大皿に盛られたご飯が、ほんのり琥珀色をしています。湯気と一緒に立ちのぼるのは、デーツの濃い甘い香りと、カルダモンのすっとした香り。その隣には、こんがり揚げた魚が一尾。甘いご飯と塩をきかせた魚を一緒に口へ運ぶのが、バーレーンの食卓でよく知られた組み合わせです。ムハンマル(muhammar)は、バスマティライスを甘く炊き上げる、バーレーンの伝統的なご飯料理です。
真珠採りの島で育った、甘いご飯

バーレーンはペルシャ湾に浮かぶ島国で、石油が見つかる前の長い時代、真珠採りが島の暮らしを支えていました。ムハンマルの由来も、この海の仕事と結びつけて語られます。インドの旅行誌Outlook Travellerは、この料理の始まりを真珠採りの男たちに求め、彼らがデーツシロップ(dibs)でご飯に甘みをつけていたと紹介しています。今ではデーツシロップのほかに、はちみつや焦がした砂糖で甘みをつける作り方も広く見られます。
ただ、真珠採りの話は旅行誌の紹介として伝わるもので、いつ、誰が始めたのかを記録で確かめられるわけではありません。島で語り継がれてきた由来として受け止めるのがよいでしょう。それでも、ナツメヤシの実から作るシロップで米を炊くという発想そのものに、デーツが日々の食べ物だった湾岸の暮らしがよく表れています。
ムハンマルに使うデーツシロップは、アラビア語で「dibs(ディブス)」と呼ばれます。日本ではデーツシロップやデーツの糖蜜という名前で、輸入食材店や通販で手に入ります。
甘いご飯に、揚げた魚を合わせる

甘いご飯と聞くとデザートを思い浮かべますが、ムハンマルはおかずと一緒に食べる主食でもあります。Outlook Travellerによると、ムハンマルには揚げた魚や焼いた魚を添えるのが定番です。魚にはサーフィー(safi)、チャナブ(chanab)などの地元の魚が使われ、香辛料をすり込んで塩をふり、焼くか少ない油で揚げて、青菜とレモン汁を添えて出されます。甘いご飯と塩気のある魚の対比が、この料理のいちばんの楽しみです。
湾岸の新聞Gulf Newsが紹介するレシピでも、ムハンマルは揚げた魚の付け合わせにしても、そのままデザートとして食べてもよい料理とされています。食事の皿にも、食後の甘いものにもなる。その振れ幅の広さが、バーレーンの家庭でこのご飯が長く親しまれてきた理由のひとつなのでしょう。
日本で魚を合わせるなら、アジやイワシ、白身魚の切り身に塩とターメリックやクミンを軽くまぶし、フライパンで揚げ焼きにすると、ムハンマルの甘さとよく釣り合います。これは日本の台所向けの組み合わせで、現地の魚と同じ味になるわけではありません。
途中で見つける、味の決め手
はちみつとサフランで作るムハンマル

ムハンマルの甘みは、デーツシロップだけではありません。アメリカの料理ブログThe Foreign Forkは、はちみつとブラウンシュガーで甘みをつけ、カルダモンパウダー、サフランを溶かしたローズウォーター、たっぷりのギーで仕上げるレシピを紹介しています。こちらは米を先に約8分ゆでて湯をきり、ギーを溶かした鍋に戻して甘みと香りを混ぜ、蓋をしてごく弱火で10〜15分蒸らす作り方です。鍋底のカリッとした部分も楽しみのひとつとされています。
デーツシロップで炊くと、色は茶色く、デーツらしい深い甘さになります。はちみつとサフランで作ると、色は明るい黄色になり、ローズウォーターの華やかな香りが立ちます。Outlook Travellerも、今のムハンマルはクローブやカルダモン、ローズウォーターで香りをつけると書いています。どちらが正しいということはなく、甘みと香りの選び方で家庭ごとの味が生まれる料理です。
食べ方

炊きたてのムハンマルを大皿に盛り、揚げた魚とレモン、青菜を添えれば、バーレーンの食卓の一皿になります。魚にレモンをぎゅっと搾り、甘いご飯と一緒に食べると、甘さと酸味、塩気が口の中でまとまります。魚を添えずに、小さな器に盛って食後の甘いものとして出すのも、Gulf Newsが紹介している食べ方です。
同じ湾岸の米料理なら、スパイスで肉を炊き込むバーレーンのマチブースと食べ比べると、同じバスマティライスでも甘く炊くか、塩気とスパイスで炊くかで、まったく違う料理になることがよくわかります。デーツの甘さが好きなら、UAEの揚げ菓子ルカイマートにデーツシロップをかける食べ方もおすすめです。
よくある質問

デーツシロップがない場合は何で代用できますか?
はちみつと砂糖で作る作り方があります。The Foreign Forkのレシピのように、はちみつとブラウンシュガーで甘みをつけ、サフランとローズウォーターで香りをつけると、明るい黄色のムハンマルになります。デーツシロップで炊いたものとは色も香りも変わるので、別の配合として楽しんでください。
日本米で作ってもいいですか?
作れないことはありませんが、日本米は粘りが強く、甘い煮汁で炊くとべたついた仕上がりになりがちです。粒がほぐれるムハンマルらしい食感にするなら、バスマティライスを使ってください。
甘さを控えめにできますか?
デーツシロップを減らせば甘さは控えめになります。ただ、シロップの量を減らすと煮汁全体の量も減るので、減らした分と同じくらいの量の水を足して、炊く水分を保ってください。
残ったら保存できますか?
粗熱をとってから保存容器に入れて冷蔵し、早めに食べきってください。炊いたご飯を室温に長く置かないようにしましょう。温め直すときは、少量の水をふって、電子レンジなどで中まで熱くします。












