アショカ・ハルワ — 鍋はゆるみ、やがて艶が出る
この鍋で守りたいのは三つです。豆はスプーンで簡単につぶれるまで煮てなめらかにすること、粉は香ばしい香りがするまで炒めること、砂糖を入れたあとは混ぜ続けて、油とギーを少しずつ加え、艶が出て鍋から離れるまで練ることです。
黄色い豆と炒めた粉のぼってりした淡い生地に砂糖を入れると、間もなく生地はゆるんで、ほとんど流れるような状態になります。失敗ではありません。ここから先は手を止めず、油と溶かしたギーをスプーン1杯ずつ加え、前の分が消えてから次を入れます。少しずつ色が深まり、つやが出て、生地が鍋肌から離れてひとかたまりの柔らかな塊になっていきます。
アショカ・ハルワは、アソカ・ハルワとも書かれ、パシ・パルップ・ハルワの名でも知られる、皮をむいて割った黄色いムング豆のこっくりした甘味です。レシピを書く人たちや地域のニュースは、南インド・タミル・ナードゥ州の町ティルヴァイヤールとこの菓子を結びつけています。この記事がたどるのは、レシピサイト Chitra's Food Book に載っている家庭向けの一つの作り方です。筆者が雑誌のレシピの材料の割合を自分の事情に合わせて調整したものです。ほかにもまったく違う割合の公開レシピがあるので、これはよく記録された一つの作り方であって、唯一の「本物」の配合でも、どこかの店のハルワの再現でもありません。
ティルヴァイヤールで語られるアショカ・ハルワ
タミル語のニュースサイト ABP Nadu の記事は、このハルワをティルヴァイヤールの菓子として紹介し、地元の店 Andavar を訪ねています。熱いハルワをバナナの葉に盛り、辛いミクスチャー(歯ごたえのある塩味のスナック)を添えて出すという描写です。熱くて甘いハルワと、塩気のきいた辛いスナックの組み合わせは、あくまでこの店の様子として描かれたもので、どの家庭でもそうするという話ではありません。
同じ記事は、この店をティルヴァイヤールの音楽祭ティヤーガラージャ・アーラーダナと結びつけています。祭りに訪れる音楽家や観光客がこのハルワを求めて店に来る様子が描かれ、町の食の記憶に刻まれた菓子として語られています。台所だけのものではない、ということです。
ニュース記事も Chitra's Food Book も、ティルヴァイヤールにこのハルワを持ち込んだ人としてP.V. Ramaiyer(レシピ記事ではRamu Iyer)の名を挙げます。ただ、二つの記述は経過年数の書き方が一致せず、どちらも独立した歴史資料ではありません。この記事は起源の年を決めず、「アショカ」という名の由来も推測しません。
記事に出てくる店は、風味の理由を地元の水と薪火に求めています。これは店自身の説明で、家庭の台所で確かめる方法はありません。この記事では、公開されている作り方に沿って、なめらかな豆、香ばしく炒めた粉、根気よく少しずつ加える油脂を軸にします。なお、この配合は世界ごはん紀行編集部で試作したものではないため、どの材料、どの台所でも同じ結果になるとは保証できません。
アショカ・ハルワには、一つに固定された定義がありません。公開レシピは、豆と粉と砂糖とギーの割合も、maida(精製した白い小麦粉)や油、食用色素、サフランを使うかどうかも、かなり違います。インドのほかの料理はインドの国別ページもご覧ください。
| レシピ | 公開されている主な分量 | 備考 |
|---|---|---|
| Chitra's Food Book(この記事で採用) | 黄色いムング豆 1/2 cup、小麦粉 1/4 cup、maida 1 tbsp、砂糖 1 cup、サラダ油など食用油 1/2 cup、ギー 1/2 cup | 油とギーの両方、赤い食用色素、カシューナッツを使う |
| Indian Express Tamil | パシ・パルップ 250 g、ギー 250 ml、砂糖 500 g、小麦粉 30 g、カシューナッツ 50 g、カルダモン 2 g | 赤い食用色素は量の記載なし。収量・時間の記載もなし |
| NDTV Food | ムング豆 2 cups、全粒小麦粉 1 cup、ギー 1/4 cup + 1 tbsp、砂糖 1/2 cup | サフランを使う。カシューナッツとレーズンは任意 |
この表は、レシピごとに配合が違うことを示すだけのものです。以下の作り方は最初のレシピだけに従い、他のレシピの分量や手順は混ぜていません。
途中で見つける、味の決め手
選び方と代用
黄色いムング豆(イエロームングダル) は、皮をむいて割ったムング豆です。普段のスーパーで見つからなければ、インド食材店か通販で探します。皮つきの緑色の丸ごとのムング豆は、別の材料です。
