器に盛られているのは、淡いクリーム色の豆のピュレ。表面に落としたオリーブオイルが小さな金色の輪をつくり、脇にはちぎったパンが積まれ、卓の上にはクミンの小瓶が置かれています。パンの端を豆に浸してすくい上げ、クミンをひと振りして口に運ぶ。これがビサラの典型的な食べ方です。乾燥そら豆のスープと呼ばれることもあるこの料理は、皮をむいた乾燥そら豆を煮て滑らかにしたモロッコのもの。牛乳も生クリームも加えていないのに、豆を潰すだけで、とろりとした濃度がつきます。
モロッコ北部の食卓では、パンでもスプーンでも
綴りはBissara、Bessara、Bisarraなどいくつもあり、特にモロッコ北部で親しまれています。屋台で食べる人もいれば、家の台所で作る人もいる、そんな身近な料理です。濃く仕上げたピュレは共用の皿に盛り、みんなでパンを浸してすくいます。薄めに伸ばしたものは個々の器に注いで、スプーンで飲みます。両者の中間の濃度にすることもできます。北部では魚料理の付け合わせとして出る場合もありますが、全国どこでも同じ食べ方というわけではありません。この記事のレシピは、パンですくえる濃さを基本にしています。
作り始める前に、時間と買い物を見ておきましょう。家庭向けに調整した配合で、4人分です。皮なしの乾燥割りそら豆250gを、一晩(8時間以上)水に浸けておき、調理そのものは約90分を予定してください。にんにくと一緒に豆を煮て潰し、食卓でクミンと油をかけて仕上げます。濃さは、取り置いた煮汁をどれだけ戻すかで変わります。生のそら豆や冷凍そら豆では、できあがりが別物になります。買うときは、乾燥・皮なし・割り豆の3点を確かめてください。いちばん大事なのは皮なしの乾燥割り豆であることです。
ビサラには、乾燥割りえんどう豆で作るものもあります。そら豆とえんどう豆は別の豆なので、色も風味も同じではありません。えんどう豆版では、玉ねぎを使う配合もあります。地域や家庭によって作り方はさまざまで、ひとつの正解に絞れるものではありません。
途中で見つける、味の決め手
ざらつきと焦げつきを防ぐには
ピュレにするときは、熱い飛沫に気をつけてください。まず、お使いのブレンダーが熱い液体に使えるか、説明書で確かめます。作業が終わったら、刃を止めてから持ち上げ、それから液面の外へ出します。密閉式のミキサーに、熱いスープをそのまま入れるのは避けてください。対応する温度や容量の指示がわからないときは、冷ましてから作業します。
仕上がりがざらつくときは、粒が硬いまま潰していないかを疑います。まだ潰す前なら、水を足して10分ずつ煮足してください。豆の古さや加工状態で、かかる時間は変わります。約60分という時計よりも、芯まで軟らかくなったかどうかを優先しましょう。
ビサラは冷めると濃くなります。温め直すときは、まず水を50mlずつ加え、底を混ぜながら中弱火にかけます。一度にたくさん注がず、食べたい濃さを見ながら水を少しずつ戻すのがコツです。鍋底が焦げついたら、底をこすって混ぜ込まないでください。
味が物足りなく感じたら、塩に手を伸ばす前に、器に仕上げ用の油とクミンを加えます。一口分を味見してから、塩を足してください。辛味を豆のピュレと分けておけば、同じ鍋のビサラを辛いものが苦手な人とも囲めます。レモン汁は任意です。酸味を強くして豆の味を覆うより、少量で変化を見るくらいがちょうどいいでしょう。
そら豆がない日は、割りえんどう豆で
乾燥割りえんどう豆でも、ビサラは作られます。緑色の割り豆を使えば、仕上がりも緑がかった色になり、そら豆版と同じ味にはなりません。割りえんどう豆という別のビサラだと考えてください。乾燥割りえんどう豆には、一晩の浸水を要しない配合もあります。材料の商品説明を優先し、洗ってから煮ます。この配合のそら豆250gを同量の割りえんどう豆に替える家庭向けの応用なら、弱火で50〜60分を目安に、芯がなくなるまで煮ます。吸水と濃度を見ながら、水を足してください。
トッピングは、クミンと油が軸です。カイエンは別添えにして、辛味は器ごとに調整できるようにしましょう。辛くないパプリカなら、色を添えられます。ブイヨンを入れなくても作れますし、肉や乳製品を使わない基本配合なので、追加するだしやパンの原材料まで確かめれば、食事の条件にも合わせやすい料理です。なお、生や冷凍のそら豆は乾燥豆と水分量が異なるため、この分量と煮時間のまま置き換えないでください。
北部の日常の食卓から、夏の旅先まで
北モロッコでは、ビサラは単品でも、魚の脇役としても食べられます。薄い汁物だけを想像していると、パンですくうピュレという食べ方を見落としてしまいます。朝にも夜にも食卓に上る料理で、祝祭専用ではありません。豪華な肉料理ではなく、豆を中心に組み立てる日常の食事として楽しまれています。
モロッコ料理のレシピを発信しているSalima Benkhaltiは、こんな記憶を書いています。父とラバトからマラケシュへ夏の車旅をした際、道沿いの食堂でビサラを注文したというのです。これはSalima本人の回想です。本人は冬に作ることが多いそうですが、現地では暑い夏の日にも出されると述べています。夏の旅先にもあるスープとして、ビサラは季節を選ばず食べられているようです。
ビサラの味作りは、二つの段階に分かれます。鍋で豆を煮る段階と、食卓で油・クミン・辛味を足す段階です。店や家庭によって、濃さも卓上の調味料も違います。油の量や辛さの加減で、正統かどうかを測るものではありません。

豆のスープとパンだけの食卓に、野菜料理も足したいなら、下のザアルークがよく合います。肉とトマトの入る、別のモロッコのスープを知りたい方は、ハリラをどうぞ。ビサラとは別の料理です。
よくある質問
皮付きの乾燥そら豆でも作れますか?
作れますが、皮を除く手間がかかり、浸水や加熱の時間も変わります。このレシピの時間は、この時間は皮なし割り豆が前提です。すでに皮付きを買ってしまった場合は、商品の説明に従って戻し、皮を除いてから、芯まで軟らかくなったかを確かめてください。皮を残すと、口当たりが異なります。
ミキサーがなくても滑らかになりますか?
豆を十分に軟らかく煮て、煮汁を取り置きながらざるで裏ごしする方法があります。ブレンダーより時間はかかります。木べらで潰すだけでは、粒感が残ります。ただし、粒があることと、硬い芯が残ることは別のことなので、区別して見てください。
残ったビサラはどう保存しますか?
大きな鍋のまま長く常温に置かず、小分けの容器に移して速やかに冷まします。調理後1〜2時間以内に冷蔵してください。小分けして速やかに冷蔵するのが基本で、冷蔵庫は4℃以下が目安です。48時間以内に食べ切れない分は、冷凍します。冷凍も小分けにして日付を付け、品質の目安は1か月です。食べるときは冷蔵庫で解凍し、必要量だけ取り出して、全体が十分に熱くなるまで混ぜながら再加熱します。濃さは水を加えて戻します。ここに書いた保存期間は、常温に置いたものの安全を保証するものではありません。
アレルギーに合わせて何を確認しますか?
そら豆を避ける必要がある人には、出さないでください。割りえんどう豆に変える場合も、その人が食べられる材料かどうかを確かめてからにします。添えるパンには、小麦や乳製品などを含む商品があります。スープだけでなく、パン、混合香辛料、追加するだしの原材料表示も確認してください。











