焼いたパンが、濃い色の蜜をぐんぐん吸っていきます。その間にレーズンの甘さと、砕いたチーズの塩気がはさまり、ひと口ごとに糖蜜のような甘さと乳の塩味が行ったり来たりする。メキシコのカピロターダは、そんなデザートです。焼いたパン、濃い蜜、レーズン、塩気のあるチーズ。この4つを層にして、おだやかに焼き上げます。
カピロターダ:焼いたパン、濃い蜜、レーズン、塩気のチーズ
この版が守っている核は、蜜を吸う焼きパン、レーズンのやわらかな甘み、砕いたコティハの塩気の3つに、層に重ねてゆっくり焼く手順を加えたものです。
テレラまたはボリージョのスライスをこんがり焼き、ピロンシージョ(メキシコの未精製サトウキビ糖)をアニスシード、レモンの皮、シナモンスティックと煮た蜜を、層ごとにしみ込ませます。層の間には、レーズンと砕いたコティハチーズ。糖蜜のような甘さと、乳の塩気が、一口の中で重なります。参考にしたレシピは、パン、ピロンシージョの蜜、レーズン、コティハを、この版に繰り返し現れる要素として挙げています。
カピロターダは、ひとつに決まったレシピではありません。グアナフアト州の公式観光・食文化サイトは、版がメキシコ各地で異なると述べています。そこで公開されているレシピは María Elena Acros de Morales さんの名で紹介されたもので、ミチョアカン州の版に着想を得たものです。この記事はその1つのレシピだけを扱い、ほかの地方の作り方とは混ぜません。同じ国の料理は メキシコのページ でも見られます。
このレシピは、編集部の台所では試作していません。材料と手順の順序は、公開されている出典によるものです。出典には、オーブンの温度、焼き時間、パンの厚さ、型の大きさ、何人分かが書かれていないので、この記事でも補いません。「こう見えたらよい」という目安は、編集部の提案で、試して確かめた結果ではありません。
途中で見つける、味の決め手
道具
- パン切りナイフとまな板
- パンを焼くための天板(オーブントレイ)
- 蜜を煮る小鍋
- シナモンスティックとレモンの皮を取り出す、穴あきおたままたはトング
- 食品用で、オーブン対応の浅い耐熱皿(層に重ねるため)
- オーブン
選び方と代用
出典に書かれた分量のまま、材料表に載せています。出典は何人分かを示していないので、この記事でも人数は書きません。この版には、バター、油、牛乳、卵、ナッツは入りません。足すこともしません。
水。 出典の英語版ページは、材料欄に水3/4リットルと書いていながら、手順では「three quarts(3クォート)」と書いています。同じ発行元のスペイン語原文は、どちらも3/4リットルです。そこでこのレシピでは750 mlにしました。これは蜜に使う水だけの量です。
ピロンシージョ。 メキシコ食材や中南米食材を扱う店、輸入食材店で探してください。多くは円錐形に固めた未精製サトウキビ糖として売られています。見つからないときは、日本の黒糖のような色の濃い未精製サトウキビ糖が代わりになるかもしれませんが、これは編集部の提案で、出典が挙げる代用ではありません。香りも溶け方も同じにはなりません。
パン。 出典はテレラかボリージョ、つまりメキシコの白いパンを挙げています。どちらも手に入らないときは、塩気の強くない食パンなどの食事パンが、編集部案としては妥当です。ただし、食感も蜜の吸い方も変わります。
チーズ。 出典は「アドベラまたはコティハ」と二択で示しています。この記事はそのうち、砕いたコティハを選びました。アドベラが熟成度や硬さまで同じだとは考えていません。ほかのチーズは、塩気も食感も同じになるとは言えません。代用するなら、塩気と硬さを見比べて、別の仕上がりになると考えてください。
レモンの皮。 出典はレモンの種類も皮の厚さも指定していません。編集部の選択は、よく洗った黄色いレモンの、色のついた薄い外皮だけを使うことです。
アニス。 出典の「小さじ」は、すりきり5 mlの計量スプーンと読みました。これは編集部の解釈です。
よくある失敗と対処
以下は、レシピの構造から考えた編集部の提案で、試作した結果ではありません。
| 困りごと | 考えられる原因 | 見るところ |
|---|---|---|
| 仕上がりにほろ苦さが出る | パンを濃く焼きすぎた | 次回は早めに様子を見て、淡いきつね色で止める |
| 一部のパンが乾いている | 蜜が一か所に偏った、または上の層に多くかけすぎた | 蜜を全部の層に分け、焼く前に乾いた所がないか見る |
