コテージパイは、濃い牛肉の具と、筋目がきつね色になるマッシュの料理
具は汁だまりにならず、肉にまとわりつくまで煮詰めること。 マッシュはフォークの筋が崩れない硬さにすること。この2つの食感を守るほうが、材料の細かな違いよりずっと大切です。
皿の縁では、黒っぽい牛肉のグレービーが、じゃがいもと縁のあいだからふつふつと上がってきます。表面にはフォークで引いた筋があり、山の部分はきつね色に色づき、くぼみはまだ白くやわらかいままです。コテージパイ(cottage pie)は、味のしっかりした牛ひき肉の具を、パイ生地ではなくマッシュポテトの蓋で覆って焼く、英国の家庭料理です。
このレシピは、英国で公開されている複数のレシピをもとに4人分でまとめた、家庭向けの配合です。どれか1つのレシピを縮めたものではなく、決まった標準として試作を重ねたものでもありません。「これが本物のコテージパイ」と言うつもりもありません。そのかわり、作業の順番と、各段階で目で確かめる合図をはっきり示します。時間だけに頼らず、具もマッシュも見た目で判断できるようにするためです。まずは名前の話から。シェパーズパイとよく混同される料理なので、先に整理しておきます。
コテージパイとは? シェパーズパイとの違い

いちばん簡単に言えば、コテージパイは、野菜といっしょにグレービーで煮た牛ひき肉を耐熱皿に広げ、マッシュポテトで覆った料理です。NHS(英国の公的医療サービス)の家庭向けレシピは、パイ生地ではなくマッシュをのせたパイとして紹介しています。ナショナル・トラストと英国栄養士会(BDA)も、牛ひき肉とマッシュポテトを土台にした現代の家庭料理として載せています。
現代の英国のレシピでは、牛肉ならコテージパイ、羊肉ならシェパーズパイ(shepherd's pie)と呼び分けるのが一般的です。料理史とレシピを扱うサイト Pies, Puddings and Pottages も、この呼び分けに従っています。今日の目安としては便利ですが、いつの時代にも変わらない定義と読むのは避けてください。使い方には揺れがあります。
名前の歴史は、よく語られるほどきれいには整理できません。Pies, Puddings and Pottages の筆者は、ジェームズ・ウッドフォード(James Woodforde)の日記の1791年の記述に、刻んだ仔牛肉を使った「cottage-pye」が出てくると伝えています。ただし、その上に何がのっていたかは書かれていません。つまり、じゃがいもの蓋があったのかどうか自体が分からないのです。
同じ筆者は、いまおなじみのマッシュポテトの蓋を19世紀に広まった形と読み、じゃがいもが肉をかさ増しする安上がりな手段だったことと結びつけています。これは二次資料の筆者による解釈で、定まった起源の物語ではありません。最初の記録がどれかも、だれが考案した料理かも、ここでは確かめられません。
名前の過去がどうであれ、いまこの料理のおいしさを決めるのは2点です。蓋を支えられるだけ煮詰まった具と、その上に立つだけの腰があるマッシュ。このあとの材料も工程も、この2つを軸に組んでいます。
材料の選び方と代用
じゃがいもは粉質の、つぶしてなめらかになる品種を選んでください。 じゃがいもは、水分とでんぷんの感じが品種ごとに違います。粉質の強いものを使うときは、牛乳を最初から全部入れず、必要な分だけ足します。
牛ひき肉は、赤身が極端に多いなら焼くときの油を少し増やします。 脂が多めなら、大さじ1の油はもっと減らせます。
ストックは、固形も顆粒も塩分がかなり違います。 先に味見をして、塩は最後に加えます。
ウスターソースの代用は、日本で手に入る甘みとフルーツ感の強いタイプでも使えますが、近似にとどまります。 具が甘く、酸っぱくなり、英国風のウスターソースを使ったときとは味の輪郭が変わります。
小麦粉は、具をしっかり煮詰めれば入れなくてもかまいません。 片栗粉やコーンスターチへ単純に置き換えるのは避けましょう。仕事をしているのは煮詰める工程です。
セロリとにんにくは、苦手なら省けます。 ただしセロリを省くと香りの厚みが少し減ります。にんにくは入れなくても作れます。
タイムは、ミックスハーブでも代用できますが、配合が商品ごとに違うので香りは変わります。
