竹と葉の香りで食べる、ベトナム山岳のもち米
もち米を水に浸していると、ただの白い粒なのに、台所の時間が少し遅くなります。ざるに上げた米を葉で包み、蒸し器のふたを開けると、湯気の向こうに青い香りが立つ。そこへ最後に焼き目をつけると、白いごはんなのに、山の屋台で買った包みを開けるような匂いになります。
コムラム(Cơm lam)は、ベトナム北西部や中部高原などの山岳地域で親しまれる竹筒のもち米料理です。もち米を洗って浸し、若い竹や nứa と呼ばれる竹筒に水と一緒に詰め、バナナ葉などで口を閉じて火にかけます。焼けた竹を割ると、内側の薄い膜や葉が白い米の筒に残り、竹の青い香りと軽い燻香が移ります。
ベトナム通信社系のVietnamPlusは、北西部のコムラムをタイ系少数民族の料理として紹介し、もち米を2時間浸し、バナナ葉で包んだ竹筒を火にかけると説明しています。ベトナム観光情報でも、マンデンやダクノンなど中部高原の食卓で、コムラムが焼き鶏や肉料理と一緒に出ることが紹介されています。地域によって米、水、葉、添える塩の香りは変わりますが、「もち米を竹や葉の香りで蒸し焼きにする」骨格は共通しています。
この記事では、日本の家庭で安全に作れる形に落とし込みます。食用に適した竹筒が手に入るなら使えますが、観賞用や加工不明の竹を火にかけるのは避けます。初回は、バナナ葉で包んだもち米を蒸し器で芯まで蒸し、魚焼きグリルやグリルパンで短く焼いて香りを足す方法がおすすめです。フォーガーの澄んだ鶏スープやブンチャーの香ばしい肉とは違い、コムラムはごはんそのものが主役になります。
Cơmはベトナム語でごはん、lamは竹筒や火を使う調理法と結びつけて説明されることが多い言葉です。本記事では、日本語の読みを「コムラム」とし、現地名をCơm lamと表記します。
竹筒がない日の分岐表
コムラムらしさは竹筒だけで決まりません。日本の台所で守りたいのは、もち米、葉の香り、筒状にまとまる食感、最後の軽い焼き目です。反対に、未知の竹を無理に燃やす必要はありません。
| 方法 | 仕上がり | 向いている日 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 食用竹筒+蒸し器+焼き | もっとも現地の形に近い | 食材店で調理用竹筒を用意できる日 | 塗装や薬剤処理の竹は使わない |
| バナナ葉包み+蒸し器+焼き | 香りと形のバランスがよい | 初回、家庭で安定させたい日 | 葉が破れたら二重に包む |
| 耐熱カップ+バナナ葉 | 筒状には弱いが失敗しにくい | 竹筒がない日 | 米を押し込みすぎない |
| オーブンシート+青じそ少量 | 香りは別物だが食べやすい | バナナ葉がない日 | 料理名としては家庭アレンジに寄る |
| 炊飯器だけ | 普通のもち米ごはんに近い | 時間がない日 | コムラムの食感と香りは弱い |
バナナ葉が手に入らない場合、香りは変わりますが、オーブンシートで筒状に包んで蒸し、最後にグリルパンで短く焼く方法でも「もち米の筒を切ってごま塩で食べる」体験は作れます。ただし、竹と葉の香りは料理の大事な部分なので、次回は冷凍バナナ葉を探す価値があります。
失敗原因 - 硬い芯、べたつき、焦げすぎを直す

| 状態 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 中心に硬い芯が残る | 浸水不足、蒸し時間不足、米の詰めすぎ | 2時間浸し、8分目まで詰め、中火で5分追加蒸し |
| べたっと崩れる | 水分が多い、蒸した後すぐ切った | 水分は合計160mlまで。焼く前と切る前に5分休ませる |
| 葉だけ焦げて苦い | 焼き工程の火が強い | 蒸しで火を入れ、焼きは中火相当で短く香り付けにする |
| 竹や葉の香りが弱い | 蒸しただけで終えた、葉が少ない | 葉を二重にし、最後に焼き目をつける |
| 味がぼやける | 米の下味が弱い、ごま塩が少ない | 米に塩小さじ1/2を入れ、ごま塩は別皿で多めに用意 |
芯が残った場合、もう一度蒸し器に戻せます。葉を閉じ直し、中火で8分蒸してから5分休ませます。電子レンジだけで追い加熱すると外側だけ硬くなりやすいので、蒸気で戻す方が米粒がやわらかくなります。
