サンバル代用の物語 — ひとさじで炒め飯がインドネシアに寄る
ナシゴレンを作る日に、台所でいちばん迷うのは鶏肉でも卵でもなく、赤い小瓶かもしれません。レシピには「サンバル」「サンバルオレック」「サンバルテラシ」と書いてある。けれど近所のスーパーにはスイートチリソースしかなく、カルディでも見つかる日と見つからない日がある。ここで諦めると、炒め飯はただの甘辛いチャーハンに近づいてしまいます。
**サンバル(sambal / sambel)**は、唐辛子を主役に、にんにく、赤玉ねぎ、ライム、トマト、発酵えびペーストのテラシ(terasi)などを合わせるインドネシアの辛味調味料です。単なる「辛いソース」ではなく、米料理、揚げ物、焼き魚、テンペ、サテの横に置かれる、食卓のスイッチのような存在です。
日本の台所で本場と同じ材料を全部そろえる必要はありません。守るべき骨格は、唐辛子の辛味、にんにくと玉ねぎの香り、えび系のうま味、ライムか酢の酸味、少しの甘みです。この5つがそろうと、ナシゴレンの作り方にひとさじ添えた瞬間、味の輪郭がぐっとインドネシア側へ寄ります。

この記事では、市販サンバルがない日に作れる「ナシゴレン用サンバル代用」を、20分で作れる分量に落とし込みます。テラシが手に入る場合、干しえびで寄せる場合、えびを使わずに作る場合を分け、辛さを控えたい家庭向けの調整も入れます。インドネシア料理まとめの入口としても使える、冷蔵庫に残しておきたい小さな赤い調味料です。
ナシゴレン、ミーゴレン、焼き魚、鶏のグリルに合わせやすい、加熱タイプのサンバル代用を作ります。現地のサンバルそのものを完全再現する記事ではなく、日本で買える材料で「何を守り、何を代えるか」を決めるための記事です。
まず知っておく — サンバルは1種類ではない
サンバルを「インドネシアのチリソース」とだけ覚えると、代用で迷います。実際には地域、家庭、料理により別物と言ってよいほど幅があります。Journal of Ethnic Foodsに掲載された2022年のレビューでは、インドネシアの料理本から110種類のサンバルを整理し、唐辛子以外の副材料が味の個性を作ると説明されています。
特に日本の家庭で使い分けやすいのは、次の4系統です。
| 名前 | 現地での役割 | 主な材料 | 日本で代用するときの考え方 |
|---|---|---|---|
| サンバルオレック / ulek | すりつぶした基本の唐辛子ペースト | 赤唐辛子、塩、酸味 | 唐辛子、酢、塩だけでも成立。料理のベース向き |
| サンバルテラシ | 米料理や魚に合ううま味強め | 唐辛子、テラシ、にんにく、砂糖、ライム | 干しえび、ナンプラー、アンチョビでうま味を補う |
| サンバルマタ | バリの生サンバル。香りを足す | 赤玉ねぎ、唐辛子、レモングラス、ライム | 保存より即食向き。ナシゴレンの代用には香りが軽い |
| サンバルバジャック | 甘みと油で炒めた加熱サンバル | 唐辛子、玉ねぎ、トマト、砂糖、油 | 日本の作り置きに向く。辛さを丸めやすい |
今回作るのは、サンバルテラシとサンバルバジャックの中間です。テラシの強烈な発酵臭を、日本で買いやすい干しえびとナンプラーで少し丸め、油で炒めて保存しやすくします。生のサンバルマタのような爽やかさより、ナシゴレンやレンダンの横で負けない、濃い赤い調味料を目指します。
英語圏の商品名では「sambal oelek」と書かれることが多いですが、インドネシア語の綴りとしては「ulek」が現在の表記に近いです。どちらも、石臼やすり鉢でつぶす動作に関係する名前です。瓶詰め商品を探すときは、日本では「サンバルオレック」の方が見つけやすいです。
日本での代替食材 — 何を守り、何を替えるか
