ナシゴレン。目玉焼きとクルプックが添えられたインドネシア風炒め飯
🔪下準備15分
🔥調理15分
🍽️分量2
🌍料理インドネシア料理
東南アジアレシピ

ナシゴレンの作り方|インドネシア国民食を日本食材で本格再現

18分で読めます世界ごはん編集部

冷ご飯が「国民の誇り」になった話

インドネシアのことわざに「nasi sudah menjadi bubur(ご飯がおかゆになってしまった)」という表現があります。日本語の「覆水盆に返らず」に近い意味で、取り返しのつかない状況を指す言葉です。

しかし実際のインドネシア人は、昨夜の残りご飯を見て「しまった」とは思いません。むしろ「明日の朝のナシゴレンに使える」と考えます。

ナシゴレン(Nasi Goreng)とは、インドネシア語で文字通り「炒めたご飯」。何世紀もの間、インドネシアの人々が余ったご飯を捨てずに美味しく再生してきた知恵の結晶です。現在、インドネシアには104種類以上のナシゴレンが存在し、2018年にはインドネシア政府がソト、サテ、レンダン、ガドガドと並ぶ5つの国民食の一つとして正式認定しました。

単なる炒め飯ではありません。廃棄物をなくし、すべてを活かすというインドネシアの価値観が凝縮された、文化そのものです。

この記事では、日本のスーパーで揃えられる食材だけで、ジャワ風のナシゴレンを本格再現する方法を完全解説します。

ナシゴレンが並ぶインドネシアの屋台。蒸気が立ち上る中华锅で手際よく調理する様子
ジャカルタの路上に立ち並ぶナシゴレン屋台。夜遅くでも熱々が食べられる

同じ東南アジア料理の バインミーガパオライス もあわせてどうぞ。発酵調味料が特徴の料理として、中東の フムスタジン との比較もおすすめです。


ナシゴレンの種類

インドネシア全土で104種類以上のナシゴレンが確認されています(ガジャマダ大学の調査)。代表的な地域スタイルを比較します。

スタイル 特徴 使用する調味料
ジャワ風 甘辛いまろやかな味わい。最も広く知られる ケチャップマニス(甘醤油)中心 濃褐色
バリ風 スパイシーで香り高い。複雑な風味 ターメリック、レモングラス、ガランガル 黄色
スマトラ風 辛味強め。スパイスが豊富 サンバルとチリが中心 赤褐色
マナド風 海鮮風味。北スラウェシ島の特色 ゴロンゴ(地元の辛い薬味) 橙色

この記事ではメインにジャワ風(甘辛い定番スタイル)をマスターします。

ナシゴレンとチャーハンの違い

中国由来のチャーハンと比べると、ナシゴレンの特徴は「ケチャップマニス(甘い醤油)」と「テラシ(エビペースト)」にあります。これがナシゴレン独特の甘い香ばしさと複雑な旨みを生み出します。中国の商人が10世紀にインドネシアへ炒め技術を持ち込み、地元のスパイスと融合して独自に進化した料理です。スパイスを使った東南アジア料理という点では、タイの ガパオライス とも通じるものがあります。


2人分

材料(2人分)

基本材料

材料 分量 代替・備考
ご飯(冷ご飯) 400 g 必ず前日以降の冷ご飯。新鮮なご飯は粘性が出るためNG
鶏もも肉(または豚肉) 120 g 薄切りまたは小角切り
2 個 目玉焼きにして乗せるのが定番
冷凍エビ 80 g 任意。なくても可
玉ねぎ 1/2 個
にんにく 2〜3 片
鷹の爪 1〜2 本 バードアイチリがあれば理想的
サラダ油 大さじ2

調味料

調味料 分量 備考
ケチャップマニス(甘醤油) 大さじ2 下記の代替レシピで自作可能
醤油 大さじ1
ナンプラー(魚醤) 小さじ1 旨みの深み。なければ醤油を増量
テラシ(エビペースト) 小さじ1/2 後述の代替品参照
塩・こしょう 適量

添え物(必須)

材料 備考
きゅうりの薄切り 2〜3切れ
トマト 1/4 個
クルプック(えびせんべい) 市販品でOK。業務スーパーに常時在庫あり

栄養情報

ナシゴレン(1人前 約400 g)の栄養成分の目安:

栄養素 特徴
エネルギー 約480kcal 通常のチャーハンと同程度
タンパク質 約22 g 卵・鶏肉・エビで高タンパク
脂質 約18 g 油・テラシ由来
炭水化物 約58 g ご飯が主成分
ナトリウム 約920mg 醤油類多用のため注意
鉄分 約2.5mg テラシ・エビ由来

健康上の注意点: 調味料に塩分が多いため、高血圧の方はナンプラーと醤油を控えめにすることをお勧めします。野菜(ほうれん草、もやし、パプリカ)を多く加えると栄養バランスが改善します。

豆知識: エビペーストの発酵食品としての効果

テラシはエビと塩を発酵させた調味料で、プロバイオティクスを含む発酵食品です。強烈な臭いがあるため少量しか使いませんが、旨み成分(グルタミン酸)と独特のミネラルが豊富です。加熱することで臭いが飛び、旨みだけが残ります。


調理手順

1

冷ご飯は冷蔵庫から出し、室温に戻す。固まっている場合はほぐしておく

2

玉ねぎは荒みじん切り、にんにくは薄切りまたはすりおろし

3

鷹の爪は種を取って小口切り

4

鶏肉は一口大に切り、塩・こしょうで下味をつける

手順4: 鶏肉は一口大に切り、塩・こしょうで下味をつける
5

中華鍋またはフライパンを強火で予熱。煙が出るくらい熱くする

6

油を加えてにんにくを投入。香りが立ったら(約30秒)玉ねぎを加える

7

玉ねぎが透明になるまで約2分炒める

8

鷹の爪を加えてさらに30秒

9

鶏肉を加え、外側が白くなるまで炒める(1〜2分)

10

テラシを加えて具材と混ぜる。30秒炒めて香りを引き出す

11

冷ご飯を加える。最初は固まっていても構わない

12

ヘラやしゃもじで切るように混ぜながら、ご飯の塊をほぐす

13

ご飯全体が均一になったら、ケチャップマニスと醤油を加える

14

ここが重要: そのまま2〜3分間、混ぜずに焼き付ける。ご飯の底が軽く焦げ始めたらOK

15

ナンプラーを加えて全体をよく混ぜ、塩・こしょうで味を調整

手順15: ナンプラーを加えて全体をよく混ぜ、塩・こしょうで味を調整
16

ナシゴレンを皿に盛る

17

目玉焼きを乗せる

18

きゅうりとトマトを添える

19

クルプックを横に並べる

20

好みでサンバルテラシを添える

手順20: 好みでサンバルテラシを添える
📊 栄養情報(1人分)
240
kcal
11.0g
タンパク質
9.0g
脂質
29.0g
炭水化物
1.5g
食物繊維
460mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

ケチャップマニスの代替レシピ(自作5分)

ケチャップマニスは日本のスーパーではほぼ手に入りません。しかし以下の方法で簡単に自作できます。

材料:

  • 醤油 大さじ3
  • 黒砂糖(またはきび砂糖)大さじ2
  • 水 大さじ1

作り方:

  1. 小鍋に全て入れて弱火にかける
  2. 砂糖が溶けてとろみが出るまで2〜3分加熱
  3. 冷めるとさらにとろみが増す

冷蔵庫で2週間保存可能。ナシゴレン以外にもサテ(串焼き)やマリネに使えます。

テラシ(エビペースト)の代替品
  • 最も近い代替品: 韓国産セウジョ(塩辛)小さじ1/2
  • 次善の代替品: アンチョビペースト小さじ1/4
  • 最終手段: 白味噌小さじ1/2(風味は異なるが旨みを補える)
  • カルディや業務スーパーに「バラチャン」や「カピ」として売られていることがある

サンバルテラシの作り方(添え物)

インドネシアでは「ナシゴレンはサンバルなしでは完成しない」という考えが根強くあります。ひと手間かかりますが、サンバルがあると風味が劇的に変わります。

材料(作りやすい量)

材料 分量
赤唐辛子(大) 3本
鷹の爪 2〜3本(辛さ調整)
にんにく 2片
エシャロット(またはたまねぎ1/4) 3個
テラシ(エビペースト) 小さじ1
ヤシ砂糖(またはきび砂糖) 小さじ1
ライム汁 小さじ2
ひとつまみ
大さじ2

作り方

  1. 唐辛子、にんにく、エシャロットを粗みじん切りにする
  2. フライパンに油を中火で熱し、テラシを加えて香りが立つまで炒める(約1分)
  3. 残りの材料を加え、ペースト状になるまで炒める(5〜7分)
  4. 砂糖、ライム汁、塩で味を調整する

