---|---|---|---|
| Roti Jala | ゆるい生地を細い線で落として焼く | 柔らかい網目、軽い | チキンカレー、ダール |
| Roti Canai | 油で休ませた生地を薄く伸ばして焼く | 層があり、外は香ばしい | カレー、ダール、砂糖 |
| Dosa | 発酵生地を薄く広げて焼く | 端がぱりっとする | サンバル、チャトニ |
| クレープ | 生地を丸く広げて両面を焼く | 穴がなく、しなやか | 甘い具、食事具 |
ロティジャラらしさは、穴を残すことです。焼き色を強くつける料理ではありません。表面が乾き、持ち上げられる程度に固まれば十分です。焼きすぎると網目が硬くなり、巻いた時に割れます。
買い出し|現地らしさを変える材料だけ見る
薄力粉、卵、鶏肉、玉ねぎ、じゃがいもは近所のスーパーで足ります。通販や輸入食材店で見る価値があるのは、色と香りを決めるターメリック、缶のココナッツミルク、焼きムラを減らす厚手のフライパンです。専用のロティジャラカップは見つかれば便利ですが、初回は清潔な絞りボトルで十分です。
ターメリックは色づけだけでなく、粉っぽい小麦生地に南アジアからマレー半島へつながる香りを少し入れます。使う量は小さじ1/2で止めると、黄色は出て、苦みは出にくいです。
ココナッツミルクは1缶を使い切ると、買い出しが楽です。生地を柔らかくし、カレーの角も丸めるので、飲料タイプではなく料理用の缶を使ってください。
ロティジャラは強い焼き色をつけない料理です。薄く油を引き、温度が下がりにくいフライパンやスキレットがあると、線が途中で固まりやすくなります。
栄養の目安
| 1人分の目安 | 数値 |
|---|---|
| エネルギー | 約590kcal |
| たんぱく質 | 約27g |
| 脂質 | 約30g |
| 炭水化物 | 約55g |
| 食物繊維 | 約4g |
| 食塩相当量 | 約2.6g |
チキンカレーまで含めた目安です。軽食にする場合はロティジャラを半量にし、カレーは小鉢で添えると重くなりません。ココナッツミルクと油を使うため、カロリーを落とすより、きゅうりや青菜を添えて食べ進めやすくする方が満足感は残ります。
日本の台所で本場に寄せる分岐

| 迷うところ | 現地寄せ | 日本での現実解 | 避けたい方向 |
|---|---|---|---|
| 道具 | 穴あきのロティジャラカップ | 絞りボトルに1.5から2mmの穴 | 大きな穴で太く落とす |
| 小麦粉 | 普通の小麦粉 | 薄力粉をふるって使う | 強力粉だけで重くする |
| 黄色 | ターメリックで淡い黄色 | 小さじ1/2で止める | 色を濃くしようと入れすぎる |
| カレー | チキンカレーやダール | 家庭のカレー粉とココナッツミルク | とろみの強い日本式カレーをそのまま合わせる |
| 油 | 薄く塗って片面焼き | キッチンペーパーで拭く | 油を多く入れて揚げ焼きにする |
専用カップを買う前に確認したいのは、家にあるボトルの穴です。ドレッシングボトル、はちみつボトル、ソース用の細口ボトルのどれかがあれば、十分に試せます。穴を複数開けると本格的に見えますが、初回は一つ穴の方が制御しやすいです。
カレーは、濃い日本式カレーより、さらっとしたチキンカレーやダールが合います。網目の隙間に汁気が入るため、少し流れるくらいが食べやすいです。余裕があれば、同じマレーシアのナシレマに添えるサンバルや、ラクサで使うココナッツの扱いも参考になります。
失敗原因|線が切れる、穴が消える、巻くと割れる
| 困る状態 | 主な原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 線が途中で切れる | 生地が薄すぎる、ボトルの穴が細すぎる | 薄力粉小さじ2を水小さじ2で溶いて足す |
| 線が太く穴が消える | 生地が濃い、穴が大きい、描く量が多い | 水大さじ1を足し、1枚35ml前後に減らす |
| フライパンにくっつく | 油が少ない、温度が低い | 中弱火で2分予熱し、油を紙で薄く塗る |
