辣子鶏:赤い唐辛子の下から鶏を探す
鶏は小さく切り、でんぷんの衣は薄くします。唐辛子粉と花椒は衣と仕上げ油の二か所に分けて使い、皿の主役は丸ごとの乾燥唐辛子にします。
運ばれてきた皿は、赤い小山のようです。丸ごとの乾燥唐辛子と花椒が高く盛られ、鶏はすぐには見つかりません。立ちのぼるのは、焦がした唐辛子と、舌がしびれる花椒の匂いです。The Mala Market で四川料理について書いているテイラー・ホリデイ(Taylor Holliday)は、2007年に成都のレストランでこの料理に出会ったときの様子を、鶏よりはるかに多くの丸ごとの唐辛子が盛られ、客は皿の中身を全部食べるのではなく、小さな揚げ鶏を拾い出していた、と書いています。重慶の文化紹介サイト iChongqing の記事も、赤い唐辛子の中から箸で鶏を探すという同じ仕草を伝えています。
この料理が辣子鶏(辣子鸡、làzǐjī)で、重慶の唐辛子鶏とも呼ばれます。甘酢の炒め物でも、衣の厚い唐揚げでもありません。角切りの鶏に、でんぷん、唐辛子、挽いた花椒の薄い衣をつけて二度揚げし、少量の油でにんにく、しょうが、唐辛子粉、ごま、丸ごとの唐辛子、丸ごとの花椒、砂糖、ねぎと和えます。薄い衣と二度揚げが、この皿の食感を作ります。
ここで紹介するレシピは、鶏肉450gが基準です。人数も調理時間も決めていません。世界ごはん紀行ではまだこのレシピを台所で試していないので、時計ではなく鶏と油を見て進めてください。
どのレシピをもとにしたか
このレシピは、ホリデイさんの「Chongqing Chicken With Chilies (Laziji, 辣子鸡)」ひとつの配合に従っています。ページは2015年4月10日に公開され、2026年4月7日の更新表示があります。そのため、現在の配合が初公開時と同じだとは言いません。ホリデイさんは自分の家庭向けレシピとして紹介しており、成都で食べた記憶をもとに組み立てたものです。伝統的なのは小さな骨付きの鶏だと説明したうえで、このレシピでは骨なし・皮なしの濃色の肉を使います。あくまで一人の家庭料理人によるアレンジで、重慶の店に共通する標準の配合ではありません。
2017年には、重慶での後の食事をもとにした別のレシピが公開されています。ホリデイさんは、それが2015年版の置き換えではないとはっきり書いています。そちらは鶏皮、大きめの角切り、菜種油(caiziyou)、搾菜(zhacai)、生の青唐辛子を使い、揚げるのは一度だけです。これらの材料や工程は、この記事では使いません。
以下の手順には、編集部が加えた部分が2か所あります。ひとつは一度目の揚げ油の温度です。ホリデイさんは「around 350°」と単位なしで書いています。二度目の揚げ油が米国のレシピらしく375°Fと明記されているので、この記事では一度目も350°F(約177°C)と読みます。もうひとつは、鶏の火通りの確認です。最も大きい一片の中心が75°Cで少なくとも1分間加熱されていること、そして生の鶏肉に使った器具を分けることは、日本の厚生労働省の案内によるものです。食品衛生のために加えた手順で、ホリデイさんの指示ではありません。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 中華鍋
- 生の鶏肉用の別のまな板と包丁(または、再び使う前に洗って消毒したもの)
- 乾いたフライパン。花椒を自分で挽く場合は、スパイスミルまたはすり鉢と、目の細かいふるいも
- 揚げ油用の温度計
- 鶏肉の中心を測る食品用の温度計
- 穴あきおたままたは網じゃくし
- キッチンペーパーと皿
- 揚げ油を移す耐熱容器
選び方と代用
鶏もも肉、片栗粉、にんにく、しょうが、ねぎ、菜種油、ごま、砂糖は、ふだんの台所にあるものです。辣子鶏の味を決めるのは、専門食材の方です。丸ごとの四川唐辛子、四川の唐辛子粉、花椒、紹興酒、中国のライトソイソースがそれにあたります。
でんぷんは、このレシピでは片栗粉を選んでいます。日本の片栗粉はじゃがいものでんぷんなので、そのまま使えます。コーンスターチでも作れます(「アレンジ」を参照)が、使うのはどちらか一種類にして、両方は混ぜません。