用意する道具
- じゃがいもをゆでる鍋
- 具を作る広めのフライパンまたはソテーパン
- 耐熱皿
- ポテトマッシャー(なければフォークでも可)
- じゃがいもの火通りを見る竹串
- 具の状態を見るスプーンと、マッシュに筋をつけるフォーク
- あれば、芯温用の温度計
失敗しやすい点と調整

| 問題 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 具が水っぽい | のせる前の煮詰めが足りない | スプーンの筋が保たれるまで、蓋なしで煮る。小麦粉大さじ1は助けにはなるが、煮詰めを省く理由にはならない |
| マッシュが具に沈む | 具がゆるい、マッシュが水っぽい、具がまだ熱すぎる | 表面の汁を減らし、具を少し落ち着かせ、硬めのマッシュを縁から中へ向けてのせる |
| 表面が白っぽい | 表面が平らでなめらか | フォークで凹凸をつけ、上段寄りで焦げに気をつけながら焼く |
| 具がしょっぱい | ストックの塩気が強い | ストックを先に味見し、塩は最後に足す |
| 具がぱさつく | 煮詰めすぎ、または赤身の多いひき肉 | 熱いストックを少し足してゆるめ、のせる前にもう一度煮る |
家庭でできるアレンジ
英国で公開されているレシピを見ると、牛肉とマッシュという核のまわりに、かなりの幅があります。野菜を全部入れるのではなく、変えるのは1〜2点にしておきましょう。
- マッシュルームとタイム: ナショナル・トラストの版は、マッシュルームを加えて、より深みのある具にしています。
- グリーンピースとにんじん: BDAの家庭向けの版は、このレシピと同じく、なじみのある甘い野菜を使います。
- 野菜を多めにした軽め: NHSの版は、ズッキーニ、さやいんげん、スイートコーンを使います。
- トマトを前に出す: BDAとナショナル・トラストのレシピは、どちらも具にトマトを入れます。ソースがゆるく、明るい味になるので、煮詰め加減は別に判断が必要です。
- マッシュの上にチェダー、または根菜のマッシュ: これらのレシピに挙がっている任意の変化です。チーズをのせると、塩気が増して焼き色も濃くなるので、ほかの塩は控えます。どちらも基本のレシピには必要ありません。
- 牛肉のかわりに羊肉: 今日の一般的な使い方では、コテージパイではなくシェパーズパイになります。ただし呼び分けの習慣には揺れがあります。
仕上げの方法にも違いがあります。NHSのレシピはグリルでマッシュを焼き色づけし、ナショナル・トラストは通常のオーブン170°C(ファン付き150°C)で焼きます。
保存と温め直し
残りは、早く冷めるように浅い容器に小分けします。英国食品基準庁(FSA)の指針では、2時間以内に冷蔵庫へ入れ、48時間以内に食べるか、冷凍します。お住まいの地域の食品衛生の指針が異なる場合は、そちらに従ってください。
温め直しは1回だけにして、全体が湯気の立つほど熱くなるまで加熱します。オーブンでも電子レンジでも構いません。蓋やラップでおおうと乾きにくくなりますが、いちばん大切なのは、ひと皿ぶん全体を熱々にすることです。
よくある質問
コテージパイとシェパーズパイは同じですか?
現代の一般的な使い方では別で、コテージパイは牛肉、シェパーズパイは羊肉です。ただし使い方が完全に固定されているわけではなく、名前がいつも今の意味だったわけでもありません。
冷凍のグリーンピースを使えますか?
使えます。BDAのレシピでも冷凍のグリーンピースを使っています。煮込みの終わり近く、最後の2〜3分に入れてください。
具がマッシュの上に染み出してきたのはなぜですか?
たいていは、具がゆるすぎたか、マッシュが水っぽかったかです。スプーンの筋が保たれるまで具を煮詰め、数分落ち着かせ、マッシュは形を保てる硬さにして、縁から中へ向けてのせてください。
作り置きはできますか?
材料ごとに準備して、すぐに冷やして保管することはできます。作り置きの具体的な保持時間は、ここでは確定していないので、長くは置かないでください。焼いたあとの残りは、上の保存の指針に従います。
チーズは必須ですか?
いいえ。上にのせるチェダーは任意のアレンジで、基本のレシピには含まれません。












