夕方の浜に、帆を張った木造の船が戻ってきます。漁師たちが運び上げた魚は、そのまま市場へ。日が傾くころには、炭火の網の上で魚が焼かれ、香ばしい煙が港のあたりに漂います。焼けた魚には、ココナッツの甘い香りとライムの酸味をまとった黄色いソースがたっぷりかけられる。サマキ・ワ・クパカ(samaki wa kupaka)は、タンザニアのザンジバルをはじめ、インド洋に面したスワヒリ海岸で食べられている、焼き魚のココナッツソースがけです。
ザンジバルの市場と、帆船の漁師たち

中東やアフリカの料理を長く研究してきた料理研究家アニッサ・ヘルーは、ザンジバルの食品市場を、人と食材であふれた目を見張るほどにぎやかな場所と書いています。並ぶ魚は、美しい帆船で沖に出た地元の漁師たちがとってきたもの。島の人々は、その魚を炭火で焼いて食べるのだといいます。
ヘルーが紹介しているのは、そんな焼き魚を、クリーミーでスパイシーなソースでいっそうおいしく食べるザンジバル流の食べ方です。伝統的には大きな魚を1尾まるごと焼きますが、小さな魚を1人1尾ずつ焼いてもかまわないそうです。サマキはスワヒリ語で「魚」のこと。インド洋の交易で行き交ったスパイスと、海岸に茂るココナッツの木。スワヒリ海岸の恵みがひと皿に集まった料理です。
サマキ・ワ・クパカは、タンザニアのザンジバルだけでなく、ケニアのモンバサなど、同じスワヒリ語圏の海岸の町でも食べられています。ケニアの新聞The Standardは、この料理を「典型的なスワヒリのごちそう」として、料理人アリ・マンドリーのレシピを紹介しています。鶏肉を同じようにココナッツソースで仕上げる料理は「クク・パカ」と呼ばれます。
炭火の網から、家庭のフライパンへ

ザンジバルの人々が魚を焼くのは炭火のグリルです。ヘルーは、炭火のグリルや上火のオーブングリルがなければ、コンロにのせるグリルパンでも焼けると書いています。今回のレシピのもとにしたマンドリーの作り方は、さらに家庭向けで、魚の切り身をフライパンで焼き、同じフライパンにソースを注いで仕上げます。
炭火で焼いた香ばしさには届きませんが、切り身を使えば骨を気にせず食べられ、日本の台所でもすぐに作れます。魚は、タイやスズキ、タラなどの身のしっかりした白身魚が向いています。焼いている間に崩れにくく、ココナッツソースの濃厚さにも負けません。
途中で見つける、味の決め手
ウガリとカチュンバリを添えて

マンドリーのレシピでは、サマキ・ワ・クパカにウガリとカチュンバリを添え、好みでピリピリ(唐辛子)を添えて出しています。ウガリはとうもろこしの粉を練り上げた、東アフリカの主食。指でちぎって丸め、ココナッツソースをすくって魚と一緒に食べます。カチュンバリは、トマトと玉ねぎを刻んで塩やライムであえたサラダで、こってりしたソースの口直しになります。
ウガリの代わりに、ご飯にソースをかけて食べるのも日本の台所では手軽です。主食から作ってみたいなら、タンザニアのウガリを練って添えてみてください。同じスワヒリ海岸のココナッツ料理なら、ケニアの鶏肉のココナッツ煮込みクク・パカと食べ比べると、魚と鶏でソースの印象がどう変わるかがわかります。
よくある質問

丸ごとの魚で作れますか?
作れます。ザンジバルでは、伝統的に大きな魚を1尾まるごと炭火で焼くそうです。家庭では、小さめの魚を1人1尾ずつグリルパンや魚焼きグリルで焼き、中まで火が通ったら皿に盛って、温めたソースをかけてください。
ココナッツミルクで代用できますか?
できます。ココナッツミルクはクリームよりも水分が多いので、ソースを煮詰める時間を長めにとり、とろりとした濃度になるまで煮詰めてください。
辛い料理ですか?
このレシピは、黒こしょうの刺激がある程度で、強い辛さはありません。辛さがほしい場合は、マンドリーのレシピのように、食べるときに唐辛子を添えてください。
残ったらどうすればいいですか?
粗熱をとってから保存容器に入れて冷蔵し、早めに食べきってください。温め直すときは、ソースごと鍋に入れて弱めの中火にかけ、魚の中まで熱くなるまで温めます。