丸ごとの乾燥赤唐辛子は、この皿の見た目の中心です。大きくふっくらした、辛さが中程度のものを探します。中華食材店や通販で「四川 乾燥唐辛子」や「灯籠椒(denglongjiao)」を検索するのが近道です。日本の鷹の爪のような小さい乾燥唐辛子も辛さの代わりにはなりますが、香りと大きさが違うので、仕上がりの見た目も匂いも変わります。
四川の唐辛子粉は、四川料理用に売られている香りのよいもの(香辣辣椒面、xiangla lajiao mian)が向きます。ただ辛いだけの唐辛子粉とは別のものです。
花椒は、舌がしびれる感覚のもとです。丸ごとの赤い花椒を買い、衣に使う分は自分で挽きます。日本の粉山椒は花椒の完全な代わりにはならず、しびれの出方と香りが変わります。使うなら、同じ分量で置き換えず、少なめから試してください。
紹興酒には、決まった代用品がありません。日本酒を代わりに使うことはできますが、香りと後味が変わるので、置き換える分量の目安は示しません。
しょうゆは、中国のライトソイソースを使います。「light」と呼ばれるからといって、日本の薄口しょうゆに替えないでください。ふつうの濃口しょうゆは家庭での代用になり得ますが、比べて試してはいません。
揚げ油の温度計は、持っておく価値があります。二段階の揚げで、油の温度が違うからです。
食卓で、鶏を探しながら食べる

辣子鶏は、唐辛子がたっぷりに見えて、鶏がその中で小さく見えるように盛ります。ホリデイさんは、丸ごとの唐辛子と花椒を全部は食べず、鶏をつまみ出して食べることが多いと書いています。これは本人の食べ方であって、どの食卓にも通じる決まりではなく、少し食べる人もいます。重慶の文化記事も、箸で鶏を探す同じ場面を描いています。衣は揚げたてがいちばんおいしいので、鍋から上がったらすぐに食卓へ出してください。
うまくいかないときは
| 状態 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 衣が厚くてべたつく | 漬け汁ごと鶏をでんぷんに入れた | 鶏を漬け汁から持ち上げ、汁を残して薄くまぶす |
| 二度目を揚げてもカリッとしない | 油が熱くない、または一度に入れすぎた | 油を約375°F/191°Cに戻し、二回に分けて揚げる |
| 火が通ったか不安 | 色や泡立ちで判断している | 最も大きい一片を温度計で測る。中心75°Cで少なくとも1分 |
| にんにくとしょうがが焦げる | 火が強い、混ぜ方が足りない | 中火にして、手順6以降は強めにかき混ぜる |
| 仕上がりが油っぽい | 仕上げに新しい油を足した | 揚げ油から取った大さじ4だけを使う |
| 衣の味がぼんやりする、仕上げ油の香りが弱い | 唐辛子粉を一か所にまとめて使った | 衣に大さじ1、仕上げ油に大さじ2と、分けて使う |
アレンジ
ここで挙げるのは、このレシピ自身が選択肢として示している変更だけです。温度、分量、全体の順番は変わりません。
- コーンスターチの衣:片栗粉のかわりに、同じ量のコーンスターチを使います。
- ピーナッツ油:菜種油のかわりにピーナッツ油で揚げます。落花生のアレルゲンが加わるので、食卓の全員に確認してください。
- 赤と緑の花椒:丸ごとの赤い花椒小さじ2を、赤小さじ1と緑小さじ1に替えます。
- もっと辛く:丸ごとの乾燥唐辛子の一部を半分に切り、種を残したまま使います。衣や仕上げ油の唐辛子粉は増やしません。
- 大きめの唐辛子:大きくふっくらした、辛さが中程度の四川の唐辛子を選ぶと、皿が豊かに見えます。
残りものとアレルゲン
辣子鶏は、衣がカリッとしている揚げたてがいちばんです。残った場合は、室温に長く置かないでください。きれいな器具で清潔な浅い容器に小分けして早く冷まし、冷蔵庫に入れます。温め直すときは、75°C以上まで十分に加熱します。保存できる日数はここでは示しません。また、温め直しても、元のカリッとした食感が戻るとは限りません。
このレシピには、大豆(しょうゆ)とごまが入っています。市販の調味料はアレルゲンの表示を確認してください。揚げ油にピーナッツ油を選ぶ場合は、落花生も含まれます。