サンバル代用で一番大事なのは、「辛ければ何でもいい」と考えないことです。豆板醤、コチュジャン、スイートチリソース、タバスコはどれも赤くて辛いですが、それぞれ塩分、甘み、発酵の方向、酸味が違います。ナシゴレンに合わせるなら、唐辛子の青い香りと、えび系のうま味を少し残す方が近づきます。

| 本場の材料 | 日本で買いやすい代替 | 近づく要素 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| cabai merah(赤唐辛子) | 生の赤唐辛子、韓国唐辛子、鷹の爪+赤パプリカ | 辛味、赤色、青い香り | 鷹の爪だけだと辛さが立ちすぎる |
| cabai rawit(小粒の激辛唐辛子) | 鷹の爪、冷凍プリッキーヌ | 鋭い辛味 | 子どもがいる食卓では量を半分以下に |
| terasi(発酵えびペースト) | 干しえび、ナンプラー、アンチョビペースト | 発酵香、魚介のうま味 | えびアレルギー、魚介アレルギーに注意 |
| bawang merah(赤小玉ねぎ) | 赤玉ねぎ、普通の玉ねぎ、エシャロット | 甘み、香り、厚み | 普通の玉ねぎは少し長めに炒める |
| jeruk limau(柑橘) | ライム、レモン、米酢 | 酸味、香り | 酢だけだと香りが平たくなる |
| gula jawa(椰子糖) | きび砂糖、黒砂糖、はちみつ少量 | 角を取る甘み | 入れすぎるとスイートチリ寄りになる |
代替不可に近いのは、唐辛子そのものです。豆板醤だけ、コチュジャンだけで作ると、味噌や麹の発酵感が強くなり、インドネシア料理というより中華・韓国料理に寄ります。逆にテラシは代替できます。現地の香りからは離れますが、干しえびとナンプラーを炒めれば、家庭のナシゴレンには十分な魚介の奥行きが出ます。
基本レシピにはえび(干しえび)と魚醤(ナンプラー)を使います。えび・魚介アレルギーがある場合は、干しえびとナンプラーを抜き、白味噌小さじ1/2と醤油小さじ1でうま味を補ってください。味は変わりますが、辛味調味料としては成立します。
材料(作りやすい量・約8食分)
この分量で、小さめの保存容器ひとつ分です。ナシゴレン2人分に小さじ2から大さじ1使うと、4回ほど使えます。辛味が苦手な家庭では、最初から唐辛子を半量にして、赤パプリカで色と甘みを足してください。
| 材料 | 分量 | 代替・備考 |
|---|---|---|
| 生の赤唐辛子 | 6 本(約30 g) | なければ鷹の爪6 本+赤パプリカ1/4 個 |
| 赤パプリカ | 1/2 個(約80 g) | 辛さを控え、色と甘みを足す。辛党なら省略可 |
| 赤玉ねぎ | 1/2 個(約80 g) | 普通の玉ねぎでも可 |
| にんにく | 2 片 | チューブなら小さじ1.5 |
| 干しえび | 大さじ1(約8 g) | テラシ小さじ1/2、アンチョビペースト小さじ1/3でも可 |
| ナンプラー | 小さじ2 | 醤油小さじ2+塩ひとつまみでも可 |
| きび砂糖 | 小さじ1.5 | 黒砂糖、はちみつ少量でも可 |
| ライム果汁 | 大さじ1 | レモン汁大さじ1、米酢小さじ2+レモン小さじ1でも可 |
| 塩 | 小さじ1/3 | 最後に調整 |
| 米油またはサラダ油 | 大さじ2 | ごま油は香りが強く、別料理に寄るため非推奨 |
生の赤唐辛子6 本は、ナシゴレンに添えると大人向けの辛さです。家族で食べるなら赤唐辛子3 本+赤パプリカ1/2 個から始めてください。辛味を後から足すのは簡単ですが、抜くのは難しいです。
サンバルは一度作ると、ナシゴレン以外にも焼きそば、唐揚げ、目玉焼き、焼き魚に使えます。瓶詰めが買えるなら買ってもよいですが、代用品を作るなら材料をばらで持っておく方が使い回しが効きます。
