豚骨を下ゆですると、台所に一度だけ強い湯気が上がります。ここで少し不安になります。においは大丈夫か、白いスープになるのか、家で作ってまで食べたい味になるのか。テジクッパは、その最初の湯気を越えると急に落ち着く料理です。弱火で骨と肉を煮ている間、鍋の表面は静かに白く濁り、ねぎとしょうがの香りが豚の脂を丸めていきます。
テジクッパ(돼지국밥 / Dwaeji-gukbap)は、韓国・釜山でよく語られる豚スープご飯です。돼지 は豚、국 はスープ、밥 はご飯。名前だけ見ると「豚のクッパ」ですが、現地の食堂で印象に残るのは、赤い辛さよりも白いスープ、薄く切った豚肉、食卓で足す 새우젓(アミの塩辛)とにら和えです。
日本で作る時は、豚骨をどう買うかが最初の壁です。精肉店で豚背骨やげんこつを頼めれば近づきますが、毎回それは難しい。この記事では、豚背骨があれば使う、なければ豚スペアリブと豚肩ロースで寄せる形にしています。店の大鍋ほど濃くはしませんが、下ゆで、弱火、仕上げの塩味を分けると、家庭の鍋でも「ご飯を沈めて食べたい白い豚スープ」になります。
テジクッパとは|釜山で育った白い豚スープご飯
韓国の 국밥 は、熱いスープにご飯を入れて食べる料理です。日本語のクッパは焼肉店の締めの印象が強いかもしれませんが、現地の 국밥 は朝食、昼食、夜食まで受け止める日常の一杯です。テジクッパはその豚肉版で、釜山や慶尚道の料理として紹介されることが多いです。
釜山のテジクッパは、豚骨や豚肉を煮て白くしたスープに、ゆでた豚肉、ご飯、ねぎを合わせます。味は鍋の中で完成させすぎません。食卓で 새우젓、にら和え、唐辛子だれ、黒こしょうを少しずつ足し、自分の椀で塩気と香りを作っていくのが楽しいところです。
同じ韓国の汁物でも、キムチチゲは酸味と唐辛子、テンジャンチゲは発酵味噌、サムゲタンは鶏ともち米のやさしさが軸です。テジクッパは、豚の脂、白い骨スープ、ご飯、塩辛い薬味の組み合わせで食べる料理です。マンドゥのような粉ものを横に置くより、カクテキ、白菜キムチ、青唐辛子、玉ねぎのような小皿がよく合います。
韓国語では 돼지국밥、ローマ字では dwaeji-gukbap と書かれます。日本語では「テジクッパ」「デジクッパ」「豚肉クッパ」と表記が揺れますが、本記事では検索しやすい「テジクッパ」に統一します。
買い出し導線|通販は香りと道具に絞る
豚肉、ねぎ、玉ねぎ、にら、ご飯は近所のスーパーで十分です。通販で見る価値が出るのは、少量でも香りが変わる韓国ごま油、熱々で出す直火対応の石鍋、かたまり肉の火通りを確認する中心温度計です。새우젓は韓国食材店の冷蔵棚で表示を見て買う方が、塩気や粒の状態を判断しやすいので、ここでは無理に商品カード化しません。
韓国ごま油は、にら和えに小さじ2だけ使います。少量でも香りの立ち方が変わり、ビビンバ、チャプチェ、キンパにも回せます。
直火対応の石鍋や小鍋は必須ではありません。ただ、テジクッパはご飯を入れた瞬間に温度が落ちると急にぼやけます。器を火で温めてから出せると、食卓で 새우젓を溶かす時間まで熱さが残ります。
豚かたまり肉は、見た目だけで中心の火通りを判断しにくい食材です。煮込み後に厚い部分を確認できる温度計があると、切った時の赤みで迷わずに済みます。
日本の台所で本場寄せする分岐
テジクッパは、材料をすべて本場どおりにそろえなくても作れます。ただし、代替の方向を間違えると、豚汁、ラーメンスープ、焼肉店の辛いクッパへ寄ります。守るべきところは、豚骨の白いスープ、薄い塩味、食卓で足す発酵した塩気、熱いご飯です。
| 迷う場面 | 家庭での落とし方 | 避けたい寄せ方 |
|---|---|---|
| 豚骨がない | スペアリブと肩ロースで骨と肉を分ける | 豚こまだけで短時間にする |
| スープが白くならない | 弱火で長く煮て、最後に少し煮詰める | 牛乳や豆乳で白くする |
| 새우젓がない | ナンプラー小さじ2と塩小さじ1/3を小皿で使う | 鍋全体をしょうゆ味にする |
| 辛さを控えたい | タデギを別皿にして、にら和えは半量のコチュカル | 唐辛子を全部抜いて香りまで消す |
| 石鍋がない | 丼を熱湯で温めてからご飯を入れる | 冷たい器にスープを注ぐ |
白いスープを作るために乳製品を入れる必要はありません。豚骨と脂、弱い沸き、長い煮込みで自然に白く寄せます。スペアリブで作る日は、店の白湯ほど濃くはなりません。そのかわり、豚肩ロースをやわらかく切り、にら和えと 새우젓 で輪郭を作ると、家庭版として食べやすい一杯になります。
새우젓 は小さじ1でも塩気が強いので、鍋に入れず、食卓で椀に溶かします。最初から鍋へ入れると、4人分すべてが同じ塩味になり、子どもや塩分を控えたい人が調整できません。韓国食材店で買う時は、冷蔵で売られていて、粒がつぶれすぎず、液が濁りすぎていないものを選ぶと扱いやすいです。
失敗原因|灰色、しょっぱい、ご飯がふやける