保存: 清潔な瓶に入れ、冷蔵庫で2週間保存可能。冷凍は数ヶ月OK。


よくある失敗と対策

失敗1: ご飯がべちゃべちゃになる

原因: 炊きたてのご飯を使った、または火力が弱かった

対策:

  • 必ず前日以降の冷ご飯を使用する。炊きたてしかない場合は、薄く広げてラップなしで冷凍庫に45〜60分入れる
  • 調理中は常に強火を維持する
  • 具材から出る水分が多いと蒸し煮になってしまうため、野菜は水分が少ないものを選ぶ

失敗2: 焦げが強すぎる

原因: 火力が強すぎた、または目を離した

対策:

  • 「軽い焦げ」は理想的。「パリッとした部分」がナシゴレンの醍醐味
  • 完全に焦げたら回収不能。常に鍋のそばを離れないこと
  • テフロン加工フライパンより鉄製の中華鍋の方がコントロールしやすい

失敗3: 旨みが薄い

原因: テラシを省略した、調味料のバランスが悪い

対策:

  • テラシは少量でも大きく旨みが変わる。代替品でも必ず加える
  • ナンプラーを少量加えるだけで深みが増す
  • 最後に味を見て、塩気が足りない場合は醤油を少量追加

失敗4: 味が一本調子

原因: ケチャップマニスだけに頼った味付け

対策:

  • 甘み(ケチャップマニス)+塩気(醤油)+旨み(テラシ・ナンプラー)+酸味(添え物のトマト)のバランスを意識する
  • クルプックやきゅうりなど食感の異なるものを添えることで、食べる喜びが増す

5つのアレンジレシピ

1. ナシゴレン・カンプン(田舎風)

シャロット、ニンニク、鷹の爪だけのシンプルな味付け。インドネシアの農村部の伝統的な味。鶏肉の代わりに塩漬けの干し魚(イカン・アシン)を使うとさらに本格的。

2. ナシゴレン・パテ(豚肉抜き)

豚肉の代わりに鶏肉と海鮮を組み合わせ、パテ(フランス由来のレバーペースト)を少量加える。ジャカルタの中華系インドネシア人コミュニティで人気のスタイル。

3. ナシゴレン・ベジタリアン

豆腐を小さく切って油で揚げ、テンペ(大豆発酵食品)を加える。テラシの代わりに昆布出汁粉を使うことで旨みを補える。業務スーパーでテンペが入手可能になってきた。中東の ファラフェル(豆腐コロッケ)と同様、豆類を主役にしたベジタリアン料理として人気が高まっている。

4. バリ風ナシゴレン(スパイス強め版)

ターメリック小さじ1/2、レモングラス1本(白い部分をすりつぶす)、ガランガル(または生姜)1片を基本材料に追加。鮮やかな黄色に仕上がり、芳香豊かなバリ風に変わる。

5. ナシゴレン・シーフード

エビ・イカ・アサリを組み合わせたシーフードバージョン。魚醤の量を増やし、ライムを絞って仕上げる。ジャカルタの海鮮レストランで人気の贅沢バージョン。同じく海鮮を活かした料理として、同じ東南アジアの バインミー のシーフードバージョンとの食べ比べも面白い。


歴史と文化:ナシゴレンが「国民食」になった理由

炒め技術の渡来

ナシゴレンの歴史は10世紀に遡ります。中国南部の商人たちがインドネシア群島に貿易でやってきたとき、彼らは鉄製の中華鍋(wok)と高温で素早く炒める調理技術を持ち込みました。

一方、インドネシアには2世紀以前からテラシ(発酵エビペースト)とヤシ砂糖から作るケチャップマニスが存在していました。

この2つが出会い、融合することで、中国のチャーハンでもない、純粋なインドネシア料理でもない、新しい何かが生まれました。それがナシゴレンの原型です。

文学に登場した証拠

1814年のジャワ文学「Serat Centhini」には、「sekul goreng(炒めたご飯)」という表現が登場します。19世紀初頭には既にジャワ島で日常的に食べられていたことが文献で確認されています。

19世紀のジャワ島の市場の様子を描いたイラスト。炊いたご飯を売る露天が描かれている
19世紀のジャワ島。余りご飯を炒めて売るという食文化は既に根付いていた

持続可能性の象徴

ナシゴレンは本質的に「廃棄物ゼロ」の料理です。

インドネシアの家庭では、余ったご飯を翌朝ナシゴレンにするのが当たり前の習慣です。冷蔵庫がない時代、熱帯の気候で素早く傷むご飯を「炒める」ことで保存性を高め、美味しく再生するという知恵が洗練されていきました。

