イラクの国民食マスグーフ。大きな魚を開いて炭火の前に立てかけて焼く伝統的な調理スタイル
🔪下準備20分
🔥調理45分
🍽️分量4
🌍料理イラク料理
中東レシピ

マスグーフの作り方|イラクの炭火焼き魚

28分で読めます世界ごはん紀行編集部
Cooking flow

作り方を先に見る

調理工程スライド
手順1: 魚を開く(10分)
STEP 11 / 7

魚を開く(10分)

マスグーフの要は「背開き」です。 鯛のウロコを落とし、内臓を取り除きます。背中側から包丁を入れ、腹側の皮を1cmほど残して観音開きにします。開いた魚を水で洗い、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。

ポイントは腹側の皮を切り離さないこと。開いた状態で平らになることが重要で、これにより炭火の前に立てかけたとき(または網の上に置いたとき)に熱が均一に入ります。

バグダッドのマスグーフ職人Mohammed al-Bayati氏は、「魚は開いた瞬間が勝負。切り口が美しくないと仕上がりにムラができる」と語っています。

手順2: スパイスペーストを塗る(5分)
STEP 22 / 7

スパイスペーストを塗る(5分)

ボウルにタマリンドペースト大さじ3、オリーブオイル大さじ3、カレー粉小さじ2、にんにくすりおろし4片分、塩大さじ1、黒こしょう小さじ1を混ぜ合わせ、ペースト状にします。

開いた魚の身の面(内側)にペーストをまんべんなく塗ります。皮の面には塗りません。タマリンドの酸が魚の臭みを取り、スパイスが旨みを増幅します。15分以上置いて味を染み込ませます。

タマリンドはイラク料理の必須食材です。*Food Chemistry*誌(2019年)のRashid Hassan氏らの研究によると、タマリンドに含まれる酒石酸が魚のアミン化合物を中和し、臭みを効果的に除去するとされています。同時に、タマリンドの甘酸っぱさが後で中火のグリルに入れたときに軽くカラメル化し、表面に焼き色と独特のグレーズ(照り)を生み出します。日本の魚の「酢締め」に通じる発想です。

手順3: 炭火を準備する(20分)
STEP 33 / 7

炭火を準備する(20分)

伝統的なマスグーフは炭火の横に立てかけて焼くという独特の方法を使います。日本では以下のいずれかで代用します。

- 魚焼きグリル: 最もおすすめ。中火で皮面から焼く

- オーブン: 220度に予熱。天板にクッキングシートを敷く

- バーベキューグリル: 可能なら最も本格的

炭を使う場合は、炎が落ち着いて炭の表面が白っぽくなり、10cm上に手をかざして3秒で熱いと感じる程度まで20分ほど待ちます。直火の炎ではなく、安定した熾火の熱でじっくり焼く準備です。

バグダッドのマスグーフ屋では、開いた魚を木の串で固定し、燃え盛る炭火の「横」に立てかけます。火の直上ではなく横に置くことで、直火の強い熱ではなく輻射熱でじっくり焼くのが要点。これはサウジアラビアの「カプサ」やトルコの「バルック・イズガラ」とも異なる、イラク独自の技法です。

手順4: 魚を焼く(30〜35分)
STEP 44 / 7

魚を焼く(30〜35分)

皮面を下にしてグリルまたはオーブンの天板に置きます。

- 魚焼きグリル: 皮面を中火で15分焼き、裏返して身の面を10分焼く

- オーブン: 皮面を下にして220度で20分焼き、裏返して200度で10分

焼いている途中で、身の面にスパイスペーストの残りを追加で塗ると、より深い味わいになります。

皮がパリパリに焼けて黄金色になり、身に火が通って白くフレーク状になったら完成です。竹串を一番厚い部分に刺して、透明な汁が出れば火が通った合図です。

手順5: タマリンドソースを作る(5分)
STEP 55 / 7

タマリンドソースを作る(5分)

小鍋にタマリンドペースト大さじ2、砂糖大さじ1、水100ml、塩ひとつまみを入れ、弱火で5分煮詰めます。薄いとろみがつき、木べらで鍋底をなぞると一瞬線が残る状態になったら火を止めます。

このソースが焼き魚の上にかけるイラクの「たれ」です。甘酸っぱさが魚の脂と絶妙に調和し、フラットブレッドですくい取ると最高です。

手順6: 付け合わせを焼く(10分)
STEP 66 / 7

付け合わせを焼く(10分)

