日本の家庭の平日の夕食を思い浮かべてください。網から上げたばかりの金色のカツに包丁を入れると、衣がさくりと音を立てて切れます。細切りにしたカツは、せん切りのキャベツの隣へ。小皿には、とろりと果実の香りがする中濃ソース。ご飯や汁物が並ぶことも多い食卓です。豚カツは、豚ロースに小麦粉、卵、パン粉をつけて油で揚げた料理で、日本の家庭料理のなかでもとくに身近な一品です。
豚カツは、衣のさくさくと豚ロースのしっとりが決め手
切っても肉から離れない衣。反らずに平らで、中心まで火が通った豚ロース。そして、脇に添える冷たくてシャキッとしたキャベツのせん切りです。
以下は2人分の基本の家庭向けロース豚カツで、キッコーマンの日本語レシピに沿っています。仕上がりを左右するのは3点。肉を筋切りしてたたき、反らせないこと、衣を層に重ねてはがれにくくすること、そして豚肉の中心までしっかり火を通すことです。揚げ時間は目安ですが、安全の確認は肉の中心の温度で行うので、この記事では時間と温度を分けて説明します。
日本語では「豚カツ」「とんかつ」と書きます。英語ではJapanese pork cutletと呼ばれることもあります。同じ国の料理は日本のページでも紹介しています。
豚カツとは — 米に合わせて育った洋食
豚カツは、豚肉に小麦粉、卵、パン粉をつけて油で揚げ、せん切りキャベツと濃いめのソースを添えて食べる料理です。牛肉や鶏肉で作るカツは主材料が違うので、別の料理として扱います。
農林水産省によると、明治時代に肉食の制限が解かれ、西洋の食文化が取り入れられたあと、明治末から大正にかけて、西洋料理が米飯に合うように作り替えられていきました。これが洋食で、とんかつ、コロッケ、カレーライスは当時「三大洋食」と呼ばれたそうです。同じ資料は、ご飯、汁、おかず、漬物を基本とする日本の食卓を紹介していて、豚カツはその枠のなかで主菜として落ち着いています。創業した店や年代がよく語られますが、ここで参照した資料では確かめられないので、この記事では触れません。
道具
- 肉たたき(めん棒や包丁の背でも代用できます。刃は使いません)
- ラップ
- 深めの鍋または深型フライパン
- 鍋の縁に安全に固定できる揚げ物用の温度計(油温計)
- 先の細い、肉の中心の温度を測る温度計
- バットに置いた網
- 衣付け用の竹串または箸
- 生肉用と加熱後用に分けたトングまたは箸
- よく切れる包丁とまな板
選び方と代用
豚肉。 「とんかつ用」と表示されたロースを選びます。参照したレシピは厚さを指定していないので、この記事でも決めません。ヒレ肉で作るとヒレカツになります。赤身が中心で、ロースの脂から来るコクは控えめです。部位が違うので、ここに書いた揚げ時間がそのまま当てはまるとは考えないでください。
パン粉。 参照したレシピは、生パン粉か乾燥パン粉かを指定していません。日本の生パン粉は大きくて軽い衣に、乾燥パン粉は細かくてカリッとした衣になりがちです。種類によってカップに入る量が違うので、種類を替えるときは「1と1/2カップ」ではなく60gの重さを基準にしてください。
ソース。 元のレシピは特定の銘柄の中濃ソースを挙げていますが、この記事では市販の中濃ソースとしています。製品によって味は違います。中濃ソースはウスターソースよりとろみがあり、味も異なるので、同じ量で置き換えられるわけではありません。
小麦粉。 一般的な薄力粉や中力粉などで作れます。片栗粉に替えると衣の性質が変わるため、このレシピは小麦粉のままにしています。
反る、はがれる、油っぽい — 失敗の直し方
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 油の中で反る | 赤身と脂身の境目の切り込みが浅い | 衣をつける前に両面を見て、筋が切れているか確かめます |
| 衣がはがれる | 表面が濡れている、粉が多い、側面が覆えていない、早く動かした | 下味の前に肉の水気を軽く拭く(出典にはない、編集部の下ごしらえの提案です)、余分な粉を落とす、縁にもバッター液をつける、パン粉をそっと押さえる、衣が固まるまで触らない |