ガジャマダ大学の研究者たちが全国を調査したところ、インドネシア全土で104種類以上の独自ナシゴレンが確認されました。ジャワ州だけで20種類。それぞれの地域が、その土地で手に入る食材を使って独自のバリエーションを発展させてきた証拠です。

2018年の国家認定

2018年、インドネシア政府は国民食を正式認定するプログラムを開始しました。選ばれた5つの料理の一つがナシゴレンです。

他の4つはソト(スパイシースープ)、サテ(串焼き)、レンダン(牛肉の煮込み)、ガドガド(ピーナッツソースサラダ)。いずれもインドネシアを代表する料理ですが、ナシゴレンはその中でも特に「日常性」と「多様性」において突出しています。

朝食でも、昼食でも、深夜の屋台でも。贅沢な具材でも、冷蔵庫の残り物でも。どんな状況にも対応できる懐の深さが、「国民全員の料理」としての地位を確立しました。


日本のスーパーで揃えるポイント

どこで買えるか

食材 購入先
ケチャップマニス カルディ、成城石井、アジア系食材店。なければ自作
テラシ(エビペースト) アジア系食材店、アメ横(東京)、業務スーパー
クルプック 業務スーパー(「えびせんべい」として常時在庫)、輸入食材店
バードアイチリ 業務スーパーの冷凍コーナー、アジア系食材店
ナンプラー 全国のスーパーのアジア料理コーナー

本格派へのステップアップ

カルディや成城石井では「ナシゴレンの素」シリーズも販売されています。初めて作る方はこちらを使い、慣れてきたら自家製調味料に移行するのも良い方法です。ただし市販の素はケチャップマニスの風味が弱いものが多いため、醤油と砂糖を少量追加すると本格的な味に近づきます。


よくある質問

Q: 新しいご飯しかないときは? A: 薄く広げてラップなしで冷凍庫に45〜60分入れると、表面が乾燥してパラパラのご飯に近い状態になります。完璧ではありませんが、代替手段として有効です。

Q: ケチャップマニスなしで作れる? A: 醤油だけでも作れますが、ナシゴレン特有の甘い香ばしさは出ません。醤油2:みりん1で代用するか、自作レシピをお試しください。

Q: テラシはどうしても省略したい(魚介アレルギー) A: テラシを省略し、その代わりに醤油の量を増やして白味噌を少量加えると旨みが補えます。風味は変わりますが、美味しい炒め飯は作れます。

Q: 子ども向けに辛さを抑えたい A: 鷹の爪を省略して、パプリカパウダー小さじ1/2を加えると色味と少しの甘みが出ます。サンバルは大人だけが食べる形にすれば、家族全員で楽しめます。

Q: 具材は何でも入れていい? A: インドネシアの「廃棄物ゼロ」精神に従い、冷蔵庫の残り物を自由に使えます。ただし水分の多い野菜(レタス、きゅうり等)は炒めると水が出るため、加熱時間を短くするか生のまま添えると良いでしょう。


まとめ

ナシゴレンを作る上で最も重要な3つのポイントをおさらいします。

  1. 冷ご飯を使う — 粒がパラパラになる唯一の方法。前日のご飯が最適
  2. 強火で素早く炒める — 水分を逃がして香ばしく仕上げる
  3. ケチャップマニスとテラシを使う — この2つがナシゴレンをチャーハンと区別するもの
完成したナシゴレンの全景。目玉焼き、クルプック、サンバルテラシを添えた本格的な盛り付け
全ての要素が揃ったナシゴレン。目玉焼きの黄身を崩してご飯に絡めながら食べる

104種類以上のバリエーションが示すように、ナシゴレンには「絶対の正解」はありません。今冷蔵庫にある食材で、自分だけのナシゴレンを作ってみてください。

東南アジア料理が好きな方には、バインミー(ベトナムのサンドイッチ)もぜひ試してみてください。同じ東南アジアでも、ベトナムとインドネシアの食文化の違いがよくわかります。中東料理に興味がある方は ケバブファラフェルフムス もぜひ。発酵調味料つながりで タジン(モロッコ料理)との比較も面白いです。


参考文献

  • ナシゴレン
  • インドネシア料理
  • 炒め飯
  • レシピ
  • 東南アジア料理
  • ケチャップマニス
  • サンバル
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