ごりごり、とん、とん。木臼の中で、茹でたてのでんぷん質の芋を杵が搗き、そのたびにもう一人の手がさっと生地を返します。粒が消えて、艶のあるなめらかな塊になるまでその繰り返し。ガーナの台所に伝わるこの作業の先にあるのが、フフ(Fufu、fufuo とも)です。パンでも甘い餅でもなく、スープと食べる主食で、弾力のある塊をスープに浸しながらいただきます。
基本の形は、キャッサバと青いプランテンを搗いた控えめな味の塊に、赤い鶏のライトスープを添えたもの。日本の台所で作るときに引っかかるのは、食用キャッサバの調理表示、プランテンの熟度、そして粒を残さない潰し方の三つです。食材がそろわない日のために、里芋を使う家庭向けの別の配合も紹介します。フフ用の粉を使う場合は、商品の調理表示に従ってください。食べるときは、小さくちぎってスープをまとわせるのがおすすめで、噛まずに大きく飲み込むことは勧めません。
木臼の音がつなぐ、ガーナのフフ

茹でた芋やプランテンを搗く作業は、とにかく手間がかかります。杵で潰しては返し、滑らかな弾力が出るまでまとめていく。その手間を家族で分け合ってきたのが、家庭に伝わるフフです。
ただ、何から作るかは一つに決まっていません。ガーナ系の料理人エリック・アジェポンは、自身のアシャンティの家系ではキャッサバとプランテンを合わせると紹介しています。同じ人が地域の例として挙げるのは、Ga の人々のキャッサバ、Ewe の人々のヤムといった組み合わせです。民族全体をひとつの原料に当てはめることはできず、原料は地域や家庭で変わると考えておくのが妥当です。フフを誰が発明したのか、いつ生まれたのか、どの地域にも共通する配合があるのか、といったことは言い切れません。
東部のクワフ(Kwahu)は、ヴォルタ湖の西側に広がる森林地帯です。キャッサバ、プランテン、ヤム、ココヤムなどが畑で育ち、ヤムやココヤムを搗いたフフも好まれています。合わせるスープには、葉物のアブヌアブヌや、落花生、パームの実を使うものが挙がります。畑の作物にもスープにも地域ごとの違いがあって、芋とスープの組み合わせはひとつの型に収まりません。ここで見たのはあくまでクワフの例で、ガーナ全体に共通する習慣として広げることはできません。
今回作るガーナの基本形は、茹でて搗くだけで、家庭で発酵させる工程はありません。一方ナイジェリアでは、Fufu や Akpu の名で、発酵させたキャッサバの湿ったペーストも食べられています。国をまたいで同じ料理名が使われていても、原料や酸味まで同じとは限りません。
ガーナの主食をほかにも比べたい方には、粉や米の料理がおすすめです。発酵させたとうもろこしとキャッサバの生地を加熱して作るバンクーは、今回の搗くフフとは工程が異なります。北部の穀物団子や、米を搗いて作る団子も、同じ国のまた別の主食です。
バンクーの作り方 — 発酵生地を鍋で練るガーナの主食。
トゥオザーフィの作り方 — ガーナ北部の穀物団子と葉物のスープ。
日本の家庭でそろえる芋と粉を取り違えない
基本の材料は、家庭調理用として販売され、調理方法が表示されている食用の皮むき冷凍キャッサバです。冷凍でも加熱済みとは限らないので、購入した商品の加熱・解凍の指示を最優先にしてください。ブラジルなどの輸入食材店やアフリカ食材店で探せますが、特定の店の当日の在庫や価格まではわかりません。品種や加工状態、調理方法のわからない生芋は、このレシピでは扱いません。
キャッサバにはシアン化水素を生じうるシアン配糖体が含まれているため、生で食べてはいけません。必要な処理は品種や加工状態によって異なり、皮をむいて一般的な時間茹でるだけで、すべての芋の安全が保証されるわけではありません。家庭調理向けの食用品に付いた表示に従い、調理方法が不明なものは使わないでください。本文の25〜30分は芋が柔らかくなる工程の目安で、毒性を取り除くことを保証する時間ではありません。茹で汁は生地にもスープにも戻さず捨て、生地を練る水には別に沸かした湯を使います。
プランテンは、基本形では青いものを使い、量は皮をむいた可食部でおよそ400gです。普通の完熟バナナは甘さも水分も違うため、同じ分量での置き換えはおすすめしません。使い切れずに余った分を熟させるなら、揚げ物にする手があります。ただし、搗くフフに使うのは青い状態のもので、熟したものとは別の食材として扱ってください。
ケレウェレの作り方 — 熟したプランテンを香味と唐辛子で揚げる料理。

