宇和海沿いの揚げ練り物、じゃこ天
魚の皮と身をすり身にして、平たい小判形に揚げます。皮は残します。骨、野菜、薬味はすり身に加えません。
愛媛県南部の南予地方、宇和海に面した八幡浜や宇和島には、地元の魚を加工してきた長い歴史があります。じゃこ天もそのひとつです。小魚をすり身にして小麦粉、卵、塩を混ぜ、「小判」と呼ばれる平たい楕円に整えて揚げます。農林水産省は、この料理が受け継がれてきた主な地域として南予を挙げています。地元では一年を通して、ごはんのおかずにも、お酒のお供にも食べられています。
ここで作るのは、農林水産省の郷土料理のページに載っている、愛媛県観光協会監修の家庭向け配合です。4人分で、エソの皮と小アジの身を合わせて200g、そこに塩、小麦粉、卵半個、揚げ油を使います。魚の皮を生かす家庭版であり、宇和島の製造者が骨ごとすり身にする方法とは別物です。その違いは後の節で説明します。日本各地の料理は日本のレシピにまとめています。
このレシピは、世界ごはん紀行編集部では試作していません。分量と手順は公開されている配合に沿っています。揚げ油の温度と中心の加熱確認は、日本の公的機関が示す別の一般的な指針から取ったもので、じゃこ天のレシピ自体に書かれた値ではありません。
公開されている配合の読み方
農林水産省のページは、魚をエソの皮と小アジの身を合わせて200gと、ひとまとめの量で示しています。それぞれ何gずつかは書かれていないので、この記事でも比率は決めません。小麦粉と揚げ油は、どちらも「適量」です。小麦粉の重さ、できあがる個数、厚み、揚げ温度、揚げ時間、保存期間は載っていないため、この記事でも数値を補っていません。
手順の文章に出てくるのはエソの皮だけです。包丁で細かくたたき、よくすり、塩、小麦粉、卵を加えて堅めに混ぜる、とあります。小アジの身は材料欄にあるのに、手順には出てきません。そこで編集部の判断として、小アジの身も皮と一緒に細かくたたき、すり合わせてから塩、小麦粉、卵を加えることにしました。この一手間はレシピの著者が書いたものではなく、編集部が補ったものです。以下の作り方では、卵は全卵を溶いて半量を使います。小麦粉は少しずつ加え、小判形を保てる堅さになるまで混ぜます。
じゃこ天とは|皮と身、そして堅めのすり身
農林水産省は、じゃこ天を「小魚を皮や骨ごとすり身にし、小麦粉、卵、塩を混ぜて小判形にして揚げたもの」と説明しています。この一般的な説明には骨が含まれますが、同じページにある分量つきの家庭レシピの材料は、エソの皮と小アジの身だけです。この記事は材料欄に従い、骨は加えません。同じページには、掲載の写真がレシピと異なる場合があるという注記もあります。魚の比率や骨の有無を写真から推測することもしません。
市販のじゃこ天には、小魚を丸ごとすりつぶしたことから来る独特の食感があるものがあります。宇和島の製造者である安岡蒲鉾は、自社のじゃこ天の口当たりを「ジャリジャリ」と表現しています。これは同社の製品と製法についての説明で、この家庭版の仕上がりを約束するものではありません。
宇和島と南予の魚の加工

農林水産省によると、宇和海沿岸の八幡浜と宇和島では魚の加工が盛んでした。名前の由来については、2つの説が並べて紹介されていて、どちらかに決めてはいません。ひとつは、いろいろな小魚をさす「雑魚(ざこ)」が「じゃこ」に変わったという説です。もうひとつは、原料の小魚「はらんぼ」、別名「ほたるじゃこ」にちなむという説です。同じページには、1615年に宇和島藩主の伊達秀宗が仙台から蒲鉾職人を招いたという話も紹介されています。ただし「いわれている」という書き方で、確かな年表上の出来事ではなく伝承として載っています。
製造者は、もっと具体的に自分たちの方法を説明しています。安岡蒲鉾は、ほたるじゃこを主な魚として近海の小魚を合わせ、魚種の配合を調整していると述べています。頭と内臓を取り除き、皮と骨ごとすり身にして、水にさらさずに石臼で練り、小判形にして菜種油で揚げるそうです。伯方塩業が公開している2007年の宇和島蒲鉾協同組合長へのインタビューにも、似た工程が出てきます。頭と内臓を取り、骨と皮ごとミンチにして塩を練り込み、小判形に整えて180°Cで揚げる、という内容です。同じインタビューでは「宇和島じゃこ天」についての組合の指針も紹介されています。宇和島の魚を主原料とし、すり身から完成品まですべて宇和島で行う、というものです。これはインタビュー当時の話で、現在の商標、法的保護、認証について述べたものではありません。このレシピで作る家庭の一皿は、その製品ではありません。
農林水産省は、作り方は地域や家庭によって違うと注記しています。ここで紹介する家庭向け配合は、公開されている例のひとつです。じゃこ天の作り方がこれだけというわけではありません。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 包丁
- 生の魚専用のまな板とバット
- すり鉢とすりこぎ
- 卵用の小さな清潔なボウル2つ
- 揚げ物用の深鍋(縁まで十分な余裕があるもの)
- 揚げ物用温度計
- 中心温度を測れる料理用温度計
- 穴あきお玉または網じゃくし
- 油切り用の網または吸油紙
- 加熱後のじゃこ天用の、別の清潔な皿と道具
すり鉢の代わりに家庭用のフードプロセッサーも使えますが、食感が変わるかもしれません。
選び方と代用
魚。 エソの皮は、ふつうのスーパーではなかなか見つかりません。鮮魚店に、エソの皮と小アジの身を用意してもらえるか、皮と身を分けてもらえるかを聞いてみてください。店で小分けにしてもらう場合は、皮と身を合わせて200gになるか確かめます。
ほかの魚や市販のすり身で作ると、このレシピとは別の料理になります。宇和島風のほたるじゃこを使う場合も同じです。そうした作り方は別の案で、ここでは試していません。
小麦粉。 ふつうの小麦粉ならどれでも使えます。薄力粉のような軽い粉は家庭での選択肢のひとつです。片栗粉に置き換えるのはやめてください。
油。 揚げ物に向いた油なら何でもかまいません。
食べ方|揚げたてをそのまま、または簡単な薬味で