買い出しの優先順位
サンバル代用は、珍しい材料を全部集めるほど本場に近づく、という料理ではありません。むしろ最初の一回は、台所に残っても使い道があるものから買う方が続きます。ナンプラーはナシゴレン、ガパオライス、シニガンに回せます。干しえびはチャーハン、焼きそば、スープのうま味にも使えます。保存容器は作り置き調味料全般で出番があります。
| 優先 | 買うもの | 近所で見つからないとき | 買わなくてよい判断 |
|---|---|---|---|
| 1 | 生唐辛子または鷹の爪 | 冷凍プリッキーヌ、韓国唐辛子 | 辛いものが苦手なら赤パプリカ多めでよい |
| 2 | ナンプラー | 魚醤、パティス、アンチョビ少量 | えび・魚介を避けるなら醤油と白味噌へ |
| 3 | 干しえび | テラシ、アンチョビペースト | 魚介なし版なら無理に買わない |
| 4 | ライム | レモン、米酢少量 | ポッカレモンだけでも初回は可 |
| 5 | 小型フードプロセッサー | すり鉢、包丁で細かく刻む | 一度しか作らないなら不要 |
買い出しで迷ったら、まず唐辛子、干しえび、ナンプラー、保存容器だけ見れば十分です。楽天導線は、近所で見つからないアジア食材をまとめて探す入口として使ってください。市販サンバルを買う場合も、この記事の代用レシピを一度読んでおくと、瓶の味が甘いのか、発酵香が強いのか、どの料理に足すべきか判断しやすくなります。





作り方 — 焦がさず、香りだけ起こす
サンバル作りは、カレーのスパイス炒めと似ています。火を入れることでにんにく、玉ねぎ、えびの香りが丸くなります。ただし焦がすと苦味が残るので、強火で一気に炒めるより、中火で水分を飛ばしながら香りを起こします。

干しえび大さじ1をぬるま湯大さじ2に5分浸します。戻し汁にも香りが出るので捨てません。テラシを使う場合は、アルミホイルにのせてフライパンで30秒ほど軽く温め、香りを立ててから使います。
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材料を粗く刻む(5分)
赤唐辛子はへたを取り、辛さを控えたい場合は種を半分ほど除きます。赤パプリカ、赤玉ねぎ、にんにくをざく切りにします。フードプロセッサーを使う場合も、最初に粗く刻んでおくとムラが出にくいです。 -
すりつぶす(2分)
赤唐辛子、赤パプリカ、赤玉ねぎ、にんにく、戻した干しえびを、すり鉢またはフードプロセッサーで粗いペーストにします。完全なピューレにしないで、唐辛子の粒が少し残るくらいがナシゴレンに合います。 -
油で炒める(6〜8分)
小鍋またはフライパンに油大さじ2を入れ、中火でペーストを炒めます。最初は水っぽく、だんだん油が赤くにじんできます。焦げそうなら火を弱め、底から返してください。玉ねぎの生っぽい匂いが消え、唐辛子の香りが甘くなれば次へ進みます。 -
味を決める(1分)
ナンプラー小さじ2、きび砂糖小さじ1.5、塩小さじ1/3、干しえびの戻し汁小さじ2を加え、さらに1分混ぜます。火を止めてからライム果汁大さじ1を加えます。酸味は加熱しすぎると香りが飛ぶため、最後です。 -
冷まして保存する(10分)
清潔な容器に移し、粗熱を取ってから冷蔵庫へ入れます。熱いまま蓋をすると水滴で傷みやすくなるので、蓋は少しずらして冷まし、冷えたら閉めます。
現地のulekに近い質感は石臼やすり鉢が出しやすいですが、日本の台所ではフードプロセッサーで十分です。ただし回しすぎるとソース状になり、炒めたときに水分が飛びにくくなります。数秒ずつ止めながら、粗い粒を残してください。
代用パターン別の味調整
