ボスニアには、家庭風の煮込みやオクラ料理、スープを探しに行く食堂があります。アシチニツァ(aščinica)と呼ばれる店です。その日に鍋に入っているものは時間とともに変わるので、決まったメニューを期待するより、何があるかを聞くのが実際的です。ベゴヴァ・チョルバは、そうしたゆっくり煮る鍋の世界に属するスープです。にんじんとセロリ根で甘みの出た鶏のだしから湯気が立ち、小さなオクラの莢が丸ごと、淡くとろみのついたスープに浮かんでいます。仕上げの酸味のあるクリームが、一杯全体をやわらかくまとめます。
ベゴヴァ・チョルバは、乾燥オクラが香る淡い鶏スープ
骨付き鶏肉と根菜のだし、形を保つ小さな乾燥オクラ、薄い黄金色までで止めたルー、そして強く沸かさずに入れるサワークリームと卵黄。この鍋が守りたいのは、この4つです。
家庭でも作れます。大事な点は2つです。ひとつは、乾燥オクラをスープに入れる前に別の鍋で下ゆですること。もうひとつは、サワークリームと卵黄に熱いスープを少しずつ混ぜて温度を慣らしてから鍋に戻すことです。このレシピは、ボスニアの家庭向けに公開されている1つのレシピを6人分でたどったものです。編集部での試作はまだ行っていません。米もじゃがいもも使わないので、オクラ、鶏肉、淡いクリームが主役のままです。
現地での名前はBegova čorba。čの文字に注意してください。英語ではBey's soupと呼ばれることが多く、ボスニアの料理メディアや料理本でも、この英語名が現地名と並んで使われています。ただ、名前の由来は今回の資料では確かめられていないので、この記事では由来の物語は語りません。
ベゴヴァ・チョルバとは ― 鶏肉、bamija、クリームの仕上げ
ベゴヴァ・チョルバは、鶏肉と、オクラを意味するbamija(バミヤ)、根菜を軸にした鶏のスープです。小麦粉の軽いルーでボディを出し、サワークリームと卵黄で丸みをつけます。同じ名前でもレシピには幅があります。米を入れるもの、野菜をつぶしてとろみにするもの、ルーや卵黄クリームを強めに効かせるものなどです。この記事が従うのは、そのうちのKorisniのレシピで、骨付き鶏肉、乾燥bamija、淡いルー、サワークリーム、卵黄1個を使います。
こうした一杯が出る場面は幅広いものです。ボスニアのメディアFuraj.baは、ベゴヴァ・チョルバを、お祝いの昼食やラマダンのイフタール(日没後の食事)で出す一方、普段の日にも食べると紹介しています。前菜のスープにも、それだけで満足できる一皿にもなります。これは1つのメディアによる食べ方の説明で、どこでも儀礼の料理だという決まりではありません。アシチニツァの入れ替わる鍋とあわせて読むと、特別な日と日常の食事を行き来するスープの姿が見えてきます。
糸に通した乾燥オクラは、レモン湯で先にゆでる
このスープのオクラは、スーパーで売っている緑色の生のオクラではありません。ボスニア・ヘルツェゴビナの食品安全機関を通じて公開されているブルチコ地区のbamijaの製品仕様書には、若くて小さな莢を乾燥させ、糸に通したものと説明されています。同じ文書は、ベゴヴァ・チョルバを、バイラム(祝祭)の料理とともに、bamijaが欠かせない料理のひとつに挙げています。これは1つの地域の産品についての仕様なので、ボスニアで売られる乾燥オクラがすべて同じ姿とは限りません。それでも、このスープが前提にしているオクラの種類ははっきり分かります。
乾燥の莢は、生や冷凍のオクラとは大きさも水分も食感も違います。そのためこのレシピでは、同じ重さの生オクラに置き換えず、乾燥bamija80gのままにしています。莢はさっとすすぎ、レモン汁を数滴落とした水で、専用の鍋で約10分ゆでます。それからざるにあげ、糸は水を切ったあとで外します。この下ゆででオクラのぬめりがすべて消えるとは約束できません。ただ、オクラのゆで汁をスープに入れずにすむので、スープのとろみと味を管理しやすくなります。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 大鍋(約5L)。1.5Lの液体に、鶏肉と野菜が入る余裕のあるもの(目安として提案するサイズで、レシピ原典のものではありません)
- オクラ用の小さな片手鍋
- ざる
- 泡立て器
- サワークリームと卵黄の温度を慣らすためのボウル
- 中心温度計
- 生の鶏肉専用のまな板・包丁・調理道具(加熱後の食品用とは分けます)
選び方と代用
材料表の分量は、公開されているレシピの6人分をそのまま載せたものです。6人分という人数はレシピの掲載値で、実測した出来上がり量ではありません。野菜の大きさは原典に指定がないため、個数で書いています。塩とこしょうは味を見て加えます。
- 大さじについて。 原典の計量は「kašika」で、大さじにあたります。体積が必要な場面では、この記事では1 kašikaを15mlと読みます。バター、小麦粉、パセリは各30ml、レモン汁は合計15mlです。いずれも体積で、グラム重量ではなく、15mlという読み方も原典の記載ではなく編集上の取り決めです。
- レモン汁。 原典は下ゆでの水に数滴、最後にもレモン汁を加えますが、材料欄に挙げるのは合計大さじ1だけです。このレシピでは、その大さじ1を全体の枠として、数滴を下ゆでに、残りを仕上げに使います。配分の正確な比率は原典にありません。レモンやくし切りの追加はしません。
- 煮汁。 原典は水か薄い鶏だしを認めています。この版では水1.5Lを使い、骨付き鶏肉からだしを取ります。濃い市販のブイヨンを足す必要はありません。
- セロリ根。 セロリ根(セルリアック)を探してください。茎のセロリは香りが前に出て水分も違います。使う場合は、同じスープではなく、軽い別の風味になると考えてください。
