ごまが焼ける香りで、台所がダマスカスの菓子店に近づく
バラゼックは、白ごまを片面に、ピスタチオをもう片面にまとわせて薄く焼くシリアのクッキーです。オーブンを開けると、最初に立つのはバターではなく、ごまが焼ける香り。少し遅れて、ピスタチオの油分とオレンジフラワーウォーターの花の香りが追いかけてきます。
日本で作るときに迷うのは、薄くのばしても割れない生地、ごまがはがれない蜜、ピスタチオを焦がさない焼き方です。厚く作れば簡単ですが、それではバラゼックらしい「ぱきっと割れて、ごまが口に残る感じ」が出ません。
この記事では、24枚分の家庭量で作ります。生地は薄力粉と少量のコーンスターチで軽くし、バターと油を併用して冷めても硬くなりすぎない配合にします。ごま面には、はちみつと水を薄く溶いた蜜を使い、170度で12分から15分焼きます。強い焼き色より、縁が淡い黄金色になり、中心が白く残らないところを狙います。
アラビア語では برازق と書き、英語では barazek、barazeq、barazik などの表記が見られます。シリア、とくにダマスカスやアレッポの菓子として紹介されることが多く、本記事では日本語表記を「バラゼック」に統一します。
バラゼックは薄さで勝負するシリアのクッキー
バラゼックは、中東のシロップ菓子のように甘い汁を吸わせる菓子ではありません。焼く前にごまへ薄い蜜をまとわせ、表面だけを軽くつや出しします。生地そのものは甘さ控えめで、香ばしさの主役は白ごま。ピスタチオは見た目の飾りではなく、噛んだときに青い香りを足す役割です。
日本の台所で守りたい軸は、次の4つです。
| 守る軸 | 家庭での落とし込み | 失敗しやすいところ |
|---|---|---|
| 薄さ | 直径5cm、厚さ5mm前後にのばす | 厚いと普通のサブレになり、焼き時間もずれる |
| ごま面 | はちみつ水を薄く絡め、ごまを軽く押す | 水分が多いと焼いても湿り、少ないとはがれる |
| ピスタチオ面 | 粗く刻み、片面へ押しつける | 粉にしすぎると油が出て、焼き色が濁る |
| 焼き色 | 170度で縁を淡い黄金色にする | 180度以上で焼くとピスタチオが先に焦げる |
同じ中東菓子でも、レバントのクナーファはチーズとシロップの熱い菓子、トルコのバクラヴァは薄い生地とナッツを重ねる菓子です。バラゼックはもっと軽く、焼き菓子の箱に入れて少しずつ食べるタイプ。食後に大きく切るより、濃い紅茶の横に2枚置くほうが似合います。
買い出しで迷う材料と道具
バラゼックの材料は、見た目より買い出しで差が出ます。薄力粉、牛乳、バターはスーパーで十分です。通販で見る価値があるのは、白ごまを一度に多く使うこと、花の香りをほんの少し足すこと、ピスタチオを均一に粗く刻むこと。この3点です。
バラゼックは1回で白ごまを100g以上使います。小袋を何袋も開けるより、焼き菓子用に大袋を持っておくと、表面を惜しまず覆えます。
オレンジフラワーウォーターは小さじ半分だけですが、香りの輪郭が変わります。クナーファ、バスブーサ、バクラヴァにも回せるので、中東菓子を続けるなら一本あると使い切りやすいです。
ピスタチオは包丁でも刻めますが、粒が大きすぎると生地から浮き、細かすぎると油がにじみます。中東菓子を何度も作るなら、小型のフードプロセッサーはナッツの粒をそろえる道具として出番が多いです。
日本の台所で現地に寄せる勘所
シリアの菓子店のバラゼックは、家庭版よりさらに薄く、表面のごまがびっしり付きます。日本で同じ薄さを狙いすぎると、湿度やオーブンの熱の弱さで割れやすくなります。初回は厚さ5mm前後で安定させ、慣れたら4mmへ寄せるのが現実的です。
| 現地の要素 | 日本での寄せ方 | 代替してよい範囲 |
|---|---|---|
| マハレブの香り | 小さじ1/4だけ入れる | 入手できなければ省き、オレンジフラワーを守る |
| たっぷりの白ごま | 120gを惜しまず使う | 黒ごまは香りが強く別物になる |
| ピスタチオの緑 | 無塩ピスタチオ70gを粗く刻む | 高ければ半量を無塩アーモンドに替える |
| 薄く割れる生地 | バターと油を併用し、コーンスターチを足す | バターだけだと冷めたときに硬くなりやすい |
| ごまの密着 | はちみつ水を薄く使う | 蜜を多くすると表面がべたつく |
マハレブは、さくらんぼの種の中身を粉にした中東や地中海周辺の香辛料です。入ると杏仁や桜餅に近い香りが出ますが、なくてもバラゼックとして食べられます。日本で無理に探すより、まずはごま、ピスタチオ、薄さを守る方が大切です。
白ごまは、軽く煎られたものを使います。深煎りすぎるごまは焼く途中で苦くなりやすいので、袋を開けたときに香りが強すぎるものは避けます。表面を覆うごまを減らすと、見た目は整っても香りが弱くなります。ここは節約せず、余ったごまはモモのごまだれや、フムスの仕上げへ回すと使い切りやすいです。
