残りご飯が、ミャンマーの朝食に近づく
冷蔵庫に残ったご飯をほぐしていると、ただの炒飯を作るつもりだった台所が、少しだけミャンマーの屋台に寄っていきます。にんにくとねぎを油で温め、干しえびを入れると、香りが急に海の方へ向きます。そこへ魚醤を鍋肌から回す。日本の醤油炒飯とは違う、魚介の塩気と揚げ玉ねぎの甘い香りが立ちます。
タミンジョー(Htamin gyaw / ထမင်းကြော်)は、ミャンマーで食べられる炒飯です。htamin はご飯、gyaw は揚げる・炒めるに近い語として説明されます。家庭、食堂、朝食の軽い一皿、前日のご飯を使う実用料理として幅広く作られます。
日本の台所で作るときの難所は、特別な具材よりも米の状態です。ミャンマーでは長粒米や香り米で軽く仕上げることが多い一方、日本の炊飯器ご飯は水分が多く、すぐ団子になります。この記事では、日本米でも作れるように、ご飯を広げて冷まし、強めの火で短く炒め、魚醤と醤油を最後に鍋肌へ回す方法にします。

モヒンガーがミャンマーの朝の湯気なら、タミンジョーは残りご飯を手早く起こす皿です。ラペットゥのように豆や発酵の香りを添えると、ミャンマー料理の幅が一気に見えます。
本記事では Htamin gyaw を「タミンジョー」と表記します。英語では Burmese fried rice と呼ばれることもありますが、料理名としては現地語由来の htamin gyaw を併記すると、インドネシアのナシゴレンやタイの炒飯とは別の料理として理解しやすくなります。
この料理で守るところ
ミャンマー炒飯を日本の家庭で作るなら、守るべき芯は三つです。冷めたご飯、魚介の塩気、酸味のある添え物。豪華な肉を入れるより、この三つがそろう方が現地らしい輪郭が出ます。
| 守るところ | 現地の考え方 | 日本の台所での落とし方 |
|---|---|---|
| 米粒を軽くする | 冷めたご飯や長粒米を炒める | 日本米は浅い容器で冷やし、固まりを先にほぐす |
| 魚介の塩気 | 魚醤、えび、ンガピ系の香り | ナンプラー、干しえび、醤油少量で補う |
| 卵 | 混ぜ込む、または目玉焼きをのせる | 炒め卵を米へ混ぜ、好みで目玉焼きを追加する |
| 豆や野菜 | 豆、ねぎ、玉ねぎ、きゅうりなど | グリーンピース、にんじん、きゅうり酢漬けで軽さを作る |
| 添え物 | 酸味、辛味、発酵調味料 | きゅうりと玉ねぎの酢漬け、ライム、辛味ペーストを小皿にする |
Club Rangoon の htamin gyaw レシピでは、残りご飯、卵、にんにく、魚醤、醤油、白こしょうを使い、仕上げに揚げエシャロットや香草を合わせます。ミャンマー家庭料理の紹介でも、炒飯は米を無駄にしない料理として扱われることが多く、具材は店や家庭で変わります。
この記事では、ミャンマーの発酵魚ペーストであるンガピをそのまま使わず、魚醤と干しえびで近づけます。ンガピが手に入る人は小さじ1/2を油で温めると深くなりますが、香りが強いため初回はナンプラーで十分です。
買い出しで迷うもの
近所で買うものは、ご飯、卵、にんじん、ねぎ、きゅうりです。商品カードで見る価値があるのは、東南アジアの魚醤、仕上げの香ばしさを安定させるフライドオニオン、米粒を短時間で乾かす鉄の中華鍋です。肉や卵で通販を見るより、香りと火入れの柱をそろえる方が、タミンジョーらしさに近づきます。
干しえびは戻して刻み、最初に油へ入れると香りが丸くなります。乾いたまま強火へ入れると焦げやすいので、湯で5分戻してから使います。近所の中華食材棚や乾物売り場にあればそれで十分です。
ナンプラーは少量でも米の香りを東南アジア側へ寄せます。醤油だけで作ると食べやすい炒飯になりますが、タミンジョーらしい魚介の余韻は薄くなります。
フライドオニオンは自作できますが、炒飯の仕上げに少量だけ使うなら市販品が便利です。ナシウドゥックやコシャリにも回せるため、使い切りやすい食材です。
フライパンでも作れますが、炒める量が多い日は鍋肌の広い中華鍋があると米粒の水分が飛びやすくなります。焦げつきにくい加工鍋より、鉄鍋をしっかり熱して短時間で返す方が、魚醤の香りも立ちます。
添え物と食べ方

きゅうりと玉ねぎの酢漬けは、炒飯を作る前に混ぜておきます。きゅうりは斜め薄切り、紫玉ねぎは1から2mm幅の薄切りにし、米酢、ライム果汁、砂糖、塩で10分置きます。水分が少し出て、玉ねぎの角が丸くなったら食べごろです。
ミャンマーの食堂では、炒飯に目玉焼き、きゅうり、玉ねぎ、辛味や発酵調味料が添えられることがあります。日本で全部をそろえる必要はありませんが、酸味の小皿だけは置くと食べやすくなります。魚醤と油の香りが続くので、きゅうりの水分と酢が口の中を戻してくれます。
