日曜の午後、住宅街のあちこちから炭の煙と肉の焼ける匂いが流れてきます。庭のコンロの前には家族や友人が集まり、焼き網の上では肉と赤玉ねぎと干しあんずを交互に刺した串が、じゅうじゅうと音を立てている。表面にはカレー粉の黄色とジャムの照りがまとわりつき、端がほんのり焦げてきたら食べごろです。ソサティ(sosatie / 複数形 sosaties)は、南アフリカの「ブラーイ(炭火焼きの集まり)」に欠かせない、甘くてスパイシーな串焼きです。
ブラーイの煙の中で焼かれる、甘い串

ブラーイ(braai)は、アフリカーンス語で「炭火や薪の火で焼くこと」と、その焼き肉を囲む集まりの両方を指す言葉です。南アフリカ出身の料理家デール・グレイは著書の中で、日曜日のブラーイは家族が集まる時間で、近所じゅうに肉を焼く匂いが満ちると書いています。ソーセージのブルボスや骨付きの肉と並んで、ソサティはその焼き網の常連です。
南アフリカの精肉店やスーパーでは、ソサティはマリネ済みの串として売られているのが当たり前の光景です。豚肉、牛肉、ラム肉、鶏肉と肉の種類もさまざまで、家庭では買ってきた串をそのまま焼くこともあれば、自分の家の配合で漬けて串に刺すこともあります。
食べてまず驚くのは、肉料理なのにはっきりと甘いことです。アプリコットジャムとドライアプリコットの甘酸っぱさ、カレー粉の香り、酢の酸味が一緒になって、照り焼きとカレーの中間のような味がします。甘い・酸っぱい・スパイシーの三つがそろうのが、ソサティの持ち味です。
ジャワの「サテ」が、ケープタウンで名前を変えた

ソサティの名前は、二つの言葉を組み合わせたものです。前半は東南アジアの串焼き「サテ(sate)」、後半はアフリカーンス語で「ソース」を意味する「サウス(saus)」。つまり「ソースをからめた串焼き」という意味になります。
この料理のふるさとは、ケープタウンのケープマレー(Cape Malay)の人々の台所です。ケープマレーの人々は、17〜19世紀にジャワやマレーシアからケープタウンへ、造船や農業の働き手として連れてこられた奴隷や年季労働者の子孫です。故郷のスパイス使いや串焼きの文化が、南アフリカの肉と果物に出会って生まれたのがソサティだと考えられています。アフリカーンス語はケープマレーの人々の主な言葉でもあり、ソサティという言葉も南アフリカ全体へ広がっていきました。
ケープマレーの料理は、手に入るもので工夫する台所として知られています。グレイによると、ケープタウンのディストリクト・シックス(第6区)で受け継がれてきたアプリコットのチャツネは、高価な市販のチャツネの代わりに家庭で作られたものだったと考えられるそうです。ソサティのマリネ液にジャムやチャツネを使うのも、その延長にある工夫です。
ディストリクト・シックスは、ケープタウン中心部の近くにあった多民族の住む地区です。人種隔離の政策のもとで住民が家を追われ、別の地域へ強制的に移住させられた歴史を持ちます。地区の記憶を伝えるディストリクト・シックス博物館が、今もケープタウンにあります。
日本の台所で、ブラーイの串を焼く

ソサティは炭火で焼くのがいちばんですが、家の中ならグリルパンやフライパン、魚焼きグリルでもおいしく焼けます。表面に焼き色と少しの焦げ目をつけたいので、グリルパンを使うと網目の焼き跡がついてブラーイらしい見た目になります。
肉は、骨なしのラムもも肉が基本です。日本では精肉店やスーパーの輸入肉売り場、通販でラムのもも肉や肩ロースが手に入ります。ラムの肩肉もソサティによく使われる部位で、脂がほどよく入っているぶん、串焼きにしてもぱさつきにくくなります。ラムが手に入らなければ、牛もも肉や豚肩ロース、鶏もも肉でも作れます。南アフリカでもいろいろな肉で作られている料理なので、家にある肉で気軽に試してかまいません。
マリネ液のカレー粉は、辛さの穏やかなものを選びます。日本のスーパーで売られている一般的なカレー粉で十分です。マリネ液にはカレー粉のほかにコリアンダーパウダーも加え、香りに厚みを出します。ポートワインやドライシェリーが手元になければ、赤ワインに砂糖を少し溶かしたもので代用できます。
途中で見つける、味の決め手
焼きたてを、ブラーイの食卓に

ソサティは焼きたての温かいうちに食べるのがいちばんです。ブラーイの食卓では、焼いた肉のそばにパップ(とうもろこしの粉の粥)やサラダ、パンが並び、それぞれが好きなものを取って食べます。日本の食卓なら、白いごはんやバターライス、グリーンサラダを合わせても、甘酸っぱいカレーの風味がよく合います。
グレイは、自宅でソサティを出すときに、南アフリカで「スプリングボッキー」と呼ばれるペパーミントリキュールの一杯を添えるそうです。日本ならよく冷えたビールや、アプリコットの甘さに合わせて軽めの赤ワインもよく合います。
同じ南アフリカの料理なら、野菜をスパイスで煮込む付け合わせのチャカラカが、ブラーイの定番の副菜です。ケープマレーの台所から生まれたカレー風味の焼き料理ボボティと食べ比べると、甘みとスパイスを合わせる南アフリカの味つけがよくわかります。三本脚の鍋で煮込むポイキーコスも、屋外の火を囲む料理です。
よくある質問

マリネの時間は短くてもいいですか?
最低3時間は漬けてください。時間が短いと、マリネ液の味が肉の表面にしかつかず、甘みとスパイスの一体感が出にくくなります。前の晩に漬けておき、翌日焼くのがいちばん手軽です。
ラム肉の匂いが苦手です。
ラムの代わりに牛もも肉、豚肩ロース、鶏もも肉でも作れます。南アフリカでも豚肉や牛肉のソサティは一般的です。鶏肉を使う場合は、中まで火が通りにくいので、温度計で中心温度を必ず確かめてください。
竹串でも焼けますか?
焼けます。竹串を使う場合は、焦げないように30分ほど水に浸してから使ってください。金属の串は中からも熱が伝わるので、竹串より少し早く焼き上がります。
辛くしたいときはどうしますか?
基本のソサティは、辛さより甘みと香りを楽しむ料理です。辛みがほしい場合は、マリネ液に一味唐辛子を少し加えるか、辛口のカレー粉を使ってください。
漬けた状態で保存できますか?
漬けた具は冷蔵庫に入れ、ひと晩漬けたら翌日には焼いてください。焼いたソサティは粗熱を取って冷蔵し、早めに食べきります。温め直すときは、フライパンで中まで温めてください。
アレルギーで気をつける材料はありますか?
ウスターソースやカレー粉には、小麦や大豆などを使った商品があります。アレルギーがある場合は、原材料表示を確かめてから使ってください。