手元の材料によって、サンバル代用の味はかなり変わります。ここで「何を入れたら何が起こるか」を知っておくと、次回から目分量でも崩れません。

テラシがある場合
テラシがあるなら、干しえびを抜き、テラシ小さじ1/2を使います。必ず軽く炙るか乾煎りしてから加えてください。生のままだと発酵臭が強く、家庭の台所では少し驚く匂いになります。火を入れると、においの角が取れて、ナシゴレンの奥に沈むうま味になります。
干しえびだけで作る場合
干しえびは、テラシほど発酵香はありませんが、日本で買いやすく、失敗が少ない代替です。戻してから細かく刻むか一緒にすりつぶし、油でしっかり炒めます。戻し汁を少し入れると、魚介の香りが広がります。干しえびの粒が残ると焦げやすいので、火加減は中火以下が安心です。
えびなしで作る場合
えびを抜く場合は、白味噌小さじ1/2、醤油小さじ1、ナンプラーなしなら塩少々で補います。サンバルテラシ風ではなくなりますが、唐辛子と玉ねぎの辛味ペーストとして使えます。テンペ、豆腐、野菜炒めにはむしろ合わせやすいです。
市販の豆板醤で急ぐ場合
豆板醤小さじ1、赤パプリカみじん切り大さじ2、レモン汁小さじ1、砂糖小さじ1/2、ナンプラー小さじ1/2を混ぜると、急場しのぎの赤い辛味になります。ただし豆板醤のそら豆味噌の香りが強く、インドネシア料理からは離れます。ナシゴレンに混ぜ込むより、皿の端に少量添える使い方がおすすめです。
スイートチリソースしかない場合
スイートチリソースは甘みととろみが強いため、そのままではサンバル代用には向きません。使うなら、スイートチリソース大さじ1に、ナンプラー小さじ1、レモン汁小さじ1、刻んだ赤唐辛子少量を足します。甘さが残るので、ナシゴレン本体のケチャップマニスは少し減らしてください。
ナシゴレン、ミーゴレン、焼き物への使い方
作ったサンバルは、料理に混ぜる場合と、皿の横に添える場合で量を変えます。最初から大量に混ぜると辛さを戻せないので、初回は「少なめに混ぜ、足りなければ添える」が安全です。
炒め物に最初から大さじで入れると、辛さと塩気が戻せません。ナシゴレンやミーゴレンは小さじ2を油で香らせ、皿の端に小さじ1を置く二段構えにすると、家族ごとの辛さ調整ができます。
| 料理 | 使う量 | 使うタイミング | ひとこと |
|---|---|---|---|
| ナシゴレン2人分 | 小さじ2〜大さじ1 | ご飯を入れる前、具材と一緒に炒める | 香りが全体に回る。辛さは控えめに始める |
| ミーゴレン2人分 | 小さじ2 | 麺と調味料を入れる直前 | 麺に絡みやすいので入れすぎ注意 |
| 目玉焼きご飯 | 小さじ1 | 皿の端に添える | 黄身と混ぜると辛さが丸くなる |
| 焼き魚 | 小さじ1〜2 | 食べる直前に添える | ライムを追加すると魚に合う |
| 鶏もも肉のグリル | 大さじ1 | 焼き上がりに塗るか添える | 焼く前に塗ると焦げやすい |
| 唐揚げ、揚げ春巻き | 小さじ1ずつ | ディップとして使う | 甘いチリソースより大人向き |
ナシゴレンに使うなら、ナシゴレンの材料のケチャップマニスを少し減らし、サンバル代用を小さじ2から入れてください。ケチャップマニスの甘さ、ナンプラーの塩気、サンバルの辛味が重なるので、最後の醤油は味見してから足します。
平日のナシゴレンで使う流れ
冷蔵庫にこのサンバルがある日は、ナシゴレンの段取りがかなり短くなります。鶏肉や玉ねぎを炒めたあと、フライパンの端にサンバル小さじ2を落とし、油となじませてからご飯を入れます。いきなりご飯全体に混ぜるより、具材の油で一度香りを起こす方が、唐辛子と干しえびの匂いが立ちます。