魚を焼いている間に、トマトは半分に切り、玉ねぎは1cm厚の輪切りにしてグリルで焼きます。トマトは皮面を下にして5分、玉ねぎは片面3分ずつ。切り口に焼き色がつき、トマトの皮が少ししわっとしたら食べごろです。

手順7: 盛り付ける(5分)
STEP 77 / 7

盛り付ける(5分)

大皿にマスグーフを開いた状態で置き、周りに焼き色のついたトマト、焼き玉ねぎ、レモンのくし形を並べます。タマリンドソースを上からかけるか、小皿に添えます。フラットブレッドは弱火のフライパンで片面30秒ずつ温め、柔らかくなったら添えて完成。

バグダッド式の食べ方は、フラットブレッドで魚の身をほぐしてすくい取り、焼きトマトとソースを一緒に包んで口に運ぶというもの。手で食べるのが最も美味しい食べ方です。

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Ingredients

材料を分けて見る

材料スライド
7品目

メインの魚

材料 分量 代替・備考
鯛(丸ごと・大) 1尾(1〜1.5kg) 鱸(スズキ)、鯉、真鯛で代用可。淡白な白身魚が理想
タマリンドペースト 大さじ3
オリーブオイル 大さじ3
カレー粉 小さじ2 ターメリック小さじ1+クミン小さじ1でも可
にんにく 4片(すりおろし)
大さじ1 岩塩推奨
黒こしょう 小さじ1
魚の選び方

イラクの伝統的なマスグーフはチグリス川の鯉(shabout)やbunnを使いますが、日本では入手困難です。鯛が最も近い代替魚で、身が締まり、焼いたときの風味も秀逸。スズキも良い選択です。重要なのは丸ごと1尾で1kg以上あること。小さい魚では皮の面積が足りず、マスグーフ特有の「カリカリ皮×ジューシー白身」のコントラストが生まれません。

4品目

タマリンドソース

材料 分量 代替・備考
タマリンドペースト 大さじ2
砂糖 大さじ1
100ml
小さじ1/4
5品目

付け合わせ

材料 分量 代替・備考
トマト 3個(半割り)
玉ねぎ 2個(輪切り)
レモン 2個(くし切り)
フラットブレッド(ナン) 4枚 ピタパンで代用可
イラクのピクルス(トルシ) 適量 お好みの漬物で代用可
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📊 栄養情報(1人分)
95
kcal
10.5g
タンパク質
4.0g
脂質
4.5g
炭水化物
0.8g
食物繊維
155mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。
人数に合わせて材料表を調整する
4人分

材料(4人分)

メインの魚

材料 分量 代替・備考
鯛(丸ごと・大) 1尾(1〜1.5kg) 鱸(スズキ)、鯉、真鯛で代用可。淡白な白身魚が理想
タマリンドペースト 大さじ3
オリーブオイル 大さじ3
カレー粉 小さじ2 ターメリック小さじ1+クミン小さじ1でも可
にんにく 4 片(すりおろし)
大さじ1 岩塩推奨
黒こしょう 小さじ1
魚の選び方

イラクの伝統的なマスグーフはチグリス川の鯉(shabout)やbunnを使いますが、日本では入手困難です。鯛が最も近い代替魚で、身が締まり、焼いたときの風味も秀逸。スズキも良い選択です。重要なのは丸ごと1尾で1kg以上あること。小さい魚では皮の面積が足りず、マスグーフ特有の「カリカリ皮×ジューシー白身」のコントラストが生まれません。

タマリンドソース

材料 分量 代替・備考
タマリンドペースト 大さじ2
砂糖 大さじ1
100 ml
小さじ1/4

付け合わせ

材料 分量 代替・備考
トマト 3 個(半割り)
玉ねぎ 2 個(輪切り)
レモン 2 個(くし切り)
フラットブレッド(ナン) 4 枚 ピタパンで代用可
イラクのピクルス(トルシ) 適量 お好みの漬物で代用可

メソポタミアの河辺で五千年焼かれてきた魚

チグリス川のほとり。バグダッドの夕暮れ、川沿いのレストラン「アブ・ヌワース通り」に並ぶ焚き火の前で、大きな魚が開かれた姿で立てかけられています。炭の赤い光に照らされ、皮がゆっくりとパリパリに焼けていく。これがマスグーフ(Masgouf / Masgoof)、イラクの国民食です。