通販で「キャッサバ粉」を探すと、性質の違う加工品がずらりと並びます。フフ用の粉、キャッサバ粉一般、タピオカでんぷんは、同じものとして扱えません。farinha de mandioca torrada(tostada)は炒ったキャッサバの食品で、販売先によっては豆料理や肉料理に振りかける用途として案内されています。商品を選ぶときは、フフ用という用途表示があるか、原材料は何か、袋に書かれた水量と加熱方法はどうかを確認してください。フフ用粉の水量は製品ごとに表示が異なり、共通の比率では決められません。
里芋で作る方法は、あくまで家庭向けの代替案で、キャッサバと同じ風味や弾力になるとは言えません。すべて里芋に替えるなら、皮をむいた里芋600gに片栗粉大さじ1、別に沸かした湯大さじ3〜6を加えて、様子を見ながら調整します。プランテンだけが手に入らないときは、キャッサバ500gに皮をむいた里芋200gを合わせる別の配合もあります。こちらは基本形より出来上がりの量が少なくなります。スープに入れる干しえびは、うま味を足すための選択肢で、香りを付ける植物プレケセの代用品ではありません。芋を探し回るより米で団子を作りたい方は、こちらをどうぞ。
オモ・トゥオの作り方 — 米をやわらかく炊いて搗く、スープに添える米団子。

途中で見つける、味の決め手
粒が残る、柔らかすぎるときの戻し方
フフの粒は、味付けでは消えません。まず硬い芯や繊維を取り除いたか、芋が十分に柔らかかったかを見直します。温かいうちに潰すことも大切で、冷めて硬くなった生地を無理に押し続けても粒は消えません。芯と柔らかさを先に確認してから、湯の量を調整してください。
| 状態 | 起きやすい原因 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 芋の粒が残る | 硬い中心繊維、茹で不足、潰し不足 | 繊維は取り除く。硬い芋は表示を守り、さらに5分ずつ茹でて潰す |
| べたついて丸まらない | 湯を一度に加えすぎた | 厚手鍋に戻し弱火で1分ずつ練る。鍋底をこすり、焦げる前に止める |
| ぼそぼそ割れる | 冷めた生地、水分不足 | 温め直し、別に沸かした湯を小さじ2ずつ加え、へらで練り直す |
| スープが水っぽい | 水が多い、香味野菜の煮込み不足 | 蓋を外し中火で5〜8分。フフに付く程度の汁を残し、塩は最後に調整 |
| スープが濃すぎる | 煮詰まりすぎ | 水100mlずつ加えて再び煮立てる。味を見て塩を調整 |
| 辛すぎる | 唐辛子を入れすぎた | トマト缶100gと水100mlを足し5分煮る。和らげる調整で、辛味が消えるとはしない |
里芋で作る場合は、皮をむいた里芋600gを3cm程度に揃え、中火で20〜25分を目安に中心まで柔らかく茹でます。湯を切って潰し、片栗粉大さじ1を別に沸かした湯大さじ3で溶いて混ぜ込みます。続けて弱火で3〜5分、鍋底をこするように加熱して、粉っぽさを残さないようにします。湯が足りないときだけ追加してください。粘りのある芋団子にはなりますが、キャッサバのフフと同じ香りや弾力にはなりません。代替は同じ味を保証しないものとして、別の一皿のつもりで楽しんでください。
フフを囲む食卓と、次に合わせたいスープ

