フィティール・メシャルテット|バターを重ねて丸くまとめた層のパン
このパンの要は、小麦粉・水・塩・少しの砂糖でつくる素朴な生地と、その層を隔てる柔らかいバターです。焼く前に巻いておく渦巻きがあるから、焼き上がりの丸いパンがやわらかなシート状にほどけます。
金色に焼けたフィティール・メシャルテットの端をちぎると、粉っぽく崩れるのではなく、層になってほどけます。隣には蜂蜜、濃厚なクリーム、熟成チーズ、糖蜜が並ぶことがあり、どの皿に手を伸ばすかで一口ごとに甘くも塩気のある味にもなります。RAWI Publishingは、メシャルテットを村の家庭でつくる伝統的な朝食として紹介し、こうした添え物を別に並べて食べると述べています。
層をつくる作業は単純ですが、手順はていねいです。イーストを使わない生地を大きなシート状に伸ばし、バターを塗って円柱に巻き、渦巻きにして、もう一度広い円形に伸ばします。この記事では、エジプトで公開されている家庭レシピを一つに絞り、他のレシピの分量や方法を混ぜずに最初から最後までたどります。
世界ごはん紀行編集部では、このレシピを試作していません。分量、時間、230°Cというオーブン設定は、Aly HassabelnabyさんのTableyaのレシピによるものです。家庭のオーブンはそれぞれ違うので、時間だけでなく焼き色でも仕上がりを判断してください。
同じ国のほかの料理は、エジプトのレシピ一覧から探せます。
フィティール・メシャルテットとは|空中で伸ばす屋台のフィティールとの違い
アラビア語では فطير مشلتت と書き、英語表記は feteer meshaltet、fiteer meshaltet などゆれがあります。Tableyaの著者は、feteer を無発酵の生地でつくるパンを指す言葉と説明し、meshaltet を「枕」を意味する言葉に結びつけて、このパンのやわらかな食感を表していると述べています。これは著者の説明であり、確定した語源とは言えません。
同じ著者は、ナイルデルタの田舎への誇りと郷愁をこめてこの料理を語っています。Google Arts & Cultureに掲載されたRAWI Publishingの記事は、フィティールを二つに分けて考えるのに役立ちます。一つは屋台の「空飛ぶフィティール」で、生地を空中で極限まで薄く伸ばします。もう一つがメシャルテットで、村の家庭の朝食として、生地のシートが比較的厚めだと説明されています。RAWIは、フィティールづくりが家族のなかで受け継がれる技でもあると伝えています。
このレシピは台の上で丸めて渦巻きにする家庭版で、屋台のような空中での伸ばしは使いません。
家庭のレシピも一つではありません。公開されている別のレシピには、水や油脂の量が違うもの、生地を巻かずに折りたたむもの、焼く温度が違うものがあります。それらは別のレシピなので、この記事ではTableyaの版だけを守ります。
起源については、古代エジプトまでさかのぼるとか、マムルーク朝時代を経てクロワッサンになったと語る書き手もいます。しかし今回確認した資料では、どれも伝聞のままで裏づけは示されていません。そのため、この記事では事実として扱いません。層状の生地は世界の各地にあり、根拠なしに一本の系譜を引くことはできません。
道具
- デジタルのキッチンスケール(小麦粉、水、塩、砂糖、バターを量る)
- ボウル
- 広い作業台
- 麺棒
- オーブンシート(ベーキングペーパー)
- 天板
- 耐熱のオーブン用手袋
- 冷ますときにかける、少し湿らせた清潔な布
選び方と代用
澄ましバターか、通常のバターか。 エジプトでサムナの名前で売られる澄ましバターは、通常のバターより水分と乳固形分が少なく、香りが濃くなります。Tableyaの著者は、風味が豊かなので澄ましバターを好む一方、層をつくるだけなら通常のバターでも使えるとしています。澄ましバターが手に入らなければ、無塩バターが現実的な代用です。乳の香りが強くなり、水分の量も変わります。層はできますが、サムナと同じ味にはなりません。
柔らかく、溶かさない。 バターは室温に置いて、すっと塗り広げられる硬さにします。冷たく硬いままだと生地が破れ、薄く広がりません。溶かしたバターはこのレシピの想定ではなく、シートの上での動きも変わります。
小麦粉。 レシピが指定するのは強力粉ではなく、all-purpose flourです。粉によってたんぱく質の量が違い、それで生地が伸びてから縮むまでの距離が変わることがあります。生地が戻ってくる場合に備えて、休ませる時間に余裕を持たせてください。