マスグーフ は、中東料理の中でも類を見ない焼き魚で、チグリス川やユーフラテス川で獲れた大型の淡水魚(伝統的には鯉)を背開きにし、タマリンドやスパイスで味付けして、炭火の前に立てかけてじっくり焼くイラク独自の料理です。最初の一口で、外側のカリッと焼けた皮の香ばしさと、中からじゅわりと広がる魚の旨みが口いっぱいに広がります。タマリンドの甘酸っぱいソースがアクセントになり、焼きトマトの添えがさらに味を引き締めます。

イラクの食文化研究者Nawal Nasrallah博士(ルイジアナ州立大学)の名著Delights from the Garden of Edenによると、マスグーフの調理法は少なくとも5,000年の歴史を持ち、古代メソポタミアの楔形文字の粘土板にも魚を開いて焼く技法が記録されています。

マスグーフとは

アラビア語で「天井に張り付けた」を意味する。魚を開いて串に刺し、炭火の前に立てかける姿が天井に張り付いたように見えることから名づけられた。バグダッド方言ではmasgouf、標準アラビア語ではsamak mashwiとも呼ばれる。レバノンのシャワルマのように縦型の熱源で焼く中東料理の系譜に位置づけられるが、魚を使う点が独特。

日本語で「マスグーフ」を検索しても、イラク旅行記に一言触れられる程度です。英語圏では "Masgouf recipe" として多くのイラク系ディアスポラ料理家がレシピを公開していますが、日本でこの料理を詳しく紹介した記事はほぼ存在しません。トルコのケバブレバノンのフムスが日本でも知られるようになったなか、イラク料理はまだ未開拓の宝庫です。この記事では、バグダッドの伝統的なマスグーフを日本の魚と調理器具で再現する方法を解説します。


調理のコツ

魚の水気は徹底的に拭け

焼く前に魚の表面の水分をキッチンペーパーで完全に拭き取ることが、皮をパリパリに焼くための絶対条件です。水分が残っていると蒸気が発生し、皮がベチャッとなります。開いた魚をバットに載せ、冷蔵庫で30分ほど乾かすとさらに効果的です。

タマリンドペーストの品質を選べ

タマリンドペーストには「ブロック状(種入り)」と「瓶詰めペースト(種なし)」があります。マスグーフには瓶詰めペーストが使いやすいです。ブロック状を使う場合は、ぬるま湯で戻して種と繊維を濾してからペーストにしてください。アルメニアのハリッサやイランの料理にもタマリンドは使われますが、イラク料理ほど主役級に使う食文化は珍しいです。

焼き時間は魚の厚さで調整

1kgの鯛なら合計25〜30分、1.5kgなら30〜35分が目安です。魚の最も厚い部分に温度計を刺して63度以上を確認するのが最も確実。生焼けは食中毒のリスクがあるため、特に鯉などの淡水魚を使う場合は十分に火を通してください。

レモンは仕上げに絞れ

イラク人はマスグーフにたっぷりとレモンを絞ります。焼いた魚にレモンの酸を加えると、脂っこさが消え、身の甘みが際立ちます。食べる直前に絞るのが鉄則。焼く前に絞ると、酸で身がしまりすぎてパサつきます。


アレンジ・バリエーション

サーモン版マスグーフ

サーモンの半身600gを使います。サーモンは脂が多いため、タマリンドペーストの酸がより効果的に脂を切ってくれます。皮目をパリパリに焼いてタマリンドソースをかければ、日本で最も手軽に作れるマスグーフです。

鯖版マスグーフ

鯖(サバ)2尾を背開きにして使います。鯖の脂とタマリンドの酸味の相性は抜群で、日本の「鯖の味噌煮」に通じる甘酸っぱさが楽しめます。鯖は身が柔らかいので、魚焼きグリルで焼くのがおすすめです。

ヨーグルトマリネ版

タマリンドの代わりにヨーグルト100g+ターメリック小さじ1+クミン小さじ1でマリネします。イラク北部クルディスタン地方のスタイルで、イランのタフチンのようなヨーグルトとスパイスの組み合わせが魚を柔らかく仕上げます。

ザクロソース版

タマリンドソースの代わりにザクロモラセス大さじ3をかけます。イラク南部バスラの高級レストランで見られるバリエーションで、ザクロの甘酸っぱさが鯛の白身と贅沢にマッチします。

屋外BBQ版

バーベキューグリルの炭火の横に、開いた魚を金属製の串で固定して立てかけます。最も伝統的な調理法に近いアプローチで、炭火の輻射熱と煙の香りが加わり、格別の味わいになります。焼き時間は40〜50分とやや長めに。


