肉を煮て、穀類で汁にほんのりとろみをつけ、塩とこしょうで整える。スアーサットは、そんなごく簡素な鍋です。何種類もの香りを重ねて味を作るスープではなく、肉と穀類を静かに煮ることが中心にあります。
スアーサットは、肉と穀類を煮るグリーンランドのスープ
この鍋が守るものは、水で煮た肉と、やわらかくなって汁に軽い濃度を与える一握りの米、そして最後の塩とこしょうだけです。ハーブやクリーム、野菜を足したくなっても、ぐっとこらえてください。素朴さそのものが、この料理の味です。
スアーサットは、肉を煮て穀類で汁にとろみをつけるグリーンランドのスープです。沸いたお湯に肉を入れ、玉ねぎ、根菜、米、ローリエを加え、弱火で煮ていくと、米がやわらかくなって崩れはじめ、汁がうっすら白く濁って軽いとろみがつきます。塩とこしょうを入れるのは最後だけです。Visit Greenlandは、スアーサットをアザラシ肉で作る国のスープとして紹介しています。
決まった唯一のレシピがあるわけではありません。この記事が下敷きにしたのは、デンマークの食の歴史サイトRetromadのレシピで、肉、玉ねぎ、根菜に、米か大麦粒を合わせます。ほかの紹介では、じゃがいもも入ります。Air Greenlandは、アザラシ肉を玉ねぎ、米、じゃがいもと煮る料理として説明していて、Guide to Greenlandに載っているホテルのシェフのレシピにもじゃがいもがあります。それぞれが別のレシピで、どれかひとつだけが正解というわけではありません。
伝統の肉はアザラシで、グリーンランドの外の家庭ではまず手に入りません。Retromadは代わりに使える肉をいくつか挙げていて、鶏肉もそのひとつです。この記事では、家庭で作りやすい形として鶏肉を使います。あくまで置き換えなので、鶏肉の鍋はアザラシ肉のスアーサットと同じ味にはなりませんし、食卓での意味も同じではありません。
料理名は「Suaasat」とも「Suassat」とも書かれます。両方の綴りで検索すると、見つかるレシピや説明が増えます。
途中で見つける、味の決め手
用意する道具
- 水1.5〜2Lが余裕をもって入る鍋
- まな板と包丁を2組。生の鶏肉用と野菜用に分ける
- 肉の中心温度を測る、差し込み式の温度計
- 鍋底から混ぜる木べら
- おたまと、深さのある器
鍋は、水と具が入っても縁まで余裕があるものを選んでください。米が煮えると汁が少し重くなり、底から混ぜる動きも多くなります。
肉と穀類の選び方
肉について。 Retromadのレシピはアザラシ肉が中心で、ほかにも鶏肉、トナカイ、鯨、海鳥、魚などが挙げられています。この記事では、アザラシ肉の入手先や、お住まいの地域で販売が認められているかについては案内しません。アザラシ肉やほかの野生の肉で作りたい場合は、まず出どころと、その土地で適用される食品衛生のルールを確認してください。確認できないときは、調理をおすすめしません。野生の肉やアザラシ肉を、ふつうのスーパーの肉と同じように扱ってはいけません。
家庭の台所でいちばん扱いやすいのは鶏肉です。アザラシ肉より香りが軽く、脂の質も違うので、グリーンランドの原型の再現ではなく、やさしくて親しみやすい汁になると考えてください。鶏肉に別の肉を足すのはやめましょう。肉をひとつにしたほうが、この鍋の姿がはっきりします。
穀類について。 ここでの主なレシピは米です。Retromadは大麦粒を、米に「足す」のではなく「かえる」候補として示しています。大麦の浸水や煮る時間についてはレシピに書かれていないので、米の時間は大麦に当てはまりません。大麦版は下準備と加熱条件を別途確認する必要があり、この記事ではその手順を示していません。
根菜とじゃがいもについて。 レシピの表記は単に「根菜」で、この記事ではにんじんを例にしました。じゃがいもはほかの紹介には出てきますが、このレシピにはないので入れません。
生の鶏肉は水道水で洗わないでください。CDCは、生の鶏肉を洗うと、シンクやカウンター、ほかの食品に菌が広がるおそれがあると注意しています。生肉用と野菜用で、まな板、包丁、容器を分け、生肉の汁が加熱しないものに付かないようにします。からしは多くの国でアレルゲンとされています。添える場合は、共用施設に関する表示も含め、商品のラベルを確認してください。
食べ方|小皿のからしを添えて

Retromadは、アザラシ肉のスアーサットにからしを添える例を示しています。鶏肉で作る場合は、あくまで好みの添え物です。アザラシ肉の原型と同じ組み合わせの味にはなりません。小皿に少しだけ添えると、汁そのものは素朴なまま保てます。パンや飾り、ほかの付け合わせは、このレシピには含まれていません。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 汁がさらさらしている | 米がまだ十分にやわらかくなっていない | 米が崩れて汁に軽いとろみがつくまで、静かに煮る。米を追加しない。米の上に大麦を足さない |
