薄い仔牛肉、細かな衣、そしてレモンひと搾り
この皿で守りたいのは、薄く均一にのばした仔牛肉、粉・卵・細かいパン粉の軽い衣、そしてカツレツのまわりに回るたっぷりの熱い油です。皿に必要なものは、レモンだけです。
大ぶりで薄い一枚に、きめ細かな黄金色の衣。飾りのない皿にレモンのくし切りを添え、食べる直前に搾りかける。それがヴィーナー・シュニッツェルです。オーストリア農業省は、この料理を同国の伝統料理のひとつに挙げ、地域をウィーンとしています。仔牛肉に小麦粉、溶き卵、パン粉をこの順につけ、脂で揚げる料理だという説明です。
日本語で「ウィーン風カツレツ」と呼んでしまうと、いちばん大事な点が見えなくなります。それは肉です。オーストリアでヴィーナー・シュニッツェルと呼ばれるのは、仔牛肉で作ったものだけです。豚肉で作ると別の名前になるので、まず肉を決めてから作り方に進むのが近道です。
この記事のレシピは、農業省が示す4人分の作り方に沿っています。同じ国の料理はオーストリアのページでも紹介しています。
ウィーンで形になった料理と、その名前
農業省は、揚げ料理の記録と名前の記録を別々に扱っています。揚げたシュニッツェルを意味する「Gebackene Schnitzeln」の早い記録が1798年、「Wiener Schnitzel」という名前が料理書に出てくるのが1831年です。前者はパン粉をつけて揚げたカツレツがすでにあったことを示し、後者は今の呼び名が活字になった時期を示します。二つは同じ出来事ではありません。
「ラデツキー元帥がミラノからレシピを持ち帰った」という話もよく耳にします。イタリアのコトレッタ・アッラ・ミラネーゼと結びつける話です。農業省はこれを後世の伝説として扱い、ウィーンの料理にはそれ以前にも揚げ物があったことなどを挙げています。オーストリア政府観光局も、ラデツキーの話は伝説として紹介しています。アルプスの両側で材料や衣が似ているというだけでは、一方がもう一方から生まれたとは言えません。
シュニッツェルにレモンを添える習慣についても、農業省は1913年の料理書の記述を挙げています。
似た料理と呼び名の違い
| 料理 | 肉 | 衣 | 関係 |
|---|---|---|---|
| ヴィーナー・シュニッツェル | 仔牛肉 | 小麦粉、卵、パン粉 | このレシピの料理 |
| Schnitzel Wiener Art / Wiener Schnitzel vom Schwein | 豚肉 | 小麦粉、卵、パン粉 | オーストリアの食品規範では、豚肉版は単なる「Wiener Schnitzel」ではなくこの名前で呼ぶ |
| Pariser Schnitzel | 仔牛肉 | 小麦粉と卵のみ(パン粉なし) | 衣が違うので別の料理 |
途中で見つける、味の決め手
選び方と代用
材料の分量は、農業省の4人分のレシピに従っています。原典には小麦粉、パン粉、油の重さが書かれていないので、「適量」としました。これらは皿や鍋に用意する量で、仕上がったシュニッツェルについている量や、鍋に残る量ではありません。
- 仔牛肉の部位: 原典は Frikandeau や Schale/Kaiserteil といったもも肉を挙げ、農業省の資料には Nuss の名前も出てきます。部位の呼び名は国ごとに違うので、精肉店には「仔牛のもも肉で、カツレツ(シュニッツェル)用に」と頼むのが簡単です。レシピの600gは整形後の重さです。
- 小麦粉: 原典は glattes Mehl、つまり粒の細かい滑らかな小麦粉を指定しています。ここでは家庭向けの代用として一般的な薄力粉を使いますが、規格まで同じというわけではありません。
- パン粉: Semmelbrösel は、古くなったカイザーゼンメル(Kaisersemmel)を細かく砕いて作るのが伝統的です。身近な代用は、市販の細かい乾燥パン粉です。粗い生パン粉だと衣の粒の感じが変わります。
- 油脂: 原典は澄ましバター(Butterschmalz)か油としています。このレシピでは、全体を通して癖のない植物油を使います。もう一つの選択肢が澄ましバターで、ふつうのバターは澄ましバターと同じものではないので、同等の置き換えとは考えないでください。
- 豚肉: 仔牛肉が手に入らなければ、同じ作り方を豚肉でもできます。ただしオーストリアではそれは Schnitzel Wiener Art であって、ヴィーナー・シュニッツェルではありません。味も名前も変わります。
この料理には小麦(小麦粉、パン粉)と卵が入り、澄ましバターで揚げる場合は乳も加わります。パン粉、油、加工品は表示を確認し、アレルギーのある人の分を作るときは交差接触にも気をつけてください。生肉に触れた粉、卵、パン粉は、仕上がったシュニッツェルにかけないでください。生肉とそのまな板、皿は、加熱済みの料理から離しておきます。
道具
- まな板と切れ味のよい包丁
- ラップ、または食品用のシート
- 肉たたき
- 浅い皿3枚(粉、卵、パン粉用)
- 卵を溶くフォーク
- 油2–3cmを安全に張れる、幅が広くて深さのある鍋
- 返すための肉用フォーク
- 引き上げるための幅広のヘラ
- キッチンペーパーを敷いた皿
- 薄い食品に向いた芯温計
うまくいかないとき
揚げ色と火の通りは鍋やコンロで変わります。色ではなく温度計を頼りに、次の表で戻してください。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 鍋の中でカツレツが反る | 端の筋に切り込みを入れなかった | たたく前に、端の筋へ身を切り離さない程度の浅い切り込みを入れる |
| 肉が硬くなる | 強く、または長くたたきすぎた | やさしくたたき、全体が均一に約6mmになったら止める |
| 衣が厚くて重い | 粉が多い、または浮いたパン粉が残っている | 卵にくぐらせる前に余分な粉を払い、パン粉のあとも浮いた分を払う |
| 肉に火が通る前に衣が色づく、または中が生っぽい | 鍋やコンロによって火力も揚げ時間も変わる。原典に数値がない | 色に頼らず、温度計で中心を確認する。家庭向けの目安は75℃で1分以上 |
| カツレツが油に浸からない | 油が浅い、または鍋に入れすぎ | 油を約2–3cmの深さに保ち、一度に揚げる枚数を減らす |
アレンジ
澄ましバターで揚げる。 原典は油の代わりに澄ましバター(Butterschmalz)を選べるとしています。深さは同じ約2–3cmです。乳がアレルゲンに加わる点に注意してください。
豚肉で作る「ウィーン風」。 同じ小麦粉、卵、パン粉の衣で豚肉を揚げるのは、家庭でよくある方法です。ただしオーストリアの食品規範にならって、ヴィーナー・シュニッツェルではなく Schnitzel Wiener Art と呼んでください。味も仔牛肉とは違います。
アレンジではないもの: Pariser Schnitzel。 パン粉をつけず、小麦粉と卵だけで仔牛肉を揚げると、Pariser Schnitzel という別の料理になります。
レモンと付け合わせ
レモンはレシピの一部です。ウィーン観光局は、飾りとしてのパセリを挙げ、パセリポテトや各種サラダを添える提案もしています。これらは付け合わせの選択肢であり、上のレシピの材料ではありません。自由に選んでもよいですし、レモンだけで食べるのでもかまいません。
原典に保存期間の記載はなく、保存後の衣の状態も保証できません。残す場合は一般的な家庭向けの助言に従い、浅い容器に小分けして速やかに冷まし、冷蔵庫に入れます。再加熱は中心が75℃以上になるまで行います。
よくある質問
豚肉のシュニッツェルもヴィーナー・シュニッツェルですか?
オーストリアの食品規範では違います。ヴィーナー・シュニッツェルは仔牛肉の料理で、豚肉版は Schnitzel Wiener Art や Wiener Schnitzel vom Schwein と呼びます。
仔牛肉はどの部位を買えばよいですか?
Frikandeau、Schale/Kaiserteil、Nuss といったもも肉です。部位の呼び名は国によって違うので、精肉店には「カツレツ(シュニッツェル)用の仔牛もも肉」と伝えてください。
料理はミラノから来たのですか?
ラデツキーがミラノから持ち帰ったという話は、オーストリアの農業省が伝説として扱っています。 記録として確認できるのは、1798年の「Gebackene Schnitzeln」と、1831年の料理書に出てくる「Wiener Schnitzel」という名前です。
何分、何度で揚げればよいですか?
原典はどちらも指定していません。両面が黄金色になるまで揚げ、家庭向けの食品衛生の目安にしたがって、温度計で中心が75℃で1分以上になっていることを確かめてください。
何を添えればよいですか?
レモンは欠かせません。ウィーン観光局は、パセリポテトやサラダも付け合わせとして提案しています。













