通りの角に、大きな鍋を積んだ屋台が出ています。ふたを開けると、ひよこ豆とじゃがいもがゆらゆらと湯気を立てています。売り手は手早く椀によそい、緑色のソースをお玉でたっぷり回しかけ、好みで赤い辛いソースをちょんとのせて差し出します。にんにくと酢のつんとした香り、香菜の青い匂い。アフガニスタンの街角や公園で売られる屋台の軽食、ショル・ナホド(Shor nakhod)です。
街角の鍋から立つ湯気と、酸っぱい緑のソース

「ナホド」はダリー語(アフガニスタンのペルシア語)でひよこ豆のこと。アフガニスタンでは、街の通りや公園に屋台が並び、ショル・ナホドはその定番です。アメリカの料理誌ミルク・ストリートは、行列に追いつくために売り手が流れ作業のような速さで椀を仕上げていく様子を紹介しています。食べ応えのある豆とじゃがいもに、元気の出るような鮮やかなソースをかける軽食で、インドの屋台料理チャナ・チャート(ひよこ豆の酸っぱい和え物)にたとえられることもあります。
この料理の主役は、豆でもじゃがいもでもなく、上からかけるソースです。香菜とにんにくを白い酢と一緒になめらかにすりつぶした緑のソースで、ミルク・ストリートは「ハーブと白い酢、ねぎの仲間、オリーブオイルがあれば十分」と書いています。売り手は食べる直前にソースをかけ、熱い豆とじゃがいもが冷めていくあいだに、酸味と香りが中までしみ込んでいきます。
ショル・ナホドには、緑のソースのほかに、赤唐辛子で作る辛いソースを少し添えるのが屋台の定番です。辛さが欲しい人だけが自分の椀にのせて調整できるので、ひとつの鍋でみんなの好みに応えられます。
家庭でも作られる料理で、アメリカに暮らすアフガン系の料理家たちも、それぞれの配合を紹介しています。じゃがいもを多めにしてサラダのように仕立てる人もいれば、すべてをつぶしてディップにする人もいます。共通しているのは、香菜、にんにく、酢の3つ。この3つがそろえば、どの家のショル・ナホドも、あの屋台の匂いになります。
日本の台所で作るときに知っておきたいこと

この記事の配合は、アメリカの食育団体フード・リテラシー・センターが、地元のアフガン料理のケータリング業者フローレンス・アミン=ポパルザイから受け取ったレシピを基にしています。材料は少なく、ほとんどがスーパーでそろいます。ひよこ豆は水煮缶が手軽で、缶汁ごと使うのがこのレシピの特徴です。乾燥ひよこ豆からゆでる場合は、ひと晩水に浸してから柔らかくゆで、ゆで汁を少し取っておきます。
香菜は1束(約30g)をたっぷり使います。茎にも香りがあるので、根元の硬い部分だけ落とし、葉と茎をまとめてソースにします。酢は、原文では白い酢(ホワイトビネガー)。日本の穀物酢がいちばん近く、米酢を使うとまろやかな仕上がりになります。
香菜の香りが苦手な人がいる場合は、香菜の半量をイタリアンパセリに替えると、緑の色はそのままに香りがやわらぎます。ミルク・ストリートのカリフラワーを使ったアレンジのように、ミントを少し加えるのもよく合います。
じゃがいもは、ゆでても形が崩れにくいメークインが向いています。男爵いもを使うと、混ぜるときに角が崩れてソースにとろみがつき、それはそれでおいしい仕上がりになります。
途中で見つける、味の決め手
温かくても冷たくても、つまみにも一品にも

屋台のショル・ナホドは温かいまま出されますが、家庭では温かくても冷たくても楽しまれています。アフガン系の料理家フマイラ・ギルザイのレシピを紹介する団体トゥギャザー・ウィメン・ライズも、温かいままでも冷やしてもよいとしています。冷やすと酸味がまろやかになり、暑い日のサラダとしても食べやすくなります。
辛いソースは、赤唐辛子をにんにくと酢と一緒にすりつぶして作るのが一般的です。日本では、市販のチリソースや一味唐辛子を少量の酢で溶いたもので代用できます。平たいパンを添えれば軽い昼食になり、アフガニスタンの宴の料理と並べれば、さっぱりした箸休めになります。
ショル・ナホドの緑のソースは、豆やじゃがいもだけでなく、焼いた肉や揚げ物に添えてもよく合います。多めに作っておけば、別の日の食卓でも、さっぱりした薬味として使えます。
アフガニスタンの料理をもう一品作るなら、ニラとねぎを包んでゆでる香草餃子アシャクや、レーズンとにんじんをのせた祝いの米料理カブリ・パラウ、トマトときゅうりを刻んだアフガンサラダと組み合わせると、アフガンの食卓らしい一揃えになります。
アレンジの楽しみ方

じゃがいもの代わりに、ゆでたカリフラワーで作るのも人気です。カリフラワー1/2株を小房に分け、塩を入れた湯で3〜4分、芯に少し歯ごたえが残るくらいにゆでます。ソースには香菜に加えてミントの葉をひとつかみ入れると、さわやかさが増します。上に赤唐辛子の薄切りを散らせば、見た目にも華やかになります。
すべてをブレンダーにかけて、ディップにする楽しみ方もあります。この記事の材料のうち、ひよこ豆は缶汁をきり、じゃがいもと香菜ソースを合わせて回し、仕上げにオリーブオイルを少しずつ加えながらなめらかにします。酸っぱいくらいが目安で、平たいパンや生野菜につけて食べると、前菜にぴったりです。
よくある質問

作り置きできますか?
和えたショル・ナホドは、保存容器に入れて冷蔵し、翌日までに食べきってください。時間がたつと香菜の色がくすみ、香りも落ちます。作り置きするなら、豆とじゃがいも、ソースを別々に冷蔵しておき、食べる直前に和えるのがおすすめです。
缶汁は捨てなくていいのですか?
フード・リテラシー・センターのレシピは、缶汁ごと使う配合です。缶汁がソースに少しとろみを加え、豆の味も濃くなります。缶汁の塩気が気になる場合は、半分ほど捨ててから使い、水分が足りなければ水を少し足してください。
香菜が苦手でも作れますか?
イタリアンパセリやミントで作れます。香りはまったく別物になりますが、にんにくと酢の酸っぱいソースの組み合わせは同じように楽しめます。香菜を半量だけ替えるところから試してみてください。
酢の種類は何がよいですか?
原文はホワイトビネガー(白い酢)なので、日本では穀物酢が近い味になります。りんご酢を使うレシピもあり、果実の香りが加わって、やわらかな酸味になります。











