ハノイで食べられるフォーガー。澄んだ鶏だしに米麺、鶏肉、香草がのったベトナムの鶏肉フォー
🔪下準備25分
🔥調理1時間20分
🍽️分量4
🌍料理ベトナム料理
東南アジアレシピ

フォーガーの作り方|鶏だし5つのコツ

17分で読めます世界ごはん編集部

フォーガーの物語、朝の台所に湯気を立てる

朝の台所で、玉ねぎと生姜を直火で焦がすと、少しだけ旅先の屋台に近づきます。甘い香りと焦げた皮の香ばしさが混ざり、まだ何も煮ていないのに、鍋の前で「今日はうまくいきそうだ」と思える瞬間があります。

**フォーガー(Phở gà)**は、鶏だしで作るベトナムの米麺スープです。牛肉のフォーボーより軽く、香りはやわらかく、朝でも夜でも食べやすい一杯。丸鶏をゆっくり煮て、米麺をゆで、青ねぎ、香草、ライムを添えるだけに見えますが、味の輪郭を決めるのは「焦がし玉ねぎ」「焦がし生姜」「ナンプラー」「砂糖」「香りを出しすぎないスパイス」の5つです。

ハノイのフォーガー。澄んだ鶏だしに米麺と鶏肉、香草がのっている
ハノイで撮影されたフォーガー。画像: David McKelvey, CC BY 2.0, Wikimedia Commons

フォーはベトナム北部で生まれ、20世紀を通じて南部へ広がり、さらに国外へ渡りました。Britannicaは、フォーを「 broth, noodles, and meat 」を組み合わせるベトナム料理として整理し、香辛料や魚醤がだしを支えると説明しています。ベトナム観光局も、ハノイでは朝からフォー屋台が湯気を上げる食風景を紹介しています。

フォーガーは、牛骨を長時間煮るフォーボーより家庭向きです。丸鶏、手羽元、鶏ガラのどれかがあれば始められます。日本のスーパーでも米麺、ナンプラー、パクチー、ライムはかなり手に入りやすくなりました。パクチーが苦手なら三つ葉、青唐辛子がなければ一味唐辛子で、家庭の食卓に寄せられます。

同じベトナム料理なら、パンで楽しむバインミーや、葉野菜で包むバインセオも相性のよい隣人です。東南アジアの麺料理で比べるなら、ラオスのカオピヤックセンやミャンマーのモヒンガーと食べ比べると、同じ米麺でも国ごとのだしの考え方が見えてきます。

フォーガーで大事なこと

家庭で狙うべきは、強いスパイス感ではなく、澄んだ鶏だしと香ばしい甘みです。八角やシナモンを入れすぎると牛肉フォー寄りになり、鶏の軽さが隠れます。初回はコリアンダーシードとクローブ少量に絞ると、失敗しにくくなります。

4人分

材料(4人分)

フォーガーは材料が少ないほど、ごまかしが効きません。とはいえ、丸鶏がなければ手羽元、青唐辛子がなければ一味、パクチーが苦手なら三つ葉で十分です。大事なのは、鶏のうまみ、焦がした香味野菜、塩気、甘み、酸味をそれぞれ用意することです。

ベトナム料理に使う香草、野菜、米粉生地の材料
ベトナム料理は香草と野菜を最後に足して、温かいだしに明るさを出す

鶏だし

材料 分量 代替・備考
丸鶏 1羽(約1.2kg) 手羽元8 本+鶏もも肉2 枚でも可
鶏ガラ 500 g なければ手羽先500 gで代用可
2.4L 煮詰まったら湯を足す
玉ねぎ 1 個(約220 g) 長ねぎの青い部分2 本分を追加してもよい
生姜 50 g 皮付きのまま焦がす
小さじ2 最初は控えめに入れ、最後に調整
ナンプラー 大さじ3 薄口しょうゆ大さじ2+塩少々で代用可
きび砂糖 大さじ1 氷砂糖15 g、上白糖大さじ1でも可
コリアンダーシード 小さじ2 パウダーなら小さじ1/2を最後に短時間
クローブ 3粒 入れすぎると薬っぽくなる
黒こしょう粒 小さじ1 白こしょうでも可