重慶の江湖菜と、決着のつかない由来話
iChongqing の記事は、Chongqing Institute of Foreign Studies と共同で制作され、Yan Deng が書いたものです。この記事は辣子鶏を、重慶の江湖菜(Jianghu cuisine)のひとつとして紹介しています。屋台や小さな食堂に根ざした、土地の料理という位置づけです。料理は赤い唐辛子と一緒に揚げた角切りの鶏で、作り方は場所によって違うとも書かれています。この記事が書き方をひとつのレシピにとどめているのは、そうした違いがあるからで、どれかを重慶の標準だとは言いません。
由来の話は、定まっていません。iChongqing の記事は、料理が早くから人気になったことを、Linzhongle という路傍の食堂と、1990年ごろの Gele Mountain の人気に結びつける地元の話として伝えています。ホリデイさんの2015年の記事は、1920年代に生まれたと言われ、1990年代に広く人気になったと書いています。この二つの話は合っておらず、発明した人も最初の店も、どちらからも確定できません。共通しているのは皿そのもの、つまり、たくさんの赤い唐辛子の下に小さな揚げ鶏がある、という姿です。
辣子鶏は、花椒と乾燥唐辛子を使う点で四川料理と共通していますが、ここでは四川省の料理全般にまとめず、重慶の料理として扱います。中国のほかの料理は、中国のほかのレシピも参照してください。
よくある質問
質問の多くは、三つの点に戻ります。衣を薄くすること、唐辛子粉と花椒の二つの使い分けを混ぜないこと、鶏の色ではなく中心の温度で火通りを確かめることです。
唐辛子は食べるのですか?
ホリデイさんは、丸ごとの唐辛子と花椒を全部は食べず、鶏をつまみ出すことが多いと書いています。iChongqing の記事も、客が箸で唐辛子の中から鶏を探す様子を伝えています。だからといって、誰も食べないわけではなく、少し食べる人もいます。好きなだけ食べてかまいません。
なぜ二度揚げするのですか?
中くらいの泡立ちの一度目で、鶏に火を通します。それより熱い油での二度目で、薄い衣をカリッと黄金色にします。どちらの揚げにも決まった時間はないので、火通りは温度計で確かめます。最も大きい一片の中心が、75°Cで少なくとも1分間になっていることが条件で、日本の厚生労働省の案内に従っています。この確認は食品衛生のために加えた手順で、ホリデイさんのレシピの一部ではありません。
片栗粉で作れますか?
作れます。日本の片栗粉はじゃがいものでんぷんで、このレシピが選んでいるでんぷんそのものです。厚い衣にせず、薄くまぶしてください。
ホリデイさんの2017年の重慶版と同じですか?
違います。2017年のレシピは、重慶で食べた食事をもとにした別の配合です。鶏皮、大きめの角切り、菜種油(caiziyou)、搾菜(zhacai)、生の青唐辛子を使い、揚げるのは一度だけです。2015年のレシピの置き換えではないと、本人が書いています。この記事は、2015年のレシピだけを使っています。
もっと辛くするには?
丸ごとの乾燥唐辛子の一部を半分に切り、種を残します。これはレシピにある選択肢です。ここで紹介した基本の作り方では、唐辛子は丸ごとのままです。衣や仕上げ油の唐辛子粉の量は増やさないでください。
なぜ唐辛子は「3カップ以上」で、一度目の揚げは350°Fなのですか?
ホリデイさんは丸ごとの唐辛子を、「at least 3 cups/3 ounces」と書いています。この二つを正確に同じ量として扱う根拠はないので、この記事では先に書かれている「3カップ以上(米国のカップ)」を採用し、3オンスをグラムに換算することもしません。一度目の揚げは「around 350°」と単位なしで書かれています。二度目が375°Fなので、ここでは350°F(約177°C)と読みました。この読み方は編集部の判断です。
何人分ですか?
人数は示されていません。このレシピは鶏肉450g(1ポンド)を使いますが、できあがりの量は試作で確かめていません。















