ペカ:鉄の鐘と熾火の下で焼く、羊肉とじゃがいも
ペカの要は蓋です。閉じた鉄の鐘の下で、羊肉は焼けると同時に蒸され、脂と肉汁が下のじゃがいもへ落ちていきます。鐘(または重い蓋)は閉じたままにし、肉を返してワインを加えるときに一度だけ開け、仕上がりは柔らかさ・色・温度計で判断します。
食卓の中央に、浅い皿がひとつ置かれます。ドーム形の蓋の下には、表面にこんがり焼き色のついた骨付きの大きな羊肉。その下では、肉の脂と汁を何時間も吸ったじゃがいもが、柔らかくなった玉ねぎ、丸ごとのにんにく、ローズマリー、セージと一緒に待っています。Croatian Wonders Magazineが janjetina ispod peke(「ペカの下の羊肉」)として描くのは、こんな情景です。人が集まる日の食事として、調理した器のまま食卓に出される料理だと紹介されています。
peka という言葉は、ひとつのものだけを指すわけではありません。鐘形の鉄の蓋の名前であり、浅い皿に入れた食材に鐘をかぶせ、その鐘ごと熾火と灰に埋める調理法の名前であり、さらにその下からできあがる料理の名前でもあります。スプリト=ダルマチア郡観光局は、ペカを鉄の鐘の下で調理する伝統的な方法と説明し、ダルマチアでは肉、野菜、魚、タコ、イカもこの方法で調理すると述べています。この記事で扱うのは羊肉の版だけです。魚やタコの版は別の料理なので、ここには混ぜません。
家庭にペカの鐘や薪の炉床がある人は多くないでしょう。そこでこの記事では、Croatian Wondersが炉床のレシピと並べて示している家庭向けの方法も取り上げます。同じ材料を、蓋付きの重い鋳鉄鍋に入れてオーブンで焼く方法です。この料理への入り口としては現実的ですが、本物の煙の香りや熾火の熱までは再現できません。
分量と「6〜8人分」という人数は、Croatian Wonders Magazineが公開している羊肉のレシピによるものです。世界ごはん紀行ではこのレシピを試作していないため、人数と時間はレシピ自身が示す目安であり、実測した結果ではありません。
煮込みでもローストでもない、蓋の下の火入れ
ペカの仕組みはシンプルです。浅い皿に材料を入れて熱した炉床に置き、鉄の鐘をかぶせます。その上と周りに熾火と灰を盛り上げるので、熱は下からだけでなく上からも届きます。スプリト=ダルマチア郡観光局は、一部は焼け、一部は自分の汁で火が通る料理に仕上がると説明しています。
皿の重ね方も大切です。じゃがいも、玉ねぎ、にんにくを下に、羊肉を上に置くことで、Croatian Wondersが述べるとおり、肉の脂と汁が下のじゃがいもへ落ちます。下の野菜は付け合わせであると同時に、羊肉のうまみが集まる場所でもあります。
Croatian Wondersは、イストリアではこの蓋を čripnja と呼ぶとも記しています。呼び名は違っても、重い蓋を閉じて蒸気を逃がさず、あらゆる方向から食材に熱を当てるという考え方は共通です。
ほかにも、ゆっくり煮込む料理や火の上で作る料理など、この国の料理の中でペカがどこに位置するのかを知りたい方は、クロアチアのページから見てみてください。
道具
- 熾火の方法:ペカの鉄の鐘、鐘の下に収まる浅い皿、炉床、熾火になるまで燃やす薪
- オーブンの方法:オーブンに入れられる、蓋付きの重い鋳鉄鍋
- 食品用の温度計
- 耐熱ミトン
- 生肉用に分けたまな板と包丁(野菜や盛りつけ用とは兼用しない)
選び方と代用
羊肉は、骨付きの肩か脚の大きな塊を選びます。肉屋さんや通販で探すのが現実的でしょう。注文するときは、骨を含めた実際の重さと、冷凍品なら解凍のしかたを確かめてください。牛肉、豚肉、鶏肉に替えると、脂の量も加熱時間も変わり、別の料理になります。このレシピの代用品とは考えないでください。
じゃがいも、黄玉ねぎ、にんにく、オリーブ油は、スーパーで買える一般的なもので十分です。特定の産地の油が必要なレシピではありません。
ローズマリーとセージの生のハーブが、この料理の香りを作ります。セージが手に入らなければ省くこともできますが、香りは変わります。省くのは現実的な選択であって、同等の置き換えではありません。
白ワインは2dl(200ml)を使います。ノンアルコールの代用品とその分量は確認できていません。ワインを避けたい場合は、変更する場合は、未検証のアレンジとして扱ってください。
ペカの鐘も炉床もない場合は、重い蓋付きの鋳鉄鍋をオーブンに入れます(手順8と9)。蓋の重みと密閉で蒸気は保てますが、熾火の煙の香りはつきません。
うまくいかないときは:水っぽいじゃがいも、硬い羊肉、焦げた表面
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| じゃがいもが焼けずに水っぽい | 蓋を何度も開けた、皿に詰め込みすぎた、水分が多すぎた | 熾火の方法では、肉を返すときの一度だけ開ける。皿に詰め込まず、大きなじゃがいもは半分に切る。ワインは最初ではなく、返すときに入れる |
| 決めた時間がたっても羊肉が硬い | 肉の量や、熾火・オーブンの強さで変わる | 蓋をし直して加熱を続け、柔らかさを確かめる。安全な温度に達していることと、肉が柔らかいことは別です |
| 表面が黒くなりすぎる | 上からの熱が強すぎる | 熾火の方法:蓋の上の熾火を調整する。オーブンの方法:最後の蓋なしの段階を短くする |
