カトマンズ盆地の祝いの宴では、並んで座った客の前に、いくつもの料理が少しずつ盛られていきます。その横に注がれるのが、たっぷりの黄色いスープです。ひと口すすると、きゅっと酸っぱく、スパイスの香りのあとからたけのこの歯ざわりが追いかけてきます。じゃがいも、たけのこ、黒目豆を煮込んだネパールのアル・タマ(आलु तामा / Aloo tama)です。
酸っぱいたけのこのスープ

名前の「アル」はじゃがいも、「タマ」はたけのこのことです。黒目豆(ブラックアイドピー)を入れたものは、豆を意味する「ボディ」を加えて「アル・ボディ・タマ」とも呼ばれます。英語圏の料理解説では、ネパールの丘陵地帯で食べられてきた料理として紹介され、汁気の多いスープとしても、ご飯にかけるカレーとしても食べられます。酸っぱくて少しつんとくる味が、この料理のいちばんの魅力です。
酸味のもとになるたけのこについては、説明が分かれます。多くの解説では、タマは強い酸味をもつ発酵たけのこだとされています。一方、オーストラリアに暮らすネパール出身の書き手によるブログでは、タマは発酵させていないたけのこの加工品だと説明し、レモン汁で酸味を足す作り方を紹介しています。地域や家によって使うたけのこが違うと考えるのが自然でしょう。
カトマンズ盆地に古くから暮らすネワール族の宴「ボジ(bhoj)」では、アル・タマは必ず並ぶ料理だといわれます。ネパールでは、ほとんどの家庭で作られる身近な料理で、体が温まる家庭の味として親しまれています。
ネパールの台所でよく使われるのが、ティムールと呼ばれる山椒の仲間のスパイスです。舌がしびれるような柑橘の香りがあり、四川の花椒に近い風味をもっています。アル・タマに入れると、たけのこの酸味にさわやかな香りが重なります。日本では花椒で代わりにするのがいちばん手軽です。
日本の台所で作るときに知っておきたいこと

発酵たけのこは日本ではほとんど手に入りません。そこで今回は、日本のスーパーで買える水煮たけのこを使い、レモン汁で酸味をつけて仕上げます。英語圏のレシピでも、缶詰のたけのことレモン汁を組み合わせる作り方が紹介されています。アジア食材店などで酸っぱい漬けたけのこが見つかった場合は、レモン汁を入れる前に味見をして、酸味が足りないときだけ加えてください。
ブラックアイドピーは、白い豆にへその黒い点がある豆で、インド食材店や輸入食品店、通販で缶詰や乾燥豆が手に入ります。缶詰を使えば、豆を一晩水に浸ける手間が省けます。じゃがいもは、煮崩れしにくいメークインや新じゃがが向いています。
水煮たけのこは、穂先と根元で歯ざわりが違います。根元を中心に使うと、煮込んでもシャキッとした食感が残ります。穂先は柔らかいので、薄切りにして最後に加えると形が崩れません。
唐辛子は、英国の食材店が紹介するレシピではとても辛いブート・ジョロキアを使っています。日本の家庭で作るなら、一味唐辛子やチリパウダー小さじ1/4にしておくと、辛さは控えめになります。辛いのが好きな人は、食卓で一味唐辛子を足してください。
途中で見つける、味の決め手
アレンジの楽しみ方

アル・タマは肉を使わずに作れる料理なので、そのままで野菜と豆だけの一皿になります。肉を加えたい場合は、鶏もも肉をひと口大に切り、手順5のあとで炒めてから具材を加えると、こくのあるスープになります。その場合は、鶏肉の中心まで火が通ったことを確かめてください。
豆は、ブラックアイドピーの代わりにひよこ豆や大豆の水煮でも作れます。豆の種類が変わると食感が違ってくるので、家で作りやすい豆で試してみるのも楽しみ方のひとつです。たけのこを増やしてじゃがいもを減らすと、より酸味と歯ざわりが前に出た味わいになります。
よくある質問

発酵たけのこがない場合はどうしますか?
水煮たけのこにレモン汁で酸味をつけて作れます。この記事の材料表はその作り方です。アジア食材店などで酸っぱい漬けたけのこが見つかったら、レモン汁を加える前に味見をして、酸味を調整してください。
乾燥のブラックアイドピーを使う場合は?
一晩水に浸けてから、柔らかくなるまでゆでて使います。浸け忘れたときは、熱いお湯に数時間浸けておく方法もあります。
辛さを抑えるには?
一味唐辛子と花椒を省けば、スパイスの香りだけの穏やかな味になります。子どもと一緒に食べる場合は省いて作り、大人は食卓で一味唐辛子を足してください。
作り置きはできますか?
粗熱を取ったら早めに冷蔵庫に入れ、温め直すときは鍋で全体がしっかり沸騰するまで加熱してください。じゃがいもは時間がたつとスープを吸うので、温め直すときに水を少し足すと、スープ状に戻ります。