農林水産省は、揚げたてをそのまま食べるか、大根おろし、しょうが、しょうゆを添えて食べることをすすめています。伯方塩業のインタビューにも、大根おろしにポン酢、しょうがにしょうゆという食べ方が出てきます。これらは別添の薬味で、すり身には混ぜません。薬味には、生の魚に触れた道具とは別の清潔な道具を使ってください。

農林水産省によると、南予ではじゃこ天は日々の料理にも使われています。宇和島のおでん、うどん、天ぷらカレーなどです。これらはできあがったじゃこ天を使う料理で、このレシピの一部ではありません。
じゃこ天のいろいろな作り方
資料に出てくる作り方を並べました。この記事のレシピは、最初のひとつだけです。
| 種類 | 内容 | このレシピとの関係 |
|---|---|---|
| エソの皮と小アジの身 | 農林水産省が公開している家庭向け配合 | この記事のレシピ |
| 骨入りの職人の製法 | 製造者が説明する、頭と内臓を取り、皮と骨ごとすり身にする方法 | 背景の紹介。このレシピには骨を加えない |
| ほたるじゃこ中心の宇和島風 | ほたるじゃこと、ほかの地元の小魚を合わせる製造者の配合 | 別の配合。ここでは試していない |
| 添える薬味 | 大根おろしとしょうがとしょうゆ、またはポン酢 | 添えるだけで、混ぜ込まない |
| ほかの料理に使う | おでん、うどん、天ぷらカレー | できあがったじゃこ天の使い道 |
うまくいかないときと食品衛生
| 困ったこと | 対処 |
|---|---|
| すり身がやわらかくて小判形にならない | 小麦粉を少し足して、形を保てるまでまた混ぜる |
| じゃこ天を入れると油の温度が大きく下がる | 一度に揚げる数を減らし、油の表面の半分程度までしか覆わない |
| 茶色くなったけれど、火が通ったか分からない | いちばん厚いものの中心を温度計で確認する。色では中心が加熱されたか分からない |
| 中心が75°Cで1分に達していない | 油に戻してもう一度確認する。次回はもっと薄く成形する |
| 揚げむらがある | 揚げている途中で返す |
生の魚は使うまで冷蔵しておきます。まな板、バット、道具は生の魚専用のものを分け、加熱後のじゃこ天や添え物に触れないようにしてください。中までしっかり加熱したものだけを食べます。
揚げたじゃこ天を、室温で長く置かないでください。残ったら浅い容器に移して早く冷まし、すぐに冷蔵します。
よくある質問
じゃこ天はどこの料理ですか?
農林水産省は、愛媛県の南予地方を主な伝承地域としています。宇和海沿岸の宇和島と八幡浜は、魚の加工で知られています。
じゃこ天に魚の骨は入りますか?
一般的な説明や製造者の作り方では、小魚を骨ごとすり身にします。ただ、この記事で使う分量つきの家庭向けレシピの材料は、エソの皮と小アジの身だけです。骨の量は示されていないので、この記事では骨を加えません。カルシウムなどの健康効果についても、ここでは何も言いません。
手順にはエソの皮しか出てこないのに、なぜ小アジの身もたたくのですか?
公開されている手順に書かれているのはエソの皮だけですが、小アジの身は材料欄にあります。その隙間を埋めるため、皮と一緒に身もたたいてすり合わせるのは編集部の判断です。レシピの著者が書いたものではありません。
ほたるじゃこやエソの皮がなくても作れますか?
このレシピは、ほたるじゃこではなく、エソの皮と小アジの身を使います。ほかの魚や市販のすり身に置き換えると、別の料理になります。その方法はここでは試していません。
どれくらい揚げればいいですか?
レシピには揚げ時間が書かれておらず、一般的な油温の目安も、何分という時間にはなりません。揚げ時間はじゃこ天の厚みや鍋によって変わります。いちばん厚いものを引き上げて、中心が75°Cに達して1分以上保たれているか確認してください。
家で作ったものは「宇和島じゃこ天」と同じですか?
違います。2007年のインタビューで紹介された宇和島の組合の指針は、宇和島の魚を使い、すり身も完成品も宇和島で作ることについてのものです。このレシピで作る家庭の一皿は、その製品ではありません。
このレシピは試作されていますか?
いいえ。世界ごはん紀行編集部では試作していません。分量と手順は公開されている家庭向け配合に沿っています。温度は一般的な指針で、この料理で実際に測ったものではありません。