| 焦げる | 温度が高い、焼き時間が長い | 火を弱め、45秒で表面のつやを確認する |
| 巻くと割れる | 焼きすぎ、皿で乾いた | 裏返さず、焼いたら布巾をかける |
| カレーが重い | ルウ状でとろみが強い | 水を大さじ2ずつ足し、さらっと温める |
ロティジャラは、きれいな丸にする料理ではありません。線が少し乱れても、穴があり、柔らかく巻ければ成功です。むしろ線が完璧に詰まりすぎると、カレーを含まず、クレープのようになります。食卓で大事なのは、手でちぎった時にふわっとほどけることです。
保存と温め直し
焼いたロティジャラは、乾燥が一番の敵です。粗熱が取れたら2から3本ずつラップで包み、冷蔵で翌日まで、冷凍で2週間を目安にします。冷凍する場合は巻いた状態で包むと、解凍後も形が崩れにくいです。
温め直しは、蒸気を少し足します。冷蔵なら皿にのせて霧吹きで軽く水をかけ、ラップをふんわりかけて600Wで30から40秒。冷凍なら冷蔵庫で半日戻し、同じように温めます。フライパンで焼き直すと網目が乾いて割れやすいので、電子レンジか蒸し器が向いています。
チキンカレーは冷蔵で2日、冷凍で3週間を目安にします。温め直す時は弱火で、ココナッツミルクが分離しないよう強く沸かしません。翌日はカレーが濃くなるので、水またはココナッツミルクを大さじ2足すと、ロティジャラに絡みやすく戻ります。
持ち寄りや時間差の夕食にするなら、ロティジャラとカレーは別々に運びます。ロティジャラは完全に冷ましてから巻き、ラップで包んだ上でふた付き容器へ。温かいカレーと同じ容器に入れると、蒸気で網目がふやけ、穴がつぶれます。食べる直前にロティジャラだけ電子レンジで軽く温め、カレーは小鍋で弱火に戻すと、作りたてに近い柔らかさが戻ります。
あわせて作りたいマレーシア料理
ロティジャラは、マレーシア料理の中でも「粉ものとカレー」の入口になります。生地を伸ばす方向へ進むならロティチャナイ、ココナッツの主食へ進むならナシレマ、麺とココナッツスープならラクサが近いです。食後を甘い椀で締めるなら、里芋とさつまいもをココナッツミルクでまとめるボボチャチャへつなぐと、同じココナッツでも主食とデザートの差が見えます。
同じ屋台感でも、米粉麺を強火で炒めるチャークイティオは別の方向の香ばしさがあります。シンガポール側の軽食としては、卵とパンを合わせるロティジョンも、カレーやチリソースと相性がいい料理です。
よくある質問
専用のロティジャラカップがないと作れませんか?
作れます。清潔な絞りボトル、ドレッシングボトル、先の細いソースボトルで十分です。穴は1.5から2mmが扱いやすく、最初は一つ穴の方が線を制御しやすいです。専用カップは複数の線が同時に出るため早いですが、生地の濃度が合っていないと逆に詰まりやすくなります。
ココナッツミルクなしで作れますか?
作れますが、ロティジャラらしい香りと柔らかさは弱くなります。生地は牛乳200mlと水220mlで代替できます。カレーはココナッツミルクを入れず、水を50ml減らし、最後に牛乳大さじ2を足すと少し丸くなります。ただし、現地寄せを目指すなら缶のココナッツミルクを使う方が近道です。
生地は前日に作れますか?
前日に作る場合は、濾した生地を密閉して冷蔵庫に入れます。翌日は粉が水分を吸って濃くなるので、焼く前に水を大さじ1から2足し、ボトルから細く落ちる濃度へ戻してください。卵が入るため、常温放置は避け、作った翌日中に焼き切ります。
なぜ裏返さないのですか?
裏返すと網目が硬くなり、巻いた時に割れやすくなります。ロティジャラは薄い線でできているので、片面を45から60秒焼くだけで火が入ります。表面のつやが消え、へらで持ち上がれば十分です。焼き色より、柔らかく折れることを優先します。
日本のカレールウを添えてもいいですか?
食べられますが、とろみが強く、網目に入りにくいです。使うならルウを少なめにして水かココナッツミルクでゆるめ、具は小さく切ります。ロティジャラの軽さを残すなら、この記事のようなさらっとしたチキンカレー、またはレンズ豆のダールが合います。