ギーはこの菓子の香りの大きな部分を担うので、バターや普通の植物油と同じものとは考えないでください。レシピの食用油は「精製して香りのないもの」とされているので、風味の強い油ではなく、くせのない油を選びます。
カシューナッツは、ふつうの無塩のものでかまいません。特別な等級は必要ありません。maida は精製した白い小麦粉で、英語では一般に「all-purpose flour(万能粉)」と呼ばれます。
赤い食用色素は任意です。使わなければ写真より淡い色に仕上がりますが、材料と香りは変わりません。色素の代わりに使える自然素材は、このレシピでは試されていないので、記事では勧めません。
道具
- 豆を煮る圧力鍋または鍋
- ハルワを練る厚手の深い鍋またはカダイ(長く混ぜるのに向くが、普通の鍋でも作れる)
- ポテトマッシャーまたはブレンダー
- 丈夫なヘラまたは木べら
- 計量カップ(250 ml)と計量スプーン
- 油、ギー、色素を分けておく小さなボウルをいくつか
つまずいたときの見直し:粒が残る、焦げる、ゆるい、油っぽい
| 困りごと | 対処 |
|---|---|
| 豆のペーストに粒が残っている | 砂糖を入れる前にもう一度つぶすかブレンダーにかける。砂糖を加えたあとは直しにくい |
| 粉が焦げそうになっている | すぐに火を弱めて、混ぜ続ける |
| 砂糖を入れたあとにゆるくなった | 想定どおり。加熱と混ぜ続けるのをやめない。油脂を加えるうちにまとまってくる |
| 油脂が混ざらない | 油脂を足すのをいったんやめ、鍋の中の分が吸い込まれるまで混ぜる。そのあと、もっと少ない量ずつ続ける |
| 油脂が分離した、または焦げた | 元のレシピには確かな戻し方がない。少量ずつ加え、混ぜ続け、火加減を保つことで防ぐのが無難 |
変えると仕上がりはどう変わるか
- 食用色素を使わない: ハルワは淡い色になります。材料と香りは同じで、いちばん簡単な変更です。
- カシューナッツを使わない: ナッツアレルギーの人に作るときの助けになることがあります。ただし台所や材料の交差接触には注意してください。風味と食感は変わります。
- ギーを減らして油を増やす: 筆者は、油を多くしてギーを少なくする人もいると触れていますが、割合は示していません。そうした変更は、別の配合として自分で試す必要があります。
- 油脂や砂糖を減らす: 筆者は減らすことを勧めていません。同じ艶と食感になる保証はありません。調整する場合は、仕上がりが違うものになると考えてください。
保存と温め直し
レシピの筆者は、容器に入れて10日もつと書いていますが、どんな温度や条件でかは述べていないので、この数字を安全な保存期間として読まないでください。元のレシピは、保存や温め直しの方法も説明していません。慎重を期すなら、清潔な密閉容器に入れて冷蔵庫で保存し、早めに食べ、いやな匂いがしたり色が変わったりしたら食べずに捨てます。冷蔵したものを温め直すときは、均一に温まるよう少量ずつにします。
よくある質問
アショカ・ハルワは、北インドのムング豆のハルワと同じですか?
名前は重なります。このレシピ自体も、アショカ・ハルワとムング豆のハルワの両方の名前で題されています。この記事は、ティルヴァイヤールと結びつけられた Chitra's Food Book の作り方に従っています。NDTV Food のように、アショカ・ハルワとして公開されている別のレシピは割合も材料も違い、共通の定義はありません。
赤い食用色素は必要ですか?
必要ありません。この配合では使っていますが、省いてもよく、その場合はハルワが淡い色になるだけです。ターメリックなど他の材料の代用は、このレシピでは試されていないので、記事では勧めません。
油とギーは全部入れないといけませんか?
材料表の量は上限です。筆者も様子を見ながら量を調整しているので、少しずつ加えて、艶が出て鍋から離れたらやめてください。
何人分ですか?
元のレシピにはできあがりの量、約2 cupsしか書かれておらず、何人分かは示されていません。
作り置きはできますか?
筆者は容器で10日保存できると触れていますが、温度などの条件がないため、保証とは受け取れません。清潔な密閉容器に入れて冷蔵し、早めに食べてください。
ティルヴァイヤールの店と同じ味になりますか?
同じになるとは限りません。ABP Nadu が取り上げた店は、風味の理由を地元の水と薪火に求めていますが、家庭では再現も確認もできません。これは一つの公開レシピをもとにした家庭版で、店のハルワの再現ではありません。