- 乾燥オクラ。 生や冷凍のオクラは同じ重さで置き換えられません。水分も大きさも違い、この料理らしさを保つのが難しくなります。オクラをでんぷんなどのとろみ剤に置き換えて、同じ料理と呼ぶのは避けてください。
- サワークリーム。 砂糖の入っていないプレーンなものを選び、甘いものや味つきのものは避けます。無糖のプレーンヨーグルトは、酸味、脂肪分、濃度が変わります。同等品ではなく、間に合わせの代用です。
- バターと小麦粉。 無塩バターなら塩加減を自分で決められます。有塩バターしかない場合は、最後の塩を控えめにします。ルーには普通の小麦粉で作れます。
- 卵黄。 原典は卵のサイズを指定していません。卵黄を全卵に置き換えないでください。
このスープには、鶏肉、乳、卵、小麦が入っています。市販のサワークリームやほかの加工品は、表示を確認してください。生の鶏肉の汁がほかの食品につかないようにします。生肉用の道具は分けて使い、触ったあとは道具も手も洗ってください。
なめらかに仕上げる火加減と調整
このスープのつまずきの多くは、液体を一度に入れすぎることと、最後の火が強すぎることから来ます。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| ルーにダマができる | だしを一度に入れすぎた | 温かいだしを少量ずつ入れ、そのつどなめらかになるまで混ぜる。ダマが残ったらスープを漉す |
| クリームが分離する、ざらつく | クリームを入れたあとの火が強い | 次回は、クリームと卵黄を熱いスープ数匙で先に慣らし、その後は沸騰させない |
| 濃すぎる | 水分が減った、またはルーが重い | 温かい水を少しずつ足す |
| 薄すぎる | 仕上げ前の煮詰めが足りない | 乳製品を入れる前に弱火で少し煮詰める。あわててルーを足したり、他のレシピから借りたりしない |
| オクラが崩れる | 強く混ぜた、または煮すぎた | 工程5では静かに混ぜ、煮る時間は短くする |
オクラの食感には幅があります。莢の形を保つほうが好きな人もいれば、少しのぬめりを受け入れる人もいます。このレシピは、別鍋で下ゆでしてから短く煮るという、中間の道を取っています。
お祝いの昼食から日常の一杯まで、別の作り方もある

ベゴヴァ・チョルバに、ひとつの決まった配合はありません。Furaj.baは、米、サワークリーム、卵黄を使う版を紹介していて、乾燥bamijaはぬるま湯で戻してから軽くゆでます。ボスニア出身の筆者によるBalkan Lunch Boxは、いくつかの作り方を紹介しています。じゃがいもや、つぶした野菜でとろみをつけるもの。卵黄と小麦粉を混ぜて仕上げるもの。バターのルーを使うもの。この筆者はオクラをレモン水に浸し、乾燥、冷凍、生のオクラを使う場合の話もしていて、スープはパンやlokumiと一緒に出すとしています。
こうした版も知っておく価値はありますが、分量や工程は上のレシピには混ぜていません。別の地方のスープと比べるなら、豆とザワークラウトが中心のスロベニアのヨータがあります。鶏肉とオクラの組み合わせとは、まったく違う鍋です。米やつぶし野菜を試したい場合は、この鍋への追加ではなく、別のレシピとして考えてください。
bamija自体は、土地での長い記録があります。ブルチコの仕様書は、1890年代と1932年のオクラに関する農業記録に触れています。これは、この地域でオクラを育て、食べてきた歴史の話です。スープの成立年を示すものではないので、この記事では起源の年は述べません。
保存と温め直し
このスープには鶏肉、卵、乳製品が入っているので、残りは慎重に扱います。浅くて清潔な容器に小分けして、すぐに冷蔵します。室温に置いたままにしないでください。調理の途中で手を止める場合も、そこまでのものを冷蔵します。ここでは具体的な日数は示しません。冷凍した場合の品質も確認できていないので、冷凍についての助言もありません。
温め直すのは食べる分だけにして、中までしっかり加熱します。弱火で混ぜながら温めると卵黄クリームのなめらかさを守れますが、まず優先するのは中まできちんと熱を通すことです。
よくある質問
乾燥オクラが見つからないときは?
生や冷凍のオクラは、大きさも水分も違うので、同じ重さの代用になりません。スープも同じ料理にはなりません。乾燥bamijaは、バルカン、トルコ、中東系の食材店で探します。糸に通した小さな莢が伝統的な形です。
米を入れてもいいですか?
このレシピには入れません。米入りの版はありますが、別の配合です。この版は、米もじゃがいもも意図的に使いません。
卵黄クリームが分離したのはなぜですか?
たいていは火が強すぎたためです。サワークリームと卵黄に熱いスープを数匙混ぜて温度を慣らし、ゆっくり鍋に戻して、沸騰させないようにします。混ぜながら穏やかに75°Cまで上げることはできます。
温度を慣らしたあとに温めれば、卵は安全に加熱できますか?
温度を慣らすのは食感のためで、安全のためではありません。温度計を使い、弱火で混ぜながら、鍋全体が75°Cに達して1分以上保たれるまで加熱してください。これは一般的な家庭向けの食品安全の目安で、原典レシピの数値ではありません。
どんなクリームを使えばいいですか?
砂糖の入っていないプレーンなサワークリームです。ヨーグルトは酸味と濃度が変わるので、間に合わせの代用としてだけ考えてください。
「Bey's soup」の名前はどこから来たのですか?
英語でよく使われる呼び名ですが、今回の資料では由来が確認できていないので、この記事では由来を述べません。














