冬の鍋から、焼き色のついた丸いケーキへ
この料理の出来を決めるのは、ゆでた野菜の水気をしっかり切ることと、にんにくとベーコンの油に味を運ばせることの2点です。まとまりよく両面に焼き色がつくのは、材料を足したからではなく、この2つの工程のおかげです。
大きな冬キャベツを、塩を入れた湯に入れます。湯が沸いたらじゃがいもの大きな塊を加え、じゃがいもが崩れ始めるまで一緒に煮ます。湯を切ったら鍋の中で野菜をつぶし、薄切りのにんにくと脂の多いベーコンを炒めた油でまとめます。最後に浅いフライパンで平たい丸に整え、両面に焼き色をつけます。焼いたベーコンと、塩抜きした酢漬けニシンの小片を添えて食卓へ出します。
これは、アンドラの公式観光冊子が「Trinxat amb rosta」の名で紹介しているトリンチャットです。冊子には、トリンチャットに向くのは畑で霜に当たったキャベツだという地元の言い回しも載っています。伝統的な冬の料理で、今は一年を通して出されるという説明です。
フライパンで丸く焼くじゃがいも料理としては、スペインのトルティージャ・エスパニョーラもあります。こちらは卵でまとめる料理で、ここで作るキャベツとじゃがいものつぶし焼きとは別物です。
この記事で作るのは、アンドラ版のレシピだけです。トリンチャットはピレネー山脈沿いやカタルーニャ語圏に広く見られる料理ですが、ほかの版は後半で別にまとめ、アンドラ版の分量が混ざらないようにします。
材料、分量、手順の順序はアンドラの冊子によるものです。この記事のために試作はしておらず、「目安」として添えた状態の見分け方は実用上の提案で、実測した結果ではありません。
アンドラの冬の前菜、トリンチャット
アンドラ観光局の冊子は、トリンチャット(Trinxat amb rosta)を冬の前菜として載せています。4人分で、全体の所要時間は45分。伝統的には冬の料理だが、今は通年で出されると説明しています。霜に当たったキャベツがよいという言い回しもレシピのそばに添えられています。一方で、冊子は発祥の地や登場した時期を示していないため、この記事でもどちらも断定しません。名前の由来も、今回の資料では確かめられていません。
冊子の見出しは「Trinxat amb rosta」で、作り方はベーコンとニシンを添えて出す形です。つまり、豚肉だけの料理ではなく、ニシンもアンドラの皿の一部として書かれています。
国境を越えたツェルダーニャ(Cerdanya)には、Gastroteca(カタルーニャ料理大全〈Corpus of Catalan Cuisine〉由来として掲載)が紹介する版があります。冬キャベツ、じゃがいも、ベーコンが基本で、ニシンは必須ではありません。ニシン、黒ソーセージ、にんにくは変化として挙げられ、丸く焼くかどうかも選択肢のひとつです。これは同じ系統の料理の地域による違いであり、アンドラ版の誤りを正すものではありません。
選び方と代用
キャベツ。 冊子が求めるのは大きな冬キャベツです。身の詰まった冬キャベツを手に入れるのが無難ですが、これは編集部の提案であり、冊子が示した代用品ではありません。重さの換算も示しません。バルセロナの英字誌Barcelona Metropolitanに載ったトニ・ロカモラ(Toni Rocamora)のレシピも、旬のキャベツを使うことを強調しています。
ベーコン。 材料は脂身の多いバラのベーコン(streaky bacon rashers)です。焼いて出る脂が野菜をまとめる役目を担うので、普通のバラ(ばら肉)ベーコンが実用的な選択です。これも提案であり、冊子が指定した代用ではありません。
ニシン。 冊子が求めるのは、すでに塩抜きした酢漬けのニシンです。塩漬けや酢漬けのニシンを買うなら、そのまま食べられるのか、塩抜きが必要なのかをラベルで確かめてください。ほかの塩漬け・酢漬けの魚(マリネしたサバなど)は同じものではなく、同等の代用品として扱わないでください。手に入らなければ省くこともできますが、そのぶん皿から塩気と酸味の対比が消え、ベーコン中心のトリンチャットになります。これは後述するツェルダーニャ版に近い形です。
塩。 ゆで湯の塩は味をみて加えます。皿にはニシンの塩気も加わるので、控えめに始めるのが賢明です。これは編集部の提案です。
このレシピには魚(ニシン)と豚肉(ベーコン)が含まれます。酢漬け・塩漬けの魚とベーコンは、商品の表示でアレルゲンや、同じ工場・設備での製造に関する注意書きを確認してください。
道具
- 大きな鍋:キャベツとじゃがいもをゆでます
- 穴あきお玉(水切りのできるおたま):冊子はこれで鍋の中の野菜をつぶしています
- ポテトマッシャーまたは木べら(なくても可):野菜の量が多いので、あると楽です
- 浅いフライパン:にんにく、ベーコン、ケーキの焼きに使います
