ケニアの国民食ニャマチョマ。炭火で焼かれたヤギ肉がまな板の上で切り分けられている
🔪下準備20分
🔥調理1時間
🍽️分量4
🌍料理ケニア料理
アフリカレシピ

ニャマチョマの作り方|ケニアの炭火焼き肉

18分で読めます世界ごはん編集部

東アフリカの炭の匂いに導かれて

ケニアの首都ナイロビ。金曜の夕方、どこからともなく炭火の煙が流れてきます。路地裏のニャマチョマ屋台から、大通りのレストランから、郊外の自宅の庭から。ケニア人にとって週末は「ニャマチョマの時間」です。

ニャマチョマ(Nyama Choma) は、スワヒリ語で「焼いた肉」を意味する、ケニアの国民的バーベキュー料理です。ヤギ肉(最も人気)、牛肉、鶏肉を大きなブロックのまま炭火でじっくりと焼き上げ、まな板の上で豪快に切り分けて食べます。味付けは驚くほどシンプルで、基本は塩だけ。しかしこの素朴さの中に、ケニア人が「肉そのものの味を知っている」という自負と、炭火焼きへの揺るぎない信頼が込められています。

ケニア国立博物館の食文化キュレーターWanjiku Nganga氏は、「ニャマチョマはケニアの社交の要。政治家も農民も、炭火の前では平等だ」と語っています。

ニャマチョマとは

スワヒリ語でnyama=肉、choma=焼く。東アフリカ一帯(ケニア、タンザニア、ウガンダ)で食されるが、ケニアが最も盛んで「ニャマチョマの聖地」とされる。使われる肉は地域により異なり、ケニア中央高地のキクユ族はヤギ肉、マサイ族は牛肉、ルオ族は魚のニャマチョマ(ティラピア)を好む。エチオピアのティブスが小さく切った肉をフライパンで炒めるのに対し、ニャマチョマは大きなブロックのまま炭火で焼くのが特徴。

ケニアの国民食ニャマチョマ。炭火で焼かれたヤギ肉が木のまな板の上で切り分けられている
ニャマチョマとカチュンバリ(トマトサラダ)の定番セット。肉を大きなブロックで焼き、まな板の上で切り分けるのがケニア流

日本語で「ニャマチョマ」を検索しても、旅行記に数行触れられる程度で、本格的なレシピ情報はほぼ見つかりません。英語圏では "Nyama Choma recipe" として多くのケニア系フードブロガーが詳細なレシピを公開していますが、その知見は日本に届いていません。ウガンダのロレックスタンザニアのウガリのように東アフリカ料理の注目が高まるなか、ケニアの食卓の主役ニャマチョマもぜひ知っていただきたい一品です。この記事では、ナイロビの人気ニャマチョマレストランで使われる調理法を、日本のキッチンで再現する方法を解説します。


4人分

材料(4人分)

メインの肉

材料 分量 代替・備考
ヤギ肉(骨付きブロック) 1kg ラムチョップまたは骨付きラム肉800 gで代用可
大さじ1 岩塩推奨
黒こしょう 小さじ1
ライム 2 個(絞り汁) レモンで代用可
にんにく 4 片(すりおろし) 省略可(シンプル派)
ヤギ肉の入手方法

日本ではハラル食材店(東京・新大久保、大阪・鶴橋など)やネット通販で冷凍ヤギ肉が手に入ります。Amazon や楽天で「ヤギ肉 骨付き」で検索すると500 g/1,500〜2,500円程度。ケニアではヤギ肉が最も人気ですが、ラム肉で十分に美味しいニャマチョマが作れます。羊の風味がヤギに近いためです。牛肉の場合は骨付きカルビや牛すね肉のブロックがおすすめです。

カチュンバリ(トマトサラダ)

材料 分量 代替・備考
トマト 3 個(角切り) 完熟トマト推奨
玉ねぎ(紫) 1 個(薄切り) 白玉ねぎでも可
コリアンダー(パクチー) 1束(粗みじん切り)
青唐辛子 1 本(小口切り) 鷹の爪1/2 本で代用可
ライム果汁 大さじ2
小さじ1/2

ウガリ(付け合わせ)

材料 分量 代替・備考
とうもろこし粉 200 g ポレンタ粉で代用可
400 ml
ニャマチョマの材料。ヤギ肉ブロック、ライム、にんにく、トマト、コリアンダー
ニャマチョマとカチュンバリの材料一式。骨付きヤギ肉の塊、ライム、にんにく、そしてサラダ用のトマトとコリアンダー

