パン・デ・ムエルト:供物にも家族の食卓にも並ぶパン
オレンジとアニスが香る、やわらかくコクのあるパンです。上には生地の骨飾りを2本交差させ、中央の小さな球で留めます。仕上げにバターと砂糖をまとわせます。生地は少し粘る状態を保ち、長めに休ませます。
11月1日と2日ごろ、死者の日(Día de Muertos)になると、柑橘とアニスが香る丸い甘いパンがメキシコ各地に並びます。パン・デ・ムエルトは「死者のパン」という意味です。亡くなった人を迎えるために用意するオフレンダ(ofrenda、供え物の祭壇)に置かれ、同時に家族の食卓でも切り分けて分け合われる、ふたつの居場所をもつパンです。
この記事で作るのは、中央メキシコで知られる丸い形です。生地の上に骨の形をしたひもを交差させ、バターと砂糖をまとわせます。ただし、これだけがパン・デ・ムエルトではありません。この季節のパンは国じゅうでさまざまな形と味があり、その違いは記事の後半で紹介します。分量と作り方は、公開されている2個分のレシピ1つに従い、ほかの配合は混ぜていません。
パン・デ・ムエルト(pan de muerto)は、スペイン語で「死者のパン」という意味です。スペイン語名を「Día de Muertos」と一緒に検索すると、地域ごとの形やレシピを探しやすくなります。
どの形のパンを作るのか
ここで使うのは、King Arthur Baking が掲載している、メキシコの料理家 Pati Jinich のレシピです。直径約8インチ(約20cm)の丸型パンが2個できます。まず少量の発酵種を作り、卵とバターを加えて生地にコクを出し、冷蔵庫で長く休ませます。レシピページの所要時間は始めから終わりまで約11時間で、そのうち手を動かすのは約50分、焼成は40〜45分です。残りの大半は発酵と冷蔵の時間で、台所の温度によって変わります。
これは中央部の形を再現できるひとつの作り方であり、全国共通の決まった配合ではありません。たとえばフィラデルフィアのメキシコ総領事館は、卵黄を足し、水を使い、飾りを貼りつける卵液とシロップ仕上げを加えた、別のパン・デ・ムエルトのレシピを公開しています。ここでは比較のために触れるだけで、その分量や手順は下のレシピにいっさい使っていません。
世界ごはん紀行編集部は、このレシピを全体として台所で試作していません。時間と温度は公開されているレシピのものです。家庭のオーブンや室温はそれぞれ違うので、時計とあわせて各工程にある見極めのサインを頼りにしてください。
途中で見つける、味の決め手
道具
- スタンドミキサー(ドウフック付き)
- キッチンスケール
- イースト種用のボウルと、発酵用の大きめのボウル(薄く油を塗っておく)
- ボウルにかぶせる覆い
- 生地を分けたり成形したりするためのスケッパー
- オーブンシートを敷いた天板
- 焼成中にかぶせるアルミ箔
- パンの中心温度を測るデジタルの芯温計
- 庫内の実際の温度を確かめるオーブン用温度計
- 刷毛
- 冷ますための網
選び方と代用
強力粉、牛乳、卵、無塩バター、オレンジ、アニスシードは一般的な食材です。アニスシードは粒のままのものを選んでください。スターアニス(八角)とフェンネルは別のスパイスなので、代わりに使わないでください。
オレンジフラワーウォーターだけは、製菓材料の店や通販で探す必要があるかもしれません。見つからなければ、同じ大さじ2の水で作れます。香りは穏やかになり、オレンジの皮とアニスが風味の中心になります。もうひとつの選択肢はローズウォーターですが、香りは柑橘とアニスから、花のような方向へ寄ります。
このパンには小麦、乳、卵が含まれます。そのほかのアレルゲンや、同じ工場で扱う原材料の表示は、購入した材料のラベルで確認してください。生地には生卵が入るので、触ったあとは手、ミキサーのボウル、道具をよく洗ってください。
ふくらまない・骨が取れるとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| イースト種に泡が出ない | イーストが働いていない、または牛乳が熱すぎた | 生地を作る前に、イーストが働いているかを確かめる。牛乳はぬるい程度までしか温めない |
| 生地のふくらみが遅い | 台所が涼しい | 時計ではなく体積で判断する。一次発酵はほぼ2倍、二次発酵はおよそ2倍が目安 |
| 生地がべたつく | 本来の質感 | 粉は足さない。扱うときはスケッパーを使う |
| バターがなじまない | 一度に入れすぎた、またはバターが冷たい | バターは室温で、一度に大さじ3ほどずつ。入れた分が生地に消えるのを待つ |
| 骨が浮く、中央の球がずれる | 押さえ方が足りない | 成形のときに、ひもが交差する場所へ球を強く押しつける。焼く前にもう一度確かめる |