麺と具

材料 分量 代替・備考
乾燥フォー麺(バインフォー) 320 g センレック、平たい米麺で代用可
青ねぎ 4 本 小口切り
玉ねぎ 1/2 個(約100 g) 薄切りにして水にさらす
パクチー 1束 苦手なら三つ葉、大葉、せり
もやし 120 g 南部風にするなら多め
ライム 1 個 レモンでも可
青唐辛子 1 本 一味唐辛子、ラー油少量でも可
フライドオニオン 大さじ2 省略可。香ばしさを足す
アレルギーと食品安全

このレシピには鶏肉と**魚醤(魚介由来)**を使います。魚介を避ける場合は薄口しょうゆと塩で代用してください。鶏肉は中心温度74℃以上を確認します。CDCとFoodSafety.govは、鶏肉を安全に食べる目安として165°F(約74℃)を示しています。

フォー麺とナンプラーは一度そろえると、パッタイナシゴレンにも回せます。フォーガーだけのために買うというより、東南アジア料理の常備食材として見ると使い切りやすいです。

米麺は太さで食感が変わります。最初は「フォー用」「バインフォー」と書かれた平たい乾麺を見る価値があります。ビーフンでも作れますが、つるっとした平麺のほうが、澄んだ鶏だしをよく受け止めます。

買い出しで迷ったら、先に「麺」「ナンプラー」「香草」を確保してください。丸鶏は手羽元に替えられますが、フォー麺とナンプラーが抜けると、どうしても別の鶏スープ麺に近づきます。逆にこの2つがあれば、鶏の部位や香草は家庭の都合に合わせても、フォーガーらしい輪郭を保ちやすいです。

フォー用ライスヌードル 400 g
フォー用ライスヌードル 400 g

ナンプラーは、塩だけでは出ない奥行きを足す調味料です。だしを濁らせずにうまみを伸ばせるので、フォーガーでは小さな主役になります。

香りを整えるなら、八角より先にコリアンダーシードを用意してください。鶏だしに合う柑橘のような香りが出て、フォーガーらしい軽さを残せます。

GABAN コリアンダーシード
GABAN コリアンダーシード

調理手順

1

玉ねぎと生姜を焦がす(8分)

玉ねぎ1個を半分に切り、生姜50gは皮付きのまま厚めに切る。魚焼きグリル、焼き網、またはフライパンで切り口に焦げ目がつくまで中火で焼く。表面が黒くなり、甘い香りが出たら止める。焦げた皮は軽くこそげ、真っ黒な粉だけ落とす。

2

鶏を下ゆでする(5分)

丸鶏と鶏ガラを鍋に入れ、かぶる程度の水を注いで強火にかける。沸騰したら1分だけゆで、湯を捨てる。流水で血のかたまりを洗い、鍋も洗う。このひと手間で、後のだしがかなり澄む。

3

静かにだしを取る(55分)

洗った鍋に鶏、鶏ガラ、水2.4L、焦がし玉ねぎ、焦がし生姜、塩小さじ2を入れる。沸いたら弱火に落とし、表面が小さく揺れる程度で55分煮る。鶏肉の中心温度が74℃を超えたら、丸鶏だけ先に取り出す。身を冷まし、骨は鍋に戻してよい。

4

スパイスを短時間だけ入れる(15分)

コリアンダーシード小さじ2、クローブ3粒、黒こしょう小さじ1を乾いたフライパンで1分ほど炒る。香りが立ったらお茶パックに入れ、鍋へ加えて15分煮る。香りが出たら取り出す。長く煮ると、鶏だしよりスパイスが勝つ。

5

味を決める(5分)

ナンプラー大さじ3、きび砂糖大さじ1を加える。味見をして、薄ければ塩を小さじ1/4ずつ足す。甘みは強くしない。飲んだときに「少し物足りない」くらいで止めると、麺と香草を入れたときにちょうどよい。

6

麺を戻してゆでる(10分)

乾燥フォー麺320gをぬるま湯に20分浸し、少し曲がる程度に戻す。食べる直前に沸騰湯で30秒から1分ゆで、ざるに上げる。ゆですぎると丼の中で切れるので、中心に少し芯が残るくらいで止める。

7

鶏肉を裂く(5分)

取り出した鶏の皮を外し、胸肉ともも肉を食べやすく裂く。皮は好みで細切りにする。乾きそうなら、熱いだしを大さじ2かけておく。骨まわりの肉はうまみが濃いので、捨てずに具に回す。

8

丼に組み立てる(3分)

温めた丼に麺を入れ、鶏肉、薄切り玉ねぎ、青ねぎをのせる。熱いだしを注ぎ、パクチー、もやし、ライム、青唐辛子を添える。最初の一口は何も足さず、次にライムをしぼり、最後に唐辛子を足すと味の変化がわかりやすい。

