フランスでパンは、毎日のように買うものです。近所のパン屋に寄って、長いバゲットを受け取り、食卓で切って分ける。フランス文化省の文化遺産の記録は、この日々のパン屋通いを、人と会って言葉を交わす機会の一部として描いています。朝食のタルティーヌ(tartine)に薄く切り、半熟卵に添える細い棒状に切り、ハムとバターを挟んで食べる。その真ん中にあるのがバゲットです。
このレシピは、そのパンを家庭の台所に持ち込むためのものです。King Arthur Baking の Classic Baguettes をもとにした3本分で、前夜に粉と水とごく少量のイーストを混ぜる poolish(ポーリッシュ)を使います。poolish は、約14時間発酵させてから本ごねに加える、ゆるい前種です。その大半は寝かせておくだけの時間で、手を動かす作業は翌日に分かれています。
家庭のバゲットがうまくいくかどうかは、発酵・成形・蒸気の3か所でほぼ決まります。以下の手順には出典のレシピにある時間を書きますが、室温もオーブンも家ごとに違うので、ボウルの中や手の感触、オーブンの中で何を見ればよいかも合わせて書きます。
poolish は一晩かけてゆっくり育て、成形は生地を無理に引っ張らずにやさしく行い、焼成は蒸気を入れて濃い黄金色になるまで焼く。この3点が焼き上がりを左右します。
パン屋で買って、食卓で分けるバゲット
バゲットは特定の地方ではなく、フランス全体のパンです。 文化省の目録は、国中で見られる細長い小麦のパンと説明し、ふつうのバゲット自体には法的な定義がないと記しています。代わりに、形や食感についての一般的な目安があり、客のあいだには皮の焼き色の濃さの好みまであるそうです。
食べ方は食事の流れの中に入り込んでいます。同じ記録に出てくるのは、朝食やカフェのタルティーヌ、半熟卵に浸す細長い mouillettes(ムイエット)、casse-croûte(軽食)として食べるハムとバターの jambon-beurre(ジャンボン・ブール)、そして家族の食卓でパンを切り分ける習慣です。買うこと自体も人との関わりで、2022年の文化省の発表は、バゲットを買いに行くことを共有とつながりの時間として説明しています。
2022年には、バゲットのパンの職人技と文化が、ユネスコの無形文化遺産の代表一覧表に記載されました。これはフランス文化省の発表によるものです。発表では、基本の材料は小麦粉、水、イーストまたはルヴァン(あるいはその両方)、塩とされています。
歴史については、目録は現在の名称が広まる前にあった flûte(フリュート)などの長いパンに触れており、バゲットを一人の発明者や一つの起源の話に還元してはいません。パン屋ごとの違いは、決まった地域のレシピではなく、粉、発酵、成形、焼き色をどこまで深くするかから生まれます。家庭では、同じ持ち味を発酵と焼成で組み立てていくことになります。
途中で見つける、味の決め手
うまくいかないときは、原因になった工程へ戻る
バゲットの失敗の多くは、もっと前の工程に原因があります。見えている症状を直そうとするより、その始まりの工程に戻りましょう。
| 症状 | 確認すること | 対処 |
|---|---|---|
| poolish に泡が少ない | 室温と、イーストの状態 | 泡立ってふくらむまで、もう少し時間をとる。時計だけで終わらせない |
| 生地が硬い | どの粉を使ったか | 強力粉は硬めの生地になりうる。すぐに大量の水を足さない |
| 成形で生地が縮んで戻る | 休ませる時間が足りたか | さらに伸ばす前に休ませる。力ずくで引っ張らない |
| クープが開かない | 刃の角度と深さ、最終発酵の進み具合 | 刃を寝かせて入れる。切る前に、マシュマロのような弾力があるかを確かめる |
| 皮の色が薄い | 予熱と、オーブンの実際の温度 | しっかり予熱し、最短時間で止めずに濃い黄金色まで焼く |
タルティーヌとムイエット、紙袋で保存

フランスの文化遺産の記録に出てくる食べ方は素朴なもので、家で焼いたパンにもそのまま合います。
- タルティーヌ(tartine):切ったバゲットにバターとジャムを塗って、朝食に。
- ムイエット(mouillettes):半熟卵に浸すための細い棒状。
- ジャンボン・ブール(jambon-beurre):バゲットを割って、ハムとバターを挟む。casse-croûte(軽食)として食べる。
- 食卓で:パンを切って、食事のあいだ分け合う。
- クルトン(croûtons):薄く切ったバゲットは、クルトンにも使われる。
保存については、出典のレシピでは一晩なら紙袋に入れておくよう勧めています。それより長く置くなら冷凍し、解凍後に温め直します。
アレンジ
| アレンジ | 焼き方の変わるところ |
|---|---|
| 小さなバゲット(demi-baguette) | 出典のレシピのヒントに、7〜8インチ(約18〜20cm)の短いパンにする方法がある |
| ゆっくり発酵、イースト少なめ | 出典には、イーストを小さじ1に減らし、室温で約3時間発酵させる方法も書かれている。この方法は別途検証が必要で、ここでは試していない。上の手順とは組み合わせない |
| 朝食のタルティーヌ | バターとジャムを塗る |
| ジャンボン・ブール | ハムとバターを挟んで軽食に |
ほかのレシピとの違い
バゲットの配合はレシピごとに大きく異なり、ひとつの配合に混ぜ合わせることはできません。Boulangerが掲載するフランスの家庭向けレシピは、3本分でT55の小麦粉375g、水215g、塩7g、ドライイースト5gを使い、240°Cで25分焼きます。Lesaffreのプロ向けレシピは、3°Cで16時間以上の低温長時間発酵を行い、その後20°Cで90分置いて、250°Cで軽く蒸気を入れて18分焼くもので、専用のルヴァンとイーストを使います。パンづくりの幅を知る参考にはなりますが、この記事の手順はKing Arthur Bakingの家庭向けレシピだけに沿っています。
よくある質問
poolish を省いてもよいですか?
poolish はこのレシピの土台で、分量も時間もそれを前提に書かれています。上で触れたイースト少なめの方法も別途検証が必要なので、この記事では poolish を省く方法を確認済みのものとして紹介することはできません。
オールパーパス粉の代わりに強力粉を使えますか?
使えますが、出典のレシピには、生地が硬めになると書かれています。強力粉、米国のオールパーパス粉、フランスのT55は同じ製品ではないので、同じ結果になるとは期待せず、生地の感触を確かめる前に大きく加水を変えるのは避けてください。
蒸気は本当に必要ですか?
出典のレシピは、予熱した鋳鉄鍋に熱湯を注いで蒸気を作りながら焼いています。ミトンを着け、顔や手を蒸気から離してください。
残ったバゲットはどう保存しますか?
出典のレシピに従い、一晩なら紙袋に入れます。それより長い場合は冷凍し、解凍後に温め直します。
「バゲット・ド・トラディション」とは何ですか?
フランスでは、バゲットに tradition という言葉が使われることがあります。この名称に付く法的な条件については、この記事では扱いません。詳しくはフランスの公式な規則をご確認ください。フランス文化省の記録には、ふつうのバゲット自体には法的な定義がないとも書かれています。
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