馬刺しとは:熊本で食べる薄切りの生の馬肉
生で食べる用として売られている馬肉だけを使い、商品の表示と販売者の案内に従ってください。馬肉の生食にも食中毒のリスクがあり、新鮮さや冷凍だけで完全に安全になるわけではありません。子ども、高齢者、免疫が弱い人、妊娠中の人は、生で食べないことを選んでください。
薄切りの馬肉が、玉ねぎとしそを敷いた皿に並びます。脇には、おろししょうがとおろしにんにくの小さな山と、甘口醤油の小皿。これが、日本の農林水産省(MAFF)が紹介する馬刺しの姿です。熊本県の熊本市と阿蘇地域に伝わる料理とされています。
調理の中心は、包丁仕事と盛り付けです。気をつけるのは、買う肉と扱い方です。この記事では、農林水産省が示す4人分のレシピに沿って、馬肉200gを繊維を断つ向きに2〜3mm厚に切ります。農林水産省のレシピには、付け合わせを洗うこと、専用のまな板と包丁を使うこと、肉を冷たく保つことといった安全の手順は含まれていません。そこで、厚生労働省(MHLW)が公表している指針から補いました。
世界ごはん紀行では、このレシピの試作も試食もしていません。巻末の公的資料をもとに書いています。同じ国の料理は日本のページでも紹介しています。
道具
- 馬肉専用のまな板と包丁
- 玉ねぎを切るための、別の清潔なまな板と包丁
- おろし器
- 盛り付け用の皿
- 薬味と醤油を入れる小皿
- まな板と包丁に熱湯をかけるための、やかんか鍋
選び方と代用
馬肉。 生で食べる用として売られていることがはっきり分かる肉を選び、保存、解凍、開封後の扱いについて表示を読みます。表示だけで分からなければ、販売者に聞いてください。ふつうの馬肉は代わりになりません。ほかの肉でも代用できません。
部位。 決まった部位はありません。手に入る生食用の商品から選んでください。霜降り、赤身、たてがみは部位の例で、好みのものを使えます。
甘口醤油。 甘くてコクのある刺身醤油を、好みの量で、つけて食べるために使います。
馬肉は、切る直前まで冷たく保ちます。肉汁がほかの食品に触れないよう、袋か容器に入れておきます。
生で食べるときの注意:公的資料の案内
厚生労働省は、馬肉の生食も、ほかの食肉や内臓の生食と同じく食中毒のリスクがあると注意しています。衛生的に処理しても、肉の微生物汚染を完全に防ぐことはできません。寄生虫などの危害も知られています。上の手順を守っても、家庭での安全は保証できません。
2011年6月17日の厚生労働省の通知は、馬刺しに関連した有症事例に、寄生虫のサルコシスティス・ファイェリ(Sarcocystis fayeri)の関与が強く疑われるとしました。この寄生虫による事例は食中毒として扱うことになっています。通知は流通段階での冷凍処理を求めていて、寄生虫が失活することが確認された条件には、中心温度-20°Cで48時間以上、-30°Cで36時間以上、-40°Cで18時間以上があります。
これらの条件は事業者向けです。生で食べる用として売られている馬肉は、販売の前にこうした冷凍が行われていることが前提です。家庭の冷凍庫で行う手順ではなく、家庭での冷凍時間を示す資料もないため、時間は書きません。
同じ通知によると、S. fayeri はヒトには寄生せず、食べた人が必ず発症するわけでもありません。症状が出る場合は、食後4〜8時間ほどで下痢、嘔吐、胃の不快感が現れます。症状は軽く、すぐに回復するとされています。それでも、症状が出たら医師の診察を受けてください。
低温に保つ。 厚生労働省の家庭向け指針では、冷蔵庫は10°C以下、冷凍庫は-15°C以下が目安です。冷凍しても細菌は死なないので、冷凍した食品は早めに使います。保存期間は示しません。買った肉の表示に従い、切ったらすぐに食べ、常温に置かないでください。
器具と手を分ける。 同じ指針は、生の肉を扱ったあとは手を洗うこと、肉汁がほかの食品に触れないよう袋か容器に入れること、生の肉を切った包丁とまな板は洗って熱湯をかけることを挙げています。洗わないまま、生で食べるものを切らないようにとも書かれています。これは馬肉に限らない一般的な指針です。専用のまな板と包丁を使うこと、付け合わせを流水で洗うことは、この料理のために加えた予防策です。