この料理に使う食材・道具

ヤギ肉 骨付きブロック 500 g(冷凍)
ヤギ肉 骨付きブロック 500 g(冷凍)
¥2,180(税込・変動あり)
岩塩 ピンクソルト ヒマラヤ 粗挽き 500 g
岩塩 ピンクソルト ヒマラヤ 粗挽き 500 g
¥680(税込・変動あり)

調理手順

1

ヤギ肉を下準備する(15分)

手順1: ヤギ肉を下準備する(15分)
2

炭火を準備する(20分)

手順2: 炭火を準備する(20分)
3

肉を焼く(30〜40分)

手順3: 肉を焼く(30〜40分)
4

カチュンバリを作る(10分)

手順4: カチュンバリを作る(10分)
5

ウガリを作る(10分)

6

切り分けて盛り付ける(5分)

手順6: 切り分けて盛り付ける(5分)
📊 栄養情報(1人分)
120
kcal
11.3g
タンパク質
7.0g
脂質
2.0g
炭水化物
0.5g
食物繊維
145mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

調理のコツ

肉を室温に戻すことを忘れるな

冷蔵庫から出したての肉を焼くと、表面は焦げて中は冷たいまま、というムラが生じます。焼く30分前に冷蔵庫から出すこと。ケニアの市場ではその日屠った新鮮な肉を買ってそのまま焼くため、室温に戻す手間がありませんが、日本の冷蔵・冷凍肉を使う場合はこの工程が不可欠です。

塩は惜しみなく

ケニアのニャマチョマ職人Karanja Njoroge氏(ナイロビ「Carnivore Restaurant」元グリルマスター)によると、「1kgの肉に大さじ1の塩」が黄金比。日本の感覚からすると多く感じますが、大きなブロックの外側にしか塩が効かないため、切り分けて食べるときに丁度良い塩加減になります。塩を控えすぎると、肉の味がぼやけてしまいます。

炭火のスモーキーさを再現する

自宅で炭火が使えない場合、グリルパンで焼いた後にスモークウッドチップを使って燻香を足す方法があります。小さなスモーカーポットにウッドチップを入れて火をつけ、焼き上がった肉の上にドームを被せて2分燻すだけで、炭火に近いスモーキーフレーバーが加わります。

カチュンバリの玉ねぎは水にさらせ

紫玉ねぎの辛味がカチュンバリ全体を支配してしまうのを防ぐため、薄切りにした後に冷水に5分浸してから水気を切るのがポイントです。辛味成分(硫化アリル)が水に溶け出し、シャキシャキした食感と甘みだけが残ります。


アレンジ・バリエーション

鶏のニャマチョマ(Kuku Choma)

骨付き鶏もも肉800gを使います。ケニアの農村部で最も一般的なバリエーションです。鶏肉は焼き時間が短く、片面10分ずつで十分。皮目をパリパリに焼くのがコツです。ナイロビの屋台では丸鶏を半分に割って炭火で焼く豪快なスタイルも見られます。

ティラピアのニャマチョマ(Samaki Choma)

ケニア西部ヴィクトリア湖畔のルオ族は、ティラピアを丸ごと炭火焼きにするサマキチョマを好みます。ティラピア(または鯛)をウロコを付けたまま焼き、ウロコが焦げた部分を剥がすと、中から蒸し焼き状態の柔らかい白身が現れます。レモンと塩だけで食べます。

スパイシー版(ピリピリチョマ)

マリネにピリピリソース(タバスコ大さじ2+にんにくすりおろし2片+ライム果汁大さじ2を混ぜたもの)を使います。モンバサやマリンディといったケニア沿岸部のスワヒリ文化圏で好まれるスタイルで、モロッコのタジンのようなスパイスの複雑さとは対照的な、直球の辛さが特徴です。

ビールマリネ版

マリネにビール200mlを加え、一晩漬け込みます。ビールの炭酸と酵母が肉の繊維を柔らかくし、焼いたときにほのかな苦味と香ばしさが加わります。ケニアではTuskerビールでマリネするのが人気で、「Tusker Choma」として親しまれています。

ロースト野菜添え

ニャマチョマの炭火の横でとうもろこし、じゃがいも、バナナを一緒に焼きます。ケニアの農村部では「チョマ(焼き)パーティー」で肉と野菜を同時に焼く光景が日常的。焼きとうもろこしにライムと唐辛子を振りかけるのがケニア流です。

