冬の夜、大きな丸い皿が食卓の真ん中に運ばれてきます。皿いっぱいに広がっているのは、真っ白でとろりとしたご飯。その上で溶かしたギーがつやつやと光り、こんがり焼いた鶏肉がのっています。カルダモンのやさしい香りの湯気を吸い込みながら、横に添えた赤いトマトの薬味をのせて、ひと口。サリーグ(saleeg)は、サウジアラビア西部のヒジャーズ地方で親しまれてきた、鶏のスープと牛乳で煮るご飯です。
客の前で恥をかかせない料理

サウジアラビアの英字紙Arab Newsは、サリーグをヒジャーズ地方で人気のある料理として紹介し、アラブの人々がこの料理を「顔を白くする料理」と呼ぶと書いています。客の前で恥をかかせない、つまりもてなしの面目を保ってくれる料理だ、という意味です。材料が身近で作り方も簡単なので、思いがけない客が来ても、すぐに食卓に加えられるのだそうです。
同じ記事は、サリーグはおいしくて栄養があり、消化もよく、牛乳が苦手な子どもでも喜んで食べると書いています。とくに好まれるのは冬。熱々を鍋から直接皿に移して食べるのがよいとされます。サウジアラビアの石油会社アラムコの社内誌Arabian Sunには、ヒジャーズ地方のメディナで育った父親の大好物がサリーグで、首都リヤド出身の母親がその味を身につけるために、義母や近所の人に作り方を聞いて回った、という家族の思い出がつづられています。同じ国の中でも、ヒジャーズと中部のナジュドでは料理がはっきり違う、と書き手は記しています。
サリーグは、ヒジャーズ地方の中でも、標高の高い山あいの町ターイフでとくに人気があるとされます。伝統的には、ターバシーと呼ばれる大きな皿に盛り、焼いた肉をご飯の上にのせて出すそうです。
リゾットと似ていて、違うところ

スープで米を煮てとろりと仕上げるサリーグは、イタリアのリゾットやインドネシアのブブル(おかゆ)にたとえられることがあります。けれどもArab Newsは、牛乳を加えるところが違うと書いています。鶏のスープで米をやわらかく煮てから、最後に牛乳を加えて弱火で混ぜ、なめらかにまとめる。仕上げに溶かしたギーやバターを回しかけるので、ミルクのやさしい甘さとバターのこくが合わさった、ほかにない味になります。
スープの香りづけに使うのは、カルダモンと白こしょう、そして好みでマスティハ(マスティック)です。マスティハはギリシャのキオス島などでとれる木の樹脂で、松のような清涼感のある香りがあります。ほんの少し加えるだけで、鶏のスープが中東らしい香りに変わります。
途中で見つける、味の決め手
トマトの薬味、ダッグースを添えて

Arab Newsによると、サリーグには、ダッグース(duggus)という冷たいトマトの薬味や、レモンの漬物、青菜のサラダを添えて食べます。ダッグースは、サウジアラビアの食卓に欠かせない重要な薬味として紹介されています。牛乳で煮たやさしい味のご飯に、ぴりっと辛くて酸っぱいトマトをのせると、ひと口ごとに味が引き締まります。
| 材料 | 分量 | 代替・備考 |
|---|---|---|
| トマト | 2個 | 細かく刻む |
| パセリまたはパクチー | 4枚 | 細かく刻む |
| にんにく | 1かけ | 細かく刻む |
| 赤唐辛子 | 1本 | 細かく刻む。辛さは好みで |
| レモン | 1/4個 | 果汁を搾る |
| 塩 | 少々 |
材料をすべて細かく刻んで混ぜ、レモン汁と塩で味を調えれば完成です。冷蔵庫で冷やしておき、熱いサリーグに添えます。
よくある質問

マスティハがなくても作れますか?
作れます。Arab Newsのレシピでも、マスティハは任意の材料とされています。カルダモンと白こしょうだけでも、鶏のスープとしてやさしい香りに仕上がります。
牛肉や羊肉でも作れますか?
作れます。Arab Newsは、肉を使うサリーグも紹介しています。鶏肉のかわりに肉をカルダモン、塩、こしょうと一緒に湯でゆでてスープをとり、皮をむいた玉ねぎやにんにくを加える人もいます。スープをこしてから、同じように米を煮てください。
粉ミルクで作る作り方を聞きました。
アラムコの社内誌Arabian Sunに載った家庭のレシピでは、牛乳のかわりに粉ミルクを少量の水で溶いて加えています。手元にある材料に合わせて、どちらで作ってもかまいません。
残ったらどうすればいいですか?
粗熱をとってから保存容器に入れて冷蔵し、早めに食べきってください。冷えるとかたくなるので、温め直すときは鍋に入れて取っておいた煮汁か水を足し、弱火で混ぜながら中まで熱くします。