特に注意が必要な人。 厚生労働省は、子どもや高齢者など抵抗力の弱い人は特に注意するよう呼びかけています。日本の食品安全委員会は、妊娠中は加熱していない食品がリステリア食中毒の原因になることがあるため、できるだけ加熱するよう勧めています。この勧告は一般的なもので、馬肉には触れていません。これらを踏まえ、妊娠中の人、乳幼児、高齢者、免疫が弱い人は、この料理を生で食べないことをお勧めします。
困ったときは
| 困ったこと | 対処 |
|---|---|
| 表示に、生で食べられる肉だと書かれていない | 生では食べないでください。まず販売者に聞きます |
| 肉がきれいに切れない | 表示の解凍方法を確認します。半解凍のほうが切りやすいとする販売者もありますが、すべての商品に当てはまるとは限りません |
| 切り身が厚くなる | 包丁が繊維に対して直角に当たっているかを確かめ、2〜3mmを目安にします |
| 肉を切ったまな板や包丁が、玉ねぎやしそに触れた | まな板と包丁を洗って熱湯をかけます。触れた付け合わせは取りのけ、新しい分を用意します |
| 盛り付けた皿を置いたままにした | 大丈夫と考えないでください。安全だと言える時間は示せません。次からは、食べる直前に切ります |
アレンジ
部位を選ぶ。 うま味インフォメーションセンターは、部位は好みで選べるとして、霜降り、赤身、たてがみを例に挙げています。農林水産省とうま味インフォメーションセンターは、どちらも部位で味わいが違うと述べています。どの部位でも作り方は変わらず、決まった部位はありません。
小ねぎ。 うま味インフォメーションセンターが紹介する作り方では、玉ねぎ、にんにく、しょうが、青じそ、甘口醤油に加えて、小ねぎも薬味にしています。農林水産省のレシピには入っていないため、上の材料表にはありません。
熊本の馬刺し
農林水産省は、馬刺しを熊本市と阿蘇地域の伝統料理とし、玉ねぎ、しょうが、にんにく、甘口醤油で食べると紹介しています。正月やお祝いの席だけでなく、ふだんの食事でも食べられるそうです。熊本県の地産地消サイトも、馬肉料理の一例として馬刺しを取り上げています。
はじまりについては、はっきりしていません。農林水産省は、はっきりと諸説あると述べています。その一つが、大名の加藤清正と朝鮮出兵を結びつける話で、確かな歴史というより、語り継がれてきた伝承として読むのがよさそうです。
馬肉は「桜肉(さくらにく)」とも呼ばれます。切り口の色に由来する名前です。
よくある質問
近所の精肉店の馬肉でも作れますか?
生で食べる用として売られているものだけです。このレシピは、ふつうの馬肉を生で食べるための手順ではありません。表示を確認し、販売者に聞いてください。
新鮮なら、あるいは冷凍してあれば安全ですか?
どちらも安全を保証しません。厚生労働省は、馬肉の生食に食中毒のリスクがあると注意しています。通知にある条件での冷凍は S. fayeri への対策ですが、冷凍しても細菌は死にません。
寄生虫対策に、家庭で冷凍してもいいですか?
お答えできません。公表されている冷凍条件は事業者と流通段階向けのもので、家庭の冷凍庫や再冷凍についての資料はありません。生で食べる用として売られている肉を選び、その表示に従ってください。
解凍はどうしますか?
買った商品の表示に従ってください。販売者の一例として、菅乃屋は、未開封のパックを冷蔵庫の中で氷水につけて解凍するか、急ぐときは流水で解凍するよう案内しています。常温や電子レンジでの解凍は勧めていません。これは同社の商品向けの案内で、お手元の商品に当てはまるとは限りません。
切り身の厚さはどのくらいですか?
農林水産省のレシピに従い、繊維を断つ向きに2〜3mm厚に切ります。菅乃屋も、自社のブロックについて、繊維を断つ向きに約2mmという似た目安を示しています。
残ったらとっておけますか?
保存期間は示しません。切ったらすぐに食べ、常温に置かないでください。まだ切っていない肉は、表示に従って保存します。











