首都ポートルイスの中央市場には、朝から色とりどりの野菜や果物、香辛料の袋が山のように並びます。その奥の魚売り場で、とれたての魚を手に入れて帰る。家の台所では、魚をこんがり揚げ焼きにして、鮮やかな黄色のターメリックと、ぷちぷちとはじけるマスタードシードを溶かした酢に漬け込みます。数日たって瓶のふたを開けると、酢の酸味とスパイスの香りが立ちのぼる。ヴィンダイ(vindaye)は、モーリシャスの家庭で受け継がれてきた、魚のスパイス酢漬けです。
ポートルイスの市場に、クレオールとインドと中国が重なる

モーリシャスはアフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ島国です。モーリシャスにルーツをもつ料理研究家セリーナ・ペリアンピライは、この島の料理をクレオール、フランス、インド、中国の影響が入り混じったものだと紹介しています。ポートルイスの中央市場や屋台、色鮮やかなタミルの寺院、伝統の踊りセガ。島の暮らしのあちこちに、いくつもの文化が重なっています。
ペリアンピライは、ヴィンダイを酸味と辛味の効いたモーリシャスの伝統料理として挙げています。豆入りの薄焼きパン、ドール・プリや、トマトの煮込みルガイユと並ぶ、島の家庭の味です。ターメリックとマスタードシード、そして酢。インドの台所でなじみのある香辛料を使いながら、酢でしっかり漬けて保存する。いくつもの文化が一つの瓶に収まったような料理です。
オーストラリアの公共放送SBSの料理番組「Food Safari」でヴィンダイを紹介したロビン・トゥシャールは、この料理を、低脂肪で、たんぱく質とオメガ3脂肪酸が豊富な一皿として紹介しています。彼女自身は、蒸したご飯と一緒に昼ごはんや手早い夕食にしているそうです。
揚げて、漬けて、数日待つ

ヴィンダイには、大きく分けて二つの作り方があります。今回紹介するのは、SBSのFood Safariに載ったロビン・トゥシャールのレシピで、揚げ焼きにした魚をスパイスの酢であえ、瓶に詰めて冷蔵庫で数日寝かせてから食べる酢漬けの作り方です。仕上げてすぐよりも、時間をおくことで、魚の中までターメリックと酢の味がしみこみます。
もう一つは、ペリアンピライが紹介している、マスタードシードを油ではじけさせ、玉ねぎ、にんにく、しょうが、ターメリックを炒めてから、魚と酢、砂糖を加えて10〜15分煮る作り方です。こちらはその日のうちに食べられます。酢漬けは作り置きに、煮る作り方はすぐ食べたい日に。同じ名前でも、待つか待たないかで、料理の表情が変わります。
途中で見つける、味の決め手
白いご飯と、モーリシャスの食卓

寝かせたヴィンダイは、瓶から取り出して、室温に少しおいてから食べると、香りがよく立ちます。トゥシャールのように、蒸したご飯と合わせれば、手軽な昼ごはんや夕食になります。ペリアンピライも、煮る作り方のヴィンダイを、刻んだパクチーを散らしてご飯と一緒に出しています。酢の酸味がご飯によく合うので、魚の切り身ひと切れで、ご飯がどんどん進みます。
モーリシャスの食卓をもっと味わうなら、同じ島の屋台の味、豆入りの薄焼きパンドール・プリと一緒に並べてみてください。インド洋の島の料理なら、セーシェルのタコのカレーカリ・ココ・ズーリットもあわせてどうぞ。
よくある質問

作ってすぐに食べられますか?
この記事の作り方は、数日寝かせて味をなじませる酢漬けです。すぐに食べたい場合は、ペリアンピライのように、マスタードシードを油ではじけさせ、玉ねぎ、にんにく、しょうが、ターメリックを炒めてから、魚と酢、砂糖、塩を加え、蓋をして10〜15分、魚に火が通るまで煮る作り方がおすすめです。
どんな魚が向いていますか?
身が厚く、加熱しても崩れにくい白身魚が向いています。SBSのレシピは、身の厚い白身魚の切り身を使っています。タラやメカジキ、サワラなど、手に入りやすい魚で作ってください。
辛い料理ですか?
辛さは赤唐辛子の量で決まります。唐辛子を入れなければ、ターメリックとマスタードシードの香りと、酢の酸味が中心の味になります。
酢の量を減らしてもいいですか?
酢は味つけだけでなく、魚を漬けて保存する役目も果たしています。酢を減らすと保存性が落ちるので、酸味が気になるときは、量を減らすのではなく、食べるときに瓶から取り出して、少し室温においてから食べてください。











