鶏ちゃん:鶏肉と野菜をたれで絡めて炒める郷土料理
酒、薄口醤油、にんにくと味噌で下味をつけた鶏むね肉を先にフライパンへ入れ、キャベツ、人参、ピーマンを続けます。この順番を守り、野菜を加える前に鶏肉の中心までしっかり火を通してください。
岐阜県の山あい、主に郡上市、下呂市、高山市の南部では、鶏肉と野菜をたれで絡めて炒める料理が親しまれています。これが鶏ちゃん(けいちゃん)です。農林水産省は、各地の家庭料理を集めた「うちの郷土料理」の中でこの料理を紹介しています。鉄板やジンギスカン鍋で、焼きながら食べる形も伝えられています。
鶏ちゃんには、ひとつに決まった型がありません。農林水産省によると、味は味噌、醤油、塩などさまざまで、地域や家庭、店によって違います。下呂の鶏ちゃん専門店・杉の子も、味噌や醤油、にんにくなどでつくるたれが、店ごと、家庭ごとに異なると説明しています。唯一の正統な鶏ちゃんを示すのがこの記事の目的ではありません。公開されている家庭向けレシピをひとつ選び、それが幅広い味の中でどのあたりにあるのかを説明していきます。
今回の鶏ちゃん:鶏むね肉とミックス味噌の4人分
ここで作るのは、農林水産省の郷土料理ページに載っている4人分の鶏ちゃんです。レシピの提供元は岐阜県学校栄養士会です。一口大の鶏むね肉に、ミックス味噌、酒、薄口醤油、すりおろしたにんにくをもみ込み、キャベツ、人参、ピーマンとフライパンで炒めます。分量はすべてグラム表記で、掲載されているとおりにしています。
このレシピには、漬け込み時間、火力、加熱時間、味噌の銘柄や配合比の記載がありません。そのため、この記事でもそれらの数字は書きません。世界ごはん紀行では、このレシピを実際に台所で試作してはいません。分量と工程は掲載どおりに示し、動作がわかりやすいよう、にんにくの皮むき、鶏肉の切り分け、調味料の事前混合、ピーマンのへたと種の除去だけを下準備として書き添えています。
農林水産省は鶏肉について、中心部を75℃以上で1分間以上加熱することを目安に、十分に火を通すよう案内しています。あわせて、生の鶏肉は洗わないこと、生肉をほかの食品に触れさせないことも勧めています。これは鶏肉全般に向けた食品安全の案内で、鶏ちゃんのレシピ自体が定めた値ではありません。この記事の写真は各工程の動作を示すもので、温度、時間、火の通り具合の証明にはなりません。
選び方と代用
- ミックス味噌:日本で買うなら、市販の合わせ味噌が実用的な選び方です。ただし、あくまで買い物のための解釈で、味が同じになるとは限りません。
- 薄口醤油:色の薄い日本の薄口醤油を使います。普通の濃口醤油に替えると、色も塩気も変わります。
- 鶏肉:むね肉のまま作ります。もも肉にすると食感も脂の量も変わり、別のレシピになります。
- にんにく:生のにんにくをすりおろします。チューブ入りは水分、塩分、香りが異なります。
- 酒:日本の料理酒が使えます。塩分など商品によって違いがあるので、重さは変えません。
- ピーマン:日本のスーパーで売っている、普通のピーマンです。
- 植物油:クセのない植物油ならどれでもかまいません。特定の種類は必要ありません。
にんにく6gは全量をすりおろして使います。この配合には、塩、水、砂糖、みりん、玉ねぎ、もやしは加えません。
道具
- フライパン
- にんにくをおろすおろし金
- 包丁
- まな板2枚(生の鶏肉用と野菜用)
- 調味料、鶏肉、切った野菜を入れるボウル
- へら
- 料理用温度計(任意)
- 盛り付ける器
うまくいかないときは
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| 鶏肉に火が通ったか自信がない | 加熱を続けます。温度計があれば、いちばん厚い鶏肉の中心で、75℃以上が1分間以上続くことを確認してください。色や時間だけで判断しないでください |