| 衣が油っぽい、色だけ濃くて中が心配 | 油温が下がった、または合っていない、一度に入れすぎた | 油温と肉の中心の温度は別々に確認します。1枚ずつ揚げるのは、家庭の鍋のための編集部のアドバイスで、出典にはありません |
| 肉が硬い | たたきすぎて薄い、確認せず揚げすぎた | たたくのは約半分の厚みまで。揚げ時間を延ばすより、温度計で確認します |
| キャベツが水っぽい | 先にさらしていない、水気が切れていない | 切る前に葉をさらし、切ったあとはしっかり水気を切ります |
手順の時間は目安です。豚肉は新鮮かどうかにかかわらず、中心まで火を通す必要があります。その時間は肉の厚み、鍋、油の量で変わるので、手順4の温度計での確認が決め手になります。
豚カツは揚げたてを食べる料理です。残った場合は、清潔な容器に入れてすぐ冷蔵庫に入れ、食べるときは中心まで熱くなるよう温め直してください。この記事では保存期間は示しません。
別の楽しみ方
基本のレシピとは別の選択肢です。
- ヒレ肉のヒレカツ。 ほとんどが赤身で、ロースより軽い味わいです。部位が違うので、上の揚げ時間が当てはまるとは考えず、同じように中心の温度を確認してください。
- キャベツをたっぷり盛る。 ひと口ごとに軽さが加わります。材料表のキャベツ2枚を超える分量になります。
- 和がらし。 元のレシピにはない任意の薬味で、ソースの甘みを引き締めます。
- 大根おろし、レモン、しょうゆ。 在アメリカ合衆国日本国大使館が公開しているレシピに出てくる、さっぱりした食べ方です。ソースの代わりに好みで使えます。ソースと一緒に必須というわけではありません。
- カツ丼やカツサンド。 キッコーマンの英語版料理集が、豚カツの別の楽しみ方として紹介しています。それぞれ調味料も作り方も別なので、別のレシピとして扱ってください。
日本の食卓の豚カツ
明治末から大正の洋食は、西洋料理をご飯のそばに置けるよう作り替えたものでした。豚カツは今も家庭の夕食でその役を果たしています。ご飯と汁物、そして生の野菜を添えた、さくっとした主菜です。せん切りキャベツと濃いソースは、いちばんおなじみの組み合わせです。
同じ「カツ」という言葉は、ヒレカツ、味噌カツ、カツ丼など、親戚のような料理もまとめて指します。名前は共通でも、それぞれ別の料理です。この記事は、家庭で作る基本の豚ロース豚カツに話をとどめ、特定の地域や店とは結びつけません。海外の読者向けの大使館のレシピに出てくる大根おろしとレモン、しょうゆの組み合わせは、同じカツをもっと軽く食べる例として参考になります。
よくある質問
ロースとヒレ、どちらの肉を使いますか?
このレシピはロースを使い、脂のコクが味の土台になります。ヒレなら赤身が主体のヒレカツになり、軽い味わいです。替える場合は別の作り方として扱い、ここの時間に頼らず中心の温度を確認してください。
なぜ衣がはがれますか?
多くは、どこかの層がくっついていないからです。粉は薄く、側面にもバッター液をつけ、パン粉はそっと押さえ、衣が固まるまで油の中で動かさないようにします。包丁を前後に引いて切ると衣がはがれることもあるので、まっすぐ押し切ってください。
何分揚げればいいですか?
元のレシピでは、160°Cから中火で5〜6分、返して温度を上げて1〜2分です。厚み、鍋、油の量で結果が変わるため、安全の基準は肉の中心の温度、つまり75°C以上で1分です。
中濃ソースがないときは?
ウスターソースなど手元のソースを添えてください。中濃ソースよりさらりとして、味も違います。この記事では、中濃ソースに似せた自家製の配合は紹介しません。
キャベツは必ず添えますか?
必須ではありませんが、定番の付け合わせです。添えるなら、切る前に葉を水にさらし、切ったあとはしっかり水気を切ると、シャキッとしたまま食べられます。