📊 栄養情報(1人分)
525
kcal
33.8g
タンパク質
13.8g
脂質
61.3g
炭水化物
2.5g
食物繊維
1300mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

調理のコツ、店っぽさは強い香りではなく余白

フォーガーを作ると、つい八角やシナモンを足したくなります。スパイス棚にあるものを全部出したくなる気持ち、よくわかります。けれど鶏のフォーは、派手な香りよりも余白が大事です。だしが軽いぶん、香草、ライム、こしょうが最後に動ける場所を残しておきます。

ラオスの鶏だし米麺スープと香草の盛り付け
米麺と鶏だしの料理は、透明感と香草の使い方で印象が変わる

丸鶏がなければ、手羽元と鶏もも肉でよい

丸鶏はだしと具を同時に取れる便利な食材ですが、毎回買えるとは限りません。手羽元8本と鶏もも肉2枚でも十分に作れます。手羽元は骨からゼラチンとうまみが出ます。もも肉は具として食べやすい。胸肉だけで作ると脂とうまみが弱くなるので、鶏ガラか手羽先を足してください。

生姜と玉ねぎは「焦がす」が「焦がしすぎない」

黒い焦げは香りになりますが、粉のように炭化した部分は苦みになります。焼いたあと、表面のすすを軽く落としてから鍋に入れると、甘い香ばしさだけが残ります。ベトナム料理研究家Andrea Nguyen氏のフォーガーでも、玉ねぎと生姜を焦がして甘みと香りを引き出す工程が核になっています。

ナンプラーは最後に足す

ナンプラーを最初から長く煮ると、香りが飛び、塩気だけが残りがちです。だしが取れてから入れると、魚醤のうまみが立ちます。苦手な人がいる家庭では、大さじ2で止めて、食卓で足せるように小皿に置くのも手です。

鶏脂は捨てすぎない

だしを冷ますと表面に黄色い脂が固まります。全部取るとすっきりしますが、香りも薄くなります。食べる直前に小さじ1ほど戻すと、丼の表面に薄い香りの膜ができ、米麺が急に満足感のある味になります。脂が苦手な人がいる場合は、鍋に戻さず小皿に分け、必要な人だけ足せるようにしてください。

麺は別ゆでにする

鍋のだしに直接麺を入れると、米麺のでんぷんが溶けてスープが濁ります。フォーガーの澄んだ印象を残すなら、麺は別の鍋でゆでて丼に入れます。カオピヤックセンのように麺のでんぷんでとろみを楽しむ料理とは、ここが大きな違いです。

香草は全部混ぜない

パクチー、ミント、バジルを最初から全部入れると、だしの香りが見えなくなります。初回は青ねぎとパクチーだけ。南部風に寄せたいときにもやし、バジル、ミントを添える。北部寄りなら香草は控えめにして、こしょうとライムでまとめると食べやすくなります。

アレンジと食べ方

フォーガーは、食卓で完成する料理です。鍋の中で100点にするより、丼の上で家族それぞれが少しずつ仕上げるほうが楽しい。辛いものが好きな人は青唐辛子、酸味が好きな人はライム、香草が苦手な人は青ねぎだけ。ひとつの鍋から、違う味の丼ができます。

ベトナムのバインセオを香草と葉野菜で包む食卓
ベトナム料理は香草や酸味を食卓で足し、ひと口ごとに味を変える楽しさがある
鶏肉と香草をのせたフォーガーの丼
米麺、鶏肉、香草を組み合わせたフォーガー。画像: T.Tseng, CC BY 2.0, Wikimedia Commons

南部風にする

もやし、タイバジル、ミント、ホイシンソース、チリソースを添えると、南部のフォーらしいにぎやかな一杯になります。だしに砂糖を小さじ1だけ足すと、甘みの輪郭が少し太くなります。ただし、ホイシンを入れすぎるとフォーガーではなく甘い麺スープになるので、小皿で調整してください。

北部風にする

香草は青ねぎとパクチー程度に絞り、こしょうを強めにします。ライムも少量で、だしの澄んだ味を前に出します。ハノイで食べるフォーガーの印象に寄せたいなら、卓上で調味料を足しすぎないのが近道です。

時短版にする

平日夜なら、鶏ガラスープの素小さじ2、手羽元6本、水1.5Lで40分煮るだけでも形になります。ただし、玉ねぎと生姜を焦がす工程だけは省かないでください。この香ばしさがないと、ただの鶏塩ラーメンに近づきます。