| 困りごと | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| スープが灰色っぽい | 下ゆで不足、沸騰が強すぎる | こしてから弱火で温め直し、表面の泡を取る |
| 豚のにおいが強い | 血抜き不足、しょうがが少ない | しょうが5gと長ねぎを追加し、弱火で10分 |
| スープが薄い | 骨が少ない、煮込み時間が短い | ふたを外して弱めの中火で10分煮詰める |
| しょっぱい | 鍋に塩や새우젓を入れすぎた | 無塩の湯150mlとご飯を足し、薬味を控える |
| ご飯がふやける | 早く入れすぎ、器が冷たい | 食べる直前にご飯を入れ、器を先に温める |
スープの色で焦る日は、白さより口当たりを優先します。下ゆでの灰色の泡を落とし、弱火で煮て、最後にこす。この3つができていれば、真っ白でなくても飲みやすいスープになります。白くしようとして強火で揺らし続けると、脂と灰汁が混ざって重くなることがあります。
しょっぱくなった時は、새우젓を鍋へ戻さないことです。湯で薄め、白ご飯を少し増やし、にら和えを控えめにします。唐辛子だれを足すと一瞬ごまかせますが、塩気は下がりません。翌日に回すなら、無塩の湯で薄めたスープだけを別鍋で温め、豚肉とご飯は最後に入れます。
保存と作り置き|スープ、肉、ご飯を分ける

作り置きする場合は、スープ、豚肉、ご飯、にら和えを分けます。粗熱を取る時間を長くしすぎず、鍋底が触れるくらいまで冷めたら浅い容器へ移します。冷蔵は2日、冷凍はスープだけ3週間を目安にします。豚肉は薄く切ってスープ少量をかけておくと乾きにくくなります。
再加熱は、スープを鍋で弱めの中火にかけ、ふつふつしたら豚肉を戻して2分温めます。ご飯は電子レンジで温めてから器へ入れ、最後にスープを注ぎます。ご飯をスープに入れたまま冷蔵すると、翌日は米が水分を吸い、雑炊のようになります。それはそれで食べられますが、テジクッパの軽い食べ心地からは離れます。
にら和えは当日中が一番香ります。翌日に残す場合は、塩気が出て水っぽくなるので、汁気を切ってからのせます。새우젓は清潔なスプーンで取り、瓶の中にスープやご飯粒を入れないようにします。
釜山の食べ方に近づける献立

最初の一口は、何も足さずにスープだけを飲みます。次に 새우젓 を少し溶かし、豚肉を食べます。にら和えを沈めると香りが立ち、タデギを溶かすと赤い辛さが出ます。全部を最初から混ぜるより、白いスープ、塩気、辛味を順番に変える方が、最後まで飽きません。
献立は重くしすぎない方が合います。カクテキ、白菜キムチ、玉ねぎの薄切り、青唐辛子、焼きのりくらいで十分です。もう一品作るなら、焼き物よりもキンパやコンバプのような米の料理より、野菜のナムルや浅漬けが合います。しっかりした主菜を並べたい日は、甘辛いプルコギより、塩味の小鉢を増やす方がスープを邪魔しません。
日本の夕食に寄せるなら、テジクッパを主役にして、冷ややっこ、きゅうりの塩もみ、焼きのり、白菜キムチを置くとまとまります。朝に食べる場合は、ご飯を120gに減らし、スープを多めにすると重くなりません。
よくある質問
豚骨が手に入らないと作れませんか?
作れます。豚スペアリブ800gと豚肩ロース450gを使ってください。店のような濃い白湯にはなりませんが、骨のうまみと薄切り肉の食べやすさは出せます。豚こまだけで短時間にすると、スープの軸が弱くなり、豚汁に近づきます。
새우젓なしで近い味にできますか?
完全には同じになりません。応急的には、ナンプラー小さじ2と塩小さじ1/3を小皿で混ぜ、椀に少しずつ溶かします。鍋全体に入れると塩気を戻しにくいので、食卓で足してください。
スープをもっと白くしたい時はどうしますか?
骨の量と時間が必要です。ふたを外して弱めの中火で10分煮詰めると少し濃くなります。牛乳、豆乳、クリームで白くすると料理の方向が変わるため、このレシピでは使いません。
ご飯は最初から鍋に入れますか?
入れません。店では椀や土鍋の中で合わせることが多く、家庭でも食べる直前に入れる方が失敗しにくいです。鍋にご飯を入れて煮ると、米がスープを吸いすぎ、翌日まで残す時にも扱いにくくなります。
辛くないテジクッパにできますか?
できます。にら和えのコチュカルを小さじ1に減らし、タデギは別皿にします。唐辛子を全部抜くと香りが寂しくなるので、黒こしょうと小ねぎを少し増やすと白いスープの輪郭が残ります。
あわせて作りたい韓国料理
- キムチチゲの作り方 - 酸味と辛味のある汁物を作りたい日に。
- サムゲタンの作り方 - 白いスープでも鶏ともち米でやさしく寄せたい日に。
- 安東チムタクの作り方 - 大皿の韓国主菜を作りたい日に。
- キンパの作り方 - ごま油や韓国食材を別の日に使い回したい時に。