失敗原因と直し方
| 困った状態 | 主な原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| ごまが落ちる | 蜜が少ない、押し方が弱い、焼く前に乾かしていない | 蜜に軽く触れさせ、ごま面を1秒押し、天板で5分置く |
| 中心が柔らかい | 厚みが7mm以上ある、焼き時間が短い | 5mm前後へそろえ、170度で2分追加する |
| ピスタチオが焦げる | 温度が高い、天板が上段にある | 170度の中段で焼き、色づきが早ければ1分早く出す |
| 生地が割れて成形できない | 休ませ不足、牛乳が少ない、粉を入れすぎた | 20分休ませ、手で握って崩れるなら牛乳を小さじ1足す |
| 食感が重い | 練りすぎ、厚すぎ、コーンスターチ不足 | すり合わせで止め、直径5cm・厚さ5mmを守る |
| 表面がべたつく | 蜜が多い、冷める前に容器へ入れた | 蜜は薄く、網で20分冷ましてから保存する |
一番直しやすいのは厚みです。バラゼックは、直径を大きくするより厚みをそろえる方が重要です。5mm前後にそろえると、170度でも中心まで乾き、ごまが苦くなる前に取り出せます。
ごまが落ちる場合、蜜を増やすより押し方を見直してください。蜜を増やすと、焼き上がりの表面が飴のように湿ります。ごまを入れた皿へ生地を置いたら、上から指をそろえて1秒押す。これだけで、表面の密度がかなり変わります。
食べ方、保存、FAQ
バラゼックは、焼いた当日より翌日の方が香りが落ち着きます。ごまの香ばしさは当日が強く、ピスタチオと花の香りは翌日にまとまります。濃い紅茶、無糖のコーヒー、カルダモンを入れたアラビックコーヒーがよく合います。
| 状態 | 保存方法 | 食べるとき |
|---|---|---|
| 当日 | 完全に冷ましてから密閉容器へ | そのまま。温かい飲み物と合わせる |
| 3日以内 | 乾燥剤を入れて常温保存 | 湿度が高い日は容器の開け閉めを短くする |
| 1週間 | 冷蔵で密閉 | 食べる10分前に室温へ出す |
| 3週間 | 1枚ずつ紙を挟んで冷凍 | 室温で15分戻し、150度のトースターで2分温める |
ピスタチオなしでも作れますか
作れますが、バラゼックらしい緑の香りは弱くなります。代えるなら無塩アーモンドを粗く刻み、同じ70g使います。くるみは油分が強く、焼くと表面が暗くなりやすいので、初回の代替には向きません。
オレンジフラワーウォーターは必須ですか
必須ではありません。ただ、少量入ると中東菓子らしい香りが出ます。省く場合は牛乳を小さじ1/2増やし、バニラエッセンスでは代用しない方がまとまりやすいです。バニラを入れると、味の印象が洋菓子へ寄ります。
ごまは黒ごまでもよいですか
黒ごまでも焼けますが、香りが強く、見た目も別の菓子になります。シリア菓子として寄せるなら白ごまを使います。色を少し変えたい場合でも、黒ごまは全量ではなく大さじ1を混ぜる程度にすると、苦みが出にくいです。
生地は前日に作れますか
作れます。生地を円盤にしてラップで包み、冷蔵で一晩置きます。使う30分前に室温へ出し、指で押してゆっくりへこむ柔らかさに戻してから成形します。冷たいまま薄くのばすと縁が割れやすくなります。
献立にするなら何を合わせますか
食後の菓子として出すなら、塩気と酸味のあるレバント料理のあとが合います。ファラフェル、タブーレ、ババガヌーシュのような前菜を並べ、最後にバラゼックを2枚出すと重くなりません。甘い中東菓子を続けて楽しむなら、エジプトのバスブーサと食感を比べるのも面白いです。
参考文献
- Wikipedia, "Barazek"(2026年5月26日閲覧) https://en.wikipedia.org/wiki/Barazek
- Saveur, "Barazek (Syrian Sesame Pistachio Cookies)"(2026年5月26日閲覧) https://www.saveur.com/article/recipes/barazek-syrian-sesame-pistachio-cookies/
- Maureen Abood, "Barazek Sesame Pistachio Cookies"(2026年5月26日閲覧) https://www.maureenabood.com/barazek-sesame-pistachio-cookies/
- Chef's Pencil, "Barazek (Syrian Sesame Cookies with Pistachios)"(2026年5月26日閲覧) https://www.chefspencil.com/barazek-syrian-sesame-cookies-with-pistachios/