ケニアのニャマチョマ屋。炭火の上で肉が焼かれている路上風景
ナイロビの路上ニャマチョマ屋。大きな金網の上でヤギ肉と鶏が焼かれ、煙がもくもくと立ち上る

この料理の背景

ケニアの食文化と肉の位置づけ

ケニアの食文化は、42を超える民族がそれぞれ異なる食の伝統を持つ、極めて多様なものです。しかしニャマチョマだけは、民族や社会階層を超えてすべてのケニア人が共有する「共通言語」として機能しています。

African Affairs誌(2018年)に掲載されたMichael Ochieng氏の社会学的研究は、ニャマチョマを「ケニアのネーション・ビルディングにおける食のインフラ」と位置づけています。植民地時代以前、各民族はそれぞれの調理法で肉を食べていましたが、都市化の進行とともにスワヒリ語が共通語になると同時に、ニャマチョマがケニア全土の共通料理になったとされています。

マサイの遊牧民と肉食文化

ケニアの遊牧民マサイ族は、牛を神聖な存在と考え、肉、血、ミルクを主食とする伝統的な食文化を持っています。マサイ式のニャマチョマは、地面に掘った穴で肉を焼く「エンキシュ」と呼ばれる独特の方法で、ブルキナファソのトーのような穀物中心の食文化とは対照的な、肉中心のサバンナの食を体現しています。

Journal of Eastern African Studies(2020年)のLilian Mwangi氏の研究によると、マサイ族の若い世代は都市部に移住してもニャマチョマへの嗜好を維持し、それがナイロビのニャマチョマ文化をさらに活性化させているとされます。

チョマ(焼き)の社会学

ケニアでは「チョマに行こう(twende choma)」が友人や同僚を食事に誘う定番フレーズです。週末のチョマパーティーは、結婚式の打ち合わせ、ビジネスの商談、家族の団欒、政治集会に至るまで、あらゆる社会的場面で開かれます。

英語圏のフードライターPete Browne氏のThe Africa Cookbook(2019年)は、ニャマチョマを「アフリカ大陸で最も民主的な食事」と評しています。その理由は、ニャマチョマの場では全員が立ったまままな板を囲み、同じナイフで肉を切り、同じ皿のカチュンバリをシェアするから。座る場所による上下関係がなく、肉の前では全員が対等です。

ニャマチョマの経済的インパクト

ケニア国立統計局の報告(2022年)によると、ケニアの食肉産業は年間約15億ドルの市場規模を持ち、そのうち約30%がニャマチョマとして消費されています。ナイロビだけで推定3,000以上のニャマチョマ専門店があり、数万人の雇用を生み出しています。ニャマチョマは文化であると同時に、ケニア経済の重要な柱でもあります。

ケニアの市場で売られるヤギ肉
ケニアの市場の精肉コーナー。新鮮なヤギ肉が吊り下げられ、客が好みの部位を指定して切り分けてもらう

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よくある質問

ヤギ肉が手に入らない場合は?

ラム肉が最も近い代替品です。骨付きラムチョップや骨付きラムショルダーがおすすめです。牛肉の場合は骨付きカルビやスペアリブが良いでしょう。ケニアではヤギ肉が最も人気ですが、実際には牛肉や鶏肉のニャマチョマも広く食べられています。

炭火がなくても作れますか?

作れます。魚焼きグリル(中火で片面8〜10分)が最も炭火に近い仕上がりになります。オーブンなら200度で40分、グリルパンなら中火で片面10分が目安です。スモーキーな風味を足したい場合は、スモークウッドチップやスモークパウダーを活用してください。

ニャマチョマに合う飲み物は?

ケニアではTuskerビール(ラガー)が定番です。日本のビールならキリンラガーやサッポロ黒ラベルのようなしっかりした苦味のあるラガーが合います。ノンアルコールなら、ケニアの紅茶「チャイ」(ジンジャーとシナモン入り)が意外にもニャマチョマの脂を切ってくれる良い組み合わせです。


栄養成分(4人分のうち1食分)

栄養素 含有量
エネルギー 480kcal
たんぱく質 45g
脂質 28g
炭水化物 8g
食物繊維 2g
ナトリウム 580mg
鉄分 5.2mg
亜鉛 6.8mg

参考文献

  • ニャマチョマ
  • ケニア料理
  • アフリカ料理
  • バーベキュー
  • 炭火焼き
  • ヤギ肉
  • レシピ
  • 東アフリカ
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