| 上面が早く焦げる | オーブンの温度が高い | 上面がうっすら色づいたら箔をかぶせる。オーブンの温度は温度計で確かめる |
このレシピの中でできるアレンジ
香りづけの液体は、オレンジフラワーウォーター、ローズウォーター、水から選び、いずれも大さじ2使います。オレンジフラワーウォーターは皮とアニスの香りに重なり、水ならオレンジとアニスが控えめに香ります。ローズウォーターを使うと、花のような香りがはっきりしたパンになります。
この分量は丸型パン2個分です。小さめの1個にする場合は、材料と飾り用の生地の量、焼成条件をまとめて計算し直す必要があります。ここでは縮小版は扱いません。次の節で紹介する人魚の形のパンや赤いパンは、それぞれ別の地方のパンです。この生地で作るアレンジではありません。
パン・デ・ムエルトとは?オフレンダ、食卓、地域ごとの違い

パン・デ・ムエルトは、オフレンダにも家族の食卓にも属するパンです。 死者の日には亡くなった人への供え物に置かれ、同時に食べられます。UNAMの科学アウトリーチ部門(Ciencia UNAM-DGDC)の記事は、このパンをオフレンダの文脈で紹介しています。King Arthur Baking のレシピも、11月1日と2日の祝日のパンとして紹介しています。
上に交差する生地の骨は、中央メキシコの丸いパンでもっともよく知られた特徴です。ここでは見た目の特徴として紹介します。骨飾りにはさまざまな意味が語られていますが、この記事では特定の解釈に絞りません。
パンの由来は、はっきり定まっていません。UNAMの記事は人類学者による複数の起源の説明を伝え、現在のよく知られたレシピと形が現れる場所として、1938年の料理書と1951年の絵画を挙げています。Universidad Anáhuac México の食文化史研究者 Alberto Peralta de Legarreta 博士は、現在の名前と形のパンについて、歴史的な裏づけが限られていると説明しています。また、メキシコの古い甘いパンのレシピにも、同じ香りづけや仕上げの工夫があることを指摘し、先スペイン期のひとつの起源に還元することに注意を促しています。今日のパンが、古代のパンから一直線に受け継がれたとは言えないのです。
中央メキシコ風の砂糖、バター、オレンジの味わいは、メキシコ全土に共通するものではありません。UNAMの記事は、地域ごとの形や意味を表すパンを紹介しています。たとえばオアハカのチナンテコの人々の人魚の形のパンや、ゲレロ州アルコサウカの赤い飾りのパンです。Anáhuac の記事も、季節のパンがさまざまな形や名前をもつことを述べています。フィラデルフィアのメキシコ総領事館のレシピは、パンを頭蓋骨と骨で飾り、発酵と成形を家庭で行う営みとして扱っています。メキシコのほかの料理は、メキシコの国別ページで紹介しています。
食べ方と保存
オフレンダでは、パンを丸ごと供えます。食卓では、砂糖のついた皮が1切れごとに含まれるよう、厚めに切り分けます。
パンが完全に冷めたら、包んで室温で数日置けます。冷凍や温め直しは、このレシピでは扱いません。
よくある質問
死者の日はいつですか?
King Arthur Baking のレシピは、11月1日と2日としています。パン・デ・ムエルトは、この季節に作られます。
アニスを抜いてもいいですか?
抜くことはできますが、香りが変わり、掲載されているレシピのとおりではなくなります。レシピにはオレンジの皮とあわせて、アニスシード小さじ1 1/2が入っています。スターアニスやフェンネルで代用しないでください。
オレンジフラワーウォーターは必須ですか?
必須ではありません。掲載されているレシピは、同じ大さじ2のローズウォーターか水を代わりに挙げています。水なら香りは穏やかに、ローズウォーターならより花のような香りになります。総領事館の別のレシピにある濃いアニス茶は、この配合の選択肢ではありません。
冷蔵庫での休ませを省けますか?
レシピには、冷蔵庫で最低4時間、または一晩休ませる工程が含まれています。省いた場合、同じ生地で同じ仕上がりになるとは言えません。
手ごねでも作れますか?
作り方は、ドウフックをつけたスタンドミキサーで、長くこねて、生地が少し粘る状態を保つ前提で書かれています。手ごねは扱っていないので、同じ仕上がりになるとは約束できません。
何個できますか?
直径約8インチ(約20cm)の丸型パンが2個できます。
このレシピは試作しましたか?
私たちの台所では焼いていません。分量、時間、温度は掲載されているレシピのとおりです。各工程の泡、体積、色、そして中心温度190°Fというサインを頼りにしてください。