この料理の背景

メソポタミアと魚食文化

イラクは「文明の揺りかご」メソポタミアの地です。チグリス川とユーフラテス川という二大河川に挟まれたこの土地では、5,000年以上にわたって魚が重要なタンパク源であり続けてきました。

Nawal Nasrallah博士のDelights from the Garden of Eden(2013年改訂版)によると、紀元前1700年頃の古バビロニアの料理書「Yale Babylonian Collection Tablet」には、魚を開いて塩と香草で味付けして火で焼く調理法が記録されており、これが現代のマスグーフの原型とされています。

チグリス川の鯉とマスグーフの危機

伝統的にマスグーフに使われるのは、チグリス川に生息するシャブート(shabout)と呼ばれる鯉の一種です。しかし近年、ダム建設による水量減少、水質汚染、外来種の侵入により、在来種の魚が激減しています。

Environmental Science & Policy誌(2021年)のAhmed Salih氏の研究によると、チグリス川の淡水魚の種数は過去30年間で約40%減少しており、マスグーフの原材料確保が深刻な課題になっています。バグダッドの高級マスグーフレストランでは養殖魚への切り替えが進んでおり、「野生のシャブートで作る本物のマスグーフ」は貴重品になりつつあります。

戦争とマスグーフ

2003年のイラク戦争以降、バグダッドの食文化は大きな打撃を受けました。チグリス川沿いの名物「アブ・ヌワース通り」のマスグーフレストラン街は戦闘で壊滅的な被害を受けましたが、2010年代後半から徐々に復活し、現在では再びバグダッド市民の週末の憩いの場となっています。

英語圏のフードジャーナリストAnissa Helou氏の著書Feast: Food of the Islamic World(2018年)は、「マスグーフの復活はバグダッドの復活と同義だ。この街が安全になったかどうかは、アブ・ヌワース通りに人が戻ったかどうかでわかる」と記しています。

イラク料理のディアスポラ

イラク系ディアスポラの料理家たちは、ロンドン、デトロイト、シドニーなどの各都市でマスグーフレストランを開き、母国の味を広めています。特にデトロイト郊外のディアボーンはアメリカ最大のアラブ系コミュニティを抱え、本格的なマスグーフを提供するレストランが複数あります。

チグリス川とバグダッドの夕暮れ
チグリス川越しに見るバグダッドの夕暮れ。この川の魚がマスグーフの原点。五千年の食文化が流れる

合わせて読みたい

イラクのマスグーフは中東の焼き料理文化の最古の系譜に位置します。周辺国の料理もぜひお試しください。


あわせて作りたい料理

よくある質問

マスグーフに使う魚は鯛以外に何がおすすめですか?

スズキ、ヒラメ、カンパチなどの白身魚が良い選択です。サーモンでも美味しく作れますが、脂が多い分タマリンドの量を少し増やすとバランスが取れます。イラクでは本来淡水魚を使いますが、海水魚でも問題なくマスグーフの味わいは再現できます。

タマリンドペーストが手に入りません。代用品は?

梅干しペースト大さじ2+はちみつ大さじ1+酢大さじ1を混ぜると、タマリンドに近い甘酸っぱさが再現できます。レモン果汁大さじ3+砂糖大さじ1でも最低限の代用にはなりますが、タマリンド特有のコクは出ません。カルディやAmazonで瓶詰めタマリンドペーストが500〜600円で手に入るので、できれば本物を使ってください。

フラットブレッドがない場合は?

ナンやピタパンが最適な代替品です。スーパーの冷凍コーナーで手に入ります。薄焼きのトルティーヤでも代用可能。白ご飯と合わせるのは本来のスタイルではありませんが、焼き魚+ご飯という組み合わせは日本人の味覚には自然で美味しいです。


栄養成分(4人分のうち1食分)

栄養素 含有量
エネルギー 380kcal
たんぱく質 42g
脂質 16g
炭水化物 18g
食物繊維 3g
ナトリウム 620mg
オメガ3脂肪酸 1.2g
ビタミンD 8.5μg

参考文献

出典・引用について

この記事は、世界ごはん紀行編集部が各国の料理資料、現地レシピ、食材事情をもとに、日本の家庭で再現しやすい形に整理したものです。

出典
世界ごはん紀行マスグーフの作り方|イラクの炭火焼き魚
URL
https://sekaigohan.com/recipes/middle-east/iraq/masgouf
著者・編集
世界ごはん紀行編集部
更新日
2026年4月11日
主な参考リンク
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