| 重く、べたつく | 蜜を煮詰めすぎた、またはパンの焼きが足りず形を保てない | 出典の水の量より減らさず、パンの焼き具合と蜜の煮詰め具合を見る。皿の大きさも影響する |
| 蜜がゆるくさらさら | 煮詰めが足りない | 合わせた蜜が、はじめの約半分の量になるまで煮る |
変えて楽しむ
- ピロンシージョの代わりに黒糖。 見つからないときの編集部案です。蜜の香りが変わるので、同じ仕上がりではなく別の味と考えてください。
- テレラとボリージョ。 出典はどちらも認めています。切り口と蜜を吸う量がどう違うか見比べてください。どちらが優れているとは言いません。
- アドベラとコティハ。 出典は両方を挙げています。両方手に入るなら、商品の表示を確かめたうえで、塩気とほぐれやすさを比べてみてください。
- サカテカスのひよこ豆の版。 これは別のカピロターダです。次の節で触れます。地方による違いとして読み、このレシピには混ぜないでください。
カピロターダは1つのレシピではない
ホセ・マリア・ルイス・モラ研究所が発行する『Revista BiCentenario』の歴史記事は、19世紀のメキシコで「カピロターダ」という名前が、肉入りのもの、野菜のもの、甘いものと、いくつもの違う料理を指していたと説明しています。記事が紹介する19世紀の料理書のレシピは、揚げたパンを、トマトを使った味つけのスープ、香草、ドライフルーツ、ナッツ、チーズと重ねるものです。いま私たちが思い浮かべる甘いパンの重ね菓子は、その仲間の一つの枝にすぎません。記事は、ただ1つの起源の物語を示してはいません。
同じ記事は、甘い版を四旬節の食卓に位置づけ、20世紀の甘いレシピとして、ピロンシージョの蜜、パン、チーズ、レーズン、ピーナッツ、くるみを使う例を挙げています。北部には、豆やひよこ豆を使う地方の版もあるとあります。これは記事の歴史的な記述であり、今日のすべての家庭がそうしているという意味に広げることはできません。
地方差の一例が、Larousse Cocina に投稿されたサカテカス風のカピロターダです。投稿者の家族のレシピとして載っているもので、煮たひよこ豆を牛乳と砂糖と混ぜた甘い「ミルク」を土台に、シナモン、ボリージョ、フレッシュチーズ、レーズン、炒ったピーナッツを使います。水ベースのピロンシージョの蜜を使い、ナッツを使わないこの記事のミチョアカン風とは、材料も作り方もかなり違います。だからこの記事では、2つを混ぜずに分けています。
アレルギー・保存・温め直し
この料理には小麦(パン)と乳(チーズ)が含まれます。小麦や乳のアレルギーがある方は食べないでください。パン、チーズ、レーズンは、アレルゲンの表示と、同じ工場で作られているかどうかの表示を確認してください。
出典のレシピには、残りの保存や温め直しについての案内がなく、編集部でも根拠を確認できていません。そのため、この記事では保存期間も温め直しの方法も案内しません。チーズを含む加熱済みの料理として、お住まいの地域の食品衛生の案内に従ってください。
よくある質問
カピロターダはメキシコのどこの料理ですか?
メキシコ各地で作られ、地方によって版が違います。この記事の版は、グアナフアト州の公式観光・食文化サイトで公開されているレシピで、ミチョアカン州の版に着想を得たものと説明されています。
四旬節に食べるものですか?
『Revista BiCentenario』の歴史記事は、甘い版を四旬節の食卓と結びつけています。これはその記事の歴史的な説明で、今日のすべての家庭がそうしているとは言いません。
ピロンシージョの代わりに黒糖で作れますか?
黒糖のような色の濃い未精製サトウキビ糖は編集部の提案で、出典が挙げる代用ではありません。蜜の味も溶け方も変わります。
コティハが見つからないときはどうしますか?
出典が挙げるもう1つの選択肢はアドベラです。ほかのチーズは塩気も硬さも違い、試作していないので、同等とは言えません。
何度で、どのくらい焼きますか?
出典は「弱火で焼く」としか書いておらず、温度も時間もありません。このレシピは試作していないので、数字は示しません。蜜がパンにしみ込み、表面が乾き切っていないかを見てください。
何人分ですか?
出典に収量の記載がないので、人数は示しません。
水が3クォートではなく750 mlなのはなぜですか?
出典の英語版ページは、手順で「three quarts(3クォート)」と書いていて、自分の材料欄と食い違っています。同じ発行元のスペイン語原文は、どちらも3/4リットルです。