ケチャップマニスは通常より少し控えめにします。サンバルに砂糖とナンプラーが入っているため、同じ量の甘醤油を入れると、甘さと塩気が重なります。ご飯400gなら、ケチャップマニス大さじ1.5、サンバル小さじ2、醤油は最後に小さじ1から。これで足りなければ皿の端に追いサンバルを添える方が、家族それぞれの辛さに合わせやすいです。
翌日の昼に使うなら、炒め物に混ぜるより、目玉焼きの横に少量置くのが楽です。冷ご飯、目玉焼き、きゅうり、サンバルだけでも、インドネシアのワルン(食堂)で出る簡単なご飯ものに少し近づきます。忙しい日ほど、調味料を料理に全部背負わせず、皿の横で調整できるようにしておくと続きます。
パッタイやガパオライスにも少量なら使えます。ただしタイ料理の辛味調味料とは酸味と香りが違うため、使いすぎると料理の国籍が混ざります。世界ごはんとして楽しむなら、インドネシア料理の日の調味料として使い切る方が輪郭がきれいです。
同じ東南アジアでも、酸味の置き方は料理ごとに違います。ベトナムのバインミーならなますの酸味、バインセオならヌクチャム、フィリピンのアドボなら酢の煮込みが主役です。サンバルを横に置くと便利ですが、主役の酸味や香りを上書きしない量にしてください。
ナシレマに添えるマレー系サンバルは、玉ねぎを多めに炒めて甘みを出すことが多く、今回のナシゴレン用より少し丸い味です。ラクサやロティ・チャナイの日に使うなら、ココナッツやカレーの香りを邪魔しないよう、皿の端にほんの少量から始めます。
肉料理に添えるなら、サテ風の焼き鳥だけでなく、香りの強いバクテーの薬膳スープの日にも小皿で少量だけ試せます。逆に、やさしい魚介のカオピヤックセンには香りが強すぎるので、入れるなら卓上でほんの少しにしてください。
失敗原因 — 辛すぎる、苦い、水っぽいを直す
サンバル代用は材料が少ない分、失敗の原因が見つけやすいです。味見して「何か違う」と思ったら、下の表から近い症状を見てください。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 辛すぎる | 唐辛子の種、鷹の爪の量が多い | 赤パプリカのみじん切りを炒めて足す。砂糖を少量足す |
| 苦い | にんにく、干しえび、唐辛子を焦がした | 焦げが強い場合は作り直し。軽ければ砂糖とライムを少量足す |
| 水っぽい | パプリカや玉ねぎの水分が飛んでいない | 追加で弱めの中火にかけ、水分を飛ばす |
| えび臭い | テラシや干しえびの加熱不足 | 油を少し足して再加熱し、香りを丸める |
| 甘すぎる | 砂糖、スイートチリを入れすぎた | ライム果汁、ナンプラー、唐辛子を少し足す |
| 塩辛い | ナンプラー、塩、干しえびの塩分が重なった | 炒めた赤パプリカ、玉ねぎを足して薄める |
一番避けたいのは焦げです。唐辛子の苦味は、砂糖や酸味を足しても完全には消えません。油が赤くなって香りが出たら、それ以上強火で攻めない。ナシゴレン本体は強火が命ですが、サンバルは焦らず作る方がおいしくなります。
ライムやレモンは、火を止めてから入れると香りが残ります。最初から入れて煮詰めると、酸味だけが残り、柑橘の明るさが消えます。作り置き後に味が重くなったら、食べる直前にレモン汁を数滴足すと戻ります。
保存と作り置き — 冷蔵4日を目安に使い切る
今回のサンバル代用は加熱しますが、家庭で作る少量調味料です。市販の瓶詰めのような殺菌工程はありません。清潔な容器に入れ、冷蔵で3〜4日を目安に使い切ってください。USDA FSISの一般的な残り物の安全指針でも、調理済みの残り物は冷蔵で3〜4日が目安とされています。
辛味、塩気、油があると安全に見えますが、家庭用の少量サンバルは保存食品ではありません。食卓には使う分だけ小皿で出し、残りの容器は冷蔵庫へ戻してください。