| 鶏肉が生のうちに野菜を入れてしまった | 鶏肉の中心まで火が通るまで加熱を続けます。次回は鶏肉だけを先に炒めてから野菜を加えます |
| 生の鶏肉を洗いたくなった | 洗いません。パックから出したら、そのまま生肉用のまな板に移してください |
| 生の鶏肉が野菜用のまな板や包丁に触れた | 野菜を切る前に、まな板、包丁、手を洗います |
| 味が思っていたものと違う | ミックス味噌は商品によって違い、配合も決まっていないので、選んだ味噌で味が変わります。分量を変えた場合は、自分のアレンジとして楽しんでください |
別の型とアレンジ
次のアイデアはどれも別の型で、上のレシピの分量を少し変えたものではありません。
- 鶏もも肉:むね肉だけでなくもも肉を使う家庭のレシピもあります。もも肉の鶏ちゃんは、食感も脂の量も違う、別のレシピとして考えてください。
- 醤油味・塩味の鶏ちゃん:この地域では、醤油味や塩味の鶏ちゃんもあります。これらは別の地域の型で、この味噌味の代用品ではありません。
- 食卓での調理:鶏ちゃんは、鉄板、ジンギスカン鍋、ホットプレートで焼きながら食べることもあります。食べ方の違いとして楽しめます。
- ご飯といっしょに:ご飯とともにおかずとして出してもいいでしょう。ご飯はこのレシピの材料には入っていません。
文化と歴史:共通の形、いろいろなたれ
農林水産省によると、鶏ちゃんは1950年ごろ、ジンギスカンをまねたことが始まりとされています。その後、各地の精肉店や居酒屋がそれぞれの味を育てました。名前の由来についても複数の説が紹介されており、この記事ではひとつの語源に決めつけません。
この料理をつなぐのは、鶏肉と野菜を特製のたれで絡めて炒めるという形です。その形の中で、味噌、醤油、塩といった味の系統や調理法が、地域、家庭、店によって変わります。下呂の鶏ちゃん専門店・杉の子は、下呂と郡上を中心とした郷土料理で、鶏肉とキャベツなどの野菜を、味噌、醤油、にんにくなどのたれで焼くものだと説明しています。これは一店舗の説明で、地域全体の歴史を述べたものではありません。シマヤ株式会社の家庭向けレシピは、さらに別の型の例です。鶏もも肉またはむね肉、味噌だれ、数種類の野菜、ホットプレートを使い、同社のだし製品も入ります。この記事のレシピとは別のものです。
ここで使った学校栄養士会の型は、日常的でシンプルな例です。鶏肉にもみ込む調味料はひとつ、野菜は3種類、油は少量。ほかの日本の料理も知りたい方は、世界ごはん紀行の日本料理もご覧ください。
よくある質問
鶏もも肉でも作れますか?
この型は鶏むね肉200gを使います。もも肉に替えると食感も脂の量も変わるので、別のレシピになります。シマヤのように、もも肉またはむね肉を使い、それぞれの分量で作る公開レシピもあります。
味噌は何を使えばいいですか?
レシピには「ミックス味噌」32gとあるだけで、銘柄も配合比も書かれていません。日本で買うなら合わせ味噌が実用的な選択ですが、それは買い物のための解釈で、同じ味になる保証はありません。
鶏肉はどのくらい漬け込みますか?
掲載されているレシピには、漬け込み時間の記載がありません。この記事も、ほかのレシピから時間を借りてくることはしません。
鶏肉が安全に食べられる状態か、どう確認しますか?
農林水産省の一般的な案内では、鶏肉は中心が75℃以上になって1分間以上加熱すること、生の鶏肉は洗わないこと、生肉をほかの食品に触れさせないことが勧められています。料理用温度計があると確認しやすいものの、必須ではありません。色や加熱時間、写真だけでは、火が通ったとは言えません。
これが本場の鶏ちゃんですか?
数ある公開された家庭向けレシピのひとつです。農林水産省も杉の子も、味や作り方は地域、家庭、店によって違うと説明しています。