アレルゲン。 このパンには小麦が入り、バターで作る場合は乳も含みます。澄ましバターも乳製品なので、商品の表示を確認してください。厳格なアレルギーのある方に安全だと、この記事は保証できません。
うまくいかないとき
| 状況 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 伸ばすと生地が縮む | 生地がまだ張っている | あと5〜10分休ませてから伸ばし直す。力で引っ張らない |
| 層が一枚にくっついて焼き上がる | バターの塗り残しがある、またはバターが冷たくて塗り広げられなかった | 巻く前に、柔らかいバターがシート全体を覆っているか確認する。90g以外の油脂は足さない |
| 円柱に巻くとバターが脇から出る | 強く押しすぎている | しっかり巻くが、円柱をつぶさない |
| 表面は色づくのに中心が生焼けに見える、または端が焦げる | オーブンの実際の熱が設定と違う | 中心が生焼けのうちは出さない。出典の7〜10分と表面の色だけでは中心が焼けたと言えない。手袋をして、持ち上げやすい底の側を確かめる。追加の焼き時間の目安は、この記事では示せない |
この試作していない版には、熱めや低めに焼けるオーブン向けの検証済みの調整法がありません。時間の範囲の終わりを、生焼けのまま出してよいという許可と受け取らないでください。
食べ方|蜂蜜、塩気のあるチーズ、糖蜜を別皿で

生地そのものの味は穏やかです。小麦と塩、バターの香り、そしてやわらかな層。RAWI Publishingは、メシャルテットを熟成チーズ、クロテッドクリーム、蜂蜜、糖蜜と一緒に食べる様子を紹介しており、ちぎった一切れごとに違う方向へ進めます。これらは生地には入れず、別の皿で食卓に並べます。蜂蜜、クリーム、チーズ、糖蜜はどれも生地の材料ではありません。
- 蜂蜜:いちばん手軽な甘い組み合わせです。
- 濃厚なクリーム:RAWIはクロテッドクリーム(エジプトではqishta)に触れています。添え物で、生地の材料ではありません。
- 塩気のあるチーズ:Amira's Pantryのレシピの著者は、塩気の強いエジプトの伝統的なチーズ「mish」を挙げています。手に入る塩気のある白いチーズでも対比は出ますが、エジプトの熟成チーズやmishと同じではありません。
- 糖蜜:蜂蜜より濃く深い甘みです。買うものが、別の黒いシロップではなく本当に糖蜜か、確かめてください。
具を入れたフィティールもあります。RAWIは、甘い具と塩味の具の両方を紹介しています。それらは別のレシピで、ここで作るのは具のないメシャルテットです。
残ったとき:参照したレシピには保存や温め直しの案内がないため、この記事では保存の目安を示しません。
同じレシピの中での変化
- 澄ましバター(サムナ):著者がすすめる選択で、風味が豊かで香りが濃くなります。
- 無塩バター:層づくりには使えます。風味は乳の香りが強くなり、水分の量が違います。
- その日で添え物を変える:ある日は蜂蜜、次の日は塩気のあるチーズ、両方を並べる日もあります。生地は同じです。
ほかの家庭レシピの分量や折り方を持ち込まないでください。水と油脂の割合が違うため、このレシピと混ぜると、確実な仕上がりにはなりません。
よくある質問
伸ばすと生地が縮んでしまいます。どうしたらよいですか?
さらに5〜10分休ませてから、もう一度伸ばしてください。強く引っ張ると、縮むか破れるだけです。
澄ましバターがありません。通常のバターで作れますか?
作れます。レシピの著者は、層づくりには通常のバターでも使えると述べています。サムナに比べると、乳の香りが強く、風味の濃さは控えめになります。
どうして生地に砂糖が入るのですか?
このレシピでは10gを使います。ほかの家庭版には砂糖のないものもあり、砂糖がメシャルテットの決まりというわけではありません。このレシピに従うときは入れてください。
イーストや発酵の時間は必要ですか?
いいえ。このレシピにイーストはありません。1時間の休ませは、膨らませるためではなく、生地を伸ばしやすくするためです。
屋台のフィティールのように、紙のように薄く伸ばすべきですか?
この版ではそうしません。RAWIは、空中で伸ばす極薄の生地を屋台の空飛ぶフィティールのものとし、メシャルテットはより厚いシートを使うと述べています。ここでは台の上で約30×40cmに伸ばし、次に直径約35cmにします。
具を入れてもよいですか?
具入りのフィティールはありますが、別のレシピです。これは具のないタイプで、甘い添え物や塩気のある添え物を別に出します。
