| ワインを入れる時期に迷う | 早く入れてしまうのはよくある失敗 | このレシピでは、ワインは全量を、途中で肉を返すときに皿の汁と一緒に入れる |
| 鐘も炉床もない | 道具が足りない | 鋳鉄鍋とオーブンの方法にする。熾火の煙の香りはつかないと割り切る |
蓋を一度だけ開けるという決まりは、熾火の方法に当てはまります。オーブンの方法では、予定した返しの場面と、最後の焼き色づけのときに蓋を外します。それは方法の一部であって、失敗ではありません。
アレンジと、ほかのレシピ
任意の追加材料として、Croatian Wondersは少量のパプリカと数枚のベーコンを挙げています。味の軸をはっきりさせるため、ここでは基本の材料から外しました。ベーコンを加えるなら、加工肉は商品によって違うので、ラベルを確認してください。
別の羊肉のペカとして、Gault&Millau Croatiaは、羊肉2kg、じゃがいも1kg、トマト2個、玉ねぎ1個、白ワイン100ml、脂5さじ、ハーブ、好みでにんじんとピーマンを使い、熾火の下で1時間焼き、開けて混ぜてワインを加え、さらに半時間焼くレシピを紹介しています。「さじ」の大きさは示されておらず、配合も時間も上のレシピとは違います。家庭や店によってペカの作り方が違うことを示す例として読み、このレシピに足していく材料の案としては扱わないでください。
鐘の下に入れる食材は、羊肉だけではありません。スプリト=ダルマチア郡観光局とGault&Millau Croatiaは、タコ、魚、イカのペカに触れており、観光局は野菜にも触れています。これらは分量も時間も別の料理なので、羊肉の材料表にそのまま置き換えないでください。
ダルマチアの食卓のペカ
スプリト=ダルマチア郡観光局は、ペカをダルマチアの konoba(居酒屋)やレストランで出会える料理として紹介しています。Gault&Millau Croatiaは、地域全体で出される、ダルマチアの暖炉の料理と呼んでいます。この二つを合わせると、ペカはひとつに固定されたレシピではなく、いまも生きている地域の調理法だという姿が見えてきます。
Croatian Wondersは、羊肉の版を人が集まるときの食事として紹介しています。火を起こして見守り、みんなが待つあいだ鐘は閉じたまま、焼き上がると皿が食卓の中央に運ばれる。これは同誌が描く料理の姿であって、どの家庭でもこうして作るとか、特定の行事のための料理だという主張ではありません。
ペカの起源は、はっきりしません。Croatian Wondersは非常に古い起源について書いていますが、独立した歴史資料で確かめられていないため、この記事では繰り返しません。確かなのは現在のことで、地域の資料は、ペカがダルマチアでいまも作られ、出されている伝統的な方法だと説明しています。
食品の安全、残り物、アレルゲン
羊肉のローストのような塊肉は、いちばん厚い部分が少なくとも62.8°C / 145°Fに達し、そのあと少なくとも3分休ませます。残り物は73.9°C / 165°Fまで再加熱します。色や時間だけで判断せず、温度計で確かめてください。
生の羊肉とその道具は、野菜や盛りつけの器と分けます。残り物は冷蔵庫に入れ、温め直すときは73.9°C / 165°Fまで加熱します。この料理の保存期間は示されていないため、ここでも提案しません。
主な材料は、羊肉、野菜、ハーブ、オリーブ油、白ワインです。この記事は、この料理をアレルゲンなしとは言っていません。ベーコンなどの加工品を加えるときは、そのラベルを確認してください。
よくある質問
ペカとは何ですか?
浅い皿の食材に鉄の鐘をかぶせ、熾火で覆って調理する伝統的な方法のことで、その結果できる料理の名前でもあります。スプリト=ダルマチア郡観光局は、鐘の下の食材は、一部が焼け、一部が自分の汁で火が通ると説明しています。
鉄の鐘がなくても作れますか?
作れます。Croatian Wondersは家庭向けの方法として、蓋付きの重い鋳鉄鍋をオーブンに入れ、200°Cで蓋をして約1時間、返してワインと汁をかけ、180°Cで45〜60分、最後の15分は蓋なしで焼く方法を紹介しています。熾火の煙の香りはつきません。
ペカはいつも羊肉で作るのですか?
いいえ。地域の資料は、タコ、魚、イカ、野菜、そのほかの肉にも触れています。それぞれ分量も方法も違うので、羊肉の材料表をほかの食材に単純に置き換えることはできません。
どれくらい時間がかかりますか?
熾火の方法では、少なくとも約1時間前に火を起こします。そのあと蓋をして60〜75分焼き、返してワインを加えてさらに60〜90分焼き、約10分休ませます。オーブンの方法では、200°Cで蓋をして約1時間、続けて180°Cで45〜60分です。どちらも肉と熱源で時間が変わるので、肉の状態を見て判断してください。
羊肉が焼けたかどうかは、どう見分けますか?
肉が骨から簡単に外れ、じゃがいもが黄金色で肉汁をたっぷり含んでいれば目安になります。そのうえで、骨を避けたいちばん厚い部分に温度計を差し、少なくとも62.8°C / 145°Fに達していること、そのあと少なくとも3分休ませたことを確認します。安全と柔らかさは、別々に確かめます。
どんな白ワインを使えばよいですか?
レシピは白ワイン2dl(200ml)としていて、産地や種類は指定されていません。料理に使っている白ワインなら、どれでも大丈夫です。