子ども向けにする

青唐辛子とパクチーを別皿にし、だしはナンプラーを少し控えめにします。麺は短めに切ると食べやすいです。鶏肉は裂いたあと、だしを少しかけて乾きを防ぎます。香草の代わりに小ねぎと白ごまを少しのせると、なじみのある味になります。

余っただしを使う

だしが余ったら、翌朝にごはんを入れて雑炊にできます。溶き卵を回し入れ、ナンプラーを少し足すと、フォーガーの香りを残した朝食になります。ガパオライスの副菜スープとして出しても重くなりません。

保存の目安

鶏だしと具は別々に保存します。だしは冷蔵で2日、鶏肉は冷蔵で2日を目安に食べ切ります。米麺はのびるので保存せず、食べる直前に戻してください。残っただしを温め直すときは、沸騰直前まで十分に温めます。

この料理の背景、フォーガーが家庭向きな理由

フォーの歴史は、ベトナム北部、フランス植民地期、牛肉食文化、米麺、都市の屋台が重なって語られます。Vietnam Travelは、ナムディン省とハノイのフォー文化を紹介し、早朝から歩道の屋台で一杯が組み立てられる様子を描いています。Britannicaも、フォーが北部で生まれ、1954年以降に南部へ移りながら変化した流れを説明しています。

海外のベトナム料理店で出されるチキンフォー
海外へ広がったチキンフォーの一例。画像: Ccharlyzee, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons

フォーガーは、その大きな物語の中では少し静かな存在です。牛肉フォーほど豪華ではありません。けれど家庭で作るなら、鶏のほうがずっと近い。日本のスーパーで買える丸鶏や手羽元でだしが取れ、牛骨のように何時間も煮込まなくても、澄んだスープになります。

Andrea Nguyen氏は、鶏のフォーでは牛肉フォーと同じスパイスを重ねるより、コリアンダーシードや香草で鶏らしさを出す考え方を紹介しています。これは日本の家庭にも合います。香辛料を強くしすぎず、鶏だしの甘みを残す。そこへライムと香草を食卓で足す。フォーガーは、作り手が全部決める料理ではなく、食べる人が丼の上で仕上げる料理です。

また、フォーガーは体調や季節に合わせやすい料理でもあります。寒い日は生姜を少し増やす。夏はライムともやしを多めにする。香草が苦手な家族がいれば、青ねぎだけで出す。東南アジア料理は「辛い」「香草が強い」と思われがちですが、フォーガーはむしろやさしい入口になります。

よくある質問

米麺と鶏肉、青ねぎをのせたハノイのフォーガー
フォーガーは麺と鶏肉を丼に入れ、熱いだしを注いで仕上げる

Q1. 丸鶏がないとフォーガーは作れませんか?

作れます。手羽元8本と鶏もも肉2枚、または手羽先500gと鶏むね肉2枚でも十分です。骨付き部位を入れることが大事です。鶏むね肉だけだとだしが弱く、肉も乾きやすくなります。

Q2. 八角やシナモンは入れたほうがよいですか?

入れてもよいですが、初回は控えめがおすすめです。フォーガーは鶏の軽いだしを楽しむ料理なので、八角1個やシナモン1/2本でも強く感じることがあります。まずはコリアンダーシードとクローブ少量で作り、好みに合わせて次回足してください。

Q3. パクチーが苦手な場合はどうしますか?

三つ葉、大葉、せり、青ねぎで代用できます。香りは変わりますが、温かい鶏だしに青い香りを足す役割は果たせます。完全に香草を抜く場合は、黒こしょうとライムを少し強めにすると味がぼやけません。

Q4. フォー麺がなければビーフンで代用できますか?

代用できます。ただし、ビーフンは細く、食感が軽くなります。フォーガーらしいつるっとした幅広感を出したい場合は、「バインフォー」「フォー用米麺」と書かれた平たい乾麺を選んでください。

Q5. 作り置きできますか?

だしと鶏肉は別々に冷蔵し、2日以内を目安に食べ切ります。麺は保存すると切れやすく、食感が落ちるため、食べる直前に戻してゆでます。冷凍するなら、だしだけを小分けにすると使いやすいです。

参考文献

  • フォーガー
  • ベトナム料理
  • 鶏だし
  • 米麺
  • ナンプラー
  • 作り方
  • 東南アジア料理
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