- 小皿と皿:炒めたにんにくとベーコンを取り分けます
- 大きな平皿:ケーキを返すときに使います(編集部の提案)
水切り、まとめ、返し方で失敗しない
冊子の手順を見ると、つまずきやすい場所がわかります。つぶす前に野菜の水を切ること、そして、ケーキを支えるのがつぶした野菜と脂だけだということです。以下の対処は、冊子の指示ではなく、調理上の説明と実用上の提案です。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 形がまとまらない | 野菜に水分が残っている | 工程3でつぶす前にしっかり水を切る。工程6で、油と一緒にさらに細かくつぶす |
| 返すときに崩れる | フライパンに対して丸が大きすぎる、またはゆるい | 皿を使って返す。必要なら、小さく分けて焼く |
| つぶした野菜の味が物足りない | にんにくとベーコンの油を残さなかった | 同じ油でにんにくとベーコンを焼き、油をフライパンに残して野菜に使う |
| にんにくが苦い | 炒めすぎた | 縁がうっすら色づいた段階で取り出す |
| 皿全体がしょっぱい | 塩を入れたゆで湯に、塩気の強いニシンが加わった | ゆで湯の塩は控えめにし、使うニシンの塩気を確かめる |
| 表面の色が薄い | フライパンに当てる時間が足りない、または油が少ない | 返す前に、片面にしっかり焼き色をつける。冊子に時間の記載はないので、色で判断する |
地域や家庭による違いとアレンジ
以下は、いずれもこの記事のアンドラ版から変えた形であり、アンドラ版そのものではありません。
- ニシンなしでベーコン中心。 Gastrotecaが紹介するツェルダーニャ版は、冬キャベツ、じゃがいも、ベーコンが基本で、ニシンは変化のひとつです。
- 黒ソーセージを添える。 ツェルダーニャ版は、黒ソーセージを加える形を挙げています。
- にんにくを野菜に混ぜ込む。 ツェルダーニャ版には、にんにくを使う変化があります。上に散らすだけでなく、つぶした野菜に混ぜ込んでもかまいません。
- 丸く焼かず、つぶしたままで出す。 ツェルダーニャ版は、丸く焼き固めることをひとつの選択肢として扱っているため、つぶした状態で出す形もあります。
- 豚肉を使わず、松の実を使う。 カタルーニャ州政府の保健情報サイトCanal Salutには、4〜5人分でキャベツ、じゃがいも1 kg、にんにくを使い、ベーコンか松の実を選ぶ別のレシピがあります。分量はそのレシピのもので、アンドラ版とは混ぜません。
バルセロナのトニ・ロカモラ(Toni Rocamora)によるレシピも、キャベツ、じゃがいも1 kg、にんにく、ベーコンを使う、また別のカタルーニャ版です。分量や時間は、アンドラ版とは分けて考えてください。
食べ方と保存
アンドラでのトリンチャットは前菜として、焼き色のついたケーキの横にベーコンとニシンを添えて出されます。塩加減は味をみて整え、ニシンの塩気も頭に入れておいてください。
冊子には、数時間前、または前日に作って休ませるとおいしい、という記述があります。ただし、保存の温度、容器、時間は示されていません。ここで使った資料にそれ以上の保存の情報はないため、保存期間は書きません。冊子の記述を、火を通した料理を常温に置いておいてよいという許可として受け取らないでください。
よくある質問
トリンチャットはどこの料理ですか?
このレシピは、アンドラの観光局が「Trinxat amb rosta」として公開している、アンドラ版です。料理自体は、ツェルダーニャを含むピレネー山脈沿いやカタルーニャ語圏に広く見られます。今回の資料は、1か所の発祥地を示してはいません。
ニシンは必須ですか?
アンドラ版では、塩抜きした酢漬けニシンが皿の一部です。ツェルダーニャ版では、ニシンは必須ではなく変化のひとつです。省く場合は、ベーコン中心の別の版を作ることになり、ニシンの塩気という対比が皿から消えます。
普通の冬キャベツで作れますか?
冊子が求めるのは大きな冬キャベツで、重さの記載はありません。身の詰まった冬キャベツを使うのは編集部の提案で、冊子が代用品を示したわけではありません。Barcelona Metropolitanのレシピも、旬のキャベツを使うことを強調しています。
丸く焼かずに食べてもいいですか?
変化としてはあり得ます。ツェルダーニャ版は丸く焼くことをひとつの選択肢として扱っているので、つぶしたまま出す形もあります。この記事のアンドラ版は、丸く整えて焼きます。
45分は各工程にかかる時間ですか?
違います。冊子の45分は、4人分の料理全体の所要時間です。工程ごとの時間は書かれておらず、このレシピも試作して測ったものではありません。