保存容器は、熱湯をかけて乾かしたガラス容器が扱いやすいです。取り分けるときは必ず清潔なスプーンを使い、肉やご飯に触れたスプーンを容器へ戻さないでください。辛い調味料は傷みに気づきにくいので、におい、泡、カビ、ぬめりがあれば食べずに捨てます。
| 保存方法 | 目安 | 向く使い方 |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 3〜4日 | ナシゴレン、焼き魚、目玉焼きに少量ずつ |
| 冷凍 | 約1か月 | 小さじ2ずつラップで包み、炒め物用にする |
| 常温 | 不可 | 食卓に出す分だけ小皿へ移す |
冷凍する場合は、製氷皿や小さじ単位で小分けにします。解凍後は香りが少し落ちますが、炒め物に入れるなら十分です。生のサンバルマタのように香草をたっぷり使うタイプは冷凍に向きませんが、今回の加熱サンバルは比較的扱いやすいです。
夏場や屋外で使うときは、容器ごと出しっぱなしにしないでください。小皿に必要量だけ出し、残りは冷蔵庫や保冷バッグへ戻します。辛味と塩気があるから安全、とは考えない方がよいです。
背景 — インドネシアの食卓は「白いご飯と赤い辛味」で動く
インドネシア料理を作るとき、サンバルを調味料売り場の小さな瓶としてだけ見ていると、少しもったいないです。白いご飯、揚げ物、焼き魚、ココナッツ煮込み、甘いケチャップマニス。そうした料理の横に赤い辛味があることで、食卓の重さが動きます。

Journal of Ethnic Foodsのレビューでは、サンバルは何世紀にもわたりインドネシア食文化の一部であり、地域によって材料や製法が変わると整理されています。唐辛子は16世紀以降に持ち込まれた食材ですが、それ以前にも胡椒やしょうがを使う辛味の伝統があり、そこへ唐辛子が入り込んで現在の多様なサンバルにつながりました。
おもしろいのは、サンバルが「辛さ自慢」だけではないことです。ジャワの甘み、バリの生玉ねぎとレモングラス、スマトラの強い辛味、スラウェシの魚介。土地ごとの材料が入り、料理の横で違う役割を持ちます。日本の味噌が地域で甘さや色を変えるように、サンバルにも土地の顔があります。
だから代用するときも、赤いチリソースを一本買って終わりではなく、「今日は何に合わせるか」を考えると失敗しません。ナシゴレンなら、米と甘醤油に負けないうま味。焼き魚なら、ライムを強めた酸味。揚げ物なら、少し甘みを足して油を受け止める。家庭の台所でも、この考え方を持つだけで、インドネシア料理はぐっと作りやすくなります。
この「ご飯と辛味」の関係は、島や国境を越えて少しずつ形を変えます。レンダンのようにスパイスを煮詰める料理では辛味が奥へ入り、ソムタムでは生の唐辛子が酸味と一緒に前へ出ます。フォーガーの卓上調味料はスープを自分の碗で変える道具です。サンバル代用を作ると、東南アジア料理が「辛い料理の集合」ではなく、辛味をどこに置くかの違いとして見えてきます。
よくある質問
迷いやすいのは「何で代用できるか」より、「どこまで入れると別料理になるか」です。豆板醤、スイートチリ、コチュジャンは便利ですが、サンバルの代用としては少量ずつ使ってください。
Q1. サンバルオレックとスイートチリソースは同じですか?
別物です。サンバルオレックは唐辛子、塩、酸味を軸にした辛味ペーストで、甘みは控えめです。スイートチリソースは砂糖の甘みととろみが強く、揚げ物のディップには便利ですが、ナシゴレンに入れると甘さが前に出やすくなります。
Q2. 豆板醤で代用できますか?
急場しのぎには使えますが、豆板醤はそら豆味噌の発酵香が強いため、インドネシア料理からは離れます。使う場合は小さじ1程度にし、レモン汁、ナンプラー、刻んだ赤唐辛子を足して、皿の端に添える使い方がおすすめです。
Q3. 辛くないサンバル代用は作れますか?