| 米が鍋底にくっつく | 火が強い、または混ぜていない | 弱火を保ち、底から静かに混ぜる。焦げたにおいが出る前に火を弱める |
| 鶏肉がかたい | 部位や厚みによって火の入り方が違う。20〜25分でやわらかくなる保証はない | 中心が75℃で1分以上になっていることを確かめたうえで、やわらかくなるまで弱火で煮る。追加の時間に決まった目安はない |
| 米は煮えたのに鶏肉が温度に届かない | 肉が厚い、または火が弱すぎた | 煮続けて、いちばん厚い一片を測りなおす。時間だけを頼りによそわない |
| 味がぼんやりする | 塩が足りない | ハーブやスパイスを足さず、塩をひとつまみずつ、味を見ながら加える |
別のかたち|それぞれ別のレシピとして

以下は、この料理が現れるほかのかたちです。幅を知るためのもので、上のレシピに材料を混ぜないでください。
- アザラシ肉(原型):Retromadが最初に挙げる肉で、Visit GreenlandとAir Greenlandも名前を挙げる肉です。出どころと、その土地の食品衛生のルールに合っていることが確認できる場合だけ使ってください。
- 鶏肉(家庭向け):この記事のレシピです。アザラシ肉に比べて香りも脂も軽く、味は同じ料理ではありません。
- トナカイ:Retromadが挙げているもうひとつの肉です。地域の食材で、このレシピは手に入ることを前提にしていません。
- 米の代わりに大麦粒:Retromadが挙げる代わりの穀類です。米と一緒にではなく、米の代わりに入れます。大麦の浸水や煮る時間はレシピに書かれていないので、米の時間は流用せず、大麦版の手順を別途確認する必要があります。
- じゃがいも入り:Air Greenlandの説明と、Guide to Greenlandのホテルのレシピに含まれます。別のレシピで、そのじゃがいもをこの記事のレシピに足すことはしません。
海と陸と分かち合い|スアーサットの居場所
Visit Greenlandは、グリーンランドの料理が、海と陸の恵み、そして獲物を分かち合い、客を迎える狩猟文化と深く結びついていると説明しています。Air Greenlandの案内によると、町や集落では、地元でとれたものが「board」と呼ばれる販売所で売られ、個人も飲食店も買いにきます。スアーサットは、そうした背景のなかにある、肉が鍋の中心にあるスープです。
説明によって、細部は少しずつ違います。Retromadは根菜に、米か大麦を合わせます。Air Greenlandは玉ねぎ、米、じゃがいもを挙げます。Guide to Greenlandに掲載された、Hotel Arcticのシェフ、Jeppe E. Nielsenのレシピは、アザラシ肉と玉ねぎを煮てアクを取り、米とじゃがいもを加えるところから始まります。そのあとは、ジェランガムで固めて形を整えるといった、レストランの技法に進みます。日常の家庭の鍋というより、現代のレストランによる解釈の一例です。肉、穀類、野菜、添えるものは資料ごとに変わるので、どの家庭でも同じように作る、とは言えません。
よくある質問
この鶏肉と米の版で確認する二点は、次のとおりです。いちばん厚い肉の中心が75℃で1分以上になっていること、そして米がやわらかくなって汁に軽いとろみがついていることです。
アザラシ肉が手に入らないときはどうしますか?
Retromadは、アザラシ肉の代わりに、鶏肉、トナカイ、鯨、海鳥、魚などを挙げています。この記事は、家庭で手に入りやすく扱いやすい鶏肉を使いました。おいしいスープになりますが、アザラシ肉のスアーサットとは別の味です。同じ料理ではなく、置き換えとして考えてください。
米と大麦のどちらを使えばよいですか?
このレシピは米です。大麦粒はRetromadが挙げる代わりの穀類で、米の代わりに使い、米と一緒には使いません。大麦の浸水や煮る時間はレシピに書かれていないので、米の時間は流用せず、大麦版の手順を別途確認する必要があります。
じゃがいもは入れますか?
この記事のレシピには入れません。ほかのレシピにはじゃがいもが入るものもありますが、別のレシピです。ここでは玉ねぎ、根菜、米だけにしています。
どれくらい煮ますか?
Retromadの目安は、弱火で20〜25分、米がやわらかくなって汁に軽いとろみがつくまでです。これは調理の目安で、安全の保証ではありません。鶏肉に必要な時間は、部位や切り方で変わります。いちばん厚い一片の中心が75℃で1分以上になっていることを確かめ、それでも肉がかたければ、弱火でさらに煮てください。
残ったら保存できますか?
レシピに保存についての記載はなく、この記事も保存期間や冷凍をすすめません。作った日に食べきるつもりで作ってください。