フフは、汁物と一緒にいただく料理です。薄いトマトの汁、落花生、パームの実、葉物など、組み合わせはいろいろあります。主食と汁物を一緒に用意して、橙色のトマトの汁と、なめらかなフフを少量ずつ合わせながら食べていく。そんな食卓を思い浮かべてください。ひとつの大きな皿を囲むのがすべての家庭の決まりごとというわけではないので、個別の器でも構いません。
食べ方の疑問にも触れておきます。手で食べるなら、まず石けんで手を洗い、親指の先ほどの小さな一口にちぎります。その小片にくぼみを付けてスープをまとわせると食べやすくなります。スプーンを使っても問題ありません。噛まずに飲み込む食べ方が紹介されることはありますが、あくまで食文化の紹介で、読者の方にその飲み方を求めるものではありません。無理に飲み込まないで、一口の大きさを急に増やすこともせず、熱さと食べやすさを優先してください。
木臼で搗く作業と、粉製品や家庭向けの省力化レシピとでは、作り方が違います。それでもスープに添える役割は共通していて、粉だからにせものと決めつける必要はありません。どの方法でも、原材料と指定された加熱を確認してください。食感の違いは、楽しみ方の違いとして味わえます。

慣れてきたら、フフではなくスープを替えて楽しむのもおすすめです。最初は鶏のライトスープ、次は落花生のコクのあるスープへと広げてみましょう。クワフの葉物スープの例にもあるように、汁物の地域差は肉の違いだけでは決まりません。なお、上の比較画像の紫色を、ココヤム一般の色と受け取らないようにしてください。
グラウンドナッツスープの作り方 — 無糖ピーナッツのコクでフフを受ける、ガーナのスープ。
プランテンは、同じ食卓の別の料理にも使えます。フフで搗くのは青いプランテンですが、熟したものは揚げて豆料理に添える使い道があります。赤パーム油は今回のライトスープの必須材料ではなく、豆料理のほうとは分けて考えてください。
レッドレッドの作り方 — 豆の煮込みと揚げプランテンからガーナの別の食卓へ。
保存と温め直し
フフは出来たての食感がいちばんなので、余ったら1食分ずつ清潔な容器かラップに包んで保存します。スープは浅い容器へ小分けにして、調理後1〜2時間以内に0〜5℃の冷蔵庫へ入れてください。一般的な残り物の基準は48時間以内ですが、フフは食感の面から翌日までに食べ切るのがおすすめです。冷凍するなら、冷ましてから早めに密閉し、日付を書いておきます。フフの冷凍は2週間までが家庭向けの目安で、これは食感のための目安であり、安全を保証する期限ではありません。
再加熱は、フフに水小さじ2を振ってふんわり覆い、600Wで40秒ずつ様子を見ながら行います。この秒数は食感を整えるための短い区切りです。途中で向きを変え、中心まで再加熱して、温度計で残り物の中心が約74℃(165°F)になっているかを確認してください。スープは鍋で全体が煮立つまで温め、肉の中心の温度も確かめます。温め直すのは食べる分だけ1回にして、残りを何度も温めては冷やすことは避けましょう。冷凍した分は冷蔵庫で解凍し、解凍後は24時間以内に食べます。常温に長く置いての解凍はしないでください。
よくある質問
フフは何からできていて、どんな味ですか?
ガーナの基本的な例はキャッサバとプランテンで、ヤムやココヤムを使う地域や家庭もあります。主食そのものの味付けは控えめで、なめらかな弾力とスープの香味を一緒に味わう料理です。今回のキャッサバとプランテンの配合には、発酵の工程はありません。
フフは噛まずに食べるのですか?
噛まずに飲み込む食べ方が紹介されることはあります。初めての方は、小さくちぎって、必要なら噛みながら、自分の食べやすい方法でいただいてください。大きな塊を飲み込むことを作法として求めるものではありません。
キャッサバ粉やタピオカ粉なら何でも作れますか?
いいえ。フフ用粉、一般的なキャッサバ粉、タピオカでんぷんは、加工も配合も違います。炒った粒状のキャッサバ食品は、振りかけ用として売られている場合があり、フフ用とは限りません。フフ用と表示された商品の説明に従い、袋ごとの水量と加熱時間で作ってください。
ライトスープ以外では何を合わせますか?
ガーナでは、落花生、パームの実、葉物のスープも組み合わせの例です。日本の家庭なら、鶏のトマトスープから試すのがおすすめですが、塩を濃くするだけで現地の香味に近づくわけではありません。里芋の代替案も同じスープに添えられますが、キャッサバと同じフフとは言えません。
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- トゥオザーフィ — ガーナ北部の穀物団子と葉物スープを比べる一皿。
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