べたついた場合は、熱いうちに無理に切らず、葉を開いた状態で5〜8分置きます。表面の蒸気が抜けると少し締まります。それでも崩れる時は、切らずに小さくちぎってごま塩をつけ、焼きおにぎりのようにフライパンで表面だけ乾かすと救済できます。
食べ方と献立
コムラムは、熱々よりも少し落ち着いた温かさで食べると香りが分かりやすいです。ベトナム北西部や高原の食卓では、ごま塩、ピーナッツ塩、焼き鶏、焼き豚、香草、地域によってはチẩm chéoのような辛い塩だれと合わせます。日本の家庭では、焼き鶏を濃く味付けしすぎず、塩、ライム、香草で食べると米の香りが消えません。
同じベトナム料理で献立を組むなら、汁物はフォーガー、香ばしい肉ならブンチャー、野菜と食感を足すならバインセオが候補になります。軽い昼ならコムラム、ごま塩、きゅうり、焼き鶏だけでも十分です。東南アジアのもち米料理として比べるなら、ナシレマのココナッツ米や、カオピヤックセンの米粉麺と並べると、米の使い方の違いが見えてきます。
保存と温め直し
コムラムは焼きたてを切って食べるのが一番です。保存する場合は、葉を外さずに粗熱を取り、1本ずつラップで包んで冷蔵します。冷蔵は2日まで、冷凍は2週間までを目安にします。冷えるともち米は硬くなるので、常温に長く置いてやわらかさを戻そうとせず、蒸気で温めます。
冷蔵から温める場合は、葉を付けたまま蒸し器に入れ、中火で8〜10分蒸します。急ぐ時は600Wの電子レンジで40秒温めてから、フライパンで弱めの中火1分だけ転がすと、表面の香りが戻ります。冷凍したものは冷蔵庫で半日解凍し、蒸し器で12分ほど温めます。
弁当に入れるなら、ごま塩は別容器にします。米に塩味を強く入れすぎると冷めた時に単調になるので、食べる直前にごま塩をつける方が飽きません。焼き鶏や香草を一緒に持つ場合は、香草の水気をしっかり拭きます。
FAQ
普通の米でも作れますか?
作れますが、コムラムらしい筒状の粘りは弱くなります。普通の米で作るなら、うるち米200g、もち米100gのように一部だけもち米を混ぜると崩れにくくなります。完全に普通の米だけの場合は、水分を少し減らし、葉包み炊き込みごはんとして考える方が自然です。
ココナッツウォーターは必須ですか?
必須ではありません。水だけでも作れます。ココナッツウォーターは、米の甘みを少し補い、東南アジアの香りへ寄せるために少量だけ使っています。ココナッツミルクを多く入れると、ベトナム山岳の素朴な竹筒ごはんより、別の甘いもち米料理に寄りやすいので控えめにします。
バナナ葉が破れます。
解凍後の葉が冷たいままだと割れやすいです。熱湯をさっとかけるか、電子レンジ600Wで20秒温めてから使います。葉脈の太い部分は折れやすいので避け、破れたら二重に包みます。香りは少し強くなりますが、二重にした方が蒸気が入りすぎず、米の形も保ちやすいです。
炭火で焼いてもいいですか?
屋外で安全に火を扱えるなら、蒸した後の香り付けとして短く焼けます。直火で最初から火入れする場合は竹筒、水分、火加減の経験が必要です。家庭向けには、蒸し器で芯まで火を入れてから炭火やグリルで焼き目をつける順番をすすめます。
ごまやピーナッツを使わない場合は?
塩に少量のすりえごま、青のり、刻んだ香草、ライムの皮を混ぜると、油脂を足さずに香りを作れます。ナッツアレルギーがある場合は、ピーナッツを抜くだけでなく、調理器具や保存容器の共有にも注意してください。ごまも避ける必要がある場合は、粗塩とライムだけでも米の香りは楽しめます。
参考文献
- VietnamPlus, Unique rice in bamboo tube in Vietnam’s northwest region(2026-05-21閲覧)
- Vietnam.vn, The culinary essence from glutinous rice(2026-05-21閲覧)
- Vietnam.travel, Discover Mang Den: Vietnam’s Awakening Paradise(2026-05-21閲覧)
- Vietnam.vn, Sticky rice cooked in bamboo tubes - the flavor of the mountains and forests(2026-05-21閲覧)