ミャンマー料理として食卓を組むなら、汁物にモヒンガー、小皿にラペットゥを置くと、魚介、茶葉、米の三方向がそろいます。東南アジアの炒めご飯で比べるなら、甘いケチャップマニスを使うナシゴレンとはかなり違います。タミンジョーは甘さを控え、魚介と揚げ玉ねぎで食べる炒飯です。
失敗しやすいところと戻し方
タミンジョーの失敗は、水っぽい、塩辛い、魚醤が強い、卵が細かすぎる、の四つに分けると戻しやすいです。
| 状態 | 原因 | 戻し方 |
|---|---|---|
| ご飯がべたつく | 炊きたてを使った、炒め時間が長い | バットに広げて5分冷まし、鍋に戻して中火で1分だけ炒める |
| 塩辛い | ナンプラーと醤油が重なりすぎた | 追加の冷やご飯100g、溶き卵1個で薄める |
| 魚醤の香りが鋭い | 鍋肌で香りを飛ばさず米へ直接かけた | 強めの中火で30秒炒め、ライム果汁小さじ1を添える |
| 干しえびが苦い | 乾いたまま強火で焦がした | 次回は湯戻しし、弱めの中火で泡が出る程度にする |
| 卵が消える | ご飯を入れてから長く混ぜすぎた | 卵は大きめに固め、最後は返す回数を減らす |
| 甘さが足りず平板 | 魚醤と醤油だけで角が立った | 砂糖小さじ1/2、フライドオニオン、酢漬けで丸める |
冷凍グリーンピースは、凍ったまま入れて構いません。ただし霜が多い場合は軽く水で流し、ペーパーで押さえます。霜が鍋に入ると、香味油が跳ね、米が水っぽくなります。
保存と温め直し
炒飯は作りたてが一番ですが、残った分は浅い容器に広げて冷まし、冷蔵します。米料理は常温で長く置くとリスクが上がるため、食卓に出しっぱなしにせず、粗熱が取れたら早めに冷蔵庫へ移します。
| 保存方法 | 期間 | 温め直し |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 2日 | フライパンで中火3分。油小さじ1を足して返す |
| 冷凍 | 2週間 | 小分け冷凍。凍ったまま600Wで3分、混ぜてさらに1分 |
| 弁当 | 当日中 | しっかり再加熱し、冷ましてから詰める。半熟卵は入れない |
| 酢漬け | 冷蔵2日 | 炒飯とは別容器。水気を切って添える |
電子レンジだけで温める場合は、1人分に水小さじ1を振り、ふんわりラップをして600Wで1分半温めます。一度混ぜ、さらに30秒温めます。仕上げにフライドオニオンを後のせすると、冷蔵後でも香りが戻ります。
よくある質問
炊きたてご飯でも作れますか
作れますが、炊きたてをそのまま鍋へ入れるとべたつきます。炊飯時の水を大さじ2ほど減らし、炊き上がったらバットに広げて粗熱を取り、冷蔵庫で20分冷やしてください。急ぐ場合でも、湯気を逃がしてから炒めるだけでかなり変わります。
ンガピを使わないと本場らしくなりませんか
ンガピがあると発酵魚の香りは深くなります。ただし日本の家庭では入手性と香りの強さが難所です。初回はナンプラーと干しえびで作り、物足りなければ次回、ンガピ小さじ1/2を香味油で温めるくらいから試すのが安全です。
肉を入れてもいいですか
入れられます。鶏もも肉80gを1cm角に切り、香味油のあと中火で3分炒め、中心まで白くなってから卵へ進みます。ただし肉を増やすと魚醤と干しえびの軽さが隠れるので、初回は卵と豆だけで作る方が味の骨格をつかみやすいです。
辛くするなら何を足しますか
ミャンマー風の辛味ペーストがあれば少量添えます。なければ、輪切り唐辛子を酢漬けに混ぜる、またはサンバルを皿の端に小さじ1置くのが扱いやすいです。炒飯全体に辛味を混ぜるより、食べる人が皿で調整できる方が失敗しません。
ジャスミンライスで作る方がよいですか
軽く仕上げたいならジャスミンライスが向きます。日本米でも、少し硬めに炊いて冷やせば作れます。家に日本米しかない日は、米の水分を飛ばす工程を丁寧にする方が、米の種類を無理に変えるより大事です。
参考文献
- Wikipedia contributors「Burmese fried rice」
- Club Rangoon「Fried Rice Recipe - Htamin Gyaw」
- Khin's Kitchen「Spicy Fried Rice」
- A.M. Carmen「Burmese Fried Rice」
- FoodSafety.gov「Cold Food Storage Charts」












