お茶の時間に小皿へ数粒だけ。つやのある赤褐色の甘納豆(あまなっとう)は、一粒ずつ口に運んで、ゆっくり味わう菓子です。見た目は素朴ですが、豆を崩さず煮ることと、薄い蜜から濃い蜜へ移すことという二つの技が、その一粒に隠れています。
甘納豆は、蜜を中に抱いた豆
豆は、指でつぶせるけれど形は崩れていない柔らかさまで煮ます。そのあと蜜を二段階で含ませ、外側に砂糖をまぶすのは乾かしてからです。
名前に「納豆」とありますが、発酵食品の納豆とは関係がありません。甘納豆は、煮た豆を砂糖の蜜に漬け込んだ菓子です。日本食品標準成分表は、一般的な作り方を次のように説明しています。豆を煮て、低い濃度から高い濃度へと順に砂糖液に浸し、蜜を切ってから砂糖をまぶす。ある製菓会社は、これを蜜で煮た豆に砂糖をまぶして乾燥させた半生菓子と紹介しています。低い濃度から高い濃度へ。この順序が、豆の形を保ったまま甘みを含ませる要になります。
このレシピで手間がかかるのは、火の前ではなく待つ時間です。二晩の蜜漬けと、数時間の乾燥。作り方は、NHKエデュケーショナル「みんなのきょうの料理」に載っている大納言小豆の家庭向けレシピに沿っています。大納言小豆は大粒の小豆です。日本のほかの料理は日本のページでも紹介しています。
編集部の台所では試していません。分量・時間・できあがり量は、出典レシピに載っている値で、編集部が測ったものではありません。
道具
- 余裕のある大きさの厚手の鍋(静かな煮立ちを保ちやすい)
- 蜜を作るための別の鍋
- ざる
- オーブン用紙(落としぶた用と、乾燥用)
- 乾燥用の平らなざるまたはバット
- 耐熱のゴムべら
- はかり
- 計量カップ
選び方と代用
豆。 このレシピは、形が崩れにくい大粒の大納言小豆(乾燥)を使います。甘納豆は金時豆や手亡豆などでも作られますが、豆ごとに戻し方も煮方も違います。たとえばNHKの金時豆の甘納豆は、同じ乾燥豆200gから始めても、戻し方が異なります。別の豆で作りたいときは、その豆のために書かれたレシピに従ってください。このレシピに豆だけ差し替えるのはおすすめしません。
砂糖。 砂糖の種類を変えると甘さも風味も変わるので、このレシピはグラニュー糖で通します。
水あめ。 水あめはでんぷんから作るシロップです。コーンシロップと同じものとは考えないでください。このレシピでは代用品を示しません。
分量。 書いてある分量のまま作ってください。少なく仕込む場合は全材料の計算も工程も考え直す必要があり、このレシピでは扱っていません。
失敗しないためのポイント
| 気づくこと | レシピの指示 |
|---|---|
| 長く煮ているあいだ、鍋の中で豆が転がる | 火をごく弱くして豆がほとんど動かないようにし、ふたをせずに煮る |
| 豆が水面から出てきた | ぬるま湯を足して、豆が水に浸かるようにする |
| 煮上がりかどうか分からない | 1粒取り出してしっかり冷まし、指で押す。つぶせる柔らかさで、鍋の豆は崩れていないこと |
| 日数を減らそうと、濃い蜜を一度で作りたくなる | 二段階を守る。まず砂糖150gの蜜、次に砂糖100gと水あめ25gを足し、それぞれ8時間以上の一晩漬けをする |
| 水の量を取り違える | 500ml・400ml・400ml・500mlは捨てるゆで水。蜜の水は最初の蜜の200ml |
| 砂糖をまぶしたいのに豆が湿っている、温かい | 一層に広げて4〜5時間おき、完全に冷めて乾いてから砂糖をまぶす |
200gは乾燥豆の重さで、煮た豆の重さではありません。
アレンジ
- 仕上げの砂糖を控える。 仕上げの砂糖は出典で「適宜」とされているので、薄くまぶすだけにしても、省いても構いません。二つの蜜の砂糖は減らさないでください。
- ぬれ甘納豆。 日本食品標準成分表には、砂糖をまぶさない「ぬれ甘納豆」も載っています。このレシピとは仕上げが違い、水分や保存については扱っていません。
- ほかの豆。 金時豆や手亡豆などで作る甘納豆は、それぞれ別のレシピと作り方があります。このレシピの豆の差し替えではなく、別のレシピとして扱ってください。
甘納豆のはじまり
甘納豆の起こりは、東京・日本橋の菓子舗、榮太樓(えいたろう)と細田安兵衛に結びつけて語る菓子店がいくつもあります。ただ、いつ始まったかは話が一致せず、江戸時代の終わりごろから明治の初めまで、時期に幅があります。そのため、ひとつの年や、ひとりの発明者には決めません。
榮太樓自身の沿革では、文久年間に甘名納糖(あまななっとう)を作ったとされています。これは、安政4年の日本橋の店の開業とは別の出来事として書かれていて、開店の年がそのまま菓子の年になるわけではありません。名前は浜名納豆をもじったものだと、榮太樓は説明しています。現在売られている甘名納糖は大角豆(ささげ)で作られており、ここで紹介した大納言小豆の甘納豆とは別の配合です。
家庭では、甘納豆はお茶と一緒に出す菓子です。小皿に数粒のせて、ゆっくり食べます。
保存
出典のレシピに書かれた保存の目安は、できあがった甘納豆を保存容器に入れ、冬は常温、夏は冷蔵で約1週間、というものです。これは出典の記載で、室温などの条件ごとに安全性を確かめた別の資料は見つかっていません。そのため、ほかの条件には広げません。
よくある質問
甘納豆は納豆のように発酵させるのですか?
いいえ。甘納豆は、煮た豆を砂糖の蜜に漬ける菓子で、発酵はしません。名前が似ているのは、榮太樓が浜名納豆をもじったと説明している由来によります。
どんな豆でも作れますか?
甘納豆はいろいろな豆で作られますが、豆によって戻し方も煮方も違います。NHKには金時豆の甘納豆が別の作り方で載っています。使いたい豆に合わせたレシピを探してください。
仕上げの砂糖は必ずまぶしますか?
いいえ。出典では「適宜」とされています。砂糖をまぶさないものはぬれ甘納豆としてもありますが、このレシピとは仕上がりが違います。
1日でできますか?
このレシピでは難しいです。出典に載っている150分は、煮る作業だけの時間です。二晩の蜜漬けと4〜5時間の乾燥が別にかかり、作業は3暦日にまたがります。