作れます。赤唐辛子を1〜2本に減らし、赤パプリカを1個に増やしてください。辛味は弱くなりますが、にんにく、玉ねぎ、干しえび、ライムで、ナシゴレンに合う赤い調味料になります。子どもがいる場合は、この配合から始めると安心です。
Q4. テラシなしでも本場風になりますか?
完全なサンバルテラシにはなりませんが、家庭のナシゴレンには十分近づきます。干しえびとナンプラーを油で炒めると、魚介のうま味と発酵に近い香りが出ます。テラシが手に入ったら、次回小さじ1/2だけ足して違いを比べてください。
Q5. 冷蔵庫で1週間持ちますか?
家庭で作る今回の分量では、冷蔵3〜4日を目安にしてください。市販品とは殺菌や酸度管理が違います。長く置きたい場合は、小さじ2ずつ冷凍し、炒め物に使う分だけ解凍します。
Q6. ナシゴレン以外の世界ごはんに使えますか?
少量なら使えます。ミーゴレン、焼き魚、唐揚げ、目玉焼きご飯に合います。国をまたいで使うなら、ガパオライスやバインミーにも少量だけ。入れすぎると料理の香りがインドネシア寄りになるため、まずは小さじ1から試してください。
参考文献
サンバルの種類、テラシを加熱して使う考え方、冷蔵保存の目安は、英語圏の公開資料と食品安全情報を参照し、日本の家庭で作りやすい分量と手順へ組み直しました。本文中の分量は家庭向けの代用レシピであり、瓶詰め商品の製造基準を再現するものではありません。
Reggie Surya, Felicia Tedjakusuma. "Diversity of sambals, traditional Indonesian chili pastes." Journal of Ethnic Foods, 2022: https://link.springer.com/article/10.1186/s42779-022-00142-7
Journal of Ethnic Foods full text: https://journalofethnicfoods.biomedcentral.com/articles/10.1186/s42779-022-00142-7
Food Network - What Is Sambal?: https://www.foodnetwork.com/how-to/packages/food-network-essentials/what-is-sambal
Lin's Food - Sambal Oelek Recipe: https://www.linsfood.com/sambal-oelek-recipe-3-ingredients/
USDA Food Safety and Inspection Service - Leftovers and Food Safety: https://www.fsis.usda.gov/food-safety/safe-food-handling-and-preparation/food-safety-basics/leftovers-and-food-safety
世界ごはん「ナシゴレンの作り方」 /recipes/southeast-asia/indonesia/nasi-goreng
世界ごはん「インドネシア料理まとめ」 /recipes/southeast-asia/indonesia/indonesian-cuisine
画像出典
同一記事内で同じ画像を再掲しないよう、ヒーロー、材料、料理例、辛さ調整、背景、商品カードで役割が重ならない画像を選びました。参考文献・画像出典セクションには飾り画像を置いていません。
KARAKURI Web編集部 生成・加工画像: ナシゴレン材料、サンバル、インドネシア料理の食卓画像。
Amazon 商品画像: サンバルオレック、ナンプラー。
Wikimedia Commons「Dried Shrimp.jpg」Si Gam / CC BY-SA 4.0。
Wikimedia Commons「Food Processor.jpg」Donovan Govan / GFDL, CC BY-SA 3.0。
Wikimedia Commons「Glass jar with lid MET DP109360.jpg」The Metropolitan Museum of Art / Public Domain。
画像出典
本文・商品カードで使用した画像の出典元をまとめています。
- KARAKURI Web編集部(生成・加工画像)ナシゴレン用の赤唐辛子、にんにく、赤玉ねぎ、調味料を並べた買い出しイメージ、インドネシアの揚げ物や米料理に添える辛味調味料の食卓イメージ、インドネシアの米料理に添える赤い辛味調味料と主菜の食卓、インドネシアの揚げ春巻きと青唐辛子。辛味調味料を少量添える食べ方、インドネシアの米、肉料理、辛味副菜を一皿に盛った食卓
- Amazon 商品画像サンバルオレック 200g、ナンプラー 魚醤 700ml
- Wikimedia Commons無着色 干しえび 100g、小型フードプロセッサー、ガラス保存容器 200